マンサフ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

マンサフ(Mansaf、アラビア語: منسف‎)は、伝統的なヨルダン料理英語版のひとつ[1][2][3][4][5]。発酵させた乾燥ヨーグルトのソースで羊肉を調理した肉料理で、ブルグァ(火にあぶり乾燥させた麦を砕いたもの)と一緒に供する。マンサフはヨルダンの国民食である[6][7][8][9]。マンサフはヨルダン川西岸地区の一部にも見られる。マンサフという名称は、「大きな皿」を意味する表現に由来する[10]。別の説では、「手で食べる」という意味であるともいう[11]

準備[編集]

羊肉は、ジャミード英語版と呼ばれる発酵させてから乾燥させたヨーグルト製品から作られた一種のブロードで煮込まれ、大皿にマルクーク英語版ないしシュラークといった種無しパン英語版を敷いた上で米を載せ、さらにその上に肉を置き、アーモンド松の実を飾り付けて、全体にソースをかける。バハラット英語版と呼ばれる調合された香辛料で、独特の風味が加えられる。

文化的意義[編集]

マンサフはヨルダン固有の料理であり[12]、ヨルダン料理の中でも最も特徴のある一品であって[13]、ヨルダンの国民食である。このため、ヨルダンの文化においては、マンサフを供することは気前のよさを最も端的に象徴する行いである。歴史学者で人類学者のユーセフ・ガワンメー (Yousef Ghawanmeh) が著書『The cultural history of Jordan during the Mamluk period 1250-1517(マムルーク朝ヨルダンの文化史)』において論じているように、マンサフは、伝統的なヨルダン文化の基層にある、肉やヨーグルトが入手しやすい、農業と牧畜が結びついた生活様式を反映したものである。マンサフは結婚式や子どもの誕生、卒業、客のもてなし、さらにイード・アル=フィトルイード・アル=アドハー(いずれもラマダーン明けの祝日)、クリスマス復活祭、ヨルダン独立記念日などの祝日など、特別な行事があるときに供される。伝統的な、ベドウィン遊牧民)や農村部の習慣では、会食する皆が大皿を取り囲み、左手を背中に回し、道具は用いず右手だけを使い、直接大皿から料理を取って食べる。ヨルダン西部のカラクは、広くマンサフの「都」と認識されている[14]

地方と変種[編集]

カラクサルトの周辺は、ヨルダンでも最高のマンサフが供される本場とされている[15]。この料理には、各地の味覚や環境に応じて生み出された変種がいろいろある。魚のマンサフは、ヨルダン南部の港町アカバに見られる。より都市化された、儀式性が薄い形のマンサフとして、乾燥させないヨーグルトを用いたシャクレイエー (shakreyyeh) という料理もある。これは、羊肉の代わりに鶏肉を用いて調理され、ヨルダン北部では一般的な料理となっている。

出典・脚注[編集]

  1. ^ Annals of the caliphs' kitchens: Ibn Sayyār al-Warrāq's tenth-century Baghdadi cookbook”. 2012年6月24日閲覧。
  2. ^ Reference Library of Arab America: Countries & ethnic groups, Algeria to Jordan”. 2012年6月24日閲覧。
  3. ^ Mansaf”. University of Illinois (1996年11月20日). 2011年3月22日閲覧。
  4. ^ Countries around the world: Jordan”. 2012年6月24日閲覧。
  5. ^ Travel guide: Jordanian Cuisine”. 2012年6月24日閲覧。
  6. ^ Visit Jordan: Feasting in Jordan”. 2012年6月24日閲覧。
  7. ^ Jordan - Jordanian Cuisine”. Kinghussein.gov.jo. 2011年3月22日閲覧。
  8. ^ Mansaf”. University of Illinois (1996年11月20日). 2011年3月22日閲覧。
  9. ^ Jordan National Dish, Mansaf - Waleg Kitchen”. Waleg.com (2005年5月11日). 2011年3月22日閲覧。
  10. ^ Middle Eastern Kitchen”. 2012年6月24日閲覧。
  11. ^ 「ヨルダン料理 羊肉のヨーグルトソースかけごはん「マンサフ」」、『JICA's World』第45号2012年6月1日、 35頁、 ISSN 1883-2768
  12. ^ Reference Library of Arab America: Countries & ethnic groups, Algeria to Jordan”. 2012年6月24日閲覧。
  13. ^ Visit Jordan: Feasting in Jordan”. 2012年6月24日閲覧。
  14. ^ Mansaf: the national dish of Jordan”. 2012年6月24日閲覧。
  15. ^ Recipes and remembrances from an Eastern Mediterranean kitchen: a culinary journey through Syria, Lebanon, and Jordan”. 2012年6月24日閲覧。

文献[編集]

  • The Jordan Heritage Encyclopedia vol. 1-5: Rox Bin Za’id Al-Uzaizi.
  • Cultural history of Jordan during the Mamluk period 1250-1517 : Professor Yousef Ghawanmeh.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • Mansaf”. University of Illinois (1996年11月20日). 2011年3月22日閲覧。