コンテンツにスキップ

ホンダ・TN360

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

TN360(ティーエヌさんびゃくろくじゅう)は、本田技研工業がかつて生産、販売していた軽トラックである。

概要

[編集]

ホンダ初の軽トラックであったT360の後継として、1967年昭和42年)11月にデビューした。

TN360は、先に発売されたN360空冷 2気筒エンジンをはじめ、多くのパーツを共用し、複雑なDOHC直4エンジンを搭載し、必ずしも量産に適さなかったT360よりも普遍性を狙ったモデルとして開発されたが、N360のパワートレインとドライブトレインを流用したため、シャシドライブトレイン、リアサスペンションの設計は極めて特徴的なものとなった。

T360や競合他社の軽トラックのようなラダーフレームは、強度確保はしやすいものの、後輪の近くに横置きエンジン+横置きトランスアクスルを搭載するには不向きなため使えず、荷台床そのものをプラットフォームフレームとした特殊なモノコック構造が採用された。荷台下面のサブフレームで補強されてはいるが、ライトバン派生型[1]ではない本格的な軽トラックとしては他にほとんど例のない構造である。

N360の強力なエンジンをベースとしながらも、荷台の下に搭載するためシリンダーブロックはほぼ水平に変更され、変速機についてもやはりN360の前輪駆動車用トランスアクスルを流用した。従って、パワートレイン一式は後車軸の直前へ位置し、必然的にミッドシップレイアウトとなった。このため荷台床面にはエンジン点検蓋が設けられている。

更にその構造から、差動装置も車体側(バネ上)固定となり、リアサスペンションには独立懸架かそれに類するメカニズムの採用が必須となったが、ホンダでは固定車軸独立懸架の折衷とも言うべきド・ディオンアクスルの採用に踏み切った。ド・ディオンアクスルの位置決めは、荷重を担う半だ円リーフスプリングに負わせ、耐久性と簡易性の両立が図られている。これらの軽商用車としては特異なレイアウトは、後年までホンダ軽トラックの基本構造として踏襲され続けている。

その後TN III(ティーエヌ スリー)360、TN-V(ティーエヌ ファイブ)、TN-7(ティーエヌ セブン)とモデルチェンジの度に名前を変えていき、1977年(昭和52年)に後継のTNアクティが登場し、生産を終了した。

TN360(1967-1969年)

[編集]
ホンダ・TN360
1967年発売型
概要
製造国 日本の旗 日本
販売期間 1967年11月-1970年1月
ボディ
乗車定員 2名
ボディタイプ 2ドア キャブオーバー軽トラック
駆動方式 MR
パワートレイン
エンジン 空冷 直2 SOHC 354cc 30PS
前:マクファーソンストラット+コイルスプリング
後:ド・ディオンアクスル+半だ円リーフスプリング
前:マクファーソンストラット+コイルスプリング
後:ド・ディオンアクスル+半だ円リーフスプリング
車両寸法
全長 2,990mm
全幅 1,295mm
全高 1,595mm
車両重量 500kg
系譜
先代 ホンダ・T360
後継 ホンダ・TNIII360
テンプレートを表示

1967年11月に登場。エンジンは空冷 4ストローク 直列2気筒SOHCで最高出力は30PSだった。

1968年3月にパネルバン4車種(後部ドア上下開き・左側スライドドア/後部ドア上下開き・左右スライドドア/後部ドア上下開き・オープンバン)を追加。

1969年11月には道路運送車両の保安基準改正によりキャビンの側面後方部分にターンシグナルランプが標準装備されたほか、T360で設定されていた後輪をクローラに変更するスノーラ[2]を追加。

なお、フロントグリル部分は後に同社のライフステップバン、およびライフピックアップのラジエターグリルにそのまま流用された。

TNIII360(1970-1972年)

[編集]
ホンダ・TNIII360
1971年改良型
概要
製造国 日本の旗 日本
販売期間 1970年1月-1972年5月
ボディ
乗車定員 2名
ボディタイプ 2ドア キャブオーバー型 軽トラック
駆動方式 MR
パワートレイン
エンジン 空冷 直2 SOHC 354 cc 30 PS
前:マクファーソンストラット+コイルスプリング
後:ド・ディオンアクスル+半だ円リーフスプリング
前:マクファーソンストラット+コイルスプリング
後:ド・ディオンアクスル+半だ円リーフスプリング
車両寸法
ホイールベース 1,780 mm
全長 2,990 mm
全幅 1,295 mm
全高 1,625 mm
車両重量 540 kg
系譜
先代 ホンダ・TN360
後継 ホンダ・TN-V
テンプレートを表示

1970年昭和45年)1月26日、Nシリーズ全車種のモデルチェンジに伴い車名をTNIII360と変更[3]フロントグリルの意匠が変更され、運転席にシートベルトが標準装備されたほか、新たに一方開き仕様の荷台を設定。一方開き仕様はサイドスカートが標準装備された。

1971年(昭和46年)4月に再度マイナーチェンジを実施し、フロントグリルの意匠が変更された。

TN-V(1972-1975年)

[編集]
ホンダ・TN-V
1972年発売型
概要
製造国 日本の旗 日本
販売期間 1972年6月-1975年7月
ボディ
乗車定員 2名
ボディタイプ 2ドア キャブオーバー型 軽トラック
駆動方式 MR
パワートレイン
エンジン 空冷 直2 SOHC 354 cc 27 ps
変速機 4速MT
前:マクファーソンストラット+コイルスプリング
後:ド・ディオンアクスル+半だ円リーフスプリング
前:マクファーソンストラット+コイルスプリング
後:ド・ディオンアクスル+半だ円リーフスプリング
車両寸法
ホイールベース 1,780 mm
全長 2,990 mm
全幅 1,295 mm
全高 1,625 mm
系譜
先代 ホンダ・TNIII
後継 ホンダ・TN-7
テンプレートを表示

1972年昭和47年)6月15日、TN-V(ティーエヌ・ファイブ)発売[4] [5]。ヘッドランプをこれまでの大型タイプの丸形2灯式から縦並びの小型タイプの丸形4灯式に変更。4灯式は軽トラックでは初となる。このとき、T360から続いた巨大なHマークがHONDAのロゴに変更。保安基準の改正に伴い、助手席にもシートベルトが標準装備され、テールランプと共用されていた後部方向指示器は独立した[6]

1973年(昭和48年)8月の仕様変更で三角窓が廃止され、アウターリアビューミラーの位置がフロントパネルからドアに変更された。

1975年(昭和50年)1月の仕様変更で現行の黄色ナンバーに対応した改良が実施され、ナンバープレート架台が大型化された。

TN-7(1975-1977年)

[編集]
ホンダ・TN-7
TN-7 フロント
TN-7 リア
概要
製造国 日本の旗 日本
販売期間 1975年8月-1977年6月
ボディ
乗車定員 2名
ボディタイプ 2ドア キャブオーバー型 軽トラック
駆動方式 MR
パワートレイン
エンジン 空冷 直2 SOHC 354cc 27ps
変速機 4速MT
前:マクファーソンストラット+コイルスプリング
後:ド・ディオンアクスル+半だ円リーフスプリング
前:マクファーソンストラット+コイルスプリング
後:ド・ディオンアクスル+半だ円リーフスプリング
車両寸法
ホイールベース 1,780 mm
全長 2,990 mm
全幅 1,295 mm
全高 1,625 mm
系譜
先代 ホンダ・TN-V
後継 ホンダ・TNアクティ
テンプレートを表示

1975年(昭和50年)8月に昭和50年排出ガス規制適合により車名がTN-7に変更された。電動式ウインドーウォッシャーを本格装備し、ワイパースイッチと一体化される。荷台はパネルバンを除き一方開き仕様が廃止され、全車三方開きに統一された。

360 ccのままイギリスへ輸出されており、チーム・ロータスではJPSカラーを纏ったTN-7がタイヤの運搬などに使われていた[7]

1977年(昭和52年)に販売終了。ちなみに、日本の軽自動車としては最後の空冷エンジンを搭載した車種だった。

派生車種

[編集]

関連項目

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ ホンダ・ライフピックアップスズキ・マイティボーイなど。
  2. ^ なお「スノーラ」の商標2021年現在、同社の小型除雪機の商標に引き継がれている。
  3. ^ ―ホンダNシリーズ全車種をモデルチェンジ― ホンダ NIII360 ホンダ LNIII360 ホンダ TNIII360”. 本田技研工業 (1970年1月26日). 2-24-09-24閲覧。
  4. ^ 軽4輪トラック HONDA TN-V新発売”. 本田技研工業 (1972年6月15日). 2024年9月24日閲覧。
  5. ^ 自動車形式認証制度上、およびメーカー側はいずれもフルモデルチェンジ扱いとしているが、実質的には大規模なマイナーチェンジに過ぎなかった。
  6. ^ 道路運送車両の保安基準改正により、1973年(昭和48年)12月1日以降に生産された自動車は後方の方向指示器を燈色とすることが義務化された。
  7. ^ 1/43 ホンダ TN360 JPS チーム ロータス”. プラネックスコミュニケーションズ. 2022年4月29日閲覧。

外部リンク

[編集]