ラジエーター
ラジエーター(英: Radiator)は液体や気体の熱を放熱する装置あるいは機械要素である。冷却水や潤滑油の冷却に用いられる場合や、熱源として暖房などに用いられる場合がある。ラジエータ、ラジエターとも読書きする。なお、「ジ」を「ヂ」、「エ」を「ヱ」と記述することもある(例:ラヂエーター、ラヂヱター)。
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[編集] 内燃機関の冷却
水冷エンジンにおいては冷却水の過剰な熱を発散するための装置としてラジエーターが用いられ、エンジンのウォータージャケットを循環する冷却水が配管を通じてラジエーターへ導かれる。冷却用ファンは気体の特性から、押し込み式よりも吸引式が効率に優れ、確実に吸引できるようシュラウド(shroud=覆い)が併用される場合も多い。シュラウド後端からファンが顔を出すあたりに効率の良い範囲がある。[要出典]
[編集] 構造
ラジエーターはアルミニウム合金製などのフィン付きの細管を多数並べた構造をしている。水冷自動車用放熱器の構造は、「チューブ」と「フィン」で構成された「コア」とその両側の「タンク」からなる。タンクには給水用の「キャップ」を持つものが多い。コアの取り付け方向によって、「ダウンフロー(縦流れ)方式」と「クロスフロー(横流れ)方式」がある。従来はダウンフロー方式が主流であったが、欧米を中心にクロスフロー方式が普及している[1]。同一外形寸法で見たとき、横長形状の場合はクロスフローの方がコア面積を大きく取れるため放熱性能上は有利であるが、ダウンフロー方式と比較すると水路断面積が小さくなるため、通水抵抗は大きくなる[1]。冷却水経路へのエア噛みを防ぐ為、ダウンフロー、クロスフローのいずれの方式でもラジエーター上部の取入口から冷却水を導入し、ラジエーター下部の排出口から冷却水を排出する経路を採るのが一般的である。また、多くの場合ラジエーターの上端にラジエーターキャップを設けエア抜きを容易にしているが、冷却水経路の設計上、ラジエーターキャップのみではエアの排出が困難な場合には、冷却水経路にエア抜き栓を別途設けることもある。
古くはドーナツ状のタンクの輪の内側に、金属の薄板をハチの巣状に張ったものが普及し、後に水管式へと進化していった。水管式は、チューブごとにフィンが独立していたが、さらにフィンの表面積を稼ぐため、隣り合ったチューブの両方に接するよう、ジグザグ状のフィンを設けたコルゲート式へと代わり、この時代が長く続いた。最近ではすべてのチューブをストレートフィンで繋ぐ、プレート式が登場している。
冷却液の温度上昇による体積膨張で水圧が上昇すると、蒸気圧の関係から水温が1気圧下での水の沸点である摂氏100度を越しても気化せず液体のままとなる。そうなると外気との温度差が大きくなるため冷却効率がよくなるが、逆に水圧が高いとラジエーターホースなどの冷却機器に負担がかかる。そのため、ラジエーターキャップにはプレッシャーバルブが組み込まれ、冷却液の圧力が設定値以上になるとリザーバータンクに冷却液を逃がすようになっている。一般的な設定圧力が60~110kPa程度である。
冷間時のエンジン始動直後は早くエンジンを温める必要があるため、エンジンを冷やすためにあるラジエーターの作用は都合が悪い。そのため、冷却回路中にサーモスタットが組み込まれ、水温が低い場合はラジエーターへの冷却水の流れを遮断し、冷却を行わないようにしている。この間もウォーターポンプは稼働しており、シリンダーヘッドからの冷却水は、サーモスタットを通らないバイパス経路でシリンダーブロックへ戻され、エンジン全体の温度上昇を促進する。
[編集] 材質
コア、タンクとも、従来は銅や真鍮が用いられており、定置型の産業機械や建設機械などでは鉄製のものも見られる。近年は軽量化とリサイクル、脱鉛(はんだやろう付けの廃止)、組み立て時間の短縮によるコストダウンに重点をおいた、アルミ製コアとOリングをはさんだ、樹脂製タンクのかしめ留めが主流となっている。現在の市販車では、前面投影面積が大きく、薄い(層の少ない、空気の抜けの良い)形状とし、銅や真鍮に比べ熱交換効率の劣るアルミコアの弱点を補っている。
従来の金属タンクの場合、コアの張り替えやタンクの補修を繰り返してリビルドすることが可能であり、鉛さえ使わなければ、資源の有効利用という点では優れている。一方、現在主に使われているアルミコアとプラスチックタンクの組み合わせでは、かしめを解くOリングの交換は一回が目安とされており、それ以外のトラブルでも補修は行われず、ASSY交換となる。
このように効率を追求する中、銅の持つ良さも再認識されており、銅コアの生産量を増やすメーカーがある。鉛を使わないキュプロブレイズ方式のロウ付け技術を確立したスウェーデンのオウトクンプ カッパー ストリップ社がそれで、同社の製品は新車への純正採用も増えている。銅は抗菌効果にも優れるため、ヒーターコアやクーラーエバポレーター(室内器)に使うことで、雑菌による悪臭を抑制できることもメリットで、この点も注目されている。
[編集] そのほかの冷却
エンジンやギヤボックスの潤滑油やパワーステアリングフルード、オートマチックトランスミッションフルードなどを冷却するオイルクーラーとして利用される場合がある。
詳細は「オイルクーラー」を参照
過給機によって圧縮され、発熱した吸入空気を冷却するインタークーラーとして用いられる場合もある。
詳細は「インタークーラー」を参照
[編集] 建物の暖房
建物でのラジエーターは暖房装置の一種であり、ボイラーなどの熱源から供給される蒸気、または温水によって室内を温める。離れた場所で加熱された媒体を放熱する、保温、暖房用である。表面積を大きくとった形状で、コルゲートタイプとフィンタイプに大別される。ラジエーターは熱の大半を輻射および対流によって放熱する。煙突の無い燃焼式の暖房にくらべ、室内空気の汚損が全く無い。欧米の集合住宅やホテルなどでは一般的な暖房装置であるが、日本ではガス会社などが販売しているものの、あまり普及していない。
暖房用ラジエーターは1855年、Franz San Galliによって発明された。彼はセントラルヒーティングシステムを初めて生産し、ドイツおよびアメリカでこの発明の特許を取得した。
旧来の暖房用ラジエーターは、写真にあるような鋳鉄製の物が多く、日本でも戦前の洋風建築に数多く存在する(例: 東京都庭園美術館 - 旧朝香宮邸)。時代が下るに連れ、より効率が良く小型化が可能な、銅パイプとアルミニウム合金製フィンの組み合わせが主流となった。 屋外の冷気を効果的に遮断するため、窓の直下に設置される。居間、教室、事務室などの居室に設置されるもののほか、浴室やトイレに設置されるものもある。これらの中には、タオルをかけて乾燥させるための装置としての役割を兼ねるものもある(タオルウォーマー)。
[編集] 蒸気式ラジエーター
蒸気には、ポンプがなくても自らの圧力でパイプ内を流れるという特徴がある。このため、蒸気は電動機やポンプより前から利用されていた。蒸気は温水に比べ、摩天楼のように大きな高層の建物では供給するのがはるかに容易である。しかし、蒸気式のシステムは高温を利用するため、熱の損失が大きくなり、本質的に効率が低い。この方式は蒸気暖房やスチーム暖房と呼ばれる。
蒸気式のパイプおよびラジエーターは、凝縮水が適切に排水されなければ、「スチームハンマー」と呼ばれる騒音を発しやすい。この騒音はパイプまたはラジエーターの何処かをあたかも小さな金属製ハンマーで叩いた様な耳障りな金属音であり、多くの場合、音の大小や発生周期は設備の状況に依存して一定に繰り返される。これは建物が地盤などの沈下(セトリング)によって傾き、張り巡らせたパイプやラジエーターが設置当時の正常な傾斜から変化したことや室温調節や昼夜の間断などより凝縮水がパイプ・ラジエーター内に滞留し、そこに蒸気が供給されると、水により急激に蒸気が冷却・凝縮して、水を高速で吸い込み、水がその勢いで配管を叩いたりすることに起因する音である。(→この現象の詳細は「水撃作用」を参照。)
日本ではスチーム暖房として、古くは日光金谷ホテルで一部の客室に1914年(大正3年)から、1923年(大正12年)には全館採用されたとされ[2]、同じく1914年に鉄道院直営であった奈良ホテルでも全館暖房用として約1年をかけて順次導入されている[3]。その後次第に学校、病院、役所、刑務所など多くの人が集まる施設に広く採用され、昭和年代後期頃まで使われた[4][5]。同潤会アパートの中の「江戸川アパートメント」なども設置されていた例である。
[編集] 温水ラジエーター
温水ラジエーターは、蒸気式同様の鋳鉄製の密封容器を連ねたものか、コルゲーション(凹凸のプレス加工)が施されたパネル状で、温水は一方の端から供給され、対流または建物内の他の場所に設置されたポンプからの圧力により、ラジエーターの最上部まで上る。
熱の放出に伴い温水は冷却され、ラジエーターの最下部まで沈み、他端のパイプから排出される。ラジエーター周辺の空気は暖められ、対流により室内の空気が循環するので、室内は暖められる。
[編集] ファン付き温水ラジエーター
建物用ラジエーターとしては、ファンを加えたラジエーターも用いられるようになった。日本ではファンコンベクターと呼ばれる。サーモスタット式スイッチが温度を感知し、電動ファンを動作させ、熱交換器で暖められた空気を室内に放出する。
このタイプの長所は、小型であること、室内を均一に暖房することができることである。短所は、ファンにより騒音が発生すること、電気の供給が必要なことである。
[編集] 床暖房
欧米においても、輻射暖房のトレンドは床暖房に向かっている。床暖房では、温水は各室の全床面の下を循環する。パイプ・配管・配線は床下に埋め込まれ、室内はおだやかに加熱される。放熱面積が広いため、床は希望の室温よりわずか数度上に暖められれば足りる。結果として、対流はほとんど発生しない。このシステムは高い水準の快適性を達成できるとの評判があるが、既存の建物に後付けすることは難しい。床仕上げ材はタイルのように熱伝導性のよいものを用いることが望まれる。
ハイポコーストは、類似の原理を用いた古代ローマの暖房システムである。
[編集] パソコンの冷却
パーソナルコンピュータにおいては、CPUの冷却に水冷式を採用するものがあり、この場合に熱交換用のラジエーターを装備する。
CPUには、従来の空冷式に用いられてきたヒートシンクの代わりにウォーターブロックを装着、ラジエーターはパソコン背面などの放熱用通風孔が設けられている個所に設置、これらとポンプをそれぞれホースで繋ぎ、冷却水を循環させることによってCPUを冷やす。もちろん、同様の原理でCPU以外の部品も冷却可能である(GPUやHDDなど)。
- メリット
- ケース内への熱の発散や温度上昇が減る。空冷よりも熱のコントロールがしやすい
- ファンによる冷却を行うパーツを全て水冷化することで、空冷用のファンを最小化し、騒音を限定できる。
- 適切にパーツを配置すれば、空冷よりも相対的に小さいケースで同程度の熱を処理できる。
- ヒートポンプを使った冷却ほどではないが、空冷より冷却効率は高い。
- パーツの付け方によるが、均一な冷却が可能。
- デメリット
- 漏水が起こった場合、高い確率で電子部品は故障する。
- ウォーターポンプやタンクなどの定期的なメンテナンスが必要。なかにはメンテナンスフリーをうたう製品もある。
- 静音を目的とする場合は、ケース内の最低限のエアフローを保つ必要があるので、全てのファンを廃止することは困難。特に電源に関しては、水冷が必要なほど発熱があるのなら、ファンレスでの運用は困難である。
- 冷却水の循環用ポンプやラジエーター冷却用のファンから騒音がある。後者に関しては、ケース外に巨大なラジエーターを設置することで回避した製品もあるが、普通に空冷するよりも余分なスペースが必要になってしまう。
- 水冷であっても、最終的には空気と熱を交換するため、室温以下には冷却できない。
メリットとデメリットをよく考えておく必要はあるが、前述したCPU以外にも冷却が必要なパーツがあるので、水冷だからと言って過信してはならない。
[編集] 脚注
- ^ a b 社団法人 自動車技術会『自動車技術ハンドブック<設計(パワートレイン)編>』p.67
- ^ “会社の歴史”. 日光金谷ホテル. 2009年11月7日閲覧。
- ^ 『百年のホテル 奈良ホテル物語100周年記念特別号』、奈良ホテル、2009年、pp.42-43。
- ^ “1963(昭和38)年 12月学園内にスチーム暖房を設備”. 国士舘大学. 2009年11月7日閲覧。
- ^ “一関工業高等専門学校蒸気暖房取扱規則(昭和44年12月12日制定)”. 一関工業高等専門学校. 2009年11月7日閲覧。
[編集] 関連項目
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