万引き家族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
万引き家族
Shoplifters
監督 是枝裕和
脚本 是枝裕和
原案 是枝裕和
製作 石原隆
依田巽
中江康人
出演者 リリー・フランキー
安藤サクラ
松岡茉優
池松壮亮
城桧吏
佐々木みゆ
高良健吾
池脇千鶴
樹木希林
音楽 細野晴臣
撮影 近藤龍人
編集 是枝裕和
制作会社 AOI Pro.
製作会社 フジテレビ
AOI Pro.
ギャガ
配給 日本の旗 ギャガ
アメリカ合衆国の旗 マグノリア・ピクチャーズ
公開 日本の旗 2018年6月8日
香港の旗 2018年7月5日
台湾の旗 2018年7月13日
大韓民国の旗 2018年7月26日
中華人民共和国の旗 2018年8月3日
アメリカ合衆国の旗 2018年11月23日
上映時間 120分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
テンプレートを表示

万引き家族』(まんびきかぞく、英題:Shoplifters)は、2018年6月8日公開の日本映画。是枝裕和監督。

概要[編集]

親の死亡届を出さずに年金を不正に貰い続けていたある家族の実際にあった事件をもとに、是枝が家族や社会について構想10年近くをかけて考え作り上げた[1]。日本国内での公開に当たっては、PG12のレイティング指定がなされている[2]

第71回カンヌ国際映画祭において、最高賞であるパルム・ドールを獲得した。日本人監督作品としては、1997年の今村昌平監督「うなぎ」以来21年ぶり[3]。撮影中につけられていた映画のタイトルは「声に出して呼んで」だった。

あらすじ[編集]

東京の下町に暮らす日雇い労働者の柴田治とクリーニング店で働く治の妻・信代には、夫妻の息子という祥太、JKリフレ店で働く信代の妹という亜紀、そして治の母という初枝が家族として同居していた。家族は治と信代の給料に加え、初枝の年金と、治と祥太が親子で手がける万引きで生計を立てていた[注 1]。しかし初枝は表向きは独居老人ということになっており、同居人の存在自体が秘密だった。5人は社会の底辺で暮らしながらも、いつも笑顔が絶えなかった。

ある冬の日、治は近所の団地の1階にあるバルコニー状の外廊下で、ひとりの幼い女の子が震えているのを見つけ、見かねて連れて帰る。夕食後、「ゆり」と名乗るその少女を家へ帰しに行った治と信代は、家の中から子どもをめぐる諍いの声を聞く。結局「ゆり」は再度柴田家に戻された。体中の傷跡など「ゆり」に児童虐待の疑いがあることを見つけた信代は彼女と同居を続けることを決め、「誘拐ではないか」という亜紀[注 2]に対して「脅迫も身代金の要求もしていないからこれは誘拐ではなく保護だ」と主張、「ゆり」は柴田家の6人目の家族となった。その矢先、治は職場で負傷して仕事ができなくなる。あてにした労災は下りなかった。連れ帰ってから2ヶ月経っても「ゆり」に捜索願が出た形跡はなかったが、やがてテレビで失踪事件として報じられるところとなって[注 3]、柴田家の一同は彼女の本当の名前が「北条じゅり」であることを知る。一家は発覚を遅らせるべく「ゆり」の髪を切って「りん」という呼び名を与え、祥太の妹ということにした。回復した治は仕事に戻ることなく、祥太との万引きを「りん」に手伝わせる。

柴田家の面々は表向きは普通の家族として暮らしながら、治と祥太の万引き以外にも、初枝はパチンコ店で他の客のドル箱を大胆にネコババし、祥太は「りん」を連れて近所の駄菓子屋で万引きを働き、信代はクリーニング店で衣服のポケットから見つけたアクセサリーなどをこっそり持ち帰るなど、亜紀を除く全員がなんらかの不正や犯罪に手を染めていた。一方、「りん」と柴田家の絆は次第に深まっていった。

夏を迎える頃、祥太はいつもの駄菓子屋で「りん」に万引きをさせたところ、年老いた店主からお菓子を与えられ「妹にはさせるなよ」という言葉をかけられた。そんな折、信代は勤め先から自分と同僚のどちらかの退職を迫られ、同僚との話し合いで「行方不明になっている女児(「りん」のこと)を連れているのを見た」と脅されて退職を余儀なくされる。一方初枝は前夫(作中では故人)が後妻との間にもうけた息子夫婦が住む家を訪れ、前夫の月命日の供養ついでに慰謝料などの名目で金を無心していた。実は亜紀はこの息子夫婦の娘で、さやかという妹もいるが[注 4]、家を出た亜紀を初枝は引き取っていた。しかし初枝と亜紀の両親の間では彼女はオーストラリアに留学中ということになっており、都内で同居していることを初枝は両親に隠していた。その頃、亜紀はJKリフレの常連客である「4番さん」とひそかに心を通わせていた。

夏になり、一家は海水浴に出かけ団欒を満喫する。しかし、それからまもなくして初枝は自宅で急逝。治と信代は自宅敷地内に初枝の遺体を埋め、「最初からいなかった」ことにした。信代は死亡した初枝の年金を不正に引き出す。家の中から初枝のへそくりを見つけだして大喜びする治と信代を、祥太は無言で見つめていた。祥太は治から「店の商品は、誰のものでもない(から取っても構わない)」と教えられていた。だが、治の車上荒らしに同行した際に、「これは誰かのものではないの」と尋ね、積極的に手伝おうとしなかった。少しのち、祥太は「りん」と駄菓子屋に行ったが、「忌中」の紙が貼られ、閉店していた。やむなく祥太は別のスーパーマーケットに入店したところ、「りん」が見様見真似で万引きを働こうとしたため、わざと派手にミカンを盗み、店員の追跡をかわそうとするもアンダーパスに飛び降りた際に足を負傷、入院する。

これをきっかけに柴田家4人は祥太を捨て置き逃げようとしたところを警察に捕まり、「りん」は本来の親の元に戻され、それ以外の3人は取り調べを受けた。入院中の祥太も警察官に事情を聴取され、その際に他の家族が逃げようとしたことを伝えられる。取り調べの中で、治と信代は過去に殺人を犯していた[注 5]こと、治は初枝の実際の息子ではなく前述の事情を抱えた彼を同居人として息子同然に迎え入れていたこと、祥太は治や信代に連れてこられたこと、治・信代・祥太らの名前は本名ではない[注 6]ことなどが明らかになる(つまり、"柴田家"は全員が血縁関係にない疑似家族であった)。信代は一家が抱えた犯罪はすべて自分の犯行として刑に服し、祥太は施設に入り、治は一人暮らしとなった。かつての自宅を訪れた亜紀は、もぬけの殻となった屋内をしばし眺めていた[注 7]

治が「りん」=「ゆり」=「じゅり」を保護してから約1年後、学校に通うようになった祥太はテストでも優秀な成績を残し、釣りの知識も身に着けるなどたくましく成長していた。治は信代の依頼で祥太を連れて刑務所に面会に行く。面会の場で信代は祥太に、治が松戸市にあるパチンコ店の駐車場で車上荒らしをしようとした際に連れてきたことをその自動車の情報を交えて伝え、情報を手掛かりに「その気になれば本当の両親に会える」と話す。その夜、祥太は治の家に泊まり、自分を置いて逃げようとしたことの真偽を治に問うと、治はそれを認めて「おじさんに戻る」と答えた。翌朝、祥太はバス停での別れ際に「自分はわざと捕まった」と治に話す。一方、「じゅり」は元の家族に戻されたことで以前と同様に虐待の被害者となり、治に発見されたときと同じ外廊下でただ遠くを眺めているのだった。

キャスト[編集]

東京の下町に暮らす日雇い労働者
治の妻。クリーニング店工場のパート従業員
信代の妹。JKリフレ店に勤務し「さやか」という源氏名を使用している。
治の息子。学校には通っておらず治とタッグを組んで万引きをしている。愛読書はスイミー
治が柴田家に連れて帰ってきた少女。両親からはネグレクトなどの児童虐待を受けている。
治の母。年金受給者である。夫とはすでに離婚している。
亜紀が勤務するJKリフレ店の常連客。亜紀とは筆談でコミュニケーションをとっている。手の指に傷跡があり、亜紀は「自分で自分を殴ったときのもの」と解した。
亜紀の本当の父親。
亜紀の本当の母親。
亜紀の本当の妹。高校2年生。
ゆりの父。希とゆりに対しDVを働いている。
ゆりの母。保からDVを受ける一方でゆりに対しネグレクトをしている。
柴田家の近隣にある駄菓子屋の店主。
警察官。
警察官。

なお、物語の後半にて明らかになる柴田家の真の関係については前述の通りである。

スタッフ[編集]

ロケ地[編集]

主な舞台は東京都荒川区である[4][5]。リリー・フランキーによると、柴田家として使用された民家はセットではなく、実在する廃屋である[6]。海水浴の場面は千葉県いすみ市大原海水浴場で撮影された[4]

受賞[編集]

国内[編集]

国外[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 亜紀だけは初枝により収入を家に入れなくてもよいことになっていた。
  2. ^ 後の警察の取り調べでは、治も亜紀と同じ主張をしたと供述している。
  3. ^ このシーンでフジテレビアナウンサーの笠井信輔が出演している。
  4. ^ 亜紀がJKリフレ店で使う源氏名はこの妹に由来している。
  5. ^ もともと治と信代はホステスとその常連客という関係であり、信代は前夫からDVを受けていたため治と共謀し正当防衛の名のもとにこの前夫を殺害、治は信代をかばって罪を背負い執行猶予つきの実刑判決を受けていた。
  6. ^ 警察官は治の本名を「えのきしょうた」、信代の本名を「たなべゆうこ」と述べている。
  7. ^ 亜紀が両親の元に戻ったかどうかは明示されていない。
  8. ^ DESTINY 鎌倉ものがたり』と合わせての受賞。
  9. ^ 勝手にふるえてろ』『ちはやふる 結び』『blank13』と合わせての受賞。
  10. ^ a b モリのいる場所』『日日是好日』と合わせての受賞。
  11. ^ 『ちはやふる 結び』『blank13』と合わせての受賞。

出典[編集]

  1. ^ 是枝裕和、新作始動!リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林演じる家族の物語”. シネマトゥデイ (2018年1月5日). 2018年2月14日閲覧。
  2. ^ ヒタナカ (2018年6月8日). “『万引き家族』モラルに問題のない3つの理由(ワケ)”. 松竹. 2018年8月4日閲覧。
  3. ^ a b 是枝裕和『万引き家族』に最高賞パルムドール!日本人21年ぶり:第71回カンヌ国際映画祭”. シネマトゥデイ (2018年5月20日). 2018年5月20日閲覧。
  4. ^ a b 映画『万引き家族』予告編 - 地ムービー
  5. ^ 真夜中 特別編 - とれたてフジテレビ(2018年6月3日・10日)
  6. ^ 【インタビュー】リリー・フランキーが『万引き家族』の撮影を通して省みた、これまでの人生と家族像。 - The Fashion Post(2018年5月29日)
  7. ^ “TAMA映画賞:最優秀作品に「万引き家族」と「寝ても覚めても」 安藤サクラ、松岡茉優も受賞”. まんたんウェブ. (2018年10月4日). https://mantan-web.jp/article/20181003dog00m200045000c.html 2018年10月4日閲覧。 
  8. ^ “山路ふみ子映画賞に「寝ても覚めても」、新人女優賞の唐田えりかと2冠”. 映画.com. (2018年10月23日). https://eiga.com/news/20181023/6/ 2018年10月23日閲覧。 
  9. ^ “寺島しのぶ、東出昌大、Kōki,らが受賞! 「エル シネマアワード 2018」を最速レポート”. ELLE. (2018年11月26日). https://www.elle.com/jp/culture/movie-tv/a25246881/elle-cinema-award18-report18-1126/ 2018年11月27日閲覧。 
  10. ^ “【報知映画賞】助演女優賞に樹木希林さん、存在感は生き続ける”. スポーツ報知. (2018年11月28日). https://www.hochi.co.jp/entertainment/20181127-OHT1T50305.html 2018年11月28日閲覧。 
  11. ^ “第63回「映画の日」中央大会開催、特別功労章を是枝裕和監督らが受章”. 映画.com. (2018年12月1日). https://eiga.com/news/20181201/3/ 2018年12月1日閲覧。 
  12. ^ “第40回ヨコハマ映画祭 2018年日本映画個人賞”. ヨコハマ映画祭. (2018年12月1日). http://yokohama-eigasai.o.oo7.jp/40-2018/40_2018_shou.html 2018年12月1日閲覧。 
  13. ^ “『万引き家族』に作品賞!日刊スポーツ映画大賞発表”. シネマトゥデイ. (2018年12月4日). https://www.cinematoday.jp/news/N0105345 2018年12月4日閲覧。 
  14. ^ “「万引き家族」是枝裕和監督またまた快挙!ミュンヘン映画祭でARRI/OSRAM賞”. スポニチアネックス. (2018年7月8日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/07/08/kiji/20180708s00041000258000c.html 2018年7月8日閲覧。 
  15. ^ “「万引き家族」是枝裕和がトルコの映画祭で監督賞、日本映画初&アジア人初の快挙”. 映画ナタリー. (2018年10月6日). https://natalie.mu/eiga/news/302735 2018年10月6日閲覧。 
  16. ^ “バンクーバー国際映画祭で「万引き家族」が外国作品観客賞 「カメ止め」は再上映作に”. バンクーバー経済新聞. (2018年10月16日). https://vancouver.keizai.biz/headline/2521/ 2018年11月8日閲覧。 
  17. ^ “「万引き家族」、米ゴールデン・グローブ賞にノミネート”. Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2018年12月7日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/12/07/kiji/20181206s00041000470000c.html 2018年12月7日閲覧。 

外部リンク[編集]