ホンダ・L型エンジン

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L13A 1.3L i-DSI エンジン
LDA 1.3L i-DSI+VCM エンジン

L型エンジン(Lがたエンジン)は、本田技研工業で製造されている小型車種及びハイブリッドカー用の直列4気筒ガソリンエンジンである。

機構[編集]

i-DSI[編集]

  • L12A,L13A,L15A

従来のD型の後継エンジンにあたる、直列4気筒 SOHC 8バルブ クロスフロー エンジンである。回転方向は、当時の同社 他型式エンジンと同様に逆時計回り[1]である。 次世代に向け、CO2の削減(燃費の向上)と排気ガスのクリーン化を両立しながら、走る楽しさ(動力性能の向上)との高次元での融合を目指したエンジンを、ホンダは「i-シリーズ」と称し、L型はその第2弾[2]である。

吸・排気バルブはそれぞれ1個で、タイミングチェーンで駆動されるカムシャフトにより、ロッカーアームを介し開閉される。そのロッカーアームの摺動部には動弁系のフリクションを低減するためにローラー機構を使用している。点火プラグが対角の位置に2個ずつ取付けられ、その1つ1つに点火コイルを装着し、エンジン回転や負荷に応じて最適なタイミングと位相で点火する。シリンダーヘッドの吸排気ポートは、燃焼室内にスワールが形成される形状にし、燃焼速度の向上を図っている。シリンダーブロックアルミ製で、シリンダークランクシャフトの中心軸がオフセットされ、ピストンとシリンダー間の摩擦抵抗の低減を図っている。

燃料供給装置はPGM-FI仕様のみで、インテークマニホールドの各気筒のポートにインジェクターが取付けられたマルチポイント式である。エンジン後方にエキゾーストマニホールドを取付けることにより、エンジンと三元触媒との間隔を近づけ、冷間時でも早期から排気ガスの浄化を可能にした。さらに、排気ガスを触媒のセル面に対して斜めにあて接触面積を増やし、浄化効率を向上させている。

i-DSI+VCM[編集]

  • LDA,LEA

シビックハイブリッド及び2代目インサイト用に開発され、可変バルブタイミング・リフト機構を応用し、減速回生時に一部または全気筒の吸・排気バルブを休止させ[3]ることにより擬似的に排気量を可変させ、吸/排気のポンピングロスを低減させている。これによりタイヤからの回転エネルギーを無駄なく発電機IMA用モーター)へ伝え、回生効率を向上させている。さらに、2代目シビックハイブリッド用は、3ステージi-VTEC(低速域:ローカム運転、高速域:吸気のみハイカムによる高出力運転、減速回生時:吸・排気バルブを休止)仕様となっている。 2代目シビックハイブリッド用及び2代目インサイト用にはエキゾーストマニホールドが無く、シリンダーヘッド内で隣り合う排気ポートが集合し、その直後に三元触媒が装備されている。

VTEC[編集]

  • L15A

吸・排気バルブはそれぞれ2個ずつで、高出力と実用性を両立するために、可変バルブタイミング・リフト機構が装備されている。低速域[4]で吸気バルブのうち片方を休止することにより、燃焼室内にスワールを形成させ、燃焼速度の向上を図る「VTEC-E」に類似した仕様である。

i-VTEC[編集]

  • L12B,L13A,L15A,LEA

前述したVTECと同様の、低速域で吸気バルブのうち片方を休止する仕様と、低速域と高速域で吸気バルブの開閉タイミング(バルブタイミング)とリフト量を変化させる仕様が存在する[5]スロットルバルブはDBWにより開閉されている。LDA後期仕様と同様にエキゾーストマニホールドが無く、シリンダーヘッド内で排気ポートが集合している。

EARTH DREAMS TECHNOLOGY[編集]

LFA[編集]

アコードハイブリッド用に開発されたアトキンソンサイクルエンジンで、型式こそL型となっているが、ベースはR型エンジンであるため各部の仕様は他のL型エンジンとは大きく異なる。動弁系はDOHC化され、吸気カムシャフトにはVTECと電動VTCを組合せたi-VTECが装着されている。ロッカーアームやクランクシャフトなどが大幅に軽量化され、水冷EGRの採用などと合わせて、多くの条件の中で熱効率の向上や冷却損失の低減が図られている。

吸気カムシャフトには燃費用と出力用のカムがあり、VTECにより状況に合わせて切り替えられる。出力用カムは燃費用カムより狭い作用角が与えられており、吸気バルブが早めに閉じることで吸気の充填効率を上げ、出力を向上させる。電動VTCはエンジン再始動時の振動を低減(吸気弁の遅閉じデコンプ制御)を可能にする目的もある。吸気バルブの遅閉じにより、圧縮比は13.0と高く設定されている。

その他、従来ベルトなどで駆動していた冷却水用ポンプやエアコン用コンプレッサーなども電動化され、補機ベルトが不要になったことによるフリクション低減やエンジン全長の短縮も図られている。

L13B[編集]

3代目フィットに初搭載されたアトキンソンサイクルエンジン。DOHC化され吸気側では吸気遅閉じのアトキンソンサイクルを実現する広開角カムと通常の狭開角カムを持つVTECを採用。エンジンが低回転時と、高回転高負荷時に狭開角カムを使用する。さらに吸気側に電動VTCを採用し遅閉じ制御やオーバーラップ制御を行う。圧縮比は13.5で、クールドEGRも採用する。

L15B[編集]

3代目フィットに初搭載されたDOHC直噴エンジン。吸気側にはVTCとともに低速カムと高速カムによる高出力型VTECを採用する。圧縮比は11.5。 点火プラグの小径化によってバルブ径を拡大し吸気効率をアップ、ポンピングロスを低減している。クランクシャフトではジャーナル径を50mmから46mmにサイズダウン、バランスウェイトも減らして軽量化している[6]

歴史[編集]

  • 2001年6月21日に発表されたフィットに、1,300cc i-DSIのL13Aが初めて採用された。
  • 2001年12月13日に発表されたシビックハイブリッドに、1,300cc i-DSI 3気筒休止VTECのLDAが採用された。
  • 2002年9月18日に発表されたモビリオスパイクに、4バルブ VTECのL15Aが採用された。
  • 2005年9月22日に発表された2代目シビックハイブリッドのLDAに、全気筒休止モードなどを追加した3ステージi-VTECが採用された。
  • 2007年10月18日に発表された2代目フィットに、i-VTEC化されたL13AとL15Aが採用された。
  • 2013年6月20日に発表された2代目アコードハイブリッドに、EARTH DREAMS TECHNOLOGYを投入した2,000ccのLFAが初めて採用された。
  • 2013年9月5日に発表された3代目フィットに、筒内直接噴射(直噴)仕様のL15Bが採用された。

バリエーション[編集]

L12B[編集]

  • 弁機構:SOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,198 cc
  • 内径×行程:73.0mm× 71.58mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GG1 ジャズ)
    • 最高出力:66kW(90PS)/6,200rpm
    • 最大トルク:114N·m(11.2kg·m)/4,900rpm
  • ジャズ(GG1/2/5)
  • ブリオ(アジア新興国専用車種)
  • ブリオアメイズ(アジア新興国専用車種)

L13B[編集]

  • 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,317cc
  • 内径×行程:73.0mm×78.7mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GK3 フィット)
    • 最高出力:73kW(100PS)/6,000rpm
    • 最大トルク:119N·m(12.1kg·m)/5,000rpm
  • フィット(GK3/4)

L15A[編集]

i-VTEC仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,496cc
  • 内径×行程:73.0mm×89.4mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GE8 フィット)
    • 最高出力:88kW(120PS)/6,600rpm
    • 最大トルク:145N·m(14.8kg·m)/4,800rpm
  • フリード(GB3/4)
  • フリードスパイク(GB3/4)
  • フィットシャトル(GG7/8)

L15B[編集]

  • 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,496cc
  • 内径×行程:73.0mm×89.4mm
  • 燃料供給装置形式:筒内直接噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GK5 フィット)
    • 最高出力:97kW(132PS)/6,600rpm
    • 最大トルク:155N·m(15.8kg·m)/4,800rpm
  • フィット(GK5/6)
  • ヴェゼル(RU1/2)

LDA[編集]

i-DSI+VCM仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気1 排気1
  • 排気量:1,339cc
  • 内径×行程:73.0mm×80.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(ZE2 インサイト)
    • 最高出力:65kW(88PS)/5,800rpm
    • 最大トルク:121N·m(12.3kg·m)/4,500rpm
  • インサイト(ZE2)
  • フィットシャトルハイブリッド(GP2)

LEA[編集]

i-VTEC仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,496cc
  • 内径×行程:73.0mm×89.4mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(ZF2 CR-Z)
    • 最高出力:88kW(120PS)/6,600rpm
    • 最大トルク:145N·m(14.8kg·m)/4,800rpm
  • CR-Z(ZF2)
  • インサイト(ZE3)

i-DSI+VCM仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気1 排気1
  • 総排気量:1,496cc
  • 内径×行程:73.0mm×89.4mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
  • 参考スペック(GP3 フリードハイブリッド)
    • 最高出力:65kW(88PS)/5,400rpm
    • 最大トルク:132N·m(13.5kgf·m)/4,200rpm
  • フリードハイブリッド(GP3)
  • フリードスパイクハイブリッド(GP3)

LEB[編集]

ポートインジェクション仕様[編集]

  • 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,496cc
  • 内径×行程:73.0mm×89.4mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GP5 フィットハイブリッド)
    • 最高出力:81kW(110PS)/6,000rpm
    • 最大トルク:134N·m(13.7kg·m)/5,000rpm
  • フィットハイブリッド(GP5)

直噴仕様[編集]

  • 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,496cc
  • 内径×行程:73.0mm×89.4mm
  • 燃料供給装置形式:筒内直接噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(RU3 ヴェゼルハイブリッド)
    • 最高出力:97kW(132PS)/6,600rpm
    • 最大トルク:156N·m(15.9kg·m)/4,600rpm
  • ヴェゼルハイブリッド(RU3/4)

LFA[編集]

  • 弁機構:DOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,993cc
  • 内径×行程:81.0mm×96.7mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(CR6 アコードハイブリッド)
    • 最高出力:105kW(143PS)/6,200rpm
    • 最大トルク:165N·m(16.8kg·m)/3,857 - 8,000rpm
  • アコードハイブリッド(CR6)
  • アコードプラグインハイブリッド(CR5)

存在したバリエーション[編集]

L12A[編集]

  • 弁機構:SOHC チェーン駆動 吸気1 排気1
  • 排気量:1,246cc
  • 内径×行程:73.0mm×74.4mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GD5 ジャズ)
    • 最高出力:57kW(78hp)/5,700rpm
    • 最大トルク:110N·m(81 lbf·ft)/2,800rpm

L13A[編集]

i-DSI仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC チェーン駆動 吸気1 排気1
  • 排気量:1,339cc
  • 内径×行程:73.0mm×80.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GD1 フィット)
    • 最高出力:63kW(86PS)/5,700rpm
    • 最大トルク:119N·m(12.1kg·m)/2,800rpm

i-VTEC仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,339cc
  • 内径×行程:73.0mm×80.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GE6 フィット)
    • 最高出力:73kW(100PS)/6,000rpm
    • 最大トルク:127N·m(13.0kg·m)/4,800rpm

L15A[編集]

i-DSI仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC チェーン駆動 吸気1 排気1
  • 排気量:1,496cc
  • 内径×行程:73.0mm×89.4mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GJ3 パートナー)
    • 最高出力:66kW(90PS)/5,500rpm
    • 最大トルク:131N·m(13.4kg·m)/2,700rpm

VTEC仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,496cc
  • 内径×行程:73.0mm×89.4mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(GJ1 エアウェイブ)
    • 最高出力:81kW(110PS)/5,700rpm
    • 最大トルク:143N·m(14.6kg·m)/4,800rpm

LDA[編集]

i-DSI+VCM仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC i-VTEC チェーン駆動 吸気1 排気1
  • 排気量:1,339cc
  • 内径×行程:73.0mm×80.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(ES9 シビックハイブリッド)
    • 最高出力:63kW(86PS)/5,700rpm
    • 最大トルク:119N·m(12.1kg·m)/3,300rpm

i-DSI+3Stage i-VTEC仕様[編集]

  • 弁機構:SOHC 3Stage i-VTEC チェーン駆動 吸気1 排気1
  • 排気量:1,339cc
  • 内径×行程:73.0mm×80.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(FD3 シビックハイブリッド)
    • 最高出力:70kW(95PS)/6,000rpm
    • 最大トルク:123N·m(12.5kg·m)/4,600rpm

搭載されていた車種[編集]

L12A[編集]

  • シティ(GE1)
  • ジャズ(GD5)

L13A[編集]

L15A[編集]

LDA[編集]

LEA[編集]

  • CR-Z(ZF1)
  • フィットハイブリッドRS(GP4)

脚注[編集]

  1. ^ 出力取出軸端より見た時の回転方向。JIS B 8001による。なお、J型エンジン以前に開発された他型式エンジンは、時計回りであった。
  2. ^ 「i-シリーズ」第1弾は、K型エンジン。
  3. ^ 初代シビックハイブリッドは3気筒を、2代目シビックハイブリッド及びインサイトでは4気筒すべてを休止させる。
  4. ^ エンジン回転数の正式名称はエンジン回転速度。 JIS B 0108-1による。
  5. ^ 登場当初のi-VTECは、吸気量の検出方法を改良し、既存のVTECに位相可変機構VTCを組み合わせたものを指していた。その後、VTCに限らず何らかの新機軸を盛り込んだVTECをi-VTECと称するようになった。
  6. ^ http://www.hondanews.com/channels/honda-automobiles-fit/releases/2015-honda-fit-powertrains

関連項目[編集]

外部リンク[編集]