容疑者Xの献身
| 容疑者Xの献身 | ||
|---|---|---|
| 著者 | 東野圭吾 | |
| 発行日 | 2005年8月30日 | |
| 発行元 | 文藝春秋 | |
| ジャンル | ミステリ、推理小説 | |
| 国 |
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| 言語 | 日本語 | |
| 形態 | 四六判 上製カバー装 | |
| ページ数 | 360 | |
| 受賞 |
第6回本格ミステリ大賞 第134回直木三十五賞 『本格ミステリ・ベスト10 2006年版』 『このミステリーがすごい!2006』 『2005年「週刊文春」ミステリベスト10』 2006年本屋大賞4位[1] | |
| 前作 | 予知夢 | |
| 次作 | ガリレオの苦悩 | |
| 公式サイト | books.bunshun.jp | |
| コード |
ISBN 978-4-16-323860-9 ISBN 978-4-16-711012-3(文庫本) | |
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『容疑者Xの献身』(ようぎしゃエックスのけんしん)は、東野圭吾の長篇推理小説。ガリレオシリーズ第3作。エドガー賞候補作、第6回本格ミステリ大賞、第134回直木三十五賞受賞作。
概要
[編集]天才物理学者・湯川学が、大学の同期でライバルと見なす天才数学者の殺人隠蔽トリックに挑むミステリー。
『オール讀物』(文藝春秋)2003年6月号から2004年6月号、2004年8月号から2005年1月号にかけ『容疑者X』のタイトルで連載されたのち、2005年8月に同社より『容疑者Xの献身』に改題され単行本が刊行された[2]。2008年8月には文春文庫より文庫化された[3]。シリーズ初の長編作品。
第6回本格ミステリ大賞、第134回直木三十五賞受賞作。そして日本人として史上2度目となるエドガー賞候補となった。また、国内の主要ミステリランキングである『本格ミステリ・ベスト10 2006年版』『このミステリーがすごい!2006』『2005年「週刊文春」ミステリベスト10』においてそれぞれ1位を獲得し3冠と称され、のちに前出の2賞を受賞し、最終的に5冠となった。
東野圭吾の作家生活25周年、40周年にそれぞれ企画された「全作品人気投票」において、ともに1位を獲得している[4]。
2008年にテレビドラマ『ガリレオ』の劇場版として映画化されており、2012年に韓国版、2017年に中国版、2023年にインド版としてそれぞれ映画化されているほか、複数の劇団により舞台劇にもなっている。
制作背景
[編集]東野は、『探偵ガリレオ』『予知夢』で謎解き装置にとどまっていた湯川学という人物を深く描くため、彼を主人公とする長編を構想した[5]。その際、湯川の対極となる強敵として、論理で渡り合える天才数学者・石神哲也を設定する[5]。
しかし、論理的な人間が割に合わない犯罪を犯すはずがないと考え、計画犯罪ではなく、誰かのために罪を引き受ける隠蔽工作というプロットに行き着いた[5]。石神が犯罪に手を染める動機は恋しかなく、現実的な設定の中に純愛を描くことで、読者が石神に共感する構造を狙った[5]。
物語の核となる殺人隠蔽の謎は、トリック先行ではなく「天才数学者・石神ならどんな謎を作るか」という発想からスタートし、さらに湯川でも見抜けない「極めてシンプルだが難問が一気に超難問へ変わる謎」を模索した[5]。そのアイデアは約3か月の思索の末にひらめき、東野自身が「神様からのプレゼント」と語るほどのものとなった[5]。
石神の人物像、純愛、湯川という強敵がそろって初めて成立するクライマックスに向け、直観と無意識に委ねて伏線をはり執筆した結果、伏線も自然に生き、これ以上ない必然性を持つ物語に結実し、「神様からのプレゼント」との感覚をより強めたと振り返っている[5]。
あらすじ
[編集]弁当屋で働く評判の美人、花岡靖子は一人娘の美里と仲良く暮らしていた。
ある日、2人が暮らすアパートへ靖子の元夫である富樫慎二が彼女たちの居場所を突き止め訪ねてくる。どこへ引っ越してもまるで疫病神のように現れ、暴力を振るい金を無心する富樫を、靖子と美里は揉み合いの末に、誤って殺してしまう。
今後の成り行きを想像し、呆然とする母子に救いの手を差し伸べたのは、隣人の天才数学者・石神哲哉だった。彼は自らの論理的思考に基づき、警察の捜査から逃れられるよう的確な指示を出す。そして3月11日、旧江戸川で男性の遺体が発見される。警察は証拠品から遺体を富樫と断定し、花岡母子に目をつけるが、2人の完璧すぎるアリバイの前に、捜査は難航する。
困り果てた草薙刑事が、いつものように友人の湯川に相談を持ちかけると、驚いたことに石神と湯川は大学時代の友人であった。当初は傍観していた湯川だったが、やがて石神が犯行に深く関わっていることに気づき、独自に真相解明に乗り出していく。
登場人物
[編集]シリーズレギュラー
[編集]警視庁
[編集]- 間宮
- 捜査一課係長。警部。草薙の所属する班の班長。
- 岸谷(きしたに)
- 草薙の後輩にあたる捜査一課の刑事。母子家庭育ちで、花岡親子に同情的。草薙から「岸やん」と呼ばれている。
主要人物
[編集]- 石神哲哉(いしがみ てつや)
- 高校の数学教師。帝都大学理工学部数学科卒・同大学院修士修了で、湯川や草薙とは大学同期。湯川に「天才」と言わしめるほどの数学の才能を持つ。
- 丸顔で髪が薄く、老けて見える。家庭の事情で研究者の道を断念し高校の数学教師となるが、数学の面白さに興味を示さない生徒たちに教える日々に倦んでいる。
- アパートの隣人である靖子に密かな想いを寄せ、彼女が働く弁当屋「べんてん亭」に毎朝通う。事件後に唯一認める存在である湯川の訪問を受け再会する。
- 花岡靖子(はなおか やすこ)
- 「べんてん亭」の従業員で、30代半ばの黒目がちな美人。以前は赤坂や錦糸町のクラブ「まりあん」でホステスをしていた。
- 最初の結婚に失敗し、2度目の夫・富樫に離婚後も付きまとわれて転々と暮らしており、娘の美里を巻き込むことを申し訳なく思っている。
- 事件後は石神の助けで窮地を脱するが彼の思いに戸惑い、互いに好意を抱いていた工藤と再会するも交際に踏み出せずにいる。
- 花岡美里(はなおか みさと)
- 靖子が最初の夫との間にもうけた一人娘で、中学生。バドミントン部。明るく心優しい性格だが、強い怒りから富樫の後頭部を銅製の花瓶で殴り事件へと発展する。
- 自分と母を陰で支え続ける石神の思いに気づいており、母と工藤の関係については複雑な感情を抱き快く思っていない。
- 富樫慎二(とがし しんじ)
- 靖子の2度目の夫で、無職の男。以前は高級外車のセールスマンで羽振りが良かったが、金の出所であった会社の金の使い込みがバレ解雇されている。
- 失業後に本性を現し、働かず遊び歩きながら妻子に暴力を振るい金を巻き上げるようになったため、靖子が相談した弁護士の働きかけで離婚に至った。
- しかし離婚後も靖子に付きまとい、勤務先の「べんてん亭」やアパートを突き止めて押しかけ、再就職したと嘘をついて復縁を迫る。
- 工藤邦明(くどう くにあき)
- 印刷会社「ヒカリグラフィック」を経営する男性。靖子が「まりあん」に移る前に赤坂でホステスをしていたころからの馴染みの客だった。
- クラブの常連客であったころは既婚者だったため恋愛関係には至らなかったが、靖子が富樫と離婚できるよう陰で支えてくれた。
- 彼女が店を辞めた後は連絡が途絶えていたが、富樫の事件を知って彼女を案じ「べんてん亭」を訪れ、傷ついた靖子を励ます。
- 妻はすでに亡くなり、高校生の一人息子は実家の両親と暮らし独り暮らしであることから、靖子に交際を申し込み美里とも親しくなろうとしている。
靖子の関係者
[編集]- 米沢
- 「べんてん亭」の経営者で調理担当。靖子が働いていた錦糸町のクラブ「まりあん」の常連客のひとりだった。
- 弁当店の開店から1年が経ったころ、靖子に弁当屋の手伝いをしてくれないかと夫婦で申し出ている。
- 小代子(さよこ)
- 米沢の妻。「べんてん亭」の従業員。夫婦で弁当屋を経営するのが長年の夢で、その夢の実現のため「まりあん」の雇われママとして働いていた。
- 靖子が出勤する日にだけ「べんてん亭」に来店する石神が、彼女に惚れていると夫婦で噂している。
- 金子
- 「べんてん亭」の従業員で配達担当。
- 杉村園子
- 錦糸町のクラブ「まりあん」の雇われママ(小代子の後任)。40歳くらい。以前、赤坂で靖子と同じ店で働いていた友人。
- 靖子とよく電話で話をしており、11日の午前1時ごろに留守番電話に折り返して彼女の自宅の電話にかけ、30分くらい話をしている。
その他
[編集]- 缶男
- 河川敷で暮らす50歳前後に見えるホームレス。毎日大量の缶を潰していることから石神は心の中で「缶男」と呼んでいる。
- 付近のホームレスの中では古株で、この一帯のホームレス事情に詳しい。
- 技師
- 河川敷で暮らすホームレス。工業系の雑誌を読んでいることから石神は「技師」と名付けていた。
- 河川敷に来て日が浅く、髪は短く保たれ髭も剃られており再就職先を探している様子。
- 山辺曜子
- 篠崎に住む40代半ばの主婦。富樫の遺体発見現場のそばにあった富樫の指紋が検出された盗難自転車の持ち主。
- 先月購入したばかりの自転車を篠崎駅前に路上駐車しチェーンでロックしていたが、3月10日の午前11時から午後10時の間に盗難に遭う。
- 森岡
- 石神が数学の授業を受け持つ2年3組の生徒。通学にバイクをこっそり使い、何度も注意を受けている。
- 小柄だがクラスのボス的存在で、石神に「微分積分が一体何の役に立つのか」と質問する。
- 常盤(ときわ)
- 物理学科第十三研究室に所属する大学院生。やや神経質そうな顔で痩身。草薙から研究室に不在の湯川の行き先を何度か尋ねられている。
- 湯川が大学図書館に3月分の新聞が取り置かれているか電話で確認した上、調べ物をしていたと草薙に教える。
- ミカ、タマオカハルカ
- 森下南中学の美里のクラスメイト。石神の指示で美里は彼女たちに10日の昼に映画館に映画を見に行くと告げ、12日にその映画の話題を話している。
本作をめぐる「本格」論争
[編集]2005年末、『容疑者Xの献身』が「本格ミステリ」として評価され、同年の『本格ミステリ・ベスト10』にて1位を獲得したことに、推理作家の二階堂黎人が疑問を呈したことに始まる問題[注 1]。
二階堂の主張は、「『容疑者Xの献身』は、作者が推理の手がかりを意図的に伏せて書いており、本格推理小説としての条件を完全には満たしていない(そのため、『本格ミステリ・ベスト10』の1位にふさわしくない)」というものであった。このことに関して二階堂のウェブサイトや『ミステリマガジン』誌上などに多くの作家や評論家が意見を寄せた。
最終的には北村薫や鯨統一郎などの多くが「『容疑者Xの献身』は本格である」という立場につき、2006年5月に同作品が第6回本格ミステリ大賞を受賞したこともあり、現在では二階堂の意見は否定された形で議論が収束している[7]。
作者の東野圭吾本人は、一貫して「本格であるか否かは、読者一人一人が判断することである」というスタンスを取っている[注 2]。
受賞・候補歴
[編集]書誌情報
[編集]- 単行本:2005年8月30日[11]、文藝春秋 ISBN 4-16-323860-3
- 文庫本:2008年8月10日[12]、文春文庫 ISBN 4-16-711012-1
- 初出:『オール讀物』2003年6月号 - 2004年6月号、2004年8月号 - 2005年1月号
- 連載時のタイトルは『容疑者X』[13]。単行本化の際に改題された。
映画
[編集]映画(日本版)
[編集]| 容疑者Xの献身 | |
|---|---|
| 監督 | 西谷弘 |
| 脚本 | 福田靖 |
| 製作 | 亀山千広 |
| 出演者 |
福山雅治 柴咲コウ 北村一輝 渡辺いっけい 品川祐 真矢みき 松雪泰子 堤真一 |
| 音楽 |
福山雅治 菅野祐悟 |
| 主題歌 | KOH+「最愛」 |
| 撮影 | 山本英夫 |
| 編集 | 山本正明 |
| 配給 | 東宝 |
| 公開 |
|
| 上映時間 | 128分 |
| 製作国 |
|
| 言語 | 日本語 |
| 興行収入 | 49.2億円 |
| 次作 | 真夏の方程式 |
ガリレオシリーズの短編『探偵ガリレオ』『予知夢』を原作としたテレビドラマ『ガリレオ』の劇場版として本作を同ドラマのキャスト・スタッフにより映画化。2008年10月4日に公開された[14]。
月9枠のドラマの映画化は『西遊記』『HERO』に続き3作目となる。2008年初旬に撮入し、映画公開初日には、フジテレビ系で『ガリレオΦ』が放送された。
福山雅治にとって『ほんの5g』以来20年ぶりの本格的な映画出演になり、初の主演映画である。また、本作の上映に先駆けて、10月1日に福山の出身地である長崎市に開館した映画館「TOHOシネマズ長崎」のこけら落としとして本作が先行上映され、柴咲とともに舞台挨拶を行った[15]。
なお、翌2009年に死去した伊藤隆大の遺作である。
基本的なストーリーは原作に沿ったものとなっているが、所々で独自要素が組み込まれている[注 4]。また、ドラマの劇場版という位置づけながらもドラマからのオリジナルキャラクターの出番が少なく、石神と花岡が話の軸となっている。湯川が数式を書いて推理を整理するシーンがないといったドラマのパターンを踏襲しない展開を見せている。また原作との相違点として湯川と石神が雪山に登るというものがあり、足を滑らせた湯川が窮地に陥るという演出がされている。
公開直前の2008年9月28日にTOKYO FM他JFN加盟局全38局で放送された『福山雅治のTalking F.M.』に制作のフジテレビおよびFNS27局の女性アナウンサー28人が、本作品のプロモーションとして女子アナならぬ助手アナとして出演した。
キャスト(日本版)
[編集]スタッフ(日本版)
[編集]- 監督:西谷弘
- 脚本:福田靖
- 音楽:福山雅治、菅野祐悟
- 主題歌:KOH+「最愛」(作詞・作曲:福山雅治/編曲:福山雅治、井上鑑) (NAYUTAWAVE RECORDS)
- 劇中歌:福山雅治「99」(作曲:福山雅治/編曲:福山雅治、井上鑑) (UNIVERSAL J)
- 製作:亀山千広
- 企画:大多亮
- エグゼクティブプロデューサー:清水賢治、畠中達郎、細野義朗
- プロデュース:鈴木吉弘、臼井裕詞
- プロデューサー:牧野正、和田倉和利
- プロデューサー補:大西洋志、菊地裕幸
- 撮影:山本英夫
- 照明:小野晃
- 美術:部谷京子
- 整音:瀬川徹夫
- 録音:藤丸和徳
- 音響効果:大河原将
- 編集:山本正明
- 監督補:池上純哉
- 助監督:村上秀晃
- 製作委員会:フジテレビジョン、アミューズ、SDP、FNS27社
- 制作プロダクション:シネバザール
- 映像制作:東宝映像美術
- 配給:東宝
受賞(日本版)
[編集]Blu-ray・DVD(日本版)
[編集]- 【Blu-ray】容疑者Xの献身 ブルーレイディスク、発売日:2009年3月18日
- 【DVD】容疑者Xの献身 スペシャル・エディション、発売日:2009年3月18日
- 【DVD】容疑者Xの献身 スタンダード・エディション、発売日:2009年3月18日
テレビ放映(日本版)
[編集]| 回数 | 放送日 | 放送時間 | 放送局 | 平均世帯 視聴率 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2009年12月29日 | 21:00 - 23:38 | フジテレビ | 17.3% | [初](28分拡大) |
| 2 | 2011年1月8日 | 21:00 - 23:30 | 20分拡大 | ||
| 3 | 2011年12月27日 | 21:00 - 23:23 | 13分拡大 | ||
| 4 | 2013年7月6日 | 21:00 - 23:25 | 15分拡大 | ||
| 5 | 2013年8月11日 | 19:00 - 21:55 | BSフジ | ||
| 6 | 2014年6月14日 | 21:00 - 23:20 | フジテレビ | 10分拡大 | |
| 7 | 2016年3月19日 | 7.7% | |||
| 8 | 2017年4月9日 | 21:00 - 23:25 | BSフジ | 30分拡大 | |
| 9 | 2017年7月1日 | 15:00 - 17:25 | |||
| 10 | 2022年9月24日 | 21:00 - 23:25 | フジテレビ | 8.8% | 『沈黙のパレード』公開記念 |
| 11 | 2024年3月23日 | 6.7% | 15分拡大 | ||
| 12 | 2025年9月13日 | 21:00 - 23:40 | 5.4% | 『ブラック・ショーマン』公開記念、30分拡大 |
- 地上波放送・関東地区のみ記載。
- 視聴率はビデオリサーチ調べ。関東地区でのデータ。
映画(韓国版)
[編集]| 容疑者X 天才数学者のアリバイ | |
|---|---|
| 朝: 용의자X | |
| 監督 | パン・ウンジン |
| 脚本 |
イ・ゴンジュ イ・ジョンファ キム・テユン |
| 製作 | ケイエンエンターテイメント |
| 出演者 |
リュ・スンボム イ・ヨウォン チョ・ジヌン キム・ユンソン グァク・ミンホ |
| 音楽 | シン・イギョン |
| 撮影 | チェ・チャンミン |
| 編集 |
ユ・ソンヨプ ベ・クンジャ |
| 配給 | CJエンターテイメント |
| 公開 |
|
| 上映時間 | 119分 |
| 製作国 |
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| 言語 | 韓国語 |
| 興行収入 | US$10,187,540(換算値) |
2012年に公開された韓国のミステリー映画である。
あらすじ(韓国版)
[編集]11月9日、ソウルの大河・漢江(ハンガン)で、顔面が歯型も取れないほど損壊され、指紋も消された男の惨殺体が発見される。遺留品である宿泊施設の鍵から、被害者は大田在住の前科者キム・チョルミンと特定される。捜査にあたるミンボム刑事は、キムの別れた妻ファソンが暮らすソウルのアパートを訪ねる。ファソンは、姪ユナと犯行推定時刻に映画を観に行っていたと証言し、隣室の住人が高校時代の同級生キム・ソッコであることが判明する。ソッコは数学の天才として将来を嘱望されながら、難問「ゴールドバッハの予想」に執着するあまり孤立し、無名の高校数学教師となっていた。
ミンボム刑事は、亡き姉夫婦の娘ユナを育てつつ弁当屋で働くファソンに疑いの目を向けるが、9日の完璧なアリバイと嘘発見器の結果により疑惑は晴れる。だが実際には、アパートに押しかけ暴力をふるったキムを、ファソンとユナが衝動的に殺していた。その事実を知ったソッコは、自首しようとするファソンを引き止め、事件の隠蔽に協力していた。ソッコの指示で捜査をかわすファソンと、彼の好意を純粋に受け取るユナ。しかし、ファソンが大田(テジョン)で世話になり互いに想いを寄せる男前のナム社長と親しくする姿を見たソッコは、激しい嫉妬から次第にストーカーと化していく。
ソッコがファソンに好意を抱いていることに気づいたミンボム刑事は、彼が事件前後に授業を午前中だけ休んでいた事実を掴む。そして被害者がキム本人ではない可能性に辿り着き、ソッコの通勤路で野宿するホームレスが身代わりにされたのではないかと推理する。一方、ソッコがナム社長を脅していたことを知ったファソンは激怒して彼の部屋に押しかけ、「どうせ体が目当てだろう」と服を脱ぎ泣き叫ぶが、ソッコは静かに彼女を送り返す。自分の存在がファソンを追い詰めたと悟ったソッコは、わざとナム社長を襲って逮捕され、異常なストーカーを装いながら「キムが元妻に会う前に捕えて殺した」と虚偽の自白をする。
ミンボム刑事は、ソッコから託された手紙をファソンに届け、キムが殺されたのは9日ではなく前日の8日で、9日に殺されたのは無実のホームレスだったと推理を語る。ソッコはキムの遺体を、得意のフリーダイビングで深い湖底に隠していた。ソッコからの手紙には、半年前、解けぬ難問に絶望して自殺を図ったソッコが、引っ越しの挨拶に来たファソンとナムのチャイムに救われて以来、隣室の明るいファソンたちを生きる糧としてきたことが綴られていた。無償の愛に気づいたファソンは護送車にすがって謝罪する。ソッコは走り去る車内で泣き崩れながらも、静かな満足の表情を浮かべるのだった。
キャスト(韓国版)
[編集]映画(中国版)
[編集]2017年に公開の中国のミステリー映画である。日本未公開。
キャスト(中国版)
[編集]映画(インド版)
[編集]| 容疑者X | |
|---|---|
|
Jaane Jaan Suspect X | |
| 監督 | スジョイ・ゴーシュ |
| 脚本 | スジョイ・ゴーシュ |
| 製作 |
Balaji Motion Pictures 12th Street Entertainment Kross Pictures Boundscript Northern Lights Films |
| 出演者 |
カリーナ・カプール ジャイディープ・アロワット ビジャイ・バルマ サウラブ・サチデバ カルマ・タカパ ナイシャ・カンナ リン・ライスラム |
| 音楽 | Shor Police |
| 配給 | Netflix |
| 公開 | 2023年9月21日 |
| 上映時間 | 139分 |
| 製作国 |
|
| 言語 | ヒンディー語 |
2023年に配信のインドのミステリー映画である。
キャスト(インド版)
[編集]- Maya D'Souza:カリーナ・カプール
- Naru' Naren Vyas:ジャイディープ・アロワット
- Karan Anand:ビジャイ・バルマ
- Ajit Mhatre:サウラブ・サチデバ
- Sundar Singh:カルマ・タカパ
- Tara D'Souza:ナイシャ・カンナ
- Prema Kami:リン・ライスラム
舞台
[編集]演劇集団キャラメルボックス 版
[編集]2009年に演劇集団キャラメルボックスによって舞台化された。脚本・演出を成井豊が手がけた。4月18日から4月26日に新神戸オリエンタル劇場で、4月30日から5月24日にサンシャイン劇場で上演された。翌2010年には、成井豊脚本のままで上海の現地製作会社が『嫌疑人X的献身』のタイトルで2週間上演した。
2012年には同劇団で再演された。5月12日から6月3日にサンシャイン劇場(東京・池袋公演)で、6月7日から6月12日にシアター・ドラマシティ(大阪公演)で、6月15日・16日にシアター1010(東京・北千住公演)で上演された。脚本は初演に引き続き成井豊が担当し、演出は成井豊と真柴あずきが手がけている[19]。
出演(2009年・2012年)
[編集]- 湯川学:岡田達也(2009年版・2012年版)
- 石神哲哉:西川浩幸(2009年版)・近江谷太朗[注 5](2012年版)
- 草薙俊平:斎藤歩(2009年版)・小林正寛(2012年版)
- 間宮刑事:川原和久(2009年版・2012年版)
- 花岡靖子:西牟田恵(2009年版・2012年版)
- 米沢小代子:大森美紀子(2009年版)・坂口理恵(2012年版)
- 金子芹香/山辺曜子:前田綾(2009年版・2012年版)
- 工藤邦明:三浦剛(2009年版・2012年版)
- 岸谷由紀夫:筒井俊作(2009年版・2012年版)
- 花岡美里:実川貴美子(2009年版・2012年版)
- 富樫慎二/学生:石原善暢(2009年版・2012年版)
- ホームレス:小林春世、市川草太、鈴木秀明(2012年版)
劇団変形日和 版
[編集]2015年に劇団変形日和によって舞台化された。脚本は演劇集団キャラメルボックス版と同様に成井豊のものを使用した。演出は劇団変形日和の鈴木勝明と、演出補佐として北山和泉が担当。9月9日から9月14日に阿佐ヶ谷シアターシャインで上演された[20]。
出演(2015年)
[編集]- 鈴木勝明(劇団変形日和)
- 大山大仙(朝寝る起きる)
- 山室拓
- 石田泰弘(チームアルカディア)
- 海本博章
- 藤哲平
- 中神健
- 齋藤久恵
- 蒼井こころ
- 西澤香夏
- 北山和泉
公演日程(舞台2015年)
[編集]| 劇団変形日和 第三回公演『容疑者Xの献身』 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 公演日 | 昼の部 | 夜の部 | 開催都市 | 劇場 | ||
| 2015年9月9日 | 14:00 | 19:00 | 東京 | シアターシャイン | ||
| 9月11日 | 14:00 | - | ||||
| 9月12日 | - | 19:00 | ||||
| 9月13日 | 13:00 | - | ||||
| 9月14日 | - | 17:00 | ||||
演劇集団 笹塚放課後クラブ 版
[編集]2016年に演劇集団 笹塚放課後クラブによって舞台化された。脚本・演出を亜南博士が手がけた。9月29日から10月2日にザ・ポケットで上演された[21]。
出演(2016年)
[編集]一部ダブルキャスト。
公演日程(舞台2016年)
[編集]| 演劇集団 笹塚放課後クラブ 第5回公演『容疑者Xの献身』 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 公演日 | 昼の部 | 夜の部 | 開催都市 | 劇場 | ||
| 2016年9月28日 | - | 19:00(A) | 東京 | ザ・ポケット | ||
| 9月29日 | 14:00(B) | 19:00(A) | ||||
| 9月30日 | 14:00(A) | 19:00(B) | ||||
| 10月1日 | 14:00(B) | 19:00(A) | ||||
| 10月2日 | 14:00(A) | - | ||||
NAPPOS UNITEDプロデュース 版
[編集]2021年にNAPPOS UNITEDの主催によって舞台化された。脚本・演出とも演劇集団キャラメルボックス版と同様に9年ぶりに成井豊が手がける。当初は2020年5月・6月に公演が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で延期になり[22]、5月28日から5月30日にシアター1010で、7月10日から7月11日に兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで上演された。
出演(2021年)
[編集]公演日程(舞台2021年)
[編集]| NAPPOS UNITEDプロデュース『容疑者Xの献身』 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 公演日 | 昼の部 | 夜の部 | 開催都市 | 劇場 | ||
| 2021年5月28日 | - | 19:00(A) | 東京 | シアター1010 | ||
| 5月29日 | 13:00(B) | 18:00(A) | ||||
| 5月30日 | 13:00(B) | - | ||||
| 7月10日 | - | 18:00(B) | 西宮 | 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール | ||
| 7月11日 | 13:00(A) | - | ||||
義庵 版
[編集]2026年にプロデュースユニット・義庵の主催により舞台化された。脚本・演出は堤泰之。4月3日から12日に新宿シアタートップスで上演された[23]。
出演(2026年)
[編集]- 加藤義宗
- 占部房子
- 夏目愛海
- 吉冨さくら
- 曽世海司(スタジオライフ)
- 犬飼淳治(扉座)
- 岩崎正寛(演劇集団円)
- 本間剛
- 重田千穂子
- 岡本篤(劇団チョコレートケーキ)
公演日程(舞台2026年)
[編集]| 義庵 6th ACT 東野圭吾『容疑者Xの献身』(文春文庫) | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 公演日 | 昼の部 | 夜の部 | 開催都市 | 劇場 | ||
| 2026年4月3日 | - | 19:00 | 東京 | 新宿シアタートップス | ||
| 4月4日 | 14:00 | - | ||||
| 4月5日 | 14:00 | - | ||||
| 4月6日 | 14:00 | - | ||||
| 4月7日 | 14:00 | - | ||||
| 4月8日 | 14:00 | - | ||||
| 4月9日 | 14:00 | - | ||||
| 4月10日 | - | 19:00 | ||||
| 4月11日 | 14:00 | - | ||||
| 4月12日 | 14:00 | - | ||||
学生劇団
[編集]学生劇団の公演も行われている。神戸大学演劇部自由劇場の第190回公演として2014年12月12から14日に神戸アートビレッジセンターで上演された[24]。脚本は演劇集団キャラメルボックス版と同様に成井豊のものを使用している。
公演日程(舞台2014年)
[編集]| 神戸大学演劇部自由劇場 vol.190『容疑者Xの献身』 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 公演日 | 昼の部 | 夜の部 | 開催都市 | 劇場 | ||
| 2014年12月12日 | - | 18:00 | 神戸 | 神戸アートビレッジセンター | ||
| 12月13日 | 13:30 | 17:30 | ||||
| 12月14日 | 13:30 | 17:30 | ||||
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- 1 2 “2006年 第3回本屋大賞”. 本屋大賞実行委員会. 2025年8月13日閲覧。
- ↑ “容疑者Xの献身”. 2026年3月28日閲覧。
- ↑ “容疑者Xの献身”. 文藝春秋. 2026年3月28日閲覧。
- ↑ “東野圭吾40周年記念企画「104冊 1億部 全国民投票」第1位は『容疑者Xの献身』!”. ほんのひきだし. 日本出版販売 (2025年10月21日). 2025年11月1日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 『東野圭吾公式ガイド 作家生活40周年ver.』講談社、153 - 155頁。
- ↑ 二階堂黎人 (2005年12月6日). “不定期日記(過去ログ)2005年07月〜12月”. nikaidou.a.la9.jp. 2022年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月1日閲覧。
- ↑ “2006年度 第6回「本格ミステリ大賞」全選評”. honkaku.com. 2008年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月25日閲覧。
- ↑ “第六回本格ミステリ大賞贈呈式”. honkaku.com. 2014年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月24日閲覧。
- 1 2 “会員名簿 東野圭吾”. 日本推理作家協会. 2025年2月14日閲覧。
- ↑ “東野圭吾さん「容疑者x…」は受賞逃す 米エドガー賞”. スポニチ Sponichi Annex (2012年4月27日). 2014年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月24日閲覧。
- ↑ “『容疑者Xの献身』東野圭吾|単行本”. 文藝春秋BOOKS. 文藝春秋. 2025年8月11日閲覧。
- ↑ “『容疑者Xの献身』東野圭吾|文春文庫”. 文藝春秋BOOKS. 文藝春秋. 2025年8月11日閲覧。
- ↑ “オール讀物 2003年11月号”. 文藝春秋. 2022年9月8日閲覧。
- ↑ “容疑者Xの献身:作品情報・キャスト・あらすじ”. 映画.com. 2025年8月4日閲覧。
- ↑ “TOHOシネマズ長崎にて先行ロードショー決定!!”. allnightnippon オールナイトニッポンサタデースペシャル 福山雅治の魂のラジオ. ニッポン放送 (2008年9月7日). 2022年9月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月7日閲覧。
- ↑ “第32回日本アカデミー賞 優秀賞”. 日本アカデミー賞公式サイト. 日本アカデミー賞協会 (2009年2月20日). 2025年6月5日閲覧。
- ↑ “アニメ映画『ONE PIECE FILM RED』が『第46回日本アカデミー賞 話題賞』の作品部門を受賞! 声優・田中真弓さん&名塚佳織さんのコメントも公開”. アニメイトタイムズ. アニメイト (2023年3月11日). 2025年4月17日閲覧。
- ↑ “容疑者X 天才数学者のアリバイ:作品情報・キャスト・あらすじ・動画”. 映画.com. 2025年8月13日閲覧。
- ↑ “キャラメルボックスの12年ラインアップが発表に 『トリツカレ男』『容疑者Xの献身』の再演、有川浩原作の新作などを上演 - 2011年8月 - 演劇ニュース”. 演劇ポータルサイト/シアターガイド (2011年8月10日). 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年3月4日閲覧。
- ↑ “劇団変形日和”. 劇団変形日和. 2015年6月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月9日閲覧。
- ↑ “演劇集団 笹塚放課後クラブ「容疑者Xの献身」”. 演劇集団 笹塚放課後クラブ. 2016年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月9日閲覧。
- ↑ “成井豊の舞台版「容疑者Xの献身」出演に筒井俊作・多田直人・渡邊安理ら”. ステージナタリー (ナターシャ). (2021年4月2日) 2021年5月9日閲覧。
- ↑ “東野圭吾「容疑者Xの献身」堤泰之の脚本・演出で義庵が舞台化、4月に新宿シアタートップスで”. ステージナタリー (ナターシャ). (2026年2月16日) 2026年3月28日閲覧。
- ↑ “神戸大学 自由劇場”. 神戸大学 自由劇場. 2015年2月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月9日閲覧。
外部リンク
[編集]- 小説
- 舞台
-
- 演劇集団キャラメルボックス公式サイト - ウェイバックマシン(2017年5月19日アーカイブ分)
- 映画