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漆器お椀に盛りつけた御飯

(めし、いい、はん、まんま)とは、イネ科、あるいはキビ亜科の穀物に、を加えて汁気が残らないように炊いた、あるいは蒸した食品である。また、食事の別名でもある。「めし」は本来「召し上がる物」という意味であり、古に高貴な人の行動を直接「食ふ(食う)」と表現するのは憚られるので間接的に「召す」と表現したことに由来し、日本語に継続的に生じている「敬語インフレーション」(初めは尊敬を込めた表現でも、長く使っているとありがたみが薄れて普通またはそれ以下の表現になる)という現象により、現在はややぞんざいな表現になった。丁寧語は「御飯」(ごはん)。幼児語は「まんま」。老人語は「まま」。現在では特にを炊いた食品を指す言葉となっている。以下でも主に米を炊いた飯を中心に述べる。

概要[編集]

人は生米等のβデンプンをほとんど消化できず、食べてもうまみを感じないが、炊飯の加水と加熱により、消化が良いαデンプンに変化(α化)した飯にはうまみを感じるようになる。室温以下で保存すると、冷めて冷やご飯となるが、時間の経過と共にαデンプンがβデンプンに戻っていき(デンプンの劣化)、硬くなる。消化が悪くなり、味も劣化する。温め直せばα化する(焼いて作られた食パントーストすることに相当する)。保温すれば「デンプンの劣化」は防げるが、質が劣化し臭くなる。酢飯は冷めても硬くなりにくい。電子レンジで加熱調理する無菌パック入りの製品も市販されている。(→包装米飯

最近では、健康志向で後述の雑穀飯や発芽玄米、あるいは白米にカルシウム等ミネラルの添加剤も混ぜた調理もなされる。

なお、食事全般を指す場合は、米飯を含まない食事にも用いられる。特に「朝飯」「朝御飯」(朝食)、「昼飯」「昼御飯」(昼食)、「夕飯」「夕御飯」「晩飯」「晩御飯」(夕食)、「夜飯」「夜御飯」(夜食)等と言った場合は顕著である。「夜飯」、「夜御飯」は夕食を指すこともある。「午飯」(ごはん)と言えば、昼食のことである。

種類[編集]

  • 米飯
冒頭の記述の通り、元来は米、麦、キビ亜科穀物全般を炊いたものを飯と呼ぶが、現在では米を炊いたものを指すのが一般的である。米であることを明確にする場合は、「米飯」(べいはん)、「飯米」(はんまい)や「米の飯」と言う。
玄米白米双方とも用いられるが、現代の日本の食生活では白米を炊く例が一般的である。白米の米飯は白く、銀しゃりとも呼ばれる。白米の米飯は、デンプンの割合が多いほど、食感に日本人好みの粘りがあり、良食味米はタンパク質等のデンプン以外の成分が少ない。玄米はデンプン以外の栄養成分を多く含む。通常はうるち米を用いる。もち米を用いることもあるが、後述するように「おこわ」と称し、普通の米飯とは区別される。
日本国内で最も食べられている主食だが、割合は減少している。味付けが行われていないため、基本的に味のついた副食(おかず)と一緒に食するのが普通であり、単独では食べない(後述の他の飯の場合でも、味付けがなされていないものは同様である)。しかし、ふりかけなどで味付けすればおかず無しで単独で食べられるほか、丼ものと呼ばれる米飯の上に具を載せた料理もある。また「美味しいご飯があればおかずは要らない」等と言う人がいるが、栄養学的には問題がある。
  • 麦飯
または麦と米の飯を「麦飯」と言う。普通は大麦である。但し、外食産業等で米に二つ割の大麦を混ぜて炊いた飯は通常麦飯と呼ばない。
  • 雑穀飯
米以外の穀物(麦を含める場合と含めない場合とがある)を雑穀と称し、これらを炊いた飯、あるいは米と混ぜて炊いた飯を雑穀飯と呼ぶ。江戸時代以前の日本においては米飯を食べられる階層は限られ、大多数は雑穀飯を主に食べられていたと考えられている。寒冷で稲作に適しているとは言えない東北地方においてはこの傾向が著しく、明治時代以降においても、あるいはそれらを米と混ぜて炊いた飯が食べられていた。現代においても健康志向や栄養学的観点から雑穀飯を食べる例が見られる。また稀な例であるが米と麦に対して食物アレルギーを持つ患者の場合は、雑穀飯を食べざるを得ない場合がある。米と混ぜ、あるいは単独で飯として炊いて食される雑穀は、主にキビ亜科である。現代の健康食としてはソバハトムギキヌアアマランサスも米と混ぜて飯として食される場合があるが、単独で飯として炊かれる例は無い。トウモロコシは日本では飯として炊かれる例はないが、北朝鮮では飯として炊かれる場合もあり、米飯が食べられない階層の主食となっている。は穀物ではあるが、これを単独で炊いたものを飯とは呼ばないが、米に混ぜて炊くことはある(後述)。
  • 炊き込みご飯
穀物(ほとんどは白米)に、魚介類野菜などの具を加え、炊き込んだ飯を「炊き込みご飯」「加薬飯(加薬ご飯)」「五目飯(五目御飯)」と言う。醤油食塩などで味付ける場合が多い。上記の通り豆は雑穀の一種ではあるが、それを混ぜ込んだものは雑穀飯ではなく、「豆ご飯」として、炊き込みご飯の一種とみなされる。
  • 混ぜご飯
穀物に具材を加えたという意味では炊き込みご飯と一緒であるが、まず飯を炊いた後に、具材を混ぜ合わせたものを混ぜご飯という。既に調理済・味付け済みの具材を混ぜ込むために、特に調味料を加えない場合が多い。
  • おこわ
もち米を蒸した(あるいは炊いた)ご飯を、あるいはもち米にそれ以外の食材を入れて蒸した(炊いた)ご飯を、「強飯(こわめし)」「おこわ」と呼ぶ。もち米に加える食材としてはアズキが特に多く、ご飯に赤い色がつく事から、これを赤飯と呼ぶ。現代ではもち米のご飯と言えばほとんどが赤飯であり、おこわ、強飯と言っても実は赤飯である場合が多い。アズキ以外の食材を入れた場合は、特にその食材の名を頭につけて、山菜おこわ、おこわ、等と呼ぶ。アズキを入れずに代わりに入れる場合と、アズキとアズキ以外の食材を両方入れる場合とがある。

炊飯法[編集]

炊飯法には炊き干し法、湯取り法、湯立て法、炒め煮、蒸しの5種類がある[1]

炊き干し法
米の量に対する水の量の比が一定で、水が多い段階では米を煮る状態、水の少なくなった段階では米を蒸す状態とし、水分は蒸発分以外すべて米に吸収させる方法[1][2]。現代の日本で行われている一般的な炊飯である。中国江蘇省以北や朝鮮半島などでも用いられる方法[2]
湯取り法
水によく浸した米を、多量の水で煮て、沸騰後にザルに上げるなどして重湯を取り、それを蒸籠などに移して蒸らす方法である[1][3][4]。重湯は捨てられることはなく、蕎麦湯のように食後の飲料に用いられたり、他の料理に活用された。また、江戸時代以前にはこの方法で炊いた米を干して携帯食の干し飯(ほしいい)とした[4]。日本の場合、江戸時代までは炊き干しと湯取りの二つの方法が併存していたが、次第に炊き干し法が優勢となり、湯取り法は廃れてしまった。湯取り法は東南アジアなどで用いられてきた方法である[2]。飯の粘り気を嫌う国々では、湯取り法が好まれる傾向が強い。またインディカ米は炊き干しでは臭いが残るので、湯取りにしたほうが美味しく炊ける。ただし現代の炊飯器では炊き干し法にならざるを得ないため、インディカ米が食べられる国でも炊飯器の普及とともに炊き干しが一般的になりつつある。
湯立て法
沸騰させたお湯に研いだ米を入れて炊き上げるもの[1]。なお、江戸時代の炊き干し法は沸かした湯に研いだ米を入れて炊いたのちに蒸らしを行う湯炊きという方法が一般的であり、この湯炊きは現在でも寿司飯を炊く際などに用いられることがある[4]
炒め煮
研いだ米を一度油で炒めた上で水あるいはスープストックを用いて煮る方法[1][5]。西洋や西アジアの米料理で一般的な方法。ピラフパエリアなどは炒めた後に炊き干しにして米の外に水分を残さないが、リゾットのように水分が外に残るように調理する場合もある。
蒸す
現代日本では、主にもち米からおこわ・強米を炊く際に用いられ、儀礼食に用いられる方法で日常食の炊飯法ではないとされる[1][6]強飯を参照)。また、飯として食する目的ではなく、をつく際の前段階として、もち米を蒸す場合が多い。平安時代以前には、うるち米を炊く場合においても、蒸す方法が一般的であった。

炊飯の過程[編集]

以下では今日一般的となっている炊き干し法を中心に述べる。

洗米[編集]

日本では、白米を炊く場合、表面に付いているを、炊く前に水で洗い落とす(洗米)(昔から米を「とぐ」というが、現在は精米技術が向上しているため市販されている白米には糠がさほど残っておらず、力を入れて研ぐのは意味がないばかりか、米が割れて炊きあがりにムラができることがある)。食堂など大量の炊飯が必要となる厨房などでは洗米に専用の洗米機が用いられることもある。なお、洗わずに炊ける無洗米も市販されている。

器具[編集]

象印製電気炊飯器

1950年代までは羽で炊飯するのが主流であったが、現在は主に電気炊飯器が用いられる。業務用や給食用の大量の炊飯はガス炊飯器が用いられることもある。ガス炊飯用に文化鍋という炊飯用アルミ鍋や、専用の土鍋も売られている。一般ので炊くことも可能であるが、密閉性が低いと、温度が均一に高まらず、うまく炊きあげるのにはコツがいる。アウトドアでは飯盒が用いられる。

高地では普通の炊飯器で炊くと水の沸点が下がるので、米粒に芯が残るようになり、標高約2500m以上で94℃以下では長く加熱しても飯にはならず、最終的にになる。圧力釜を使うか、アルファ化米を使う必要がある。一般の鍋を使うなどして、炊く際に温度むらが出て芯が残った場合、茶碗等に移して電子レンジで長めに再加熱すると解消できる。

玄米を炊くと、胚乳は膨らみ、糠層は膨らまないので破れる。糠層も消化良く炊くには、低地でも圧力釜が要る。普通の炊飯器で炊くと、トウモロコシの穀粒の皮と同様に糠層の消化が悪く、食感も悪くぼそぼそになる。圧力釜で炊けば、食感も良く炊ける。発芽玄米は普通の玄米より普通の炊飯器で炊くのに適しているため、玄米食増加に貢献しているが、やはり圧力釜で炊いた方が良い。玄米は白米より栄養豊富だが、発芽玄米は更に栄養豊富なうえ、普通の玄米より消化も味も良い。 炊く以外に、蒸籠蒸しをする方法がある。古代は(こしき)を使って蒸す方法も取られた。現在の日本では、うるち米は炊き、もち米は蒸すことが多い。赤飯は通常蒸して作る。ちまきは笹に巻いて蒸す。もち米を蒸して搗く(つく)とになる。

保存と配膳[編集]

飯櫃に入れた御飯。木の香りが米に移って独特の美味になる。

炊いた後の飯については、ジャーの登場以前は飯櫃という容器に移し入れて保存されることが多かった。

通常、炊かれた飯はしゃもじを用いて器に盛りつけられるが、型抜きされて器に盛りつけられることもある(物相飯という)。

白米の炊飯例[編集]

  1. 分量
    2人分1合半、3人分2合、4人分3合が目安。1とは180ミリリットルのこと。重量は約150グラム
  2. 洗米
    釜に水を入れ、攪拌(かくはん)すると、水が白く濁るので水を捨てる。繰り返して洗うほど、ぬか臭さ等がなくなる。日本では、水が澄むまで繰り返す人が多いが、そこまでぬかを嫌うなら、通常は無洗米の方が効率的である。
  3. 水加減
    一般的に米の20%増しの分量といわれる。1合の場合水約200ミリリットル。30分ほど水に浸して水分を吸わせる。
  4. 炊飯
    炊飯器で炊く場合はスイッチを入れるだけで良いことが多い。を使う場合は、最初は強火で炊き、蓋がコトコトしてきたら10分ほど弱火で炊く。最後にもう一度強火にし、すぐに火を止める。
  5. むらし
    炊きあがってから10 - 15分ほど蒸らす。蒸らし足りないと米に芯が残るが(めっこ飯)、蒸らしすぎるとベチャベチャになってしまう。蒸らし終わったらよくかき混ぜる。
  6. 保存
    炊飯ジャーの場合はそのままで保温されるが、1日後に食べるなら冷蔵庫に、2日以上後に食べるなら冷凍庫に入れて保存し、食べる時に電子レンジ等で加熱する。

代表的な飯の料理[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 野本寛一編『食の民俗事典』柊風舎 p.170 2011年
  2. ^ a b c 佐藤洋一郎編『食の文化フォーラム26米と魚』ドメス出版 p.127 2008年
  3. ^ 佐藤洋一郎編『食の文化フォーラム26米と魚』ドメス出版 p.128 2008年
  4. ^ a b c 落合敏監修 『食べ物と健康おもしろ雑学』 p.80 梧桐書院 1991年
  5. ^ 佐藤洋一郎編『食の文化フォーラム26米と魚』ドメス出版 p.131 2008年
  6. ^ 佐藤洋一郎編『食の文化フォーラム26米と魚』ドメス出版 p.127 2009年

関連項目[編集]