中華人民共和国の鉄道
中華人民共和国の鉄道(ちゅうかじんみんきょうわこくのてつどう)では中華人民共和国における鉄道について記す。中国の都市間を結んでいる鉄道は、大部分が中国国鉄によって運営されている。この他に市営の地下鉄や新交通システムなどの都市内交通機関や、産業目的の鉄道などが存在している。
国鉄
中華人民共和国では、長距離輸送・移動において最も多く用いられるのが鉄道である。都市内以外のほとんどの路線が中国鉄路総公司によって運営されており、事実上の国鉄である。長らく国務院の鉄道部によって運営されてきたが、2013年3月14日、全国人民代表大会での承認を経て設立された中国鉄路総公司に移管された。
2010年末には、中国の鉄道総延長は91,000kmに達し[1]、規模ではアメリカに次ぎ、世界第2位だといわれている。鉄道網は八縦八横とも呼ばれる幹線をはじめとして、国内縦横に張り巡らされており、現在ではマカオを除く、すべての省や特別行政区に広がっている。2009年の時点で、国鉄は貨車603,082両、客車49,355両、機関車18,922両を保有している[2]。また、1日当たり38,000本の列車が運転されていて、その内の3,500本は旅客列車である[2]。
2008年10月に発表された、中長期鉄道網計画による、政府の2020年までの鉄道投資は総額2兆元になるといわれている[3]。この計画は、2006 - 2010年に総額1.25兆元を投資するという第11次五か年計画をさらに発展させたものであった。鉄道建設への投資の増加によって、中国の鉄道網は2007年末には78,000kmであったが、2010年末には91,000kmへと拡張された。さらに、2012年末までには110,000kmになると予想されている。鉄道の重要性が増している一つの原因として、貨物輸送需要の増加が考えられていて、国鉄は需要に合致した輸送力を確保する必要に迫られている[4]。
歴史
中国の鉄道(中国鉄路)は、清朝時代の1876年(光緒2年)にイギリスによって敷設された呉淞鉄道(上海 - 呉淞間14.5km)が始まりであるが、これは無許可で作ったものなので数年で撤去された。本格的なものは1881年(光緒7年)に李鴻章の命によって敷設され、ラバが引く車両を用いた唐胥鉄道(河北省・唐山 - 胥各庄間9.2km)である。1882年(光緒8年)には蒸気機関車の使用も開始された。
以後、中国の鉄道の多くは日清戦争後更に進出・分割を強めた列強の手によって敷設された。1899年(光緒25年)に起こった義和団の乱では攻撃対象にされ、1911年(宣統3年)には民間資本で作られていた粤漢鉄道(広州 - 武昌)・川漢鉄道(漢口 - 成都)を国有化して列強の抵当に入れることに反対した四川省の資本家・民衆運動がきっかけで辛亥革命が起こるなど、時代に翻弄される格好となった。
また日露戦争の結果、満州南部地方(現東北地区の遼寧省)の鉄道利権はロシア資本の東清鉄道から日本資本の南満州鉄道(満鉄)に移っており、その利権を保護するために日本は1931年に満州事変を起こした。続く1937年 - 1945年の日中戦争では、日本軍が占領した華北地域の鉄道は満鉄系列の華北交通、華中地域の鉄道は日本と同盟関係にあった中華民国汪兆銘政権の国策会社華中鉄道によって運営された。
日中戦争後、国共内戦によって1949年に中華人民共和国が成立すると、鉄道は国の重要な産業とみなされるようになり、原則として国有鉄道の運営とされるようになった。そして国の成立当時総延長21,810kmに過ぎなかった鉄道は、国家指導下で急速に建設が進められ、文化大革命後の1978年には43,000km超に、1985年には52,000km超、そして2009年には86,000km超の路線を有するまでになり、インドの62,000kmを抜いてアジア最大、世界でもアメリカについで第2位の路線網を誇っている。現在も、各地で新線の建設が進められており、2006年10月に鉄道部が発表した計画では、第11次五か年計画後の2010年には、総延長を90,000km超にすることを目標にしている。
また、電化区間は中華人民共和国成立当時はゼロであり、複線区間も866kmであったが、2010年末現在ではそれぞれ42,000km超・37,000km超となり、電化区間距離についてもロシアに次ぎ世界第2位となっている。2010年末に電化率と複線化率はそれぞれ46%と41%になった。
2010年3月現在、都市間高速鉄道が北京 - 天津・武漢 - 広州・鄭州 - 西安などの区間に導入済みであり、最高速度350km/h・250km/hの路線はそれぞれ3,676km・2,876kmとなり、高速鉄道の総延長は世界一になった。
現状
中国の鉄道の特徴として、同じ路線に高効率で貨物輸送と旅客輸送と兼ねて行うことが挙げられる。
2009年現在、トンベースの年間貨物輸送量はアメリカを上回り、約33.3億トンで世界一である(ただし、トンキロベースでは2兆5239億トンキロ、わずかの差でアメリカに次世界第2位である)。
一方、旅客輸送は、2009年の年間輸送量は約15.2億人(都市間のみ、北京や上海などの大都市都市鉄道の輸送量を含まないので、日本の約6分の1程度)、7878億人キロ(日本の約3倍で世界一)である。このことは、長距離の利用客が非常に多いことを意味する。実際、旅客輸送は、長距離輸送が中心であり、2 - 3日をかけて走る列車も少なくない。直通を原則としたダイヤ構成で、一部のローカル線を除き、乗り継ぎでの利用は考慮されていない。
中国の鉄道で最も利用客が多くなるのは、毎年1 - 2月の春節(旧正月)の前後における帰省客輸送「春運」である。この時期には列車が全国で大増発されるなど、当局では延べ約2億人とも言われる利用客数を捌くために、40 - 45日程度の特別体制が組まれる。近年は都市部への出稼ぎが多くなったこともあって、輸送力は絶対的に不足しており、切符の購入は困難を極めるほか、切符が高額で取引されることもあった。そのため、現在は後述する「実名制」が取り入れられている。
2008年の春節輸送では、同時期に襲った大寒波の影響で、全国的に運休や立ち往生が続出するなど、ダイヤが大幅に乱れ、主要な駅には数十万人とも言われる利用客が数日間も滞留して、一部では不穏な状況になるなど、全国で大混乱に陥った。
欧米諸国や東南アジア、オーストラリア、日本、韓国などの大都市圏では、都市近郊鉄道が発達しているが、中国では、地下鉄や路面電車、モノレール、トロリーバスが存在する都市はあるものの、その数は、中国の大都市の数に対して非常に少ない。日本の国電や、ドイツのSバーンのような、都市近郊電車網は、中国では皆無であった。しかし、近年は上海や北京などで全区間高架または地上を走る軽軌と呼ばれる都市近郊鉄道も開通しており、蘇州などでも建設が始まっている。
運行概要
列車種別
中国の列車種別は下記の通りである。(停車駅が少なく、速度の速い順) 【列車番号の頭文字のアルファベットは中国語の列車種別のピンインの頭文字から取っている】
- 高速動車組列車(頭文字G【gao-su-dong-che】)- 最高時速300km以上のCRH型電車
- 城際動車組列車(都市間高速動車組列車、頭文字C【cheng-ji】)- 最高時速300km以上のCRH型電車
- 動車組列車(頭文字D【dong-che-zu】)- 最高時速200 - 250kmのCRH型電車
- 長距離 D1 - D4000;短距離 D4501 - D7300
- 直達特快列車(頭文字Z【zhi-da】)- 2004年4月18日に新設された。設定当初は大都市と大都市を夕方から夜に発車して翌朝から昼までに到着する列車で、途中停車駅が無かった。しかし2014年12月10日のダイヤ改正で、長距離列車や香港から本土への直通列車(城際直通車)を含む多数の列車が特快列車から格上げされ、途中停車駅も設定された。なお、最高時速160kmの高速運転を実現している。
- 特快列車(頭文字T【te-kuai】)- 途中停車あり(停車駅が少なく主に省都)、日本の特急列車に相当する。
- 長距離特別快速 T1 - T5000番台;短距離特別快速 T5001 - T9998番台
- 長距離快速列車K1 - K2000番台,途中停車あり(停車駅が少なく主に地方都市);短距離快速列車途中停車あり(停車駅が少なく主に鉄道局中心駅付近の都市)
- 臨時旅遊列車(頭文字Y【liu-you】)- 観光列車
- 長距離観光列車 Y1 - Y498番台;短距離観光列車 Y501 - Y998番台
- 長距離(いわゆる「春節」の帰省客輸送)列車 L1 - L998番台;短距離臨時列車 L7001 - L7998番台
- (1000 - 1999番台)- 3つ以上の鉄路局を跨ぐ普快列車で、長距離列車である。;(2000 - 2999番台)- 2つの鉄路局を跨ぐ普快列車で、中距離列車である。;(4000 - 5999番台)- 1つの鉄道局管内のみを運行する普通快車。
括弧内は列車番号につくアルファベット、または列車番号
- 直達特快については直行便#中国鉄路におけるノンストップ列車に記述がある。
- 直達特快、特快、快速、管内では追加料金が必要であり、空調の有無でも追加料金が必要である。
長距離列車
4000km以上運行される定期列車を以下の表に示す。モスクワ行き列車と臨時列車を除いた最長距離列車は、広州 - ラサ間約4,980kmを54時間かけて走るZ264/265・Z266/263次列車である。なお、運行時間最長は長春~昆明間で運行されるK2288/2285・K2286/2287次列車で、その運行時間は68時間25分に及ぶ。
順位 | 列車番号・列車名 | 始発駅 | 終着駅 | 運営者 | 運行距離 | 所要時間 | 出典 |
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1 | Z264/265・Z266/263次列車 | 広州 | ラサ | 広州鉄路集団公司 | 4,980km | 54時間30分 (2泊3日) |
[5] |
2 | Z136/137・Z138/135次列車 | 広州 | ウルムチ南 | ウルムチ鉄路局 | 4,684km | 54時間13分 (2泊3日) |
[5] |
3 | Z112/113・Z114/111次列車 | ハルビン | 海口 | ハルビン鉄路局 | 4,458km | 65時間42分 (2泊3日) |
[5] |
4 | Z164/165・Z166/163次列車 | 上海 | ラサ | 上海鉄路局 | 4,373km | 49時間 (2泊3日) |
[5] |
5 | K2288/2285・K2286/2287次列車 | 長春 | 昆明 | 瀋陽鉄路局 | 4,161km | 68時間25分 (3泊4日) |
[5] |
6 | Z40/41・Z42/39次列車 | 上海 | ウルムチ南 | ウルムチ鉄路局 | 4,077km | 38時間51分 (2泊3日) |
[5] |
国際列車
国際列車も運行されており、その一覧を以下に示す。北京・上海・広州などから香港へ向かう列車は、返還後も今に至るまで起終点の駅での出入国審査が存在する。香港行きは「国際列車」ではなくなったが、国内列車とは異なる運行システムとなっており「越境列車」に相当する。
2014年12月10日より、北京西駅からベトナムのドンダン駅まで直通していたT8705/8706次列車が運休となった。(2015年10月)現在も北京西~ハノイ(ザーラム)間の切符は通しで販売されるが、北京からハノイに行く乗客は、南寧でZ5/6次列車からT8701/8702次列車に乗り換えなければならなくなった[6][7]。
国・地域 | 列車番号・列車名 | 始発駅 | 終着駅 | 運営者 | 運行距離 | 所要時間 | 出典 |
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香港 | 広九直通列車 | 香港 (九龍駅) |
広州東 肇慶 |
香港MTR 中国鉄路総公司広州鉄路集団公司 広深鉄路株式会社 |
173km (広州東行き) 290km (肇慶行き) |
1時間50分 (広州東行き) 3時間50分 (肇慶行き) |
[8] |
京九直通列車 | 北京西 | 香港 (九龍駅) |
中国鉄路総公司広州鉄路集団公司 | 2,475km | 24時間01分 (1泊2日 九龍行き) |
[9] | |
滬九直通列車 | 上海 | 香港 (九龍駅) |
中国鉄路総公司上海鉄路局 | 1,991km | 18時間41分 (1泊2日 九龍行き) |
[9] | |
ロシア | ボストーク号 | モスクワ (ヤロスラフスキー駅) |
北京 | ロシア鉄道 中国鉄路総公司北京鉄路局 |
8,984km (満洲里経由) |
145時間 (7泊8日 北京行き) |
[10] |
K3/4次列車 | 北京 | モスクワ (ヤロスラフスキー駅) |
中国鉄路総公司北京鉄路局 モンゴル鉄道 ロシア鉄道 |
7,826km (モンゴル縦貫鉄道経由) |
127時間 (6泊7日 北京行き) |
[10] | |
K7023/7024次列車 | ウラジオストク ハバロフスク |
ハルビン東 | ロシア鉄道 中国鉄路総公司ハルビン鉄路局 |
813km (ウラジオストク行き) 1355km (ハバロフスク行き) |
33時間03分 (2泊3日 ウラジオストク行き) 32時間03分 (2泊3日 ハバロフスク行き) |
[10] | |
モンゴル | K23/24次列車 | 北京 | ウランバートル | 中国鉄路総公司北京鉄路局 モンゴル鉄道 |
1,553km | 26時間58分 (1泊2日 ウランバートル行き) |
[11] |
4652/4653・4654/4651次列車 | フフホト | ウランバートル | 中国鉄路総公司フフホト鉄路局 モンゴル鉄道 |
1,210km | 36時間45分 (2泊3日 ウランバートル行き) |
[12] | |
カザフスタン | K9795/9796次列車 | ウルムチ南 | アルマトイ | 中国鉄路総公司ウルムチ鉄路局 カザフスタン鉄道 |
1,359km | 33時間42分 (2泊3日 アルマトイ行き) |
[13] |
K9797/9798次列車 | ウルムチ南 | アスタナ | 中国鉄路総公司ウルムチ鉄路局 カザフスタン鉄道 |
1,898km | 48時間22分 (2泊3日 アスタナ行き) |
[13] | |
北朝鮮 | K27/28次列車 | 北京 | 平壌 | 中国鉄路総公司北京鉄路局 朝鮮民主主義人民共和国鉄道省 |
1,364km | 23時間33分 (1泊2日 平壌行き) |
[12] |
ベトナム | T8701/8702次列車 | 南寧 | ハノイ (ザーラム駅) |
中国鉄路総公司南寧鉄路局 | 396km | 13時間45分 (1泊2日 ハノイ行き) |
[12] |
料金
切符購入
現在ではオンラインによる座席指定予約制度が導入されている。新システム導入により確実に切符が手に入るようになったかといえば、一方で旅客需要は依然として増加しているため、混雑期は長距離列車などでは切符の売り出し日(一般の列車は発車の4・5日前、直達は20日前)早々に売り切れになることも珍しくない。また中国に市場経済が導入されたとはいえ、鉄道はいまだ計画経済を前提とした国家の所有であるため、駅の切符の販売員(售票員)の販売意欲は日本と比較すると高いとはいえない。以前と比べれば少なくなったが、空席があったとしても「没有」(メイヨウ・座席無し)と窓口でいわれるような場面に、言葉が不自由な外国人相手の場合などで現在でも遭遇することがある。
かつては外国人は専用窓口でしか購入できなかったが、現在は中国人も外国人も同じ窓口である。中国語の会話ができなくても中国字体の筆談で日付・列車番号・区間を書けば入手可能であり、パスポートとメモを一緒に窓口に出すと最も手っ取り早く購入出来る。切符の購入は駅のみならず、街中にある售票処でもできるが、1枚あたり5元の手数料が必要。大きなホテルのフロントで発売できるところもあるが、手数料はもっと高いこともある。ただし、街中にある售票処は手数料がかかるため利用客が少なく、かつ民間委託のため売れば売るほど手数料収入が増えることもあり、外国人にも比較的親切で利用がたやすい。最近では、一部の駅で自動券売機も導入されている。ただ、自動販売機は切符の売り出し日直後の切符は購入できず、かつ自動販売機の操作を敬遠する人も多いため、窓口の利用者はあまり減っていない。
2011年6月1日より、高速鉄道の乗車券購入時、氏名や身分証番号を登録する「実名制」が導入された。これは、ダフ屋行為を取り締まるためといわれている。そのため、乗車券購入時に身分証の提示が必須となっているため、外国人が購入する場合、事前に旅行会社にパスポートのコピーを送付したり、従来は可能だった自動券売機での購入が一切できなくなり(中国国民の場合、身分証を読み取るための機械が設置されたため購入可能)、窓口に購入が限定されたため不便が生じている。
また、外国人でもユーザー登録することにより中国鉄路のサイト(www.12306.cn)でのネット購入も可能であるが、中国で有効な携帯電話番号、決済口座が必要である。 一方多少の手数料は必要であるが、海外のクレジットカードでも決済できる民間のオンライン予約サイトも登場し、外国人旅行客でも、国外から容易に購入が可能となった。
乗車前までに駅窓口に予約番号と身分証を見せることで切符を発行してもらい乗車することが可能であり、 大きな駅ではネット購入の受取り専用の窓口がある場合もある。 (中国人は新型身分証(二代身分証)を使用して専用の機械で切符を受け取ることも可能) (中国鉄路での購入の場合、切符の発売開始日が駅窓口での発売開始日より2日早く設定されている) ただし、その際の支払いは中国の銀行からのネット決裁のみであるため、中国の銀行に口座があり、かつネットバンクが使用可能な環境でないと購入できない。(乗車本人の口座でなくても支払いは可能)
さらに中国人向けのサービスとして、高速鉄道の一部では新型身分証を使用したチケットレスサービスも導入されている。
車両
中国の鉄道車両は、1980年代までは、主要幹線でも蒸気機関車が大々的に使用されていたが、1990年代に入り、電気機関車やディーゼル機関車の大量導入が行われ、21世紀始めには、主要幹線においては蒸気機関車は過去のものとなった。広大な中国の鉄道は長距離列車、非電化区間が多く地下鉄を除く大都市の普通列車でさえもほとんどが客車であり、広大な国でも電化率が高く動力分散型が多いロシアの鉄道とは対照的であった。しかし一部の幹線は電車と気動車を用いて、2007年4月第6回鉄道高速化後、高速動力分散型電車を使うことを始めている。 車両は自国生産のものも多いが、機関車は日本・アメリカ・ヨーロッパ諸国からの輸入も少なくない。モンゴル、ロシア、カザフスタンへ行く国際列車には東ドイツDWAに発注した18系客車及び19系客車が使用されている。これらの客車は、他国の車両と直通運転の際に連結されるため、モンゴルや旧ソ連構成国、東ヨーロッパの車両と類似または同じデザインの車両が使用されている。一方で、北朝鮮やアルバニア、イランのような友好国には、鉄道車両の輸出を行ったこともある。最近では中国政府の国家戦略の一環として、タンザン鉄道などアフリカ諸国への鉄道技術供与を積極的に展開している。
車両等級
寝台車
夜行列車には一部のローカル線を除き、寝台車が連結されている。
- 高級軟臥・高級動臥(高包。定員1人または2人の個室寝台。一部の路線に限定。室内にトイレとソファーがあり、車両によっては持ち帰り可能のスリッパや歯磨きも置いている。)
- 軟臥・動臥(1等寝台 定員4人のコンパートメント寝台)
- 硬臥(2等寝台 3段開放寝台)
寝台には下鋪、中鋪、上鋪(下段、中段、上段)があり、下鋪の運賃が若干高い。乗車後に身分証明書を提示して、氏名などの記録が行われる。
高包や1等寝台には部屋に扉がついており、内側から鍵がかかる。定員丁度のグループで使用する時は事実上の個室となるが、定員以下で使用する時は、相部屋となることがある。室内の全員が食堂車などに行く時に係員に申告すれば外側から鍵を掛けてもらうことができる。またすべての高包や一部の1等寝台にはコンセントが付いているため、電気機器の充電に利用できる。高包や一部の1等寝台の場合は車掌の他に女性アテンダントがおり、乗車直後に部屋に挨拶にやって来る。
切符は各車両に乗務する乗務員が各乗客の下車駅を把握して案内し、乗客の寝過ごしを防止するため、係員が下車直前まで預かり乗客が下車する駅が近くなると返却される。乗車中は代わりに座席・寝台番号が書かれた預り証を渡されるので、各乗客はそれを切符の代わりとして携帯する。食堂車を越えて座席車側に入り、再び寝台車側に戻ろうとする時に預り証がないと、食堂車の係員に制止されることがある。
硬臥以外は、枕、シーツ、毛布が備え付けられている。コンパートメントごとに熱湯の入ったポットが置いてある。硬臥は消灯時間が決められている。
座席車
- 商務座
- 特等軟座・一等軟座(高級軟座、一部の路線に限定)
- 軟座(1等車 昼間を運行する路線に限定)
- 硬座・二等軟座(2等車指定席)
- 無座(硬座立ち席券 乗車後、空席があれば、軟座、硬臥などに変更可能)
他に空調設備の有無で料金に格差がある。これは、空調の使用の有無に関係がない。空調車は座席などの設備も良いための運賃差とされているため、春秋などの空調不使用時でも新空調車料金と称する運賃となる。一例をあげると、北京 - 上海間であれば、特快の高級軟臥と普快の硬座では10倍以上もの運賃・料金格差を生じる。
食堂車
現在でも多くの長距離列車に食堂車が連結されている。料理の量が少ない割に価格設定が高いため、硬座や硬臥の乗客はほとんど使用しない。そのため利用客が少ないがそれでもほとんどの長距離列車に連結されているのは乗務員の食事場所の意味合いもあるためである。時間帯によっては一般客よりも乗務員の利用の方が多いこともある。普通は1両だけの連結であるが、比較的豊かな都市部からの観光客や外国人利用者が多い蘭州と敦煌を結ぶ旅游列車「敦煌号」のように高級食堂車・普通食堂車・喫茶、バー車の3両の食堂車が連結されている列車もある。
主な路線一覧
八縦八横(重点路線)
重点的に国家が整備を行う「八つの縦断と八つの横断」鉄道である。
八縦(中国大陸の南北を結ぶ主な線)
- 京滬線 北京 - 天津 - 済南 - 南京 - 上海
- 東部沿海通道 瀋陽 - 大連 - 煙台 - (青島) - 無錫 - (上海) - 杭州 - 寧波 - 温州 - 福州 - アモイ - 広州 - 湛江
- 京広線 北京 - 石家荘 - 鄭州 - 武漢 - 長沙 - 株洲 - 広州
- 京九線 北京 - 武漢 - 南昌 - 深圳 - 九龍(香港)
- 京哈線 北京 - ハルビン - (満州里)
- 大湛線 大同 - 太原 - 焦作 - 洛陽 - 石門 - 益陽 - 永州 - 柳州 - 湛江( - 海口)
- 包柳線 包頭 - 西安 - 重慶 - 貴陽 - 柳州( - 南寧)
- 蘭昆線 蘭州 - 成都 - 昆明
八横(中国大陸の東西を結ぶ主な線)
- 陸橋鉄路(隴海線と蘭新線・北疆線の総称)
- 京蘭線 北京 - フフホト - 蘭州( - ラサ)
- 寧西線 (啓東) - 南京 - 合肥 - 西安
- 滬昆線 上海 - 杭州 - 株洲 - 懐化 - 貴陽 - 昆明(懐化 - 重慶 - 成都)
- 煤運北通道 大同 - 秦皇島、神木 - 黄驊
- 煤運南通道 太原 - 徳州、長治 - 済南 - 青島、侯馬 - 月山 - 新郷 - 兗州 - 日照
- 沿江通道 重慶 - 武漢 - 九江 - 蕪湖 - 南京 - 上海
- 西南出海通道 昆明 - 南寧 - 黎塘 - 湛江
その他の国鉄路線
地方鉄路・産業鉄道
市営鉄道・軌道
中華人民共和国では国鉄以外にも、地下鉄・路面電車・モノレールなどがいくつかの大都市で運営されており、また高速鉄道に関しても2003年12月には上海に磁気浮上式鉄道のトランスラピッドが開通している。
1969年に北京で地下鉄が開業した。しかし地下鉄の整備は1978年の改革開放政策まで十分には行われなかった。1980年代以降、外資の導入による近代化政策のもと都市部において地下鉄の建設が行われた。上海では1990年代以降の相次ぐオフィスビルの建設により地下鉄の路線網の拡充が急務となっていた。このような経緯があり、中国の地下鉄は、国産技術を主体とした北京地下鉄などの北方グループと外国技術を主体とした上海地下鉄などの南方グループに大別される。
営業路線長を2020年に2007年比約8倍の4200kmとする計画がある[14][15]。2020年に北京では1050km、上海では980km、広州では600kmの都市鉄道が開業し、先進国に近い鉄道整備になる。
北京市
北京地下鉄は1969年に中国初の地下鉄路線が開通したが、先述の通り整備は1978年の改革開放政策まで十分には行われず、一般人には開放されなかった。2008年の北京オリンピックのころから、開通路線が急激に増え、現在も建設中の路線が多数ある。
北京地下鉄のほかにも、国鉄の路線の線路を使用する北京市郊外鉄道が1路線開業し、いくつか整備中である。
北京市計画委員会は、2020年までに北京市郊外鉄道1000km、都市鉄道1000kmを整備する計画を制定している[16]。中国国鉄の新線建設や駅調整に伴い、北京市域内の約1000kmの国鉄線路や中心市街地に位置する6つの貨物ターミナルを、郊外通勤鉄道と旅客駅に改造することが可能だとしている。最初の工事である現在の貨物用の北京東駅を10面18線の旅客駅に改造する計画が間もなく始まる予定である。
- 北京地下鉄
- ■1号線
- ■2号線
- ■4号線
- ■5号線
- ■6号線
- ■7号線
- ■8号線
- ■9号線
- ■10号線
- ■13号線
- ■14号線
- ■15号線
- ■八通線
- ■昌平線
- ■大興線
- ■房山線
- ■亦荘線
- ■機場線
- 北京市郊外鉄道
- ■S2線
天津市
上海市
上海地下鉄は1995年に1号線が開通してから次々と新たな路線を開通させ急速に総延長を伸ばし、2009年12月には東京都市圏の地下鉄総延長を抜き、アジアで最も総延長の長い地下鉄路線となった。現在でも建設中の路線が多数ある。
上海地下鉄のほかにも、上海トランスラピッドや張江有軌電車が運営されている。
- 上海軌道交通
- ■1号線
- ■2号線
- ■3号線
- ■4号線
- ■5号線
- ■6号線
- ■7号線
- ■8号線
- ■9号線
- ■10号線
- ■11号線
- ■12号線
- ■13号線
- ■16号線
- 上海トランスラピッド
- ■磁浮線
- 張江有軌電車
- ■張江有軌電車
- 区域鉄路
- ■22号線
広州市
広州地下鉄のみ存在していたが、隣接する仏山市とを結ぶ仏山地下鉄が開通した。なお仏山地下鉄は中国で初となる都市間を結ぶ地下鉄である。
- 仏山地下鉄
- ■1号線
南京市
南京地下鉄が運営している。
深圳市
重慶市
2つのロープウェイや重慶軌道交通の地下鉄、モノレールが営業している。そのほかにも、重慶市内は起伏が激しいので有料エレベーターも運営されている。
武漢市
武漢地下鉄が運営している。
大連市
満州国時代に路面電車網が構築されたが、中華人民共和国建国後に大幅に整理された。現在は大連地下鉄と、都市鉄道や路面電車を運営する大連公交客運集団有限公司が運営している。
瀋陽市
かつて路面電車があったが既にない。瀋陽地下鉄が運営している。
長春市
満州国時代に敷設された路面電車は、1路線を残し撤去されたが、2015年に新たに1路線が建設された。長春軌道交通と長春市電が運営している。他にも地下鉄1,2号線が建設中
成都市
成都軌道交通が地下鉄と都市鉄道を運営している。また、2016年までに、環状3号線以内の国鉄路線に、市が平均2 - 3 kmの駅間距離で新駅を建設し、通勤鉄道に改造を行うことが発表されている[17]。
西安市
西安地下鉄が運営している。
蘇州市
蘇州軌道交通が運営している。
昆明市
昆明地下鉄が運営している。
杭州市
杭州地下鉄が運営している。
ハルビン市
ハルビン地下鉄が運営している。
- ハルビン地下鉄
- ■1号線
無錫市
無錫地下鉄が運営している。
鄭州市
鄭州市軌道交通が運営している。
- 鄭州地下鉄
- ■1号線
長沙市
長沙地下鉄が運営している。
- 長沙地下鉄
- ■2号線
寧波市
寧波軌道交通が運営している。
- 寧波軌道交通
- ■1号線
青島市
青島地下鉄が運営している。
- 青島地下鉄
- ■3号線
南昌市
南昌地下鉄が運営している。
- 南昌地下鉄
- ■1号線
香港
香港では大部分が香港MTRが運営している。香港MTRに所属していないのは香港トラムとピークトラムだけである。
建設中の市営鉄道
計画中の市営鉄道
- 常州軌道交通
- 紹興軌道交通
- 大同軌道交通
- 大嘉興市域軌道交通
- 泉州軌道交通
- 蘭州軌道交通
- 石家荘軌道交通
- 太原軌道交通
- ウルムチ軌道交通
- 厦門軌道交通
- 徐州軌道交通
- 温州軌道交通
- 牡丹江軌道交通
- 銀川軌道交通
脚注
- ^ 交运仓储 高铁行业:2011年全国铁路工作会议解读
- ^ a b http://www.china-mor.gov.cn/zwzc/tjxx/tjgb/201012/t20101229_5999.html
- ^ 21世紀は鉄道の時代?
- ^ Amidst GDP Slump, China Pours Investment in Railways
- ^ a b c d e f 阿部真之、岡田健太郎(2011年). 『中国鉄道大全 中国鉄道10万km徹底ガイド』 p173
- ^ “关于调整北京西—河内国际联运客车开行方案的通知(簡体字中国語)”. 中国鉄路総公司 (2014年12月30日). 2015年11月2日閲覧。
- ^ 南寧鉄路局の公式アカウント(簡体字中国語)
- ^ 港鐵城際直通車網上購票服務 廣東綫行車時間表 (繁体字中国語)
- ^ a b 港鐵城際直通車網上購票服務 北京綫/上海綫行車時間表(繁体字中国語)
- ^ a b c シベリア鉄道 専門旅行社 ツーリストシアター
- ^ 阿部真之、岡田健太郎(2011年). 『中国鉄道大全 中国鉄道10万km徹底ガイド』 p39
- ^ a b c 中国鉄道倶楽部 国際列車
- ^ a b “试试你的胆量?东西南北 坐火车游(簡体字中国語)”. 搜狐 (2011年8月1日). 2015年11月2日閲覧。
- ^ [中国の鉄道整備網] (丸三証券)
- ^ Metro planning in China Mainland
- ^ 『北京』11座新城有望城城通铁路
- ^ 『四川』成都拟将100多公里老铁路改造为公交铁路 比地铁还快
関連項目
外部リンク
- 中華人民共和国鉄道部(中国語)
- 海子鉄路网(中国語)
- 中国鉄路網(中国語)
- 盛世地铁(中国語)
- 中国鉄道倶楽部
- 中国鉄路旅行記
- 私の乗車距離は●●万キロです
- 中国友の会
- 中国の都市交通事情
- 大陸の転轍機
- China Syndicate
- 中国列車時刻検索