上方落語をきく会

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上方落語をきく会(かみがたらくごをきくかい)は、1955年から年に数回大阪で開かれている朝日放送ラジオ主催の落語会。現在の上方落語では最古の落語[1]で、公演の模様を同局で放送することがある。

なお、北御堂で開催されていた同名の落語会(季刊「上方芸能」の前身の機関紙を発行)はこの会とは無関係である。また、ABCの会は北御堂の会と区別するため、一時期「ABC上方落語をきく会」と称していた事がある。

概要[編集]

沿革[編集]

1950年昭和25年)から1953年(昭和28年)のあいだに、5代目笑福亭松鶴2代目立花家花橘4代目桂米團治2代目桂春團治が相次いで没し、古老や大看板の大部分がいなくなった上方落語界は、没落寸前とまで評された。そして、残された数少ない噺家は、プログラムが漫才中心となっていた寄席での出演機会をなかなか得られず、地方回りなどでしのいでいた。若手は出演機会をめぐり、6代目笑福亭松鶴(当時、4代目枝鶴)、3代目桂春團治(当時、2代目福團治)ら戎橋松竹を本拠にするグループと、3代目桂米朝5代目桂文枝(当時、3代目小文枝)ら「宝塚若手落語会」(後述)をへて、宝塚新芸座に所属するグループに分裂していた。

そんな中、実業家の小林一三1952年(昭和27年)に「宝塚若手落語会」を主宰したのを皮切りに、「三越落語会」、文楽座別館「土曜寄席」、「京都市民寄席」、ラジオ神戸「神戸寄席」など、京阪神の各会場で落語会の旗揚げが相次いだ[2]

そして、2代目桂春團治を起用した朝日放送ラジオの開局特番『春團治十三夜』のプロデューサーだった松本昇三は、2代目春團治の死去の報に接し「上方落語の将来は暗かった。もう終わりかなと思った[2]」ほどの危機感をいだき、自局での主宰落語会を企画した。大阪テレビ放送(のちの朝日放送テレビ)の澤田隆治も参画した[3]。引退同然だった古老に復帰を働きかけるとともに、戎橋松竹派・宝塚派の両派の顔を揃え、プログラムを組んだ。

第1回は1955年昭和30年)12月1日大阪高麗橋三越劇場で行われた。演目は桂春坊浮世床』、2代目桂福團治月並丁稚』、3代目桂米朝『住吉駕籠』、3代目林家染丸ふぐなべ』、4代目笑福亭枝鶴寄合酒』、橘ノ圓都高尾』、4代目桂文團治らくだ[2]

反響は大きく、年に2、3回のペースで開催するに至った。時には東京からの来演も交えながら着実に実績を重ねた。昭和30年代には、松鶴、米朝、春團治、小文枝のいわゆる上方落語四天王を中心に、60年代後半になると、3代目笑福亭仁鶴2代目桂枝雀、桂三枝(現・6代桂文枝)、2代目桂春蝶といった次世代の若手たちの登竜門になり、同局主催の「1080分落語会」とともに、当時の落語ブームを牽引した。やがて、落語家が増え、大小の落語会があちこちで開催されるようになると、「上方落語をきく会」はよりテーマ性を強く打ち出したプログラム(若手鍛錬を銘打った「しごきの会」など。後述)で構成されるようになった。その中で第69回に行われた新作落語特集は、創作落語ブームの嚆矢となる役割を果たした。

会場[編集]

三越劇場から大淀のABCホール(初代2代目)をへて、難波髙島屋ホールへ移った[2]。近年は梅田芸術劇場が使われている(後述)。

ラジオでの放送[編集]

1997年からは、公演と同時に収録した演目の一部を『日曜落語 〜なみはや亭〜』(ABCラジオ)で放送。同局が開局60周年を迎えた2012年からは、1月もしくは2月に開かれる公演の生中継を実施している。

「朝日放送創立60周年記念 ABCラジオ上方落語をきく会」[編集]

朝日放送開局60周年記念事業の一環として、2012年1月23日月曜日)から1月25日金曜日)まではABCホール1月26日土曜日)のみ梅田芸術劇場(シアター・ドラマシティ)で開催。自ら高座に上がるほど落語に造詣の深い三代澤康司が全公演の総合司会を務めるほか、『日曜落語〜なみはや亭〜』の席亭(進行役)である伊藤史隆(いずれも同局アナウンサー)や、ABCラジオのパーソナリティが「日替わり席亭」として出演した。

なおABCラジオでは、公演の大半を生中継。ABCホールでの公演分を19:00 - 21:00に、最終日に当たるシアター・ドラマシティでの公演分を12:30 - 15:30(昼の部)・18:00 - 21:00(夜の部)に放送した。いずれの中継でも、公演の前半と後半の合間に、前半で高座に上がった落語家と「日替わり席亭」がステージ上で鼎談。公演日によっては、演目に共通のテーマを設けたり、進行役以外の朝日放送アナウンサー(芦沢誠柴田博北村真平など)が落語家に交じって大喜利に挑んだりしている。

また、最終日の1月26日には、8時間半にわたる放送枠を編成。「昼の部」と「夜の部」の合間(15:30 - 18:00)には、『ABC朝日ニュース』『ABC交通情報』をはさみながら、ABCラジオのスタジオから芦沢[4]の進行・小佐田定雄(落語作家)の解説で特別企画「上方落語をきく会 あの素晴らしい噺をもう一度」を放送した。この企画では、同局の落語ライブラリーに所蔵されている貴重な音源から、6代目松鶴・5代目文枝・枝雀が生前に「上方落語をきく会」で披露した名人芸を紹介している。

主な出演者[編集]

演者:演目が生中継で放送される落語家(芸名は出演時点、出演順に表記)
●:当初出演を予定していた6代目笑福亭松喬が病気療養で休演したことによる代演
◎:出演時点で朝日放送のアナウンサー
『 』:出演時点で「日替わり席亭」がレギュラーを務めていたABCラジオの番組

「第111回 ABCラジオ上方落語をきく会」[編集]

2013年1月26日土曜日)にシアターBRAVA!で開催。昼の部(12:00開演)と夜の部(17:30開演)の2部構成で、三代澤と伊藤が共同で総合司会を務めた。また夜の部では、病気療養のために「朝日放送創立60周年記念 ABCラジオ上方落語をきく会」の休演を余儀なくされた6代目松喬が「大トリ」で高座に上がった(同年7月30日に逝去)。

ABCラジオでは、当日の12:30 - 21:00に特別番組として、「ABCラジオ 上方落語をきく会」を編成。昼の部・夜の部の全公演をほぼ生中継で放送した[8]。各部の中入り(休憩時間)には、朝日放送本社のラジオ報道ブースから『ABC朝日ニュース』『ABC天気予報』、シアターBRAVA!舞台袖特設ブースから演目を終えたばかりの落語家と三代澤・伊藤による鼎談をそれぞれ放送。昼の部と夜の部の合間(15:30 - 18:00)には、上記ブースからの生中継企画として、桂団朝・宇野ひろみの進行で『歌謡大全集』(1975年度 - 2010年度のナイターオフ期間に放送された楽曲リクエスト番組)を特別に復活させている。

主な出演者[編集]

  • 昼の部(開演12:00、放送12:30 - 15:30)
  • 夜の部(開演17:30、放送18:00 - 21:00)
    • 演者:桂治門※開口一番につきオフエア、笑福亭たま、桂吉弥、笑福亭三喬、桂春團治、桂米團治、6代目笑福亭松喬

「第112回 ABCラジオ上方落語をきく会」[編集]

2014年2月1日(土曜日)に梅田芸術劇場(シアター・ドラマシティ)で開催。前年に引き続き、昼の部(12:00開演)と夜の部(17:30開演)の2部構成で、三代澤と伊藤が共同で総合司会を務めた。ABCラジオでも、前年に続いて、当日の12:30 - 21:00に特別番組「ABCラジオ 上方落語をきく会」で昼の部・夜の部の全公演を放送した。昼の部と夜の部の合間(15:30 - 18:00)には、『ABCニュース[9]』『ABC交通情報』をはさみながら、ABCラジオのスタジオから昼の部の開口一番を務めた笑福亭鉄瓶[10]と北村真平の進行・小佐田定雄の解説で、2年前と同趣旨の特別企画「鉄瓶・真平の上方落語ちょっといい話」を放送した。

主な出演者[編集]

  • 昼の部(開演12:00)
    • 演者:笑福亭鉄瓶※開口一番につきオフエア、林家染弥(現・林家菊丸)、月亭文都桂坊枝、桂雀三郎、桂ざこば、月亭八方
  • 夜の部(開演17:30)

「第113回 ABCラジオ上方落語をきく会」[編集]

2015年1月31日(土曜日)に梅田芸術劇場(シアター・ドラマシティ)で開催。本編の構成は前年と同じ。昼の部と夜の部の合間(15:30 - 18:00)には、『ABCニュース』『ABC交通情報』をはさみながら、ABCラジオのスタジオから鉄瓶と北村の進行・小佐田の解説で、特別企画「上方落語若手噺家図鑑」[12]を放送した。

主な出演者[編集]

  • 昼の部(開演12:00)
    • 演者:桂優々※開口一番につきオフエア、桂そうば、桂かい枝、笑福亭銀瓶、笑福亭福笑、桂文太、桂ざこば
  • 夜の部(開演17:30)
    • 演者:笑福亭喬介※開口一番につきオフエア、桂ちょうば、笑福亭たま、桂吉弥、桂南天、林家菊丸、笑福亭三喬

「第114回 ABCラジオ上方落語をきく会」[編集]

2016年1月30日(土曜日)に梅田芸術劇場(シアター・ドラマシティ)で開催[13]。昼の部と特別企画の構成は前年と同じ。夜の部では朝日放送開局65周年記念企画として「しごきの会」が28年ぶりに復活した(後述)。

主な出演者[編集]

  • 昼の部(開演12:00)
  • 夜の部「南天しごきの会」(開演17:30)
    • 演者[14]桂咲之輔※開口一番につきオフエア、桂南天、桂文珍、桂ざこば

「第115回 ABCラジオ上方落語をきく会」[編集]

2017年1月21日(土曜日)に梅田芸術劇場(シアター・ドラマシティ)で開催[15]。特別企画の構成は前年と同じだが、北村に代わって慶元まさ美[16]が進行役に加わったほか、17時台には桑原征平[17]が「落語家が絶対売れる方法」というテーマパートの講師として出演した。

主な出演者[編集]

  • 昼の部「平成3年入門組vs.平成6年入門組」(開演12:00)
    • 演者:桂弥太郎※開口一番につきオフエア、桂三語、3代目桂春蝶、桂かい枝、桂きん枝、桂文三、桂南天
  • 夜の部(開演17:30)

「第116回 ABCラジオ上方落語をきく会」[編集]

2018年1月20日(土曜日)にあましんアルカイックホール・オクトで開催[20]。総合司会には、三代澤・伊藤に加えて、後輩アナウンサーの桂紗綾を初めて起用。桂紗綾は本編で三代澤・伊藤のサポート役を務めたほか、昼の部と夜の部の合間(15:40 - 17:55)には、ABC本社のラジオスタジオで鉄瓶と共に特別企画(構成は前年と同じ)の進行を担当した。

主な出演者[編集]

  • 昼の部(開演12:00)
  • 夜の部「銀瓶しごきの会」(開演17:30)
    • 演者[21]:笑福亭呂好※開口一番につきオフエア[22]、笑福亭銀瓶、桂南天、7代目笑福亭松喬

「第117回 ABCラジオ上方落語をきく会」[編集]

2019年2月10日(日曜日)にあましんアルカイックホール・オクトで開催予定[23]。この回は「激突! ドキハキvs.ラジオノオト」というテーマで、平日午前の帯ワイド番組『ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です』と、ナイターオフ火 - 金曜日の夜ワイド番組『伊藤史隆のラジオノオト』とが競い合う形を取る[24]。総合司会の顔触れと特別企画の構成は前年と同じ予定。

主な出演者[編集]

  • 昼の部「『ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です』プロデュース」(開演12:30)
    • 演者:笑福亭鉄瓶、桂雀五郎、笑福亭たま、桂南天、笑福亭生喬、笑福亭仁智
  • 夜の部「『伊藤史隆のラジオノオト』プロデュース」(開演17:30)
    • 演者:「なみ1グランプリ2018」優勝者、桂吉弥、林家菊丸、7代目笑福亭松喬、笑福亭銀瓶、桂米團治

しごきの会[編集]

将来を期待される若手・中堅の落語家が、大御所の助演を受けながら、ネタおろしを3席行なうというもの。1972年8月の第47回で10代目桂小米(後の2代目枝雀)が米朝、松鶴の助演を受けて初めて開催。以後、2代目春蝶、4代目林家小染、三枝、5代目笑福亭枝鶴、朝丸(ざこば)、文珍、八方、べかこ(南光)、きん枝が挑戦した[25]

1988年の桂雀々を最後に当企画は休眠していたが、『歌謡大全集』『ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です』のパーソナリティとしてABCラジオと縁の深い南天に白羽の矢を立て、2016年に復活した。

主要スタッフ[編集]

  • プロデューサー:戸谷公一[26](朝日放送ラジオ)
  • 構成:日沢伸哉(亡くなるまで担当)

関連項目[編集]

以下は、ABCラジオでかつて放送された深夜番組で、当落語会から収録した音源を内包コーナーで定期的に放送。

  • ABCヤングリクエスト - 「ABCミッドナイト寄席」として放送。『1080分落語会』放送のきっかけにもなった。
  • ウシミツリクエストABC - 「ウシミツミッドナイト寄席」として放送。終了後に『日曜落語~なみはや亭~』の放送を開始。

脚注[編集]

  1. ^ 日本で一番古い落語会は東京の「三越落語会」、中断を考慮しないなら明治にスタートした「落語研究会」である。
  2. ^ a b c d 読売新聞大阪本社文化部(編)『上方放送お笑い史』 読売新聞社、1999年 pp.256-262
  3. ^ 澤田の参画はDVD・CDボックス『五代目 桂文枝』ブックレット「盗人の仲裁」解説より
  4. ^ 放送当時は、当該時間帯のレギュラー番組『芦沢誠のGO!GO!サタデー』のパーソナリティを担当していた。
  5. ^ 2016年夜の部「南天しごきの会」終演時には、当時の『ドキハキ』パートナー仲間にして南光の内弟子時代からよく知る南天に花束を贈呈した。
  6. ^ 2018年夜の部「銀瓶しごきの会」終演時には、同年1月8日の『おはパソ』ゲストだった銀瓶に花束を贈呈した。
  7. ^ 2代目福團治時代に第1回の「上方落語をきく会」に出演。この時演じた『野崎詣り』は『日曜落語〜なみはや亭〜』2016年1月17日放送分(春団治逝去公表直後の回)で流された。
  8. ^ 昼の部・夜の部とも、最初の演目のみ収録したうえで時差放送。その後の演目から生中継へ移行した。
  9. ^ 前年4月1日より改題。
  10. ^ 放送当時は、当該時間帯のレギュラー番組『笑福亭鉄瓶のMusic Smile』のパーソナリティを担当していた。
  11. ^ 吉の丞および鉄瓶の出演は、1月21日放送『桑原征平粋も甘いも』の「私の通信簿」(伊藤がゲスト出演)にて発表。
  12. ^ 前年末に第1回が開催された『日曜落語 〜なみはや亭〜』の公開落語会「なみ1グランプリ」(入門10年以内の若手噺家が昼の部本編のトップバッターの座を競う大会)出場者が出演。
  13. ^ 出演者は『ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です』2015年11月11日(南天が当時パートナーを務めていた水曜日)放送分にて発表。
  14. ^ 本編の順序は南天『秘伝書』→文珍『粗忽長屋』→南天『たちぎれ線香』→ざこば『笠碁』→南天『火焔太鼓』。
  15. ^ 出演者は『日曜落語 〜なみはや亭〜』2016年11月13日放送分にて発表(発表時には三代澤も出演)。
  16. ^ 放送当時は、当該時間帯のレギュラー番組『慶元まさ美のSounds Good!』のパーソナリティを担当していた。
  17. ^ 同日12:15(当時)まで生放送のレギュラー番組『征平・吉弥の土曜も全開!!』のパーソナリティを、桂吉弥と共に担当。
  18. ^ 朝日放送開局50周年記念企画として2000年11月11日に開催の第100回「白鶴 上方落語をきく会」第3部(21:00開始のレイトショー)で、桂吉朝と6代目笑福亭松喬が口演した演目に、吉朝の弟子・吉弥と6代目松喬の弟子・三喬が挑戦。
  19. ^ 『日曜落語 〜なみはや亭〜』2017年5月21日放送分にて放送(演目は『つる』)。
  20. ^ 出演者は『日曜落語〜なみはや亭〜』2017年11月5日放送分にて発表(発表時には桂紗綾も出演)。
  21. ^ 本編の順序は銀瓶『短命』→南天『行き倒れ(粗忽長屋)』→銀瓶『質屋蔵』(稽古をつけたのは米二)→7代目松喬『花色木綿』→銀瓶『井戸の茶碗』。
  22. ^ 『日曜落語 〜なみはや亭〜』2018年2月11日放送分にて放送(演目は『平林』)。呂好が開口一番を務めることは『ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です』2017年12月7日(南天が同年10月よりパートナーを務める木曜日)放送分「今日のスペッシャル!」にて、ゲストの銀瓶が示唆していた。なお呂好は本編ではお囃子を担当。
  23. ^ 出演者は『日曜落語〜なみはや亭〜』2018年11月11日放送分にて発表(発表時には三代澤も出演)。
  24. ^ 各番組の曜日別パートナー(南天と7代目松喬)、各番組パーソナリティの母校落語研究会の後輩(雀五郎と吉弥)、兄弟弟子(鉄瓶と銀瓶、生喬と7代目松喬)、上方落語協会の会長・仁智と副会長・米團治、という具合に演者がつながっているのも特徴。
  25. ^ 『日曜落語 〜なみはや亭〜』2015年11月15日放送分(南天がゲスト出演)、および第114回夜の部オープニングより。
  26. ^ 三代澤、伊藤と同じく大学時代は落語研究会(関西学院大学文化総部甲山落語研究会)に所属。
  27. ^ 2016年3月を以って「年季明け」。後任は「お茶子」の大野聡美

外部リンク[編集]