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ロッキー (映画)

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ロッキー
Rocky
映画に登場するフィラデルフィア美術館正面
監督 ジョン・G・アヴィルドセン
脚本 シルヴェスター・スタローン
製作 アーウィン・ウィンクラー
ロバート・チャートフ
製作総指揮 ジーン・カークウッド
出演者 シルヴェスター・スタローン
タリア・シャイア
バート・ヤング
バージェス・メレディス
カール・ウェザース
音楽 ビル・コンティ
撮影 ジェームズ・グレイブ
編集 リチャード・ハルシー
配給 ユナイテッド・アーティスツ
公開 アメリカ合衆国の旗 1976年11月21日
日本の旗 1977年4月16日
上映時間 119分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 110万$
興行収入 アメリカ合衆国の旗1億1700万$
次作 ロッキー2
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ロッキー』(Rocky)は、1976年アメリカ映画。配給会社はユナイテッド・アーティスツで、監督はジョン・G・アヴィルドセン。主演・脚本はシルヴェスター・スタローン第49回アカデミー賞作品賞ならびに第34回ゴールデングローブ賞ドラマ作品賞受賞作品。また、2006年に米国連邦議会図書館がアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録した作品の中の1つである。

作品背景

制作開始に至るまで

映画のオーディションに50回以上落選していたスタローンはポルノ映画への出演や用心棒などをして日々の生活費を稼いでいた。長い極貧生活を送っていたある日、彼は世界ヘビー級タイトルマッチ「モハメド・アリチャック・ウェプナー」戦のテレビ放送を観戦した。アリは当時世界最強と言われていたのに対し、ウェプナーはスタローン同様繰り返す転職の中で日銭を稼いでいた。誰が見ても勝ち目がないウェプナーであったが予想外の善戦を展開。試合はアリが勝利したものの、ウェプナーの繰り出したパンチがアリのわき腹を直撃しダウンを奪い、対戦後に「二度と対戦したくない」と言わしめたのである。「アリをダウンさせたその瞬間、ウェプナーは偉大なボクサーとなり人々の心に永遠に刻まれる」と考えたスタローンはこの出来事を基にわずか3日で脚本を書き上げプロダクションに売り込んだ。

プロダクションはその脚本を気に入り7万5千ドルという当時の脚本料としては破格の値をつけたものの、製作の条件として「主演にポール・ニューマンロバート・レッドフォードアル・パチーノといった有名スターを起用する」ことを挙げて譲らなかった。「貧乏とはうまく付き合うことが出来る」スタローンもまた脚本料に固執せず、自分が主演を兼任することに徹底的に拘り双方の長きに亘る交渉の末、

  • ギャランティーに関しては、監督は普段の半分、スタローンは俳優組合が定める最低金額、プロデューサーはなし
  • 制作費はテレビシリーズ1本分(約100万ドル)
  • 36万ドルまで高騰した脚本料を2万ドルに減額

という条件の下で製作が開始された。なお、制作に至るこれらのエピソードは、映画にさらなるドラマ性を与えるため多分に潤色されているという指摘もある[1][注釈 1]

制作後

当時の社会背景として黒人への優遇措置逆差別などでプアーホワイト(白人貧困層)の不満が鬱積していた。映画ではプロボクシング界を黒人天国の象徴として描き、その中で戦う主人公のロッキーをプアーホワイトの象徴として描かれている。公開当初、無名俳優の書いた脚本をB級映画出身の監督が製作するという背景から作品に対する視線は冷ややかだったが、不器用で口は悪くも根は優しいロッキーと、ボクシングジムのトレーナーであるミッキー、親友のポーリー、そしてポーリーの妹で後に恋人となるエイドリアンが織り成す人間味溢れるドラマや、ビル・コンティ作曲の『ロッキーのテーマ』(原題:『Gonna Fly Now』。なお邦題は現在では『ロッキーのテーマ』と表記されることが多いが、最初に発売されたシングルレコードでの表記は単に『ロッキー』だった)が観客の心を掴み、瞬く間に全米だけで1億ドルの興行収入を記録。同年の第49回アカデミー賞で作品賞を獲得するなど国内外の映画賞において群を抜く数の映画賞を受賞した。

映画の主人公ロッキーが生き甲斐を持てずに彷徨い続ける日々から一夜にして栄光を掴んだように、主演と脚本を担当したスタローンも無名俳優から作品の大ヒットで一躍スターダムに上り詰めた快挙であった。また、ベトナム戦争への軍事介入を機に台頭したアメリカン・ニューシネマにより、ハッピーエンド英雄へのアンチテーゼが最盛を極めたが、本作品の出現が「個人の可能性」「アメリカン・ドリーム」への憧憬を再燃させ、アメリカン・ニューシネマの終焉を決定的なものとした。

ステディカムを本格的に導入した、その最初期の著名な作品としても知られる。フィラデルフィア美術館前庭の階段、いわゆるロッキー・ステップをロッキーが駆け上がるシーンなどがその代表である。

やれる事はなんでもやったといった風な力作で低予算での制作ではあるものの映画の世界観にとっては好結果となっている。しかし、観客役のエキストラを「フライドチキンを配布する」というチラシで募集した。ほとんどが素人のため、撮影最終盤では統制をたもてず、予定していたラストシーン(興奮した観客がロッキーを担いでいくというもの)を撮影できなかった。また、メイク代を節約するために、負傷したロッキーの特殊メイクを少しずつはがしていくことで、最終ラウンドから第一ラウンドへと逆方向に撮影する変則的なやりかたをとった。練習のシーンの撮影を市内でおこなった際、ステディカムをつかった小規模の撮影クルーだったため映画のロケとはおもわれず、本物のボクサーとまちがえた市民から声援をおくられた。

制作後、スタローンは母を伴って映画監督を招いた試写会を開いたが、監督達は全くの無反応で、終了すると足早に退席した。これに深く失望したスタローンは母に「僕はやるだけやったよ」と答え、帰ろうと席を立った。すると出口前で退席した監督達が集まっており、万雷の拍手で迎えられたのでスタローンはとても感動したという。

キャスト

※括弧内は日本語吹替版を担当した声優

ロッキー・バルボア(Rocky Balboa) - シルヴェスター・スタローン羽佐間道夫
ペンシルベニア州フィラデルフィアの小さなアパート(住所:1818 Tusculum St)で暮らすボクサー。15歳からボクシングを始めているが、30歳になっても賭けボクシングの賞金だけでの生計を立てられないため、闇金融を営むガッツォの元で取立てを行う。しかし根が優しいことが災いしてか、借金を踏み倒そうとする者を責め切れない。また、近所のペットショップで働くエイドリアンに恋心を抱いており、彼女を振り向かせようとするが、不器用な性格からいまひとつ想いを伝え切れずにいる。本名はロバートバルボア
エイドリアン(Adrian) - タリア・シャイア松金よね子
ロッキーが通うボクシングジムの近くにあるペットショップで働いている、人見知りの激しい女性。極端な恥ずかしがり屋で、男性とはまともに目を見て話すこともできない。
ポーリー(Paulie) - バート・ヤング富田耕生
エイドリアンの兄でありロッキーの親友。精肉工場で働いているがその収入に満足できないらしく、ロッキーにガッツォの元で働かせてくれるように持ちかける。自らも冴えない男でありながら、いつまでも独りで暮らす妹のエイドリアンを散々罵倒し、彼女に好意を抱くロッキーを奇異に思いながらも感謝している。
ミッキー(Mickey Goldmill) - バージェス・メレディス千葉耕市
1920年代初頭バンタム級の世界チャンピオンとして活躍。引退後はジムを経営し、そこで10年前にロッキーと出会いボクシングを教えるも、結果を出せないうえに自堕落な生活を送る彼に業を煮やし「お前は傷んだトマトだ」と罵り、育成を放棄してしまう。本作では言及されることはないが、続編における彼の葬儀で、墓標にダビデの星が刻まれていたことからユダヤ系であると考えられる。
アポロ・クリード(Apollo Creed) - カール・ウェザース内海賢二
現在の世界ヘビー級チャンピオンで、口汚いが本物の実力を持っている。自分の知名度を上げるため無名のボクサーに、チャンピオンに挑戦させる権利を与える。

ジョーフレイジャー「カメオ出演」

スタッフ

ストーリー


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


フィラデルフィアに暮らす「三流」ボクサーロッキー・バルボアは本業のボクシングによる賞金だけでは生活していくことができず、知人の高利貸しの取立人を請け負いながら日銭を稼ぐというヤクザ気質な生活を送っていた。素質はあるのにこれといった努力もせず、所属するボクシングジムのトレーナーであるミッキーからもその落ちぶれた様に愛想を尽かされ追い出されてしまう。

そんな自堕落な生活を送っていたロッキーにも生きがいがあった。近所のペットショップで働くエイドリアンの存在である。ロッキーの親友で、精肉工場で働くポーリーの妹であるエイドリアンに、ロッキーは恋心を抱き、毎日ペットショップへ足を運んでは話しかけるものの、内気で人見知りが激しいエイドリアンはなかなかうちとけない。そんな妹に好意を寄せているロッキーを、ポーリーは奇異に思いながらも感謝している。ロッキーとエイドリアンは不器用ながら距離を縮めてゆき、やがてお互いになくてはならない存在になっていく。

そんなある日、建国200年祭のイベントの一環として開催される世界ヘビー級タイトルマッチで、世界チャンピオンであるアポロ・クリードの対戦相手が負傷。プロモーターらは代役探しに奔走するが、そんな時アポロが「全くの無名選手と戦うというのはどうだ?」とアイデアを出す。無名選手にアメリカン・ドリームを体現させることで世間の話題を集め、自身の懐の深さを知らしめようという算段である。

そしてアポロは、ロッキーが「イタリアの種馬(Italian Stallion)」というユニークなニックネームをもつというだけの理由で、対戦相手に指名する(stallionはイタリア語stallone(スタローネ)と同語源。つまり、このニックネームはスタローン自身の隠喩)。ロッキーは両者の実力の差が歴然としていることや、自分がサウスポーであることから申し出を断るが、人気獲得のためにも何とかして試合を開催したいアポロは、半ば強制的に試合の開催を決定する。そしてロッキーの戦いは始まった。

スポンサーを名乗り出るポーリーや、自身の豊富な経験からマネージャーになることを希望するミッキー、そして1つの生きがいであるエイドリアンが、ロッキーに自分が決して孤独ではないことを気づかせた。「今の自分には確かに人生の目的や愛、支えてくれる人たちがいる。」今まで経験したこともないような過酷な特訓を、ロッキーは耐え抜いた。試合前日の夜、ロッキーは「絶対勝てない」と弱音を吐いた後に呟く。「もし最終15ラウンドまでリングの上に立っていられたら、自分がただのゴロツキではないことが証明できる。」

そして試合当日、無名のボクサーと史上最強の世界チャンピオンの対戦。賭け率は50対1。アポロの優勢は誰の目にも明らかであった。ついにゴングが鳴った。挑発を交えながら攻めるアポロに、負けじと喰らい付くロッキー。しかし、最初のダウンを奪ったのはロッキーだった。ロッキーの予想外の善戦に、場内の雰囲気も異様な盛り上がりを見せ始めた。第14ラウンド、アポロの強烈なパンチを受けたロッキーはダウンする。ミッキーは起き上がらないように指示するが、ロッキーには昨夜の誓いがあった。両者共に瞼から出血し、汗にまみれるという死闘は、ついに判定に縺れ込んだ。結果は微妙な判定により、アポロのタイトル防衛となった。

試合の結果に喜ぶアポロとは対照的に、ロッキーはただひたすら愛するエイドリアンの名を叫び続けた。エイドリアンは、壮絶な試合に酔い痴れる観客の中を掻き分け、ロッキーのもとに辿りついた。結果として試合には判定で負けたロッキーだが、本来の「15ラウンドまで戦い抜きゴロツキではないことを証明する」という自身の目的を果たしたロッキーには、敗北の悔しさは皆無で、幸福な達成感に包まれながら愛するエイドリアンと熱い抱擁を交わすのであった。

続編

関連作品・関連商品

舞台

  • 『ロッキー・ミュージカル版』(2012年11月、ドイツ初演)[2] *予定

テレビゲーム

パチンコ

パチスロ

音楽

『ロッキーのテーマ』を始め、シリーズの中で使用された音楽に対する評価は高く、以下のとおり様々な場面で使われている。

格闘家・ボクサーの入場曲

その他

トリビア

  • エイドリアンのペットショップはユニバーサル・スタジオ・ジャパンのニューヨーク・エリアで再現されている。
  • 舞台となったフィラデルフィアに、スタローンは少年のころ一時期住んでいた。当時両親が離婚し、自身も顔面の障碍からくる劣等感に苛まれ、幸福とはいい難い少年期を過ごした思い出の町でもあった[1]
  • 実在するイタリア系強豪ボクサーとしてロッキー・マルシアノがいる。本作の主人公名が彼に由来しているかどうかは明らかでない。
  • この作品の脚本を製作会社に売り込んでいた頃のスタローンは、「セブンイレブンの前でペットの犬を売らざるを得なかった」と、手元に106ドルしかなかった当時を振り返っている[3]
  • 作中のロードワークシーンでリンゴを投げ渡されたが、これはリンゴを投げた果物屋の店主が撮影中のスタローンを本物のボクサーと勘違いしたためであり台本にはないハプニングであった。

受賞

受賞 人物
作品賞 アーウィン・ウィンクラー
ロバート・チャートフ
監督賞 ジョン・G・アヴィルドセン
編集賞 スコット・コンラッド
リチャード・ハルシー
ノミネート
主演男優賞 シルヴェスター・スタローン
主演女優賞 タリア・シャイア
助演男優賞 バージェス・メレディス
バート・ヤング
脚本賞 シルヴェスター・スタローン
歌曲賞 ビル・コンティ
キャロル・コナーズ
エイン・ロビンス
録音賞 バド・アルパー
ハリー・ウォレン・テトリック
ウィリアム・マッコーイ
ライル・バーブリッジ
  • 第31回英国アカデミー賞
ノミネート 人物
作品賞 アーウィン・ウィンクラー
ロバート・チャートフ
監督賞 ジョン・G・アヴィルドセン
主演男優賞 シルヴェスター・スタローン
脚本賞 シルヴェスター・スタローン

その他

関連項目

注釈

  1. ^ 『ロッキー』の制作・配給の背景について、当時のプロデューサーら関係者は以下のように HOLLYWOOD TODAY のインタビューに答え、脚本に関するエピソードは自分たちが創作したものだとしている。以下、インタビューの概要:「ある日の打ち合わせで、プロデューサーはスタローンに脚本のアイデアを考えさせていた(スタローンは脚本家としてもすでに一定の力量を認められていた)。アイデアの一つとして、ウェプナーをモデルにした話をスタローンが出すと、プロデューサーは大いに乗り気になった。スタローンは一週間足らずで脚本の初稿を書き上げ、プロデューサーたちもそれを気に入り、スタローンと共に半年かけて練り込んだ。また予算の都合上、キャストはどうでもよかったのが実情で、『なぜスタローンが主演なんだ?』『彼がやることになったんだよ』で話は終わりだった。エージェントの幹部の中には、試写の段階でまだスタローンの顔が分からない者までいた。ともあれ映画は完成し、映画関係者向けの試写会を行なったところ、これが予想に反して格別の好評価だった。しかし多くの映画館で上映してもらうためには『ボクシング映画は女性に受けないので儲からない』というジンクスを否定する、何かがまだ必要だった。すなわちそれは『映画にまつわるドラマ』だった。」

脚注

  1. ^ a b Block, Alex Ben (2006年12月20日). “The Untold Story: "Rocky" Underdog Origin a Studio Myth” (英語). HOLLYWOOD TODAY. 2010年5月14日閲覧。
  2. ^ シルベスター・スタローンが映画「ロッキー」を自らミュージカル化(シアターガイド、2011年11月24日)
  3. ^ http://ncr2.net/2006111816.php

外部リンク