虚像の道化師 ガリレオ7

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
ガリレオシリーズ > 虚像の道化師 ガリレオ7
虚像の道化師 ガリレオ7
著者 東野圭吾
発行日 2012年8月10日
発行元 文藝春秋
ジャンル ミステリ推理小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判並製カバー装
ページ数 280
前作 真夏の方程式
次作 禁断の魔術 ガリレオ8
公式サイト 虚像の道化師 ガリレオ7 文藝春秋
コード ISBN 9784163815701
ISBN 9784167903114文庫判
Portal.svg ウィキポータル 文学
[ Wikidata-logo-en.svg ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

虚像の道化師 ガリレオ7』(きょぞうのどうけし ガリレオセブン)は、2012年8月10日文藝春秋から刊行された東野圭吾の連作推理小説ガリレオシリーズ第7弾、短編集としては4作目となる。

2013年テレビドラマ『ガリレオ』第2シリーズで、映像化された。

2015年3月10日に、単行本『禁断の魔術 ガリレオ8』の「透視す」「曲球る」「念波る」の3作も合わせて7作品収録再編集し、文春文庫版オリジナルとして文藝春秋から発刊された[1][2]

概要[編集]

ネタの枯渇から著者は『ガリレオの苦悩』でシリーズの短編は終わりと考えていたが、「相手に触れずに転落死させる方法」のアイデアが浮かび上がり、そのトリックを描きたいという想いから収録作となる短編「幻惑す」を執筆し、以降の短編は単行本化のため苦心して浮かんだアイデアを実現させたという背景があり、次作『禁断の魔術 ガリレオ8』の構想が出るまでシリーズ短編のラストとしてふさわしいと考えていたという。また執筆中に湯川と草薙が探偵役としての役割を持った初登場時から16年で人間として育ったことを実感し、アイデアさえ固まれば2人が勝手に動いてくれるため執筆に殆ど苦労しなかったと語っている[3][4]。内容は前作まで5編収録されていた短編集とは異なり収録作は4編となっている他、一時内海が引き継いでいた湯川に協力を仰ぐ立場を草薙が再び担う場面も見られた。

2012年8月23日に発表された8月27日付のオリコン“本”ランキングBOOK(総合)部門で、4万5000部の売上により首位となった。著者作の首位獲得は『ナミヤ雑貨店の奇蹟』以来5ヶ月ぶり、ガリレオシリーズでは『聖女の救済』以来3年9ヶ月ぶりとなる[5]

各章あらすじ[編集]

第一章・幻惑す(まどわす)[編集]

週刊誌の取材を受けていた宗教法人「クアイの会」の本部のビルで、第五部長の役職の男が五階の窓から転落死した。一見すると教祖の連崎至光に資金の横領を問い詰められた第五部長が自ら飛び降りたように見えた事件だったが、連崎はそれは自分が念を送ったことが原因だと主張し、警察に出頭してきた。草薙は連崎の対応に困った所轄の依頼で事件を担当するが、週刊誌が「クアイの会」とグルになっていた可能性は無く、草薙から話を聞いた湯川も「物理学とは関係なさそうだ」と取り合わず、事件は自殺として片づけられる運びとなる。その後、草薙が次第に釈然としない思いを抱える一方で、「クアイの会」は週刊誌の記事で高い注目を浴びていった。だが、その影響力が自分達の周りに波風が立ち、その状況を見過ごせなくなった湯川と草薙は再び事件に着手、湯川は連崎と対峙することで念の全容の解明に乗り出していく。

連崎 至光
宗教法人「クアイの会」の教祖。「クアイの会」は5年前に発足、その前は気功の研究の末に整体師から気功師に転身し、外気功診療を行い全国の評判を集めていた。本名は石本一雄だが、本人曰くその名は捨てたとのこと(“連崎至光”は聖人から授かった名前だという)。魂の浄化を目的に念を送り、本部で実行する際は「浄めの間」と呼ばれる部屋で窓を開けて行っている。
里山 奈美
「クアイの会」を取材した「週刊トライ」の女性記者。ボーイッシュな容貌で推定30歳前後。最初は「クアイの会」のインチキを暴く魂胆でカメラマンの田中を伴い取材をしていたが、連崎が念を送って中上が飛び降りる場面を目撃してからは連崎の力を本気で信じ、傾倒するようになる。
藤岡
草薙と共に「クアイの会」の事件を担当する所轄の刑事。人の良さそうな小男。「クアイの会」での事件が自殺と結論付けられる中、「クアイの会」信者からの密告で事件に疑念を抱き、草薙に相談する。
中上 正和
「クアイの会」の第五部長兼経理担当。会の資産の使い込みを疑われていた。
佐代子
連崎の妻。整った顔立ちながら、おとなしく地味な印象を与える女性。「クアイの会」信者だが、会の決まりにより、家族だということで幹部ではない。
真島 武雄
「クアイの会」第一部長で連崎の一番弟子。
守屋 肇
「クアイの会」第二部長。

第二章・心聴る(きこえる)[編集]

OLの脇坂睦美はこの所、自分にしか聞こえない羽虫が飛び回るような音に悩まされていた。そんな中、睦美の上司の部長・早見達郎が自宅のマンションのベランダから飛び降りて死亡する事件が発生、飛び降りる前の早見の行動に不審な点が多いことから草薙と内海が睦美を含む関係者の事情聴取を行うが、殺人と決定付ける根拠は無いまま捜査は終了する。それからしばらく経った頃、風邪の前兆が顕れた草薙は通った病院で発狂して暴れ回る男と遭遇、すぐさま取り押さえたが、その際にナイフで刺され入院してしまう。警察学校時代の同期である所轄刑事の北原から、草薙を刺した男・加山幸宏が幻聴に悩まされ精神を蝕まれていたこと、加山が勤務する会社が早見と同じ会社で同じ部署に務めていることを聞いた草薙は早見の事件で見つけた“霊”“声”のキーワードから、2つの事件の関連に疑いを持つ。

内海は北原と共に湯川の元を訪れ、早見と加山が意図的に幻聴を聞かされていたのではという草薙の推論の検証を依頼する。草薙の推論に聞く耳を持たない北原を焚き付け、加山を自分と話をさせた湯川は、「加山が幻聴を聞いた際に側にいた人物、そして今も幻聴に悩まされている人物」の特定を指示、内海と北原は睦美の所に行き着いた。

北原 信二
加山の事件を担当する所轄の刑事。草薙とは警察学校時代の同期で捜査一課を目指していたライバル同士だが、先に捜査一課に抜擢された草薙を密かに僻んでいる。固定観念が強く、幾度も事件解決に貢献した湯川に対しても一般人だということで邪険にする。
脇坂 睦美
事務機器メーカー「ペンマックス」の営業部所属のOL。早見の不倫相手が所属する広告部にいる友人から早見の不倫の事を聞いており、その話を同僚達に話していたため事情通と目されて草薙達の聞き込みを受けることになった。
早見 達郎
「ペンマックス」営業部部長で睦美の上司。広告部の女性と不倫関係にあったが、その女性は早見に離婚の意志が無かったことが理由なのか3ヵ月前に自殺している。
長倉 一恵
睦美の同僚のOL。睦美が幻聴が聞こえていた様子を知っている。
加山 幸宏
32歳、「ペンマックス」営業部社員。営業の成績は優秀で、大きなプロジェクトのリーダーにも抜擢されていた。
村木
「ペンマックス」営業部課長。役員達を交えた会議の最中に、加山が様子がおかしくなる場面を目撃し、そのことを北原に証言する。
小中 行秀
「ペンマックス」営業部社員。加山と同期入社。

第三章・偽装う(よそおう)[編集]

山中のリゾートホテルで開かれる大学のバドミントン部時代の友人の結婚式に出席した湯川と草薙。そんな中、ホテルに向かう途中、車のタイヤがパンクし、雨が降る中でタイヤを交換する湯川と草薙に傘を貸してくれた桂木多英の両親が、ホテルの上にある別荘で惨殺された状態で発見された。多英の父・武久は散弾銃で殺害され、ロッキングチェアに座っており、母・亜紀子は扼殺されて横たわっていた。雨による土砂崩れでホテルに繋がる一本道が封鎖されたため、急遽草薙は事件の初動捜査を引き受けることになる。作詞家の武久が、自身の書いた歌詞を盗作したと疑う弟子の鳥飼修二と別荘で話をつけようとしていたことが判明し、鳥飼が容疑者として疑われる中、草薙が撮った現場写真を見た湯川は現場の状況に違和感を抱く。そして多英に注目し、彼女に不躾な質問をした湯川は、現場に施された偽装工作を暴いていく。

桂木 多英
湯川と草薙に傘を貸してくれた女性。赤のアウディ・A1に乗り、なかなかの美人。武久と鳥飼の仲裁役として、話が行われる別荘を訪れ、両親の遺体を発見する。
桂木 武久
多英の父親。「竹脇 桂」のペンネームで主に演歌を手掛ける作詞家で、ヒット作を生み出し紅白歌合戦で歌われた曲もあるほど。だが現在は、鳥飼の活躍に支えられて作詞の仕事をしている状態にある。
桂木 亜紀子
多英の母親。彼女も武久と鳥飼の話し合いに加わる予定だった。
鳥飼 修二
武久の弟子で音楽プロデューサー。西麻布在住。武久に自身が手掛けた曲の一部の詞を盗作だと指摘されていたが、武久にも見てもらったオリジナルの詞であると主張している。
谷内 祐介
湯川と草薙の大学バドミントン部の同期で、自身の結婚式が開かれた地元の町長。大卒後、地元の県庁の地元振興の仕事に就いた後、2年前に辞職して立候補して町長になった。なお、父親も元市長。妻は13歳も年下。
熊倉
谷内が町長を務める地元の警察署長。有権者としての繋がりから谷内とも面識がある。交通畑を渡り刑事事件の経験は無いに等しいため、谷内を介して草薙に捜査協力を頼む。

第四章・演技る(えんじる)[編集]

劇団「青狐」主宰の駒井良介が自宅の一軒家で刺殺された事件が発生。駒井を刺した同劇団の女優・神原敦子は駒井の携帯電話をアリバイ工作に利用、打ち合わせの途中に駒井からの着信を受けて駒井の元に向かって遺体の第一発見者となり、さらに携帯で撮影された花火の写真の時刻により、あたかも駒井が電話を掛けた時点で殺害されたように見せかけ容疑を逸らしていく。やがて凶器が劇団内で使われたナイフだと判明したことから、内部犯に見せかけた犯行という見方が強まる中、草薙と内海は敦子がアリバイトリックを用いたことに感付き、核心に迫っていく。そんな中、偶然劇団のと関係があった湯川は敦子から警察の捜査状況を聞き出せないかと相談を受ける。草薙から事件の全容を聞かされた湯川は劇団のナイフが使用された理由に注目し、さらに現場を見て、敦子の本当の狙いを明らかにしていく。

神原 敦子
小劇団「青狐」の女優兼脚本家。以前は駒井と交際していたが、駒井の心変わりを理由に破局している。女優として演じることに高いプロ意識を秘める。物理学者が主役の舞台を作る時の取材が縁で湯川と知り合い、湯川は「青狐」のファンクラブの特別会員となっている。
駒井 良介
小劇団「青狐」の主宰・演出家。劇団以外にもドラマの脚本家としても有名。倉庫を居住用に改築した自宅に住んでいる。敦子との破局後も彼女を尊敬できる仲間として接していた。
工藤 聡美
小劇団「青狐」の女優。半年前より駒井との交際を始めていた。
安部 由美子
小劇団「青狐」の女優兼脚本家。敦子のアリバイ工作に利用され、敦子と共に駒井の遺体の第一発見者となる。
吉村 理沙
小劇団「青狐」の女優。夜は銀座のクラブでバイトをしている。草薙に敦子と駒井の破局後の様子を証言する。

脚注・出典[編集]

  1. ^ 千街晶之 (2015年3月24日). “ガリレオ最新刊は2冊分のボリューム シリーズの変遷が垣間見える短篇集”. 新刊を読む. 文藝春秋. 2015年6月13日閲覧。
  2. ^ 東野圭吾 (2015年6月10日). “短編小説を長編に大改稿 ついに誕生した最高の「ガリレオ」”. 自著を語る. 文藝春秋. 2015年6月13日閲覧。
  3. ^ 東野圭吾. “『虚像の道化師』のこと 1頁”. 著者からのメッセージ. 文藝春秋. 2015年6月13日閲覧。
  4. ^ 東野圭吾. “『虚像の道化師』のこと 5頁”. 著者からのメッセージ. 文藝春秋. 2015年6月13日閲覧。
  5. ^ 【オリコン】東野圭吾「ガリレオ」シリーズ第7弾、登場2週目で首位獲得 - オリコン 2012年8月23日

外部リンク[編集]