フランス語

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フランス語
Français
発音 IPA: [fʁɑ̃sɛ]
話される国 フランスモナコ公国ベルギーブリュッセル首都圏地域ワロン地域)、スイスフリブール州ヴォー州ヴァレー州ヌーシャテル州ジュネーヴ州ジュラ州)、イタリアピエモンテ州ヴァッレ・ダオスタ州リグーリア州)、カナダケベック州ニューブランズウィック州ノバスコシア州プリンスエドワードアイランド州)、アメリカ合衆国ルイジアナ州メイン州)、ハイチコンゴ民主共和国マダガスカルコートジボワールギニアカメルーンブルキナファソマリ共和国ニジェールセネガルルワンダブルンジトーゴ中央アフリカ共和国コンゴ共和国ガボンコモロジブチモーリシャスセーシェルレバノン
地域 ヨーロッパアフリカアメリカ州
話者数 7,200万人(総話者人口は1億2,900万人)[1]
話者数の順位 10[1](ネイティブ話者数の順位は16[1]
言語系統
公的地位
公用語 フランスほか計29カ国
統制機関 アカデミー・フランセーズ[2]
言語コード
ISO 639-1 fr
ISO 639-2 fre (B)/fra (T)
ISO 639-3 fra
SIL FRN
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フランス語圏の分布
藍色:フランス語を母語とする話者が多数を占める国や地方自治体
青色:フランス語が公用語となっている国
水色:フランス語が第二言語(文化言語)として用いられている国や地方自治体
緑色:フランス語を母語とする少数派コミュニティが存在する地域
EU加盟国および各自治体の住民におけるフランス語への理解度
濃紺色が母語地域、以下50%以上、20-49%、10-19%、5-9%、5%未満(灰色はEU非加盟国・地域)
方言の分布
米国でのフランス語分布図

フランス語(フランスご、フランス語:français)は、インド・ヨーロッパ語族イタリック語派に属する言語。ロマンス語のひとつで、ラテン語の口語(俗ラテン語)から変化したフランス北部のオイル語(またはウィ語、フランス語:langue d'oïl)が発祥とされる。日本語では、仏蘭西語、略して仏語とも書く。

世界で二番目に多くの国で使用されている言語で、フランス、スイス、ベルギーの他、かつてフランスやベルギーの領域だった諸国を中心に29カ国で公用語とされている(フランス語圏を参照)。国際連合欧州連合等の公用語の一つにも選ばれている。このフランス語の話者を、フランコフォン (francophone) と呼ぶ[3][4]

方言

ヨーロッパ(フランスとその周辺)

北アメリカ

アフリカ

フランス語系クレオール語

など(French-based creole languagesを参照)。フランス南部で用いられるオック語をフランス語方言とすることもあるが、言語学的には通常別系統の言語として扱う。

他言語との混成言語

音声

子音

両唇 唇歯 歯音 歯茎 後部歯茎 硬口蓋 両唇硬口蓋 軟口蓋 両唇軟口蓋 口蓋垂
閉鎖音 p b t d k g
鼻音 m n ɲ
摩擦音 f v s z ʃ ʒ ʁ
接近音 j ɥ w
側面接近音 l

記号が二つ並んでいるものは、右が有声音、左が無声音

なお音素 /r/ は音声 [ʁ] を、/j/[j](接近音、語頭や子音の後の場合)〜[ʝ] (摩擦音、母音の間または語末の場合)を、それぞれ表す。またリエゾン・エリジオン等の説明において「子音」とは、発音上は存在しない「有音の h 」をも含む。ただし、中国語の固有名詞や英語から入った最新の外来語に含まれる h[h] は発音される傾向がある。

母音

前舌 中舌 後舌
i y u
半狭 e ø o
中央 ə
半広 ɛ œ ɔ
a ɑ

記号が二つ並んでいるものは、右が円唇、左が非円唇

鼻母音

  • /ɛ̃/: in, im, ain, aim, ein, eim。「アン」に聞こえるが、「エン」のつもりで言うとよい。
  • /œ̃/(パリなどでは /ɛ̃/ に合流): un, um
  • /ɑ̃/(やや円唇): an, am, en, em
  • /ɔ̃/ または /õ/: on, om

鼻母音四つを含んだ句の例として "un bon vin blanc" /œ̃ bɔ̃ vɛ̃ blɑ̃/(おいしい白ワイン)が有名である。

半母音

綴りと発音

フランス語の表記は初学者には複雑に感じられるが、規則性が高い。英語や日本語のローマ字表記とはかなり異なるため、フランス語を知らなければ正しく読むことはできないが、規則を覚えれば容易に発音できる。例えば eau は常に /o/ と発音する。しかし monsieur (〜さん) は /mɔ̃.sjœʁ/ ではなく /mə.sjø/ であり、faisan (コウライキジ) は /fɛ.zɑ̃/ ではなく /fə.zɑ̃/ であるなど、イタリア語スペイン語などに比べると例外が多い。

また、in, im, yn, ym, ain, aim, ein, eim が全て /ɛ̃/ になるなど、しばしば異なるつづりが規則的に同じ発音になるため、同音異字語が多い。例えば vin (ワイン) と vingt (20) は共に /vɛ̃/ であり、また bleu () とその変化形の bleus, bleue, bleues は全て /blø/ である。このため、発音を聞いて書き分けるのは比較的難しい[5]

アルファベ

アルファベットのことを、フランス語ではアルファベ (alphabet) と呼ぶ。

各字母の名称

A, a /a/ (ア) B, b /be/ (ベ) C, c /se/ (セ) D, d /de/ (デ)
E, e /ə/ (ウ) F, f /ɛf/ (エフ) G, g /ʒe/ (ジェ) H, h /aʃ/ (アシュ)
I, i /i/ (イ) J, j /ʒi/ (ジ) K, k /ka/ (カ) L, l /ɛl/ (エル)
M, n /ɛm/ (エム) N, n /ɛn/ (エヌ) O, o /o/ (オ) P, p /pe/ (ペ)
Q, q /ky/ (キュ) R, r /ɛʁ/ (エール) S, s /ɛs/ (エス) T, t /te/ (テ)
U, u /y/ (ユ) V, v /ve/ (ヴェ) W, w /dublə ve/ ¹ (ドゥブルヴェ)
X, x /iks/ (イクス) Y, y /i ɡʁɛk/² (イグレック) Z, z /zɛd/ (ゼドゥ)
  1. "double V" (二つの V) の意。
  2. "I grec" (ギリシャの I) の意。ウプシロンを参照。

綴り字記号

合字

Œ, œ は o と e の合字である。この組み合わせが単母音で発音される語では、o と e は必ずこのように繋げて書かれる。通常は œu で /œ/ を表す。

  • sœur /sœʁ/
  • œnologie /e.nɔ.lɔ.ʒi/ - ギリシア語起源の語では、οι から転写された œ が /e/ と発音される。

Æ, æ は a と e の合字であり、少数のラテン語からの借用語で使われる。

  • cæcum /se.kɔm/

数体系

20進法と10進法の組み合わせ[1]

une 1

dix 10

vingt 20

trente 30

quarante 40

cinquante 50

soixante 60

soixante-dix 70(60+10)

quatre-vingts 80(4×20)

quatre-vingt-dix 90(4×20+10)

cent 100

deux cents 200

mille 1000

文法

単数 複数
一人称 je chante nous chantons
二人称 tu chantes vous chantez
三人称 il chante ils chantent
  • 動詞主語人称などに応じて活用する。例えば chanter (歌う)の現在形は右表のように活用する。詳しくはフランス語の動詞を参照すること。
  • 名詞(男性・女性)がある。性に合わせて、冠詞・動詞の過去分詞形容詞に男性形・女性形がある。
  • 形容詞・冠詞は性・数によって変化する。
  • 基本的に後置修飾である。例えば「赤ワイン」は "vin rouge" 。但しpetit(小さな)、grand(大きな)のような例外もある。例えば「小さな子供」は "petit enfant" 。

敬称

  • Monsieur(ムッスュー)(男性)(氏)
  • Madame(マダム)(既婚女性)(女史)
  • Mademoiselle(マドムワゼル)(未婚女性)(嬢)

歴史

国際機関等とフランス語

フランス語が長年外交用語として使われてきたことから、現在でも国際機関等の中には、事実上の国際語である英語とともに、フランス語にも公用語の地位を与えているところが少なくない。国際連合アラビア語スペイン語中国語ロシア語も)、国際オリンピック委員会 (IOC)、国際サッカー連盟(FIFA、スペイン語・ドイツ語も)、国際電気通信連合(ITU、スペイン語も)、万国郵便連合(UPU)、列国議会同盟イスラム諸国会議機構(アラビア語も)、アフリカ連合(AU、アラビア語・ポルトガル語も)、北大西洋条約機構 (NATO)、国際標準化機構 (ISO) 、世界貿易機関(WTO、スペイン語も)、経済協力開発機構 (OECD) などが、英語と同様にフランス語も公用語として採用している。

F1を開催している国際自動車連盟 (FIA; Fédération internationale d'automobile) や国際モーターサイクリズム連盟 (FIM; Fédération internationale de motocyclisme)、国際サッカー連盟 (FIFA; Fédération internationale de football association)、或いは国境なき医師団 (MSF; Médecins sans frontières)、など、公式名称もフランス語である団体も多い。

脚注

  1. ^ a b c 文部科学省 基礎データ
  2. ^ Académie française” (フランス語). 2007年9月28日閲覧。
  3. ^ フランスの地理学者オネジム・ルクリュが、著書 France, Algérie et colonies (1880) において使用したことに始まる。西山教行フランコフォニーの成立と展望」『フランス語教育』特別号、2003年、22ページ。
  4. ^ なお、似て異なる概念として「フランコフィル(francophile」が存在する。
  5. ^ Ziegler, Johannes C.; Jacobs, Arthur M.; Stone, Gregory O. (1996), “Statistical analysis of the bidirectional inconsistency of spelling and sound in French”, Behavior Research Methods, Instruments, & Computers 28: 504-515, http://www.up.univ-mrs.fr/Local/lpc/dir/ziegler/article/1996.BRMIC.ziegler.pdf 

関連項目

外部リンク


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