ダフ屋
ダフ屋(ダフや)とは、人気チケットを転売目的で入手し、チケットを買えなかった人や買いたい人に売りさばく者、または業者のこと。ダフ屋がチケットや券を不正に売りさばいたり、売りさばこうとする行為を、ダフ屋行為という。「だふ」という言葉は、チケットや券を意味する「ふだ(札)」を逆にした倒語である[1]。
目次 |
概要 [編集]
以下の2つの項目が、1つでも当てはまればダフ屋行為に該当する。
- 転売目的でチケットを公衆に対して発売する場所において購入すること。
- 公衆の場で、チケットを他者に転売すること。
2009年時点で47都道府県中39都道府県の迷惑防止条例でダフ屋行為は禁止されており、処罰対象となる。ただし違法になるかどうかについては、条例の内容が各都道府県によって異なるので、一概には言えない(自治体や場合によってはダフ屋からチケットを購入した買い手もダフ屋行為として処罰される例もある)。またダフ屋行為を処罰する条例を制定していないのは8府県[2]であるが、ダフ屋行為を処罰する条例がない京都府において物価統制令の適用による取り締まり事例も存在する[3]。また販売形態によっては特定商取引法に抵触する場合もある。
ダフ屋行為が禁じられたのは、戦後の食糧難の時代において、配給チケットの買い占め行為が存在し、放置しておいてはそれによる餓死者が出る恐れがあったため、時代の要請として緊急に取り締まる必要があったことが契機である。また、東京都で最初に迷惑防止条例が制定されダフ屋行為規制が盛り込まれた1962年当時は暴力団の資金源を絶つ目的の他、ダフ屋によるつきまといや押売りなどの愚連隊による不良行為が問題となっており、その排除が大きな目的の一つに挙げられていた[4]。
かつてはダフ屋は暴力団の関係者が多いとされたが、インターネットの普及により一般人がチケットを大量に購入してインターネットオークション(後述)で高額で売りさばく例が増加している。暴力団の関係者ではない一般人のダフ屋を指して「シロダフ」(「素人(シロウト)のダフ屋」という言葉から。)とも呼ばれる[5]。
ダフ屋の対象等 [編集]
ダフ屋にとって仕入れ対象のチケットは「イベントの恩恵を受けられる人の数に上限が存在する[6]」という性格がある。そのため、通常の商品のように需要に対して供給が不足している場合に供給を増やすという対応が取りにくく、「供給不足・需要過剰」になりやすいという特徴がある。チケットについて「通常購入価格より高い値段でも買いたいという消費者が存在する」という状況下で「通常購入価格で購入して通常購入価格より高い値段で転売すれば利益が出る」という金銭的動機からダフ屋行為が行われる。人気チケットをいち早く入手できる人を「チケットゲッター」と呼称することもある。
ダフ屋の対象となるチケットのイベントの例としては以下のものがあり、人気があればあるほど対象となりやすい。
- スポーツの試合
- 音楽コンサート
- 展示物
- 遊具
- 交通機関の指定席
ダフ屋の売買場所 [編集]
ダフ屋の場所としては主に以下の場所があげられる。
- チケットが必要な施設[7]の周辺
- 上記の施設の最寄り駅周辺
- インターネットオークション(後述)
金券ショップがチケットを売買する行為は、「公衆に対して発売する場所において購入」及び「公衆の場で、チケットを他者に転売」に該当せず、「古物商による古物売買」という正当な経済活動に当たるため処罰対象にはならない。
近年、警察当局の取り締まりが強化しているため、ダフ屋がチケットを持たなくて、どこか遠く離れた場所に保管し、そこで交換するという事例もある。
法・問題点・対策 [編集]
インターネットオークション [編集]
インターネットオークションで不要なチケットを出品する場合は、ダフ屋行為と見なされない場合が多いが、多数出品した場合、あるいは購入価格より高額で出品した場合はダフ行為とみなされる場合がある。
ネットオークションを利用したダフ屋行為の逮捕として、以下の例がある。インターネットオークションは「公衆の場」には該当しないため、迷惑防止条例の「転売目的でチケットを公衆に対して発売する場所において購入すること」が適応されたものである。
- 2005年2月に、NHKのファミリーコンサートのチケットを転売目的で購入した者が逮捕されている[8]。
- 2002年・2009年に、三鷹の森ジブリ美術館のチケットおよびチケット引換券をコンビニエンスストアにおいて転売する目的でチケットを大量に購入した人物がそれぞれ逮捕されている[9]。
- 2007年4月、アメリカの女性歌手であるビヨンセのコンサートチケットを転売目的で購入した男が逮捕されている[5]。
- 2008年に、JRの人気夜行快速「ムーンライトながら」の1編成に3席しかない1人掛け席を転売する目的でチケットを大量に購入していた人物が逮捕されている[10]。
無料券 [編集]
有料で販売されているチケットに絡むダフ屋行為として取り締まられているが、施設元から無料で贈与されている整理券や予約券は「不特定の人に転売する目的でチケット等の購入すること」の「チケット等の購入」に該当しないため「転売目的でチケットを公衆に対して発売する場所において購入すること」で取り締まることができず、「公衆の場で、チケットを他者に転売すること」に該当しない限りは取り締まりができないという問題がある。
- 2005年日本国際博覧会では「サツキとメイの家」という『となりのトトロ』にちなんだ人気パビリオンの予約整理券(無料)が事前にコンビニエンスストアに設置されたLoppiなどのチケット販売機などから大量予約され、2005年4月分が予約開始から1時間で完売するなど僅かな時間で予約枠が満杯になり、これがインターネットオークション上で数千円~4万円で売買されたり、同オークションシステムを利用しているインターネット通販の販売店が商品に添付する景品として利用するという事態が発生した。この問題により一般の入場者は整理券の入手が困難となり、逆にパビリオンでは一日800人の予約枠一杯に占有されたチケットが実際には利用されず来場者がまばらとなったため、急遽「転売し損ねて来ないであろう予約」を見越して1割ほど予約人数枠を拡大したり、一度に最大6人分まで予約可能としていたのを4人分に制限する・同万博の前売り入場券に記載された整理番号を添付しないと入手できなくするなどの方策を打ち出した。
これ以降に同様の例は度々似たようなケースもみられるようになっている。このような状況に対して、警視庁幹部筋は「新しく法律を作る必要がある」としている[11]。
ただし、無料券であっても「公衆の場で、チケットを他者に転売すること」に該当すれば取り締まりの対象となる。無料券のダフ屋行為の逮捕としては以下の例がある。
- 2011年5月に、大相撲の技量審査場所の無料入場券を転売する目的で無料券を大量に購入した人物が逮捕されている[12]。
違法性の是非 [編集]
上記のようにダフ屋行為は違法行為として取締りの対象になっているが、逆にダフ屋行為を取り締まるほうが資本主義の原則からして問題であるという意見もある[13]。チケットの転売目的購入や転売行為を全面的に禁止することは独占禁止法に抵触するため、限定的な禁止しかできない(ただし、転売目的で買占めるほどに多数購入して価格を大幅に吊り上げて高額で売ろうとする行為をする場合は、独占禁止法に抵触する可能性はある)。
施設側のダフ屋対策 [編集]
ダフ屋行為に対応するために、施設側が「チケットの転売を禁止する方針」を発表し、チケット購入に際して使用したクレジットカードなどで購入者と来場者が同じであることを確認するなどのダフ屋対策をしている例もある[11][14]。
脚注 [編集]
- ^ 広辞苑および前田勇著「上方語源辞典」(1965)より。ショバ代が場所に、ゴト師が仕事に由来しているのと同じで、このような倒語は、多くが江戸時代の商人の間で広まった
- ^ 青森県、山形県、京都府、鳥取県、山口県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県ではダフ屋行為を処罰する条例がない。
- ^ 参議院会議録情報 - 第159回国会 内閣委員会 第11号 平成十六年四月二十日
- ^ 「愚連隊にとどめを刺す―都で全国初の防止条例」『朝日新聞』1962年9月8日付朝刊
- ^ a b 産経新聞 2005年2月17日
- ^ 期限なく行われるために一見は上限がないと思えるようなものであっても、チケットの中身について月日や日時のレベルを求める場合は上限が事実上存在することにある。
- ^ スポーツの試合が行われる競技施設、コンサート会場、イベント会場など
- ^ 日経新聞,2005年2月17日
- ^ INTERNET Watch記事
- ^ 障害者用指定席券の転売繰り返し…小銭稼ぎ男を逮捕 ZAKZAK 2008年11月11日
- ^ a b 朝日新聞記事「超人気「キッザニア」、チケットのネット転売横行」
- ^ 無料なのに…技量審査場所でダフ屋行為 20万円荒稼ぎ スポニチ 2011年5月20日
- ^ 阿部泰隆『こんな法律はいらない』東洋経済新報社、2000年
- ^ 「サツキとメイの家」観覧について - 愛知県公園緑地課のページ