「機動戦士ガンダム」の版間の差分

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[[スペースコロニー]]への宇宙移民が始まって半世紀あまりが過ぎた未来世界、[[宇宙世紀]]0079年が舞台である。人類は増え過ぎた人口を[[月]]軌道周辺にある[[ラグランジュ点]]に浮かぶ[[スペースコロニー]]群([[サイド]]と呼ばれる)に居住させていた。その中で地球から最も遠いコロニー群[[サイド3]]は[[ジオン公国]]を名乗り、[[地球連邦軍|地球連邦]]からの独立を求め、人型機動兵器「'''[[モビルスーツ]](MS)'''」を駆使して[[一年戦争|独立戦争]]を挑んできた。開戦から僅か1ヶ月あまりで双方の陣営は総人口の半分を死に至らしめた。
[[スペースコロニー]]への宇宙移民が始まって半世紀あまりが過ぎた未来世界、[[宇宙世紀]]0079年が舞台である。人類は増え過ぎた人口を[[月]]軌道周辺にある[[ラグランジュ点]]に浮かぶ[[スペースコロニー]]群([[サイド]]と呼ばれる)に居住させていた。その中で地球から最も遠いコロニー群[[サイド3]]は[[ジオン公国]]を名乗り、[[地球連邦軍|地球連邦]]からの独立を求め、人型機動兵器「'''[[モビルスーツ]](MS)'''」を駆使して[[一年戦争|独立戦争]]を挑んできた。開戦から僅か1ヶ月あまりで双方の陣営は総人口の半分を死に至らしめた。


そんな中、[[サイド7]]に住む少年'''[[アムロ・レイ]]'''は、[[地球連邦軍]]が進めていた「[[V作戦]]」に対する調査のためコロニーに侵入した[[ジオン軍]]MS [[ザク]]<!--後に『GUNDAM CENTURY』や『[[モビルスーツバリエーション|MSV(モビルスーツバリエーション)]]』などにおいて、いわゆるザクは『[[ザクII]]』、シャア専用ザクは『[[ザクII#指揮官用ザクII|指揮官用ザクII]]』と設定された。-->の攻撃に巻き込まれ偶然が重なり、連邦軍の新型MS '''[[ガンダム (架空の兵器)|ガンダム]]'''の[[操縦士|パイロット]]になってしまう。ガンダムの性能もあり敵MSを撃退することはできたものの、ガンダムの母艦である[[ホワイトベース]](W.B.)は正規乗組員のほとんどを失い、アムロをはじめこれに避難した少年少女たちは生き残った乗組員達と協力しながらサイド7を脱出する。しかし宇宙には、赤く塗装した専用のザクを駆り数々の戦果を挙げたことから「'''赤い彗星'''」と呼ばれるジオン軍のエースパイロット、'''[[シャア・アズナブル]]'''が待ち構えていた。
そんな中、[[サイド7]]に住む少年'''[[アムロ・レイ]]'''は、[[地球連邦軍]]が進めていた「[[V作戦]]」に対する調査のためコロニーに侵入した[[ジオン軍]]MS [[ザク]]の攻撃に巻き込まれ偶然が重なって連邦軍の新型MS '''[[ガンダム (架空の兵器)|ガンダム]]'''の[[操縦士|パイロット]]になってしまう。ガンダムの性能もあり敵MSを撃退することはできたものの、ガンダムの母艦である[[ホワイトベース]]は正規乗組員のほとんどを失い、アムロをはじめこれに避難した少年少女たちは生き残った乗組員達と協力しながらサイド7を脱出する。しかし宇宙には、赤く塗装した専用のザクを駆り数々の戦果を挙げたことから「'''赤い彗星'''」と呼ばれるジオン軍のエースパイロット、'''[[シャア・アズナブル]]'''が待ち構えていた。


この物語は、アムロ達が長年の宿敵となるシャアをはじめ、様々な人々との出会いや戦い、そして別れを経て数々の困難を乗り越え、閉鎖的な極限状態に悩み傷つき、一時的に逃避しながらも一歩ずつ成長していく少年達の姿を描いている。
この物語は、宿敵シャアをはじめ、様々な人々との出会いや戦い、そして別れを経て数々の困難を乗り越え、閉鎖的な極限状態に悩み傷つきながらも一歩ずつ成長していくアムロたちの姿を描いている。


== 作品解説 ==
== 作品解説 ==
『[[無敵超人ザンボット3]]』、『[[無敵鋼人ダイターン3]]』に続く日本サンライズのオリジナル作品第3作として、富野喜幸(現・[[富野由悠季]])を監督に据え、玩具メーカーの[[クローバー (玩具メーカー)|クローバー]]をメイン[[スポンサー]]として企画・制作された。対象年齢を従来より引き上げた、ロボットものとしては最初の[[ジュブナイル]]アニメである。
『[[無敵超人ザンボット3]]』、『[[無敵鋼人ダイターン3]]』に続く日本サンライズのオリジナル作品第3作として、富野喜幸(現・[[富野由悠季]])を監督に据え、玩具メーカーの[[クローバー (玩具メーカー)|クローバー]]をメイン[[スポンサー]]として企画・制作された。対象年齢を従来より引き上げた、ロボットものとしては最初の[[ジュブナイル]]アニメである。


ロボットアクション以上に、主人公の社会的成長が物語の主軸に据えられている。また、[[戦争]]を舞台としたリアリティに富んだ人間ドラマと、ロボットを「モビルスーツ」と呼ばれる[[兵器]]の一種として扱う設定を導入したことで、80年代初頭から半ばにかけての、後に“[[リアルロボット]]”と称されることになる一連の作品によるロボットアニメ変革の先駆けとなった<ref>なお、富野はガンダムのよ作品を「ハードロボットもの」と呼んでいる</ref>。
ロボットアクション以上に、主人公の社会的成長が物語の主軸に据えられている。また、[[戦争]]を舞台としたリアリティに富んだ人間ドラマと、ロボットを「モビルスーツ」と呼ばれる[[兵器]]の一種として扱う設定を導入したことで、80年代初頭から半ばにかけての、後に“[[リアルロボット]]もの”と称されることになる一連のロボットアニメ変革の先駆けとなった<ref group="註">なお、富野はした作品を「ハードロボットもの」と呼んでいる</ref>。


それらの要素が放映当時の10代半ば以上の視聴者を中心に人気を博し、本放送終了後の1981年から1982年にかけて劇場版3部作の制作に結びついた。1980年代を代表する作品であり、1970年代の『[[宇宙戦艦ヤマト]]』 、1990年代の『[[新世紀エヴァンゲリオン]]』と並び、後々のアニメへ影響を与えた作品である。
それらの要素が放映当時の10代半ば以上の視聴者を中心に人気を博し、本放送終了後の1981年から1982年にかけて劇場版3部作の制作に結びついた。1980年代を代表する作品であり、1970年代の『[[宇宙戦艦ヤマト]]』 、1990年代の『[[新世紀エヴァンゲリオン]]』と並び、後々のアニメへ影響を与えた作品である。
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なお、本作は後に続々と制作されていく「ガンダムシリーズ」と呼ばれる一連の作品群の第1作目であることから、ファンからは'''ファーストガンダム'''の異名で呼ばれることも多い。
なお、本作は後に続々と制作されていく「ガンダムシリーズ」と呼ばれる一連の作品群の第1作目であることから、ファンからは'''ファーストガンダム'''の異名で呼ばれることも多い。


=== 作品の特徴とそれ以前の作品との比較 ===
=== 作品の特徴 ===
本作以前の1970年代当時は『[[宇宙戦艦ヤマト]]』や『[[ルパン三世]]』といった作品の盛り上がりによりアニメ視聴者層の対象年齢が広がりつつある時期ではあったが、『[[マジンガーZ]]』によって開拓されたロボットアニメというジャンルについては、玩具メーカーであるスポンサーの関連商品の購買層が小学生以下に限られていたため対象年齢の低下が進み、いわゆる「お子様向け」の内容を脱することができずにいた<ref>『[[超電磁マシーン ボルテスV]]』や『[[闘将ダイモス]]』のように中高生を対象とする作品もあったが、『闘将ダイモス』は玩具販売が低迷。スポンサーの要請により小学生以下向けに修正させられ、中高生向け路線を定着させることができなかった(コン・バトラーV ボルテスV ダイモス ダルタニアス 大全)</ref>。ところが本作ではスペースコロニーという設定を持ち込むことで、敵も味方も同じ人間どうしの「戦争」という状況をシリーズの中で描き出す試みが行われた。『ザンボット3』と『ダイターン3』の好調な販売成績のためにスポンサーからの干渉が少なかった<ref name="BCP" />ある。(このことに関して監督の富野由悠季は前2作の好調のため「スポンサーが『少し好きな話でどうぞ』と言ってきた」と述べているが<ref>KINO vol.2</ref>、山浦栄二によると前2作の好調を背景に「やりたいことで暴れさせてもらえないだろうか」とスポンサーに申し入れたとしている<ref name="GAGE" />)
本作以前の1970年代当時は『[[宇宙戦艦ヤマト]]』や『[[ルパン三世]]』といった作品の盛り上がりによりアニメ視聴者層の対象年齢が広がりつつある時期ではあったが、『[[マジンガーZ]]』によって開拓されたロボットアニメというジャンルについては、玩具メーカーであるスポンサーの関連商品の購買層が小学生以下に限られていたため対象年齢の低下が進み、いわゆる「お子様向け」の荒唐無稽な内容を脱することができずにいた<ref group="註">『[[超電磁マシーン ボルテスV]]』や『[[闘将ダイモス]]』のように中高生を対象とする作品もあったが、『闘将ダイモス』は玩具販売が低迷。スポンサーの要請により小学生以下向けに修正させられ、中高生向け路線を定着させることができなかった(双葉社『コン・バトラーV ボルテスV ダイモス ダルタニアス 大全)</ref>。ところが本作ではスペースコロニーという設定を持ち込むことで、敵も味方も同じ人間どうしの「戦争」という、より現実感のある状況を描き出す試みが出来た。『ザンボット3』と『ダイターン3』の好調な販売成績を受け、スポンサーからの干渉が少なかったためである<ref name="BCP" >{{Cite book|和書|author=柿沼秀樹、加藤智|year=2007|title=バンダイ キャラクタープラモ年代記―鉄人からヤマト、ガンダムま|publisher=学習研究社|isbn= 4054032826}}</ref><ref group="註">このことに関して監督の富野由悠季は「スポンサーが『少し好きな話でどうぞ』と言ってきた」と述べているが(KINO vol.2)、山浦栄二によると前2作の好調を背景に「やりたいことで暴れさせてもらえないだろうか」とスポンサーに申し入れたとしている(洋泉社『ガンダム・エイジ』)</ref>。


また、前述のとおり登場するロボットをモビルスーツと呼んで現実の兵器に近い描写を行ったのも本作の重要な試みの一つである。従来、主役ロボットには変形や合体など玩具として魅力的な[[ガジェット]]を備えることがスポンサーである玩具メーカーから求められており、本作の主役MS ガンダムも試作品という設定を付して同様のガジェットを組み込まれた<ref>上半身と下半身の間に[[コア・ファイター|小型戦闘機]]を変形させて組み込むという形を採り、僚機の「[[ガンキャノン]]」「[[ガンタンク]]」もこのシステムを取り入れた。これはクローバーの玩具で三機の上半身を入れ換えられるというギミックのためである。また、番組中盤でパワーアップパーツに相当する兵器「[[Gアーマー]]」が登場する</ref>。ところが本作では敵であるジオン軍MSに設定上「量産機」という概念を与え、作品のミリタリズムを高めた<ref>ただしこれは敵MSのシーンを[[バンクシステム]]で使い回すためでもある(月刊ascii2008年5月号)。例えば第1話のザクのシーンが第2話に既に利用されている</ref>。[[ミノフスキー物理学|ミノフスキー粒子]]という架空の粒子も設定され、[[レーダー]]や電波誘導兵器を攪乱・無効化することでMS同士の[[白兵戦]]に説得力を持たせた。従来の戦争物でおざなりになっていた[[兵站]]についても、兵器・物資補給シーンを描いたり[[マチルダ・アジャン|マチルダ]]など補給や整備に関わる人々のドラマを描いている。[[無重力]]状態の描写などにも注意が払われ、細かい設定によって作品世界に奥行きを持たせた作品となっている。
また、前述のとおり登場するロボットをモビルスーツと呼んで現実の兵器に近い描写を行ったのも本作の重要な試みの一つである。従来、主役ロボットには変形や合体など玩具として魅力的な[[ガジェット]]を備えることがスポンサーである玩具メーカーから求められており、本作の主役MS ガンダムも試作品という設定を付して同様のガジェットを組み込まれた<ref group="註">上半身と下半身の間に[[コア・ファイター|小型戦闘機]]を変形させて組み込むという形を採り、僚機の「[[ガンキャノン]]」「[[ガンタンク]]」もこのシステムを取り入れた。これはクローバーの玩具で三機の上半身を入れ換えられるというギミックのためである</ref>。ところが本作ではさらに、敵であるジオン軍MSに設定上「量産機」という概念を与え、ロボット描写のミリタリズムを高めた<ref group="註">ただしこれは敵MSのシーンを[[バンクシステム]]で使い回すためでもある(月刊ascii2008年5月号)。例えば第1話のザクのシーンが第2話に既に利用されている</ref>。[[ミノフスキー物理学|ミノフスキー粒子]]という架空の粒子も設定され、[[レーダー]]や電波誘導兵器を攪乱・無効化することでMS同士の[[白兵戦]]に説得力を持たせた。従来の戦争物でおざなりになっていた[[兵站]]についても、兵器・物資補給シーンを描いたり[[マチルダ・アジャン|マチルダ]]など補給や整備に関わる人々のドラマを描いている。[[無重力]]状態の描写などにも注意が払われ、細かい設定によって作品世界に奥行きを持たせた作品となっている。


主人公アムロはもちろん、彼をサポートする人々や敵対する兵士にも個性的な人物像がセリフや行動で描かれた。また必ずしも主人公サイドの連邦軍が一枚岩でない様子や、シャア・アズナブルの復讐劇の要素も交えつつ、全体のプロットには直接触れない登場人物までそれぞれが信念を持ってこの戦争を生き抜いている様子が描かれていることで、作品世界が豊かになっている。
主人公アムロはもちろん、彼をサポートする人々や敵対する兵士についても個性的な人物像がセリフや行動で描かれた。また必ずしも主人公サイドの連邦軍が一枚岩でない様子や、シャア・アズナブルの復讐劇の要素も交えて奥行きのあるドラマを展開。全体のプロットには直接触れない登場人物までそれぞれが信念を持ってこの戦争を生き抜いている様子が描かれ、従来作品に比して作品世界が豊かになっている。


本作の重要なキーワードの一つが「人類の革新『[[ニュータイプ]]』」である。[[超能力]]にも似た特別な感覚を得た人々として設定されたニュータイプは、当初は主人公アムロに超人的活躍をさせるためのアイデアだったが、やがて宿敵シャアもまたニュータイプであることが明かされ、そして同じくニュータイプである少女 [[ララァ・スン]]との出会いと3人の間で起こる悲劇を通じて、「人類の革新」とは何なのかという抽象的なテーマへと昇華された<ref>ただし富野は「実はニュータイプという単語も途中で作った」(週刊朝日ジャーナル1988年4月15日)と述べており、実際作中でニュータイプという言葉が登場するのは終盤である。後にテレビ版を再編集して作られた劇場版では、新作カットによりアムロがニュータイプとして覚醒する描写がテレビ版よりも前倒しで挿入された</ref>。
本作の重要なキーワードの一つが「人類の革新『[[ニュータイプ]]』」である。[[超能力]]にも似た特別な感覚を得た人々として設定されたニュータイプは、当初は主人公アムロに超人的活躍をさせるためのアイデアだったが、やがて宿敵シャアもまたニュータイプであることが明かされ、そして同じくニュータイプである少女 [[ララァ・スン]]との出会いと3人の間で起こる悲劇を通じて、「人類の革新」とは何なのかという抽象的なテーマへと昇華された<ref group="註">ただし富野は「実はニュータイプという単語も途中で作った」(週刊朝日ジャーナル1988年4月15日)と述べており、実際作中でニュータイプという言葉が登場するのは終盤である。後にテレビ版を再編集して作られた劇場版では、新作カットによりアムロがニュータイプとして覚醒する描写がテレビ版よりも前倒しで挿入された</ref>。


当時は「制作者側が自身の"作家性"を発揮できる余地が大きい最後の時代」とも言われている<ref>ascii2008年5月号</ref>。本作はロボットアニメという枠組を破綻させることなく、現実味を持たせた物語や設定によって、高年齢層の視聴に堪えうる作品作りが可能であることを示すこととなった。
当時は「制作者側が自身の"作家性"を発揮できる余地が大きい最後の時代」とも言われている<ref>{{Cite journal|和書|journal=ascii|issue=2008年5月号|publisher=アスキー・メディアワークス}}</ref>。本作はロボットアニメという枠組を破綻させることなく、現実味を持たせた物語や設定によって、高年齢層の視聴に堪えうる作品作りが可能であることを示すこととなった。


=== 企画の経緯 ===
=== 「フリーダム・ファイター」から「ガンダム」へ ===
本作の企画の根底には『[[宇宙戦艦ヤマト]]』のヒットがあった<ref>サンライズの吉井孝幸は本作の企画について、ある意味では『ヤマト』の二番煎じと語っている(講談社『ガンダム者』)</ref>。サンライズの[[山浦栄二]]は『ヤマト』の制作会社からデータを入手<ref>山浦はその時のことを「産業スパイみたいだけど」と述懐している(http://web.archive.org/web/20030218174409/www.sunrise-inc.co.jp/30th/03.html)</ref>。これによって解ったことは『ヤマト』の関連事業は一部の熱狂的なファンを相手にした商売だったということだった。さらに分析を進め、「ハイターゲットに絞って、30万-40万の熱狂的なファンをつかめば、それで十分に商売になる」という結論を得た<ref name="GAGE">ガンダム・エイジ</ref>。こうして本作は『ヤマト』と同じく中学生以上を取り込もうた<ref name="Gmono">講談社『ガンダム者</ref>ただしクローバーは小学校高学年までを本作の対象としている<ref>クローバーによると本作は「最近のSF・ロボット番組は低年齢層化が激しく、実際の商売になかなか結びつかない傾向も出ている。そこで『ガンダム』は、TV局や製作プロダクションの方ともよく協議して、小学校の高学年の子供たちが見ても充分楽しめるような番組にした」としている(トイジャーナル1979年5月号)</ref>。一方、富野は「ヤマトをつぶせ!」と強い反発を持っていた<ref>この反発のため『ヤマト』で多用された「愛」という言葉が本作では少ないとされている。劇場版で富野は「愛」という言葉に対する反発から「哀・戦士」を思いついたと述べている(ガンダムの現場から―富野由悠季発言集)。ちなみに後年の『機動戦士ΖガンダムIII-星の鼓動は愛-』では「愛」をタイトルにつけている</ref>。富野の反発をよそに本作はストーリーも『ヤマト』が手本とされたが、『ヤマト』ではドラマの幅が狭こととキャラクターの年齢が高すぎることが問題になった<ref name="Gmono" />。そこで『[[十五少年漂流記]]』から着想を得て、宇宙船に乗り込んだ少年少女が宇宙戦争の中で協力しながら生き延び成長するというストーリーに修正された。この時点では主人公たちは宇宙空母ペガサスに乗り宇宙戦闘機フリーダムファイターで異星人と戦うという設定だった<ref>この構想は後に[[神田武幸]]監督の手でロボットアニメ『[[銀河漂流バイファム]]』として制作された。『バイファム』の原案に富野由悠季の名前があるのはこのためである</ref>。
本作の企画の根底には『[[宇宙戦艦ヤマト]]』のヒットがあった<ref group="註">サンライズの吉井孝幸は本作の企画について、ある意味では『ヤマト』の二番煎じの発想と語っている講談社『ガンダム者』)</ref>。サンライズの[[山浦栄二]]は当時、『ヤマト』の制作会社からデータを入手<ref group="註">山浦はその時のことを「産業スパイみたいだけど」と述懐している(http://web.archive.org/web/20030218174409/www.sunrise-inc.co.jp/30th/03.html)</ref>『ヤマト』の関連事業は一部の熱狂的なファンを相手にした商売であることがわかり、「ハイターゲットに絞って、30万-40万の熱狂的なファンをつかめば、それで十分に商売になる」という結論を得た<ref name="GAGE">{{Cite book|和書|year=1999|title=ガンダム・エイジ―ガンプラ世代のためのガンダム読本 |publisher=洋泉社|isbn=4896913795}}</ref>結果、本作は『ヤマト』と同じく中学生以上を取り込むこになった<ref name="Gmono">{{Cite book|和書|year=2002|title=ガンダム者―ガンダムを創った男たち|publisher=講談社|isbn=4063301818}}</ref><ref group="註">ただしクローバーによると本作は「最近のSF・ロボット番組は低年齢層化が激しく、実際の商売になかなか結びつかない傾向も出ている。そこで『ガンダム』は、TV局や製作プロダクションの方ともよく協議して、小学校の高学年の子供たちが見ても充分楽しめるような番組にした」としている(トイジャーナル1979年5月号)</ref>。一方、富野は「ヤマトをつぶせ!」と強い反発を持っていた<ref group="註">この反発のため『ヤマト』で多用された「愛」という言葉が本作では少ないとされている。劇場版で富野は「愛」という言葉に対する反発から「哀・戦士」を思いついたと述べている(キネマ旬報社『ガンダムの現場から―富野由悠季発言集』)。ちなみに後年の『機動戦士ΖガンダムIII-星の鼓動は愛-』では「愛」をタイトルにつけている</ref>。富野の反発をよそに本作は作品構成も『ヤマト』が意識されたが、そのままでは活劇的な展開になりにくとキャラクターの年齢が高ことが問題になり、『[[十五少年漂流記]]』から着想を得て、宇宙船に乗り込んだ少年少女が宇宙戦争の中で協力しながら生き延び成長するというストーリーが構想された。この時点では主人公たちは宇宙ペガサスに乗り宇宙戦闘機で異星人と戦うという設定だった<ref name="Gmono" /><ref group="註">この構想は後に[[神田武幸]]監督の手でロボットアニメ『[[銀河漂流バイファム]]』として制作された。『バイファム』の原案に富野由悠季の名前があるのはこのためである</ref>。


このように当初の企画『'''フリーダムファイター'''』ではロボットを登場させる予定がなかったが、クローバーの小松志千郎社長は「こんな木馬みたいなオモチャ作っても商売にならないんだよ。やっぱりロボットを出してください」と要求した。困ったスタッフに相談を持ちかけられたSF作家で[[スタジオぬえ]]の一員でもある[[高千穂遥]]は、[[ロバート・A・ハインライン]]の[[SF小説]]『[[宇宙の戦士]]』の一読薦めた。これに掲載されている、[[宮武一貴]]による装甲強化服「パワードスーツ」の挿画を元に[[大河原邦男]]が「突撃攻撃型機動歩兵」をデザインした<ref>サンライズはスタジオぬえと付き合いがあったが、本作のメカデザインはぬえではなく大河原に発注された。これは[[安彦良和]]によるとぬえではデザインがマニアックで複雑なものになり、作画上の負担になることが懸念されたからである。大河原邦男の「大らかなメカデザイン」が「描きやすい」という評価を得ていた(講談社『ガンダム者』)</ref>。これは潜水服のようなもので『宇宙の戦士』と同じく全高2.5m程度のものだったがになった。次にデザインされたの長距離戦、中距離戦、白兵戦と距離別にタイプが違う三つのロボットだっそれぞれ後のガンタンク』『ガンキャノン』『ガンダムである<ref>宇宙時代なのでスタッフは銃にだわっていたが、演出は接近戦の武器も必要だった。「宇宙時代の兵隊にチャンバラをやらせるわけにはいかない」と悩んでいたスタッフにスタジオぬえは [[ライトセーバー]]の存在を示唆し、そこから[[ビームサーベル]]の設定が生まれた(講談社『ガンダム者』)</ref>。最初は『宇宙の戦士』の挿絵に強い影響を受けた『[[ガンキャノン]]』が主人公機になる予定だったが、スポンサーに反対され<ref>BSアニメ夜話 (Vol.02)</ref>、従来のロボット的デザインである「日本的甲冑」が取り入れられたガンダムが主人公機となった<ref name="Gmono" />ここでロボットの名称が問題となった。山浦栄二は「パワードスーツでいいだろ」と言ったが、『宇宙の戦士』の作者が訴訟大国のアメリカ人のため訴えられる懸念があったので「モビルスーツ」にした<ref name="GAGE" />。
このように当初の企画『'''フリーダムファイター'''』ではロボットを登場させる予定がなかったが、クローバーの小松志千郎社長は「こんな木馬みたいな物のおもちゃを作っても商売にならないから、やっぱりロボットを出してくれよ」と要求した。困ったスタッフにSF作家で[[スタジオぬえ]]の一員でもある[[高千穂遥]][[ロバート・A・ハインライン]]の[[SF小説]]『[[宇宙の戦士]]』を紹介した。これに掲載されている、[[宮武一貴]]による装甲強化服「パワードスーツ」の挿画を元に[[大河原邦男]]が「突撃攻撃型機動歩兵」をデザインした<ref group="註">サンライズはスタジオぬえと付き合いがあったが、本作のメカデザインはぬえではなく大河原に発注された。これは[[安彦良和]]によるとぬえではデザインがマニアックになり過ぎ、作画上の負担になることが懸念されたからである。大河原邦男の「大らかなメカデザイン」が「描きやすい」という評価を得ていた講談社『ガンダム者』</ref>。これは潜水服のようなもので『宇宙の戦士』と同じく全高2.5m程度のものだったが子供受けいとされ、当時主流だった50mから100mの巨大ロボットとパワードスーツのぎりぎりの妥協点としてマジガーZと同じ18mに設定された<ref group="註">これをサンライズ飯塚正夫は「やっぱりスーツじゃなくて巨大ロボットですよね」と評している(講談社『ガンダム者』)</ref>。実際の戦争にならい、長距離戦、中距離戦、白兵戦と距離別にタイプが違う三つのロボットが構想されそれぞれ後の[[ガンタンク]]、[[ガンキャノン]]、ガンダムである<ref group="註">この白兵戦の演出に関し「宇宙時代の兵隊にチャンバラをやらせるわけにはいかない」と悩んでいたスタッフにスタジオぬえは [[ライトセーバー]]の存在を示唆し、そこから[[ビームサーベル]]の設定が生まれた講談社『ガンダム者』</ref><ref name="Gmono" />。最初は『宇宙の戦士』の挿絵に強い影響を受けたガンキャノンが主人公機になる予定だったが、スポンサーに反対され<ref>{{Cite book|和書|year=2006|title=BSアニメ夜話(Vol.02)(キネ旬ムック)|publisher=キネマ旬報社|isbn=4873766354}}</ref>、従来のロボット的デザインである「日本的甲冑」が取り入れられたガンダムが主人公機となった。ロボットの名称について、山浦は「パワードスーツでいいだろ」と言ったが、『宇宙の戦士』の作者が訴訟大国のアメリカ人のため訴えられる懸念があったので「モビルスーツ」にした。当初は宇宙ステーションをロボットの活躍の舞台とする予定だったが、18mでは宇宙ステーションに入らない。困ったスタッフは神田の[[三省堂]]で買った宇宙関係の本の中で[[ジェラルド・オニール]]の[[スペースコロニー]]を見つけた。直径数kmのコロニーなら18mのロボットが入ると喜び、本作に取り入れることにした<ref name="GAGE" />。


この時点での仮題は『'''ガンボーイ'''』だった。これが当時人気を博したアメリカ映画「[[コンボイ]]」から『'''ガンボイ'''』に、さらに[[チャールズ・ブロンソン]]がTV-CMで流行語にした「う~ん、[[マンダム]]」から「フリーダム」のダムとかけて『'''ガンダム'''』という名前が生み出された<ref name="Gmono" />
次に問題となったのがロボットのサイズである。2.5mでは子供にアピールするには小さすぎるが、当時主流だった50mから100mのロボットでは兵器としてリアリティがないとされた。そこで[[マジンガーZ]]と同じ18mにすることで落着した<ref name="GAGE" /><ref>これをサンライズの飯塚正夫は「やっぱりスーツじゃなくて巨大ロボットですよね」と評している</ref>。しかし18mというサイズがさらに問題をよんだ。本作は地球圏を舞台とし、宇宙ステーションをロボットの活躍の舞台とする予定だったのだが、18mでは宇宙ステーションに入らない。困ったスタッフは神田の[[三省堂]]で買った宇宙関係の本の中で[[ジェラルド・オニール]]の[[スペースコロニー]]を見つけた。直径数kmのコロニーなら18mのロボットが入ると喜び、本作に取り入れることにした<ref name="GAGE" />。

この時点での仮題は『'''ガンボーイ'''』だった。これがアメリカでトラック軍団を指す「[[コンボイ]]」と掛け合わせて『'''ガンボイ'''』に、さらに[[チャールズ・ブロンソン]]がTV-CMで流行語にした「う~ん、[[マンダム]]」のイメージから「フリーダム」のダムとかけて『'''ガンダム'''』という名前が生み出された。


=== 初回放映時の評価と後の社会現象 ===
=== 初回放映時の評価と後の社会現象 ===
初回放送時の[[視聴率]]は名古屋地区で平均9.1%、関東地区で5.3%<ref>名古屋テレビ「GUNDAM HOMEPAGE PROJECT」より。外部リンク参照</ref>と振るわなかった。
初回放送時の[[視聴率]]は名古屋地区で平均9.1%、関東地区で5.3%<ref>名古屋テレビ「GUNDAM HOMEPAGE PROJECT」より。外部リンク参照</ref>と振るわなかった。


視聴率低迷のためスポンサーの要望により量産型の他に、いわゆる「やられメカ」を毎回出すことになった。試作機が投入されたという設定で [[グフ]]や[[ドム]]などの新MSや[[モビルアーマー]]が登場したが視聴率は好転しなかった<ref name="Gmono" />。視聴率の不振に関して指摘されたことは土曜夕方五時半という時間帯である。この時間帯は子どもが主な視聴層で、彼らには本作の「内容が難しすぎた」と言われている<ref>キャラクタービジネス その構造と戦略</ref>。また視聴率低迷は低年齢層に対するキャラクター商品の不振につながった<ref name="GS">ガンダム神話</ref>。
視聴率低迷のためスポンサーの要望により量産型の他に、いわゆる「やられメカ」を毎回出すことになった。試作機が投入されたという設定で [[グフ]]や[[ドム]]などの新MSや[[モビルアーマー]]が登場したが視聴率は好転しなかった<ref name="Gmono" /><ref group="註">本作が放送された土曜夕方五時半時間帯は子どもが主な視聴層で、彼らには本作の「内容が難しすぎた」と指摘されている(キネマ旬報社『キャラクタービジネス その構造と戦略』)</ref>。


「シャアという陰気なキャラクターがいけない」とスポンサーに指摘され作中でシャアを左遷したが、「何でシャアが出ないのだ」という抗議の手紙が殺到した<ref name="AB">アニメ・ビジネスが変わる</ref>。こうした手紙は中高生のファンからであり、サンライズ側の当初の狙い通りの展開なっていた<ref name="GS"/>(ちなみに[[名古屋テレビ]]の関岡渉によると左遷どころか殺す予定だったそうである。関岡がスタッフを説得して取りやめになったとのこと<ref name="nikki">日経キャラクターズ2006年8月号</ref>)。
視聴率低迷は関連商品の不振につながった<ref name="GS">{{Cite book|和書|author=猪俣謙次|year=1995|title=ガンダム神話|publisher=ダイヤモンド社|isbn=4478950075}}</ref>。スポンサーから「シャアという陰気なキャラクターがいけない」と指摘され作中でシャアを左遷したが、「何でシャアが出ないのだ」という抗議の手紙が殺到した<ref name="AB">{{Cite book|和書|author=日経BP社技術研究部|year=1999|title=アニメ・ビジネスが変わる―アニメとキャラクター・ビジネスの真実|publisher=ダイヤモンド社|isbn=482222550X}}</ref>。こうした手紙は中高生のファンからであり、サンライズ側の当初の狙い通り、本作は中学生以上のファンがついていた<ref name="GS"/>(ちなみに[[名古屋テレビ放送|名古屋テレビ]]の関岡渉によると左遷どころか殺す予定だったそうである。関岡がスタッフを説得して取りやめになったとのこと<ref name="nikki">{{Cite journal|和書|journal=日経キャラクターズ|issue=2006年8月号|publisher=日経BP社}}</ref>)。


その後テコ入れが試みられたが([[#商業的事情|後述]])、視聴率も売り上げも挽回できず全52話の予定が全43話に短縮される形の[[打ち切り]]となった<ref group="註">当初の52話分の構想について、富野がそれを記した「トミノメモ」と呼ばれるものが存在している。『機動戦士ガンダム 記録全集5』などで、打ち切りによって変更された部分を読むことが出来る。またこれに書かれたMSの名前などの中には、後に続編やモビルスーツバリエーションの中で用いられたものもある</ref><ref group="註">打ち切りに関して飯塚正夫は「ああ結末までヤマトと同じになっちゃった」と述べている講談社『ガンダム者』</ref>。
サンライズは前述のように本作を中学生以上向けに作っていたが、スポンサーが集まらない懸念があったため創通エージェンシーはスポンサーには低年齢向けと説明していた<ref name="nikki" />。こうして各社とも前作『無敵鋼人ダイターン3』と同じく小学生以下向けの商品を展開したため、本作の中高生ファンとミスマッチが起きてしまい<ref name="MDR81">マーチャンダイジングライツレポート1981年6月号。</ref>、せっかくの中高生ファンを取り込むことできなかった。


ところが打ち切りが決まった直後から人気が上昇。最終回でアムロは死ぬ予定だったが関岡が人気の盛り上がりから再放送や続編制作が期待できるため反対して取りやめになった<ref name="nikki" />後に書かれた小説版では、アムロが予定通り死んでいる。また、放送当時から[[アニメ雑誌]]がたびたび熱意ある特集記事を組んだり、アニメファン向けの商品がファンを盛り上げる([[#商業的事情|後述]])など、中高生、特に女子を中心に口コミで徐々に評判が高まった<ref group="註">第2回[[アニメグランプリ]]では女性票が57%を占めて、1位を獲得。サンライズの[[植田益朗]]は放送当初は6割くらいが[[安彦良和]]の絵を好む女性ファンだったとしている(竹書房『新機動戦記ガンダムW パーフェクト・アーカイブ・シリーズ10』 </ref>。本放送終了後もアニメファンによる再放送要請嘆願署名が行われるなど熱意は衰えず、これらを受けてクローバーは再放送を決定した<ref name="MDR81">{{Cite journal|和書|journal=マーチャンダイジングライツレポート|issue=1981年6月号|publisher=商品化権資料センター}}</ref>。こうして再放送、再々放送が重ねられ、世間一般へ本作が浸透していった。再放送では平均視聴率も10%を超え、1982年における再放送では名古屋地区で25.7%(最高視聴率29.1%)を記録した。
その後「ガンダムパワーアップ作戦」など様々なテコ入れが試みられたが([[#商業的事情|後述]])、視聴率も売り上げも挽回できず全52話の予定が全43話に短縮される形の[[打ち切り]]となった<ref>当初の52話分の構想について、富野がそれを記した「トミノメモ」と呼ばれるものが存在している。『機動戦士ガンダム 記録全集5』などで、打ち切りによって変更された部分を読むことが出来る。またこれに書かれたMSの名前などの中には、後に続編やモビルスーツバリエーションの中で用いられたものもある</ref><ref>打ち切りに関して飯塚正夫は「ああ結末までヤマトと同じになっちゃった」と述べている(講談社『ガンダム者』)</ref>。(飯塚正夫によると「オモチャが売れるクリスマスとお正月のお年玉のある1月まではなんとか放送してもらえることになった」と述べている<ref name="GAGE" />)


放映終了半年後に[[バンダイ]]から発売されたMSのプラモデルが爆発的な売れ行きを見せ、『[[ガンプラ]]』と呼ばれた([[#商業的事情|後述]])。後の劇場版公開もあわせ、社会現象ともいえるブームを巻き起こした。その後も本作と世界観や設定、歴史などを踏襲、あるいは共有する[[小説]]や[[漫画]]が数多く制作された、[[メディアミックス]]の先駆けともいえる作品である
ところが打ち切りが決まった直後から人気が上昇。最終回でアムロは死ぬ予定だったが関岡が人気の盛り上がりから再放送や続編制作が期待できるため反対して取りやめになった<ref name="nikki" />(後に書かれた小説版では、アムロが予定通り死んでいる)。また、放送当時から[[アニメ雑誌]]がたびたび熱意ある特集記事を組んだり、アニメファン向けの商品がファンを盛り上げる([[#商業的事情|後述]])など、中高生、特に女子を中心に口コミで徐々に評判が高まった<ref>第2回[[アニメグランプリ]]では女性票が57%を占めて、1位を獲得。[[サンライズ]]の[[植田益朗]]は放送当初は6割くらいが[[安彦良和]]の絵を好む女性ファンだったとしている(『新機動戦記ガンダムW パーフェクト・アーカイブ・シリーズ10』) </ref>。本放送終了後もアニメファンによる再放送要請嘆願署名が行われるなど熱意は衰えず、これらを受けてクローバーは再放送を決定した<ref name="MDR81" />。こうして再放送、再々放送が重ねられ、世間一般へ本作が浸透していった。再放送では平均視聴率も10%を超え、1982年における再放送では名古屋地区で25.7%(最高視聴率29.1%)を記録した。


一方で、作中におけるMSの描写やニュータイプの存在に対して高千穂遙が[[SF考証]]の観点から批判する意見を述べ「ガンダムSF論争」を巻き起こした。
放映終了半年後に[[バンダイ]]から発売されたMSのプラモデルが爆発的な売れ行きを見せ、『[[ガンプラ]]』と呼ばれた([[#商業的事情|後述]])。後の劇場版公開もあわせ、社会現象ともいえるブームを巻き起こした。

一方で、作中におけるMSの描写やニュータイプの存在に対して[[高千穂遙]]が[[SF考証]]の観点から批判する意見を述べ「ガンダムSF論争」を巻き起こした。


=== 劇場版三部作と「アニメ新世紀宣言」 ===
=== 劇場版三部作と「アニメ新世紀宣言」 ===
前述のように本作は小学生以下からは支持が薄かったものの、女子中高生には高い人気を得た。このため子供向けであることや玩具販促に縛られない劇場版にして女子中高生向けの内容にしようとする動きがあった<ref name="GS" />。1980年10月、TVシリーズの再編集に新作カットを加えストーリー、設定を一部変更した劇場版の制作が発表された。第1話から第13話までを再編集した第一作の題名は『'''機動戦士ガンダム'''』とされ[[1981年]][[3月14日]]全国[[松竹]]系にて公開された<ref>なお、公式リリース以外では、便宜上『'''砂の十字架編'''』と呼ばれる場合もある</ref>。題名に数詞が付かなかったのは、第一作の興行成績次第では第二作が製作されない可能性もあったからである<ref>ガンダムの現場から―富野由悠季発言集</ref>。松竹初のアニメ映画である。
前述のように本作は小学生以下からは支持が薄かったものの、女子中高生には高い人気を得た。このため子供向けであることや玩具販促に縛られない劇場版にして女子中高生向けの内容にしようとする動きがあった<ref name="GS" />。1980年10月、TVシリーズの再編集に新作カットを加えストーリー、設定を一部変更した劇場版の制作が発表された。第1話から第13話までを再編集した第一作の題名は『'''機動戦士ガンダム'''』とされ[[1981年]][[3月14日]]全国[[松竹]]系にて公開された<ref group="註">なお、公式リリース以外では、便宜上『'''砂の十字架編'''』と呼ばれる場合もある</ref>。題名に数詞が付かなかったのは、第一作の興行成績次第では第二作が製作されない可能性もあったからである<ref>{{Cite book|和書|author=氷川竜介、藤津亮太|year=2000|title=ガンダムの現場から―富野由悠季発言集 |publisher=キネマ旬報社|isbn=4873765374 }}</ref>。松竹初のアニメ映画である。


これに先立つ1981年[[2月22日]]、新宿にて「'''アニメ新世紀宣言'''」と呼ばれるイベントが開催され、1万5千人ともいわれる数多くの若者が詰めかけた。中にはシャアとララァなど登場人物の(今で言う)[[コスプレ]]をして現れた者達もいた彼らはラポート発行の雑誌「[[ファンロード]]」1980年8月号(創刊号)の記事中、当時流行した[[竹の子族]]と富野とをもじって「トミノコ族」と呼ばれている。彼らを前に富野は、これだけの若者がアニメ映画のイベントのために集まったことを通じて、アニメを低俗、俗悪と決めつける社会の認識を問う発言をしている。
これに先立つ1981年[[2月22日]]、新宿にて「'''アニメ新世紀宣言'''」と呼ばれるイベントが開催され、1万5千人ともいわれる数多くの若者が詰めかけた。中にはシャアとララァなど登場人物の(今で言う)[[コスプレ]]をして現れた者達もいた彼らはラポート発行の雑誌「[[ファンロード]]」1980年8月号(創刊号)の記事中、当時流行した[[竹の子族]]と富野とをもじって「トミノコ族」と呼ばれている。彼らを前に富野は、これだけの若者がアニメ映画のイベントのために集まったことを通じて、アニメを低俗、俗悪と決めつける社会の認識を問う発言をしている。


前述のように劇場版第1作は女子中高生を対象としていたが、実際は観客の35%は小学生以下だった。この結果を受けて松竹は第二作の対象年齢の幅を広げる方針を取った<ref>マーチャンダイジングライツレポート1981年6月号</ref>低年齢化した理由として指摘されるのが「兄貴が夢中になる物に弟も憧れる法則」である。これはかつての[[第二次怪獣ブーム]]の時と同じ現象とされている<ref name="GG" />。
第一作の成功を受けて、『'''機動戦士ガンダムII 哀・戦士編'''』(第16~31話前半を再編集、1981年[[7月11日]]公開)が公開された。前述のように第1作は女子中高生を対象としていたが、実際は観客の35%は小学生以下だった。この結果を受けて松竹は第二作の対象年齢の幅を広げる方針を取った<ref name="MDR81"/><ref group="註">低年齢化した理由として指摘されるのが「兄貴が夢中になる物に弟も憧れる法則」である。これはかつての[[第二次怪獣ブーム]]の時と同じ現象とされている(講談社『ガンプラ・ジェネレーション』)</ref>。


第一作の成功を受けて、『'''機動戦士ガンダムII 哀・戦士編'''』(第16~31話前半を再編集、[[1981年]][[7月11日]]公開)が公開された。第二作の制作で発生した問題としてTV版と第一作の録音監督である[[松浦典良]]降板がある。「松浦さんが降りるなら、僕たちも降りる」と[[古谷徹]]、[[鈴置洋考]]、[[井上瑤]]、[[鵜飼るみ子]]と主だった声優陣が反対したが、サンライズは拒否。声優陣が松浦の自宅をたずねた時に、松浦が説得して騒動は収束した。この騒動の余波でガンダムの声優陣の待遇が改善された<ref>シャアへの鎮魂歌</ref>。
第二作では、TV版と第一作の録音監督である[[松浦典良]]降板した。「松浦さんが降りるなら、僕たちも降りる」と[[古谷徹]]、[[鈴置洋考]]、[[井上瑤]]、[[鵜飼るみ子]]と主だった声優陣が反対したが、サンライズは拒否。声優陣が松浦の自宅をたずねた時に、松浦が説得して騒動は収束した。この騒動の余波でガンダムの声優陣の待遇が改善された<ref>{{Cite book|和書|author=池田秀一|year=2006|title=シャアへの鎮魂歌 わが青春の赤い彗星 |publisher=ワニブックス|isbn= 4847017005 }}</ref>。


続けて『'''機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編'''』(第31話後半~第43話を再編集、[[1982年]][[3月13日]]公開)が公開された。またこれらの映画の主題歌が[[オリコン]]チャートの上位にランキングされるなど、大きな社会現象にまで発展した<ref>1977年に首位を記録した『宇宙戦艦ヤマト』のアルバムなど、それ以前にもオリコンチャート上位にランク入りしたアニメ関連楽曲は存在する</ref>。
続けて『'''機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編'''』(第31話後半~第43話を再編集、[[1982年]][[3月13日]]公開)が公開された。またこれらの映画の主題歌が[[オリコン]]チャートの上位にランキングされるなど、大きな社会現象にまで発展した<ref group="註">1977年に首位を記録した『宇宙戦艦ヤマト』のアルバムなど、それ以前にもオリコンチャート上位にランク入りしたアニメ関連楽曲は存在する</ref>。

その後も本作と世界観や設定、歴史などを踏襲、あるいは共有する[[小説]]や[[漫画]]が数多く制作された、[[メディアミックス]]の先駆けともいえる作品でもある。


=== アニメ史上の評価と後続作品への影響 ===
=== アニメ史上の評価と後続作品への影響 ===
本作のヒットは新たなアニメブームをもたらし、これに影響されたアニメも玉石混淆で無数に製作されることになる。特にロボットアニメは『機動戦士ガンダム』同様に、登場人物や世界観の描写に力を注ぐことで高年齢層も意識した作品作りがなされるようになり、数多くの作品を生み出した。
本作のヒットは新たなアニメブームをもたらし、これに影響されたアニメも玉石混淆で無数に製作されることになる。特にロボットアニメは本作同様に、登場人物や世界観の描写に力を注ぐことで高年齢層も意識した作品作りがなされるようになり、数多くの作品を生み出した<ref group="註">そうして生まれた有人ロボットとして、「バトロイド、デストロイド(『[[超時空要塞マクロス]]』)」、「コンバットアーマー(『[[太陽の牙ダグラム]]』)」、「ラウンドバーニアン(『[[銀河漂流バイファム]]』)」「アーマードトルーパー(『[[装甲騎兵ボトムズ]]』)」、「レイバー(『[[機動警察パトレイバー]]』)」などが挙げられる</ref>


「アニメ新世紀宣言」に集まるなどしてガンダムブームを支えた視聴者達の中からは、数多くのクリエイターが生まれている。シャアとララァのコスプレをした二人も、後にメカニックデザイナー [[永野護]]と声優 [[川村万梨阿]]として続編[[機動戦士Ζガンダム]]』の制作に参加している。
そうして生まれた有人ロボットとして、「バトロイド、デストロイド(『[[超時空要塞マクロス]]』)」、「コンバットアーマー(『[[太陽の牙ダグラム]]』)」、「ラウンドバーニアン(『[[銀河漂流バイファム]]』)」「アーマードトルーパー(『[[装甲騎兵ボトムズ]]』)」、「レイバー(『[[機動警察パトレイバー]]』)」などが挙げられる<ref>一方で、従来どおり主役ロボットをヒーロー同様に描きロボットの格好良さと痛快さを売りにしたタイプのロボットアニメも、相応の論理性を取り入れながら発展している。やがてそれぞれの流れは、古今のロボットアニメのロボットが一堂に会するゲームソフト『[[スーパーロボット大戦シリーズ]]』において、「リアルロボット」「[[スーパーロボット]]」と呼ばれるようになった</ref>。

「アニメ新世紀宣言」に集まるなどしてガンダムブームを支えた視聴者達の中からは、数多くのクリエイターが生まれている。シャアとララァのコスプレをした二人も、後にメカニックデザイナー [[永野護]]と声優 [[川村万梨阿]]として『機動戦士Ζガンダム』の制作に参加している。


また等身大のロボットを描いた最初のTVアニメ『[[鉄腕アトム]]』がロボット研究者の大きな目標になったように、MSもロボット研究者にとって大きな目標の1つとなっている。
また等身大のロボットを描いた最初のTVアニメ『[[鉄腕アトム]]』がロボット研究者の大きな目標になったように、MSもロボット研究者にとって大きな目標の1つとなっている。


=== 商業的事情 ===
=== 商業的事情 ===
サンライズは前述のように本作を中学生以上向けに作っていたが、スポンサーが集まらない懸念があったため[[創通エージェンシー]]はスポンサーには低年齢向けと説明していた<ref name="nikki" />。こうして各社とも前作『無敵鋼人ダイターン3』と同じく小学生以下向けの商品を展開したためミスマッチが起き<ref name="MDR81"/>、せっかくの中高生ファンを取り込むことできず関連商品は不振に陥った。
関連商品の不振はメインスポンサーあるクローバーにも影響した。そこで「ガンダムパワーアップ作戦」発動<ref>トイジャーナル1979年8月号</ref>。クローバーの要請により1979年9月に [[Gアーマー]]が登場し、同月にはGアーマーとガンダムをセットにした「ガンダムDX合体セット」が発売されたが、売上増には結び付かなかった<ref name="MDR81" />。

そこでクローバー「ガンダムパワーアップ作戦」発動<ref>{{Cite journal|和書|journal=月刊トイジャーナル|issue=1979年8月号|publisher=東京玩具人形問屋協同組合}}</ref>。クローバーの要請により1979年9月に [[Gアーマー]]が登場し、同月にはGアーマーとガンダムをセットにした「ガンダムDX合体セット」が発売されたが、売上増には結び付かなかった<ref name="MDR81" />。


関岡の証言では、局の立場としては打ち切り対象にする程ではなかったが、玩具業界のサイクルでは年末年始の次は3月の春休みに需要が見込めるため、2月に新番組を投入すれば丁度その時期に玩具が売れて経営危機を乗り切れるのではないかと判断され、乗り換え需要を喚起するために1月一杯で打ち切りとなったようである<ref>富野由悠季全仕事</ref>。ところが年末商戦で前述の「DX合体セット」が好調な売行きを示した。クローバーは慌てて延長をサンライズに打診したものの実現しなかった<ref name="GG">ガンプラ・ジェネレーション</ref>。
関岡の証言では、局の立場としては打ち切り対象にする程ではなかったが、玩具業界のサイクルでは年末年始の次は3月の春休みに需要が見込めるため、2月に新番組を投入すれば丁度その時期に玩具が売れて経営危機を乗り切れるのではないかと判断され、乗り換え需要を喚起するために1月一杯で打ち切りとなったようである<ref>{{Cite book|和書|year=1999|title=富野由悠季全仕事―1964-1999|publisher=キネマ旬報社|isbn= 4873765145 }}</ref>。サンライズの飯塚正夫は「オモチャが売れるクリスマスとお正月のお年玉のある1月まではなんとか放送してもらえることになった」と述べている<ref name="GAGE" />。ところが年末商戦で「DX合体セット」が好調な売行きを示した。クローバーは慌てて延長をサンライズに打診したものの実現しなかった<ref name="GG">{{Cite book|和書|author=五十嵐浩司|year=1999|title=ガンプラ・ジェネレーション|publisher=講談社|isbn= 4063300749 }}</ref>。


前述のように本放映時に関連商品を展開した会社は軒並み失敗したが、アニメ雑誌『[[アニメック]]』を発行し、アニメショップ『アニメック』を経営していた[[ラポート]]だけはアニメファンの盛り上がりをいち早くつかんでいた。同社はアニメファン向けの商品を本放映時既に展開し、ファンを盛り上げていった。
前述のように本放映時に関連商品を展開した会社は軒並み失敗したが、アニメ雑誌『[[アニメック]]』を発行し、アニメショップ『アニメック』を経営していた[[ラポート]]だけはアニメファンの盛り上がりをいち早くつかんでいた。同社はアニメファン向けの商品を本放映時既に展開し、ファンを盛り上げていった。


一方玩具の不振を補うべく、サンライズはクローバーにプラモデルの商品化を打診していたが、「売れないキャラクターの商品を増やしてもしょうがない」とクローバーに拒否された。そこでサンライズはクローバーの許可の下、他社にプラモの商品化を呼びかけた<ref name="Gmono" />。ところが本作のもう一つの版権元であり版権窓口でもある[[創通エージェンシー]]はクローバーの玩具販売に悪影響が出ることを懸念し、プラモの商品化を望んだ[[バンダイ|バンダイ模型]]の要請を拒んだ。長い交渉の末、1979年の暮れに創通が折れて、バンダイ模型は商品化権を取得した<ref>ガンプラ開発真話</ref>。
一方玩具の不振を補うべく、サンライズはクローバーにプラモデルの商品化を打診していたが、「売れないキャラクターの商品を増やしてもしょうがない」とクローバーに拒否された。そこでサンライズはクローバーの了解を得て他社にプラモの商品化を呼びかけた<ref name="Gmono" />。ところが本作のもう一つの版権元であり版権窓口でもある創通エージェンシーはクローバーの玩具販売に悪影響が出ることを懸念し、プラモの商品化を望んだ[[バンダイ|バンダイ模型]]の要請を拒んだ。長い交渉の末、1979年の暮れに創通が折れて、バンダイ模型は商品化権を取得した<ref>{{Cite book|和書|author=猪俣謙次、加藤智|year=2006|title=ガンプラ開発真話|publisher=メディアワークス|isbn= 4840234396 }}</ref>。


こうして放映終了半年後に発売されたMSのプラモデルが爆発的な売れ行きを見せ、ガンダム人気を広げる一助となった。ガンプラは大変な人気を得たことで「[[モビルスーツバリエーション]]」と呼ばれる派生シリーズを産み、それらにおける種々の設定はアニメ雑誌において生み出された設定と合わせてガンダムの世界観をより深く掘り下げるものとなった。1982年にはプラモデル市場は過去最高の市場規模になった<ref name="TJ84">トイジャーナル1984年3月号</ref>。本作はアニメファンをプラモデルに呼び込み<ref>トイジャーナル1981年5月号</ref>、ミリタリーモデルのファンをキャラクターモデルに呼び込んだ<ref name="TJ88">トイジャーナル1988年6月号</ref>。本作以前はスケールモデル中心だったプラモデル市場はキャラクター中心になった<ref name="TJ84" /><ref>このため[[東京マルイ]]の岩澤巌は「スケールモデルは終わった」と語っている</ref><ref name="TJ88" />。
こうして放映終了半年後に発売されたMSのプラモデルが爆発的な売れ行きを見せ、ガンダム人気を広げる一助となった。ガンプラは大変な人気を得たことで「[[モビルスーツバリエーション]]」と呼ばれる派生シリーズを産み、それらにおける種々の設定はアニメ雑誌において生み出された設定と合わせてガンダムの世界観をより深く掘り下げるものとなった。1982年にはプラモデル市場は過去最高の市場規模になった<ref name="TJ84">{{Cite journal|和書|journal=月刊トイジャーナル|issue=1984年3月号|publisher=東京玩具人形問屋協同組合}}</ref>。本作はアニメファンをプラモデルに呼び込み<ref>{{Cite journal|和書|journal=月刊トイジャーナル|issue=1981年5月号|publisher=東京玩具人形問屋協同組合}}</ref>、ミリタリーモデルのファンをキャラクターモデルに呼び込んだ<ref name="TJ88">{{Cite journal|和書|journal=月刊トイジャーナル|issue=1988年6月号|publisher=東京玩具人形問屋協同組合}}</ref>。本作以前はスケールモデル中心だったプラモデル市場はキャラクター中心になった<ref name="TJ84" /><ref group="註">このため[[東京マルイ]]の岩澤巌は「スケールモデルは終わった」と語っている(月刊トイジャーナル1988年6月号)</ref>。


こうした経緯のため「ガンダムブームはラポートが火をつけ、バンダイが築いた」と評されている<ref>マーチャンダイジングライツレポート1982年8月号</ref>。劇場版公開の頃になると各社とも本作のファン層に合わせた商品展開をしていたが、ファンの低年齢化によってアニメファン向け以外の商品も売れるようになっていった<ref name="MDR81" />。
こうした経緯のため「ガンダムブームはラポートが火をつけ、バンダイが築いた」と評されている<ref>{{Cite journal|和書|journal=マーチャンダイジングライツレポート|issue=1982年8月号|publisher=商品化権資料センター}}</ref>。劇場版公開の頃になると各社とも本作のファン層に合わせた商品展開をしていたが、ファンの低年齢化によってアニメファン向け以外の商品も売れるようになっていった<ref name="MDR81" />。


前述した後続作品群は、商業上はどれも本作を越えられなかった。このため「ガンダムの後継作品はガンダム」<ref name="BCP">『バンダイキャラクタープラモ年代記』</ref>ということになり、ガンダムシリーズは多少のブランクを挟みながら今日まで続くことになった。本作以来のファンを維持しつつ、新しい設定のガンダムが若いファンを獲得して親子二世代にわたって人気があるシリーズとなっている。またガンプラや各種トイも今なお初代ガンダムやザクの新型アイテムが発売されるなど根強い人気を保っている。現在では日本のキャラクターモデルは9割がガンプラだとされている<ref>http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/BodyUrlPdfDown.do?bodyurlpdf=05000892_001_BUP_0.pdf</ref>。
前述した後続作品群は、商業上はどれも本作を越えられなかった。このため「ガンダムの後継作品はガンダム」<ref name="BCP"/>ということになり、ガンダムシリーズは多少のブランクを挟みながら今日まで続くことになった。本作以来のファンを維持しつつ、新しい設定のガンダムが若いファンを獲得して親子二世代にわたって人気があるシリーズとなっている。またガンプラや各種トイも今なお初代ガンダムやザクの新型アイテムが発売されるなど根強い人気を保っている。現在では日本のキャラクターモデルは9割がガンプラだとされている<ref> http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/BodyUrlPdfDown.do?bodyurlpdf=05000892_001_BUP_0.pdf </ref>。


== 主要登場人物 ==
== 主要登場人物 ==
;アムロ・レイ
;アムロ・レイ
: 当初は一介の民間人、それも機械いじりの好きな内気な少年として登場する。しかしその反面、操縦法もわからないままMSに乗り込んだり、武器を放り投げたりするなど、無謀な一面も存在する。彼は急遽リーダーとなった士官候補生 [[ブライト・ノア]]との衝突や、サイド7脱出以来の宿敵 シャア・アズナブルやMSパイロットとしても人間としても経験豊富な強敵であるベテラン軍人 [[ランバ・ラル]]との戦い、初恋の女性 マチルダ・アジャンや兄貴分 [[リュウ・ホセイ]]の死といった現実を経て人間的に成長してゆく。さらに、人類の革新「[[ニュータイプ]]」として覚醒し、超人的・英雄的活躍を遂げるようになる。
: 当初は一介の民間人、それも機械いじりの好きな内気な少年として登場する。彼は急遽リーダーとなった士官候補生 [[ブライト・ノア]]との衝突や、サイド7脱出以来の宿敵 シャア・アズナブルやMSパイロットとしても人間としても経験豊富な強敵であるベテラン軍人 [[ランバ・ラル]]との戦い、初恋の女性 マチルダ・アジャンや兄貴分 [[リュウ・ホセイ]]の死といった現実を経て人間的に成長してゆく。さらに、人類の革新「[[ニュータイプ]]」として覚醒し、英雄的活躍を遂げるようになる。
;シャア・アズナブル
;シャア・アズナブル
: 従来からのいわゆる「美形悪役」の流れにあるキャラクターではあるが、ジオンの独裁者 [[ザビ家]]に対する復讐のためにこの戦争を巧妙に利用する人物として設定されている。ホワイトベースに乗る妹 [[セイラ・マス]]の存在に悩む一方で、ニュータイプの少女 [[ララァ・スン]]と出会い、さらに彼もまたニュータイプとして覚醒することによって、人類の進化のために戦争を利用するという高い理念を抱くようになってゆく。
: 従来からのいわゆる「美形悪役」の流れにあるキャラクターではあるが、ジオンの独裁者 [[ザビ家]]に対する復讐のためにこの戦争を巧妙に利用する人物として設定されている。ホワイトベースに乗る妹 [[セイラ・マス]]の存在に悩む一方で、ニュータイプの少女 [[ララァ・スン]]と出会い、さらに彼もまたニュータイプとして覚醒することによって、人類の進化のために戦争を利用するという高い理念を抱くようになってゆく。
: アムロとシャアとの戦いは、後に劇場版『[[機動戦士ガンダム 逆襲のシャア]]』において決着が付くこととなる。
;その他の人物
;その他の人物
: [[カイ・シデン]]、[[ハヤト・コバヤシ]]、[[フラウ・ボゥ]]、[[ミライ・ヤシマ]]といった[[ホワイトベース]]の仲間達もそれぞれに成長を遂げてゆく姿が描かれる。また、戦争を嫌悪する元軍人、戦争に加担する民間人、スパイ、武器開発者、主人公に殺される学徒動員パイロットなどそれまでのアニメーションでは無視されていたキャラクターの描写も多い。この方向性は『無敵超人ザンボット3』でも試みられたが、後の作品にまで影響を及ぼすほど徹底したのは、本作の非常に大きな特徴である。
: [[カイ・シデン]]、[[ハヤト・コバヤシ]]、[[フラウ・ボゥ]]、[[ミライ・ヤシマ]]といった[[ホワイトベース]]の仲間達もそれぞれに成長を遂げてゆく姿が描かれる。また、戦争を嫌悪する元軍人、戦争に加担する民間人、スパイ、武器開発者、主人公に殺される学徒動員パイロットなどそれまでのアニメーションでは無視されていたキャラクターの描写も多い。この方向性は『ザンボット3』でも試みられたが、後の作品にまで影響を及ぼすほど徹底したのは、本作の非常に大きな特徴である。


詳細については、下記のページを参照。
詳細については、下記のページを参照。
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== スタッフ ==
== スタッフ ==
* 企画:[[サンライズ (アニメ制作会社)|日本サンライズ]]
* 企画:日本サンライズ
* 原作:[[矢立肇]]、富野喜幸(現 [[富野由悠季]]
* 原作:[[矢立肇]]、富野喜幸(現[富野由悠季)
* 音楽:[[渡辺岳夫]]、松山裕士
* 音楽:[[渡辺岳夫]]、松山裕士
* [[キャラクターデザイン]]:[[安彦良和]]
* [[キャラクターデザイン]]:安彦良和
* [[メカニックデザイン|メカニカルデザイン]]:[[大河原邦男]]
* [[メカニックデザイン|メカニカルデザイン]]:大河原邦男
* 美術設定:[[中村光毅]]
* 美術設定:[[中村光毅]]
* アニメーションディレクター:安彦良和
* アニメーションディレクター:安彦良和
* 総監督:富野喜幸(現 富野由悠季)
* 総監督:富野喜幸(現 富野由悠季)
* プロデューサー:関岡渉([[名古屋テレビ放送]])、大熊信行([[創通|創通エージェンシー]])、渋江靖夫(日本サンライズ)
* プロデューサー:関岡渉(名古屋テレビ)、大熊信行(創通エージェンシー)、渋江靖夫(日本サンライズ)
* 脚本:[[星山博之]]、[[松崎健一]]、荒木芳久、[[山本優]]、富野喜幸
* 脚本:[[星山博之]]、[[松崎健一]]、荒木芳久、[[山本優]]、富野喜幸
* 絵コンテ:斧谷稔(富野喜幸)、[[やまざきかずお|山崎和男]]、[[貞光紳也]]、久野弘
* 絵コンテ:斧谷稔(富野喜幸)、[[やまざきかずお|山崎和男]]、[[貞光紳也]]、久野弘
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== 主題歌 ==
== 主題歌 ==
; オープニングテーマ『翔べ! ガンダム』
; オープニングテーマ『翔べ! ガンダム』
: 作詞:[[富野由悠季|井荻麟]] 作曲:[[渡辺岳夫]] 編曲:松山祐士 唄:[[池田鴻]]、[[フィーリング・フリー]]、[[ミュージック・クリエイション]](キングレコード)
: 作詞:[[富野由悠季|井荻麟]] 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士 唄:[[池田鴻]]、[[フィーリング・フリー]]、[[ミュージック・クリエイション]](キングレコード)
; エンディングテーマ『永遠にアムロ』
; エンディングテーマ『永遠にアムロ』
: 作詞:井荻麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士 唄:池田鴻、フィーリング・フリー (キングレコード)
: 作詞:井荻麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士 唄:池田鴻、フィーリング・フリー (キングレコード)
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*TVシリーズでは2回にまたがっていたエピソードや戦いを、1回分に集約。これによる演出上の矛盾は極力修正されているが(9話でガンダムが持っていた武器など)、修正されず矛盾が残っている所もある(第29話と第30話におけるシャア専用ズゴックの被弾位置など)
*TVシリーズでは2回にまたがっていたエピソードや戦いを、1回分に集約。これによる演出上の矛盾は極力修正されているが(9話でガンダムが持っていた武器など)、修正されず矛盾が残っている所もある(第29話と第30話におけるシャア専用ズゴックの被弾位置など)
*エピソードを前後で入れ換え。
*エピソードを前後で入れ換え。
*反映分は全てがTVシリーズの映像でなく、同じシーンをわざわざ劇場用に描き直した部分もある。特に『めぐりあい宇宙編』では、TV版制作時に安彦良和が病気で作画から外れていたため、全面的に安彦による新規作画が行われている。
*反映分は全てがTVシリーズの映像でなく、同じシーンを劇場用に描き直した部分もある。特に『めぐりあい宇宙編』では、TV版制作時に安彦良和が病気で作画から外れていたため、全面的に安彦による新規作画が行われている。


{| class=wikitable
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== 放送局 ==
== 放送局 ==
[[テレビ朝日]]系で毎週土曜日17:30 - 18:00に放送された。
[[テレビ朝日]]系で毎週土曜日17:30 - 18:00に放送された。
* 同時ネット:[[名古屋テレビ放送|名古屋テレビ]](キー局)、[[テレビ朝日]]、[[北海道テレビ放送]]、[[東日本放送]]、[[静岡朝日テレビ|静岡けんみんテレビ(現・静岡朝日テレビ)]]、[[広島ホームテレビ]]
* 同時ネット:名古屋テレビ(キー局)、テレビ朝日、[[北海道テレビ放送]]、[[東日本放送]]、[[静岡朝日テレビ|静岡けんみんテレビ(現・静岡朝日テレビ)]]、[[広島ホームテレビ]]
* 時差ネット:[[青森放送]](第26話で打ち切り<!--を行いファンの怒りを買った-->。再放送は[[青森テレビ]]で放映)、[[テレビ岩手]]、[[秋田放送]]、[[山形テレビ]]、[[福島テレビ]](後にテレビ朝日系専門の[[福島放送]]が開局、以後の再放送はこちらで放送)、[[新潟総合テレビ]]、[[長野放送]]、[[富山テレビ放送]]、[[石川テレビ放送]]、[[福井テレビジョン放送|福井テレビ]]、[[朝日放送]](※同時刻にローカル放映ドラマ『[[部長刑事]]』が放映されていた事情による)、[[山陰放送]]、[[瀬戸内海放送]]、[[テレビ山口]]、[[南海放送]]、[[テレビ高知]]、[[九州朝日放送]]、[[長崎放送]]、[[熊本放送]]、[[宮崎放送]]、[[沖縄テレビ放送]]
* 時差ネット:[[青森放送]](第26話で打ち切り。再放送は[[青森テレビ]]で放映)、[[テレビ岩手]]、[[秋田放送]]、[[山形テレビ]]、[[福島テレビ]](後にテレビ朝日系専門の[[福島放送]]が開局、以後の再放送はこちらで放送)、[[新潟総合テレビ]]、[[長野放送]]、[[富山テレビ放送]]、[[石川テレビ放送]]、[[福井テレビジョン放送|福井テレビ]]、[[朝日放送]](※同時刻にローカル放映ドラマ『[[部長刑事]]』が放映されていた事情による)、[[山陰放送]]、[[瀬戸内海放送]]、[[テレビ山口]]、[[南海放送]]、[[テレビ高知]]、[[九州朝日放送]]、[[長崎放送]]、[[熊本放送]]、[[宮崎放送]]、[[沖縄テレビ放送]]


== 前後番組の変遷 ==
== 前後番組の変遷 ==
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== 関連作品 ==
== 関連作品 ==
『[[機動戦士Ζガンダム]]』以降の新たなアニメ作品等に関しては[[ガンダムシリーズ一覧]]を参照。
『[[機動戦士Ζガンダム]]』以降の新たなアニメ作品等に関しては[[ガンダムシリーズ一覧]]を参照。

=== 劇場版 ===
先述した劇場版3部作は2000年にDVD化された際、5.1チャンネル用に[[オリジナルキャスト]](一部を除く)による[[アフレコ]]のやり直しや効果音、BGMの細かい変更が行われている。そういっ事情製作されり、DVD版は内容そ公開当時全く同じだったの、オリジナル当時に映画を見世代や、後ビデオで劇場版を見人達には違和感を覚えた人が多く、<!--概ね不評であ-->ファンからはオリジナル音声版の発売が望まれていたが、2007年12月にようやくオリジナル音声版が発売される事となった。<!--劇場版の権利関係はソニーが所有しており、何度か交渉を試みるも失敗に終わり、オリジナル劇場版のままのDVD化が出来なかった為である。--><!--情報源が明らかになるまでコメントアウト-->この作業について『映像の原則』にて富野は、「昔の10倍ほどに効果音を増やしたつもりだが、こんなものかという印象だった」「昔のままだったらあきれるほど貧相になっていただろう」と語っている。


=== 音楽 ===
=== 音楽 ===
TVシリーズ放送終了後の1980年に[[中島紳介]]と[[氷川竜介]]によって[[キングレコード]]からサントラ盤『機動戦士ガンダム III アムロよ…』が発売されており、レコード2枚にドラマ部分(とそれまでのサントラに収録されなかったBGM)が収録されている。これは単にTVシリーズのうち何話かを抜粋してその音声のみ収録したに過ぎない作品であるが、当時はビデオなどの映像媒体がほとんど普及していなかったため、このような手法がよくとられた。1991年にCDとして再発されたが、現在は入手困難となっている。第1、2、9、10、19、21、24、34、36、38、41、42、43話から抜粋して収録されている。
TVシリーズ放送終了後の1980年に[[中島紳介]]と[[氷川竜介]]によって[[キングレコード]]からサントラ盤『機動戦士ガンダム III アムロよ…』が発売されており、レコード2枚にドラマ部分(とそれまでのサントラに収録されなかったBGM)が収録されている。これはTVシリーズのうち何話かを抜粋してその音声のみ収録した作品が、当時はビデオなどの映像媒体がほとんど普及していなかったため、このような手法がよくとられた。[[1991年]]にCDとして再発されたが、現在は入手困難となっている。第1、2、9、10、19、21、24、34、36、38、41、42、43話から抜粋して収録されている。なお劇場版も公開当時にドラマ編レコードが発売されている。

なお劇場版も公開当時にドラマ編レコードが発売されている(やはり当時映像ソフトが未普及だった為)。


テレビ放送の段階では『ジャングル大帝』や『ヤマト』のシンフォニックBGMより古い、旧来の子供向けアニメソング形態だったが、ジュブナイルアニメとして認知された後のII、IIIの映画化においては、富野の大学時代一時期同窓生で、当時、JポップやCMソングの作曲で人気を得ていた[[井上大輔]]が新たに主題歌を作ってみずから歌った。
劇場版第二作第三作においては、富野の大学時代一時期同窓生で、当時ポップやCMソングの作曲で人気を得ていた[[井上大輔]]が新たに主題歌を作ら歌った。


2008年7月現在下記の作品が復刻発売されており入手可能。シングルは[[レコード#レコードの諸形態|EP盤]]時代には収録されていなかった「Off Vocal Version(カラオケ)」が収録されている。
2008年7月現在下記の作品が復刻発売されており入手可能。シングルは[[レコード#レコードの諸形態|EP盤]]時代には収録されていなかった「Off Vocal Version(カラオケ)」が収録されている。
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=== 小説 ===
=== 小説 ===
TVシリーズの総監督 富野喜幸(現・富野由悠季)によって、TVシリーズの物語を元により高年齢層向けの物語として執筆され、[[朝日ソノラマ]]から出版された。話が進むに従い、TVシリーズとは全く異なる展開をするため、『機動戦士Ζガンダム』など後発の作品とは相容れない内容となっている。単行本2冊で50万部を販売するヒットとなり、当時は高校生の「本離れ」が懸念されていたが映像作品である本作の小説によって相乗効果が発揮されて高校生を引きつけた。本作以降、高校生向けの小説では映像化が重要になった<ref name="mainichi">読書世論調査1995年版</ref>。後に[[角川書店]]の角川文庫に版元が変更され、[[角川スニーカー文庫]]の独立後は同文庫より発売されている。通常、単に小説版といえばこの作品を指す。全3巻。朝日ソノラマ版は表紙画は[[大河原邦男]](第1巻のみシャアの設定セル画)、本文挿絵は[[青鉢芳信]]。角川版は表紙・挿絵共に[[美樹本晴彦]]。
TVシリーズの総監督 富野喜幸(現・富野由悠季)によって、より高年齢層向けの物語として執筆され、[[朝日ソノラマ]]から出版された。話が進むに従い、TVシリーズとは全く異なる展開をするため、『機動戦士Ζガンダム』など後発の作品とは相容れない内容となっている。単行本2冊で50万部を販売するヒットとなり、当時は高校生の「本離れ」が懸念されていたが映像作品である本作の小説によって相乗効果が発揮されて高校生を引きつけた。本作以降、高校生向けの小説では映像化が重要になった<ref name="mainichi">{{Cite journal|和書|journal=読書世論調査|issue=1995年版|publisher=毎日新聞社}}</ref>。後に[[角川書店]]の角川文庫に版元が変更され、[[角川スニーカー文庫]]の独立後は同文庫より発売されている。通常、単に小説版といえばこの作品を指す。全3巻。朝日ソノラマ版は表紙画は大河原邦男(第1巻のみシャアの設定セル画)、本文挿絵は[[青鉢芳信]]。角川版は表紙・挿絵共に[[美樹本晴彦]]。


TVシリーズとの最大の違いは、物語の途中で主人公のアムロが戦死する事であり、当時ファンに大きな衝撃を与えた<ref>[[カトキハジメ]]も『[[GUNDAM FIX]]』最終回でそのシーンを描き、当時の衝撃を語っている</ref>。後年、富野はスニーカー文庫からの再版時に、アムロとハヤトの死を削るなど『Ζガンダム』との整合化作業を試みようとしたが、過去の自分を否定する事になるとして断念したと語っている。また連邦とジオンの描写についても、連邦は官僚の腐敗が進んでいるとしてむしろ悪者的描写がなされており、これが後の『Ζガンダム』におけるエゥーゴ対ティターンズの内紛に繋がっているとも取れる。アムロの母の名前、ギレンの秘書 セシリア・アイリーン、ハヤトのガンキャノン搭乗等の小説版オリジナル設定の一部は、後の劇場版に取り入れられている。
TVシリーズとの最大の違いは、物語の途中で主人公のアムロが戦死する事であり、当時ファンに大きな衝撃を与えた<ref group="註"> [[カトキハジメ]]も『[[GUNDAM FIX]]』最終回でそのシーンを描き、当時の衝撃を語っている</ref>。連邦とジオンの描写についても、連邦は官僚の腐敗が進んでいるとしてむしろ批判的描写がなされている。アムロの母の名前、ギレンの秘書セシリア・アイリーン、ハヤトのガンキャノン搭乗等の小説版オリジナル設定の一部は、後の劇場版に取り入れられている。また、本作のみで登場しているシャア専用[[リックドム]]は、後に数々のゲーム作品などで使用されている。富野は角川文庫からの再版時に、アムロとハヤトの死を削るなど『Ζガンダム』との整合化作業を試みようとしたが、過去の自分を否定する事になるとして断念したと語っている。


また、外伝として富野により『密会 アムロとララァ』も執筆されたが、こちらはTVシリーズの内容に沿った内容になっている。当初は角川mini文庫で全2巻として発売されていたが、後に角川スニーカー文庫から全1巻で発売された。
また、本作のみで登場しているシャア専用[[リックドム]]は、後に数々のゲーム作品などで使用されている。

また、外伝として富野により『密会 アムロとララァ』も執筆されたが、こちらはTVシリーズの内容に沿った形で製作されている。当初は角川mini文庫で全2巻として発売されていたが、後に角川スニーカー文庫から全1巻で発売されるようになった。


なお、[[中根真明]]によって執筆された小説版も朝日ソノラマから発売されていたが、こちらはTVシリーズとほぼ同じ内容となっている(現在は絶版)。
なお、[[中根真明]]によって執筆された小説版も朝日ソノラマから発売されていたが、こちらはTVシリーズとほぼ同じ内容となっている(現在は絶版)。


=== 漫画 ===
=== 漫画 ===
本作が放映された[[1979年]]当時、[[秋田書店]]発行の[[少年漫画|少年向け]][[漫画雑誌]]「冒険王」にて本作の漫画が[[岡崎優]]により連載された。アニメが月に約4回、30分ずつ進行する事にあわせて、ページ数が限られている中で漫画を月1回連載、かつ、同時進行し続けなければならず、また、原作がある程度青年層向けを意図して制作されているのに対して、「冒険王」は少年漫画雑誌だったため、原作とはかなりの部分で改変が行われた。また、本作は連載半ばで打ち切りとなっている。詳しくは『[[機動戦士ガンダム (冒険王版)]]』を参照。
本作が放映された1979年当時、[[秋田書店]]発行の[[少年漫画|少年向け]][[漫画雑誌]]「冒険王」にて本作の漫画が[[岡崎優]]により連載された。アニメが月に約4回、30分ずつ進行する事にあわせて、ページ数が限られている中で漫画を月1回連載、かつ、同時進行し続けなければならず、また、原作がある程度青年層向けを意図して制作されているのに対して、「冒険王」は少年漫画雑誌だったため、原作とはかなりの部分で改変が行われた。また、本作は連載半ばで打ち切りとなっている。詳しくは『[[機動戦士ガンダム (冒険王版)]]』を参照。


[[1992年]]には、原作をリメイクした[[近藤和久]]による漫画がバンダイ出版発行の漫画雑誌「サイバーコミックス」にて『[[機動戦士ガンダム0079]]』という題にて連載された。その後、[[メディアワークス]]発行の漫画雑誌「MS・SAGA」、「[[月刊コミック電撃大王|電撃大王]]」と連載誌を変えながら、足掛け10年以上の長期連載が行われていたが、[[2005年]]に完結した。後述の安彦版がアニメと比べて大胆な変更が加えられているのに対し、この近藤版は設定やストーリーの変更を極力抑え、自身のデビュー作である『[[MS戦記]]』のエピソードを絡めるようになっている。
[[1992年]]には、原作をリメイクした[[近藤和久]]による漫画がバンダイ出版発行の漫画雑誌「サイバーコミックス」にて『[[機動戦士ガンダム0079]]』という題にて連載された。その後、[[メディアワークス]]発行の漫画雑誌「MS・SAGA」、「[[月刊コミック電撃大王|電撃大王]]」と連載誌を変えながら、足掛け10年以上の長期連載が行われていたが、[[2005年]]に完結した。後述の安彦版がアニメと比べて大胆な変更が加えられているのに対し、この近藤版は設定やストーリーの変更を極力抑え、自身のデビュー作である『[[MS戦記]]』のエピソードを絡めるようになっている。


[[2002年]]からは、本編の[[キャラクターデザイン]]などを手がけた[[安彦良和]]が『[[機動戦士ガンダム THE ORIGIN]]』を、この作品のために創刊された角川書店発行の漫画雑誌「[[月刊ガンダムエース]]」にて連載している。ストーリーの一部や細かな設定が見直され、TVシリーズから大きく変更された部分も多い。またTVシリーズで描かれた期間以前の物語(ジオン・ダイクンの死から戦争前期まで)も詳細に描かれている。
[[2002年]]からは、本編のキャラクターデザインなどを手がけた安彦良和が『[[機動戦士ガンダム THE ORIGIN]]』を、この作品のために創刊された角川書店発行の漫画雑誌「[[月刊ガンダムエース]]」にて連載している。ストーリーの一部や細かな設定が見直され、TVシリーズから大きく変更された部分も多い。またTVシリーズで描かれた期間以前の物語(ジオン・ダイクンの死から戦争前期まで)も詳細に描かれている。


=== LD、DVD ===
=== LD、DVD ===
のパッケージ版は長らく劇場版のみで、TVシリーズは本放送から長い間発売されていなかった。
作のパッケージ版は長らく劇場版のみで、TVシリーズは本放送から長い間発売されていなかった。

劇場版3部作は[[2000年]][[DVD]]化された際、5.1チャンネル用に[[オリジナルキャスト]](一部を除く)による[[アフレコ]]のやり直しや効果音、BGMの細かい変更が行われた<ref group="註">こ作業ついて富野は「昔の10倍ほどに効果音を増やしもりだが、こんなものかいう印象だった」「昔ままだっらあきれるほど貧相なっていだろう」と語ってい(キネマ旬報社『映像の原則』)</ref>オリジナル音声版は[[2007年]]12月に発売された。<!--劇場版の権利関係はソニーが所有しており、何度か交渉を試みるも失敗に終わり、オリジナル劇場版のままのDVD化が出来なかった為である。--><!--情報源が明らかになるまでコメントアウト-->


[[LD]]-BOXが初回限定生産の「機動戦士ガンダムメモリアルボックス」として、[[1998年]]8月に「Part-1」(第1~22話収録:6枚組)、同年12月に「Part-2」(第23~43話収録:6枚組)の全2巻に分けて発売された。
[[LD]]-BOXが初回限定生産の「機動戦士ガンダムメモリアルボックス」として、[[1998年]]8月に「Part-1」(第1~22話収録:6枚組)、同年12月に「Part-2」(第23~43話収録:6枚組)の全2巻に分けて発売された。


その後DVD-BOXが初回限定生産として、[[2006年]]12月に[[DVD]]-BOX1(第1~24話収録:6枚組)、翌[[2007年]]1月にDVD-BOX2(第25~43話収録:5枚組)の全2巻に分けて発売された。DVD単品版(全11枚)も2007年6月から順次発売されている。
その後DVD-BOXが初回限定生産として、[[2006年]]12月にDVD-BOX1(第1~24話収録:6枚組)、翌[[2007年]]1月にDVD-BOX2(第25~43話収録:5枚組)の全2巻に分けて発売された。DVD単品版(全11枚)も2007年6月から順次発売されている。DVD-BOX1の予約者に対し、非売品の特製アクションモデル「1/200 RX-78 GUNDAM Limited Version」が付く先行予約特典キャンペーンを行った


DVD化に当たっては監督の富野自ら、本放送から約27年近く経過した原版[[フィルム]]の劣化部分のデジタル補正作業や、[[ハイビジョン]]仕様の[[リマスター]]制作に関るほど、大規模なリファイン作業が行われた。この為、旧作品のDVDとしては1話当たりの単価がやや高めになっている<ref group="註">富野は徳間書店『富野に訊け!』の宇宙飛行士野口聡一との対談において、「ファーストガンダムのDVDをくれませんか」と言われた際、「あれは出来がひどいのであげられません」と答えている(劇場版の事を言った可能性もある)</ref>
また、DVD-BOX1の予約者に対し、非売品の特製アクションモデル「1/200 RX-78 GUNDAM Limited Version」が付く先行予約特典キャンペーンを行った。

DVD化に当たっては監督の富野自ら、本放送から約27年近く経過した原版[[フィルム]]の劣化部分のデジタル補正作業や、[[ハイビジョン]]仕様の[[リマスター]]制作に関るほど、大規模なリファイン作業が行われた。この為、旧作品のDVDとしては1話当たりの単価がやや高めになっている。

富野は『富野に訊け!』の宇宙飛行士の野口聡一との対談において、「ファーストガンダムのDVDをくれませんか」と言われた際、「あれは出来がひどいのであげられません」と答えている(劇場版の事を言った可能性もある)。


== 模倣作品 ==
== 模倣作品 ==
[[韓国アニメ]]の『[[宇宙黒騎士]]』は、この作品からの無断[[剽窃]]が多数見受けられる。
[[韓国アニメ]]の『[[宇宙黒騎士]]』は、この作品からの無断[[剽窃]]が多数見受けられる。


== 注 ==
== 注 ==
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== 出典 ==
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== 参考文献 ==
* 機動戦士ガンダム 記録全集(日本サンライズ、全5巻、1980~1981年)
* [[月刊OUT]]』別冊[[ガンダムセンチュリー|宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY]]([[みのり書房]]、1981年発行。2000年、[[樹想社]]より再版)ISBN 4-87777-028-3
* ガンダム者 ガンダムを創った男たち(Web現代「ガンダム者」取材班、[[講談社]]、2002年)ISBN 4-06-330181-8

''他に参考となる文献や関連する書籍をお持ちの方は、[[Wikipedia:出典を明記する|是非その情報を加筆お願いします]]。''


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2009年2月4日 (水) 16:02時点における版

機動戦士ガンダム
ジャンル ロボットアニメ
アニメ
監督 富野喜幸
アニメーション制作 日本サンライズ
製作 名古屋テレビ
創通エージェンシー
日本サンライズ
放送局 名古屋テレビ
放送期間 1979年4月7日 - 1980年1月26日
話数 全43話
映画:機動戦士ガンダム
監督 富野喜幸
制作 日本サンライズ
封切日 1981年3月14日
上映時間 137分
映画:機動戦士ガンダムII 哀・戦士編
監督 富野喜幸
制作 日本サンライズ
封切日 1981年7月11日
上映時間 134分
映画:機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編
監督 富野喜幸
制作 日本サンライズ
封切日 1982年3月13日
上映時間 141分
シリーズ作品
テンプレート - ノート

機動戦士ガンダム』(きどうせんしガンダム、MOBILE SUIT GUNDAM)は、日本サンライズ(現・サンライズ)制作の日本ロボットアニメ。テレビシリーズアニメとして1979年から名古屋テレビ(現・メ〜テレ)ほかで放映された。

ガンダムシリーズ」の記念すべき第一作である。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


物語

スペースコロニーへの宇宙移民が始まって半世紀あまりが過ぎた未来世界、宇宙世紀0079年が舞台である。人類は増え過ぎた人口を軌道周辺にあるラグランジュ点に浮かぶスペースコロニー群(サイドと呼ばれる)に居住させていた。その中で地球から最も遠いコロニー群サイド3ジオン公国を名乗り、地球連邦からの独立を求め、人型機動兵器「モビルスーツ(MS)」を駆使して独立戦争を挑んできた。開戦から僅か1ヶ月あまりで双方の陣営は総人口の半分を死に至らしめた。

そんな中、サイド7に住む少年アムロ・レイは、地球連邦軍が進めていた「V作戦」に対する調査のためコロニーに侵入したジオン軍MS ザクの攻撃に巻き込まれ、偶然が重なって連邦軍の新型MS ガンダムパイロットになってしまう。ガンダムの性能もあり敵MSを撃退することはできたものの、ガンダムの母艦であるホワイトベースは正規乗組員のほとんどを失い、アムロをはじめこれに避難した少年少女たちは生き残った乗組員達と協力しながらサイド7を脱出する。しかし宇宙には、赤く塗装した専用のザクを駆り数々の戦果を挙げたことから「赤い彗星」と呼ばれるジオン軍のエースパイロット、シャア・アズナブルが待ち構えていた。

この物語は、宿敵シャアをはじめ、様々な人々との出会いや戦い、そして別れを経て数々の困難を乗り越え、閉鎖的な極限状態に悩み傷つきながらも一歩ずつ成長していくアムロたちの姿を描いている。

作品解説

無敵超人ザンボット3』、『無敵鋼人ダイターン3』に続く日本サンライズのオリジナル作品第3作として、富野喜幸(現・富野由悠季)を監督に据え、玩具メーカーのクローバーをメインスポンサーとして企画・制作された。対象年齢を従来より引き上げた、ロボットものとしては最初のジュブナイルアニメである。

ロボットアクション以上に、主人公の社会的成長が物語の主軸に据えられている。また、戦争を舞台としたリアリティに富んだ人間ドラマと、ロボットを「モビルスーツ」と呼ばれる兵器の一種として扱う設定を導入したことで、80年代初頭から半ばにかけての、後に“リアルロボットもの”と称されることになる一連のロボットアニメ変革の先駆けとなった[註 1]

それらの要素が放映当時の10代半ば以上の視聴者を中心に人気を博し、本放送終了後の1981年から1982年にかけて劇場版3部作の制作に結びついた。1980年代を代表する作品であり、1970年代の『宇宙戦艦ヤマト』 、1990年代の『新世紀エヴァンゲリオン』と並び、後々のアニメへ影響を与えた作品である。

なお、本作は後に続々と制作されていく「ガンダムシリーズ」と呼ばれる一連の作品群の第1作目であることから、ファンからはファーストガンダムの異名で呼ばれることも多い。

作品の特徴

本作以前の1970年代当時は『宇宙戦艦ヤマト』や『ルパン三世』といった作品の盛り上がりによりアニメ視聴者層の対象年齢が広がりつつある時期ではあったが、『マジンガーZ』によって開拓されたロボットアニメというジャンルについては、玩具メーカーであるスポンサーの関連商品の購買層が小学生以下に限られていたため対象年齢の低下が進み、いわゆる「お子様向け」の荒唐無稽な内容を脱することができずにいた[註 2]。ところが本作ではスペースコロニーという設定を持ち込むことで、敵も味方も同じ人間どうしの「戦争」という、より現実感のある状況を描き出す試みが出来た。『ザンボット3』と『ダイターン3』の好調な販売成績を受け、スポンサーからの干渉が少なかったためである[1][註 3]

また、前述のとおり登場するロボットをモビルスーツと呼んで現実の兵器に近い描写を行ったのも本作の重要な試みの一つである。従来、主役ロボットには変形や合体など玩具として魅力的なガジェットを備えることがスポンサーである玩具メーカーから求められており、本作の主役MS ガンダムも試作品という設定を付して同様のガジェットを組み込まれた[註 4]。ところが本作ではさらに、敵であるジオン軍MSに設定上「量産機」という概念を与え、ロボット描写のミリタリズムを高めた[註 5]ミノフスキー粒子という架空の粒子も設定され、レーダーや電波誘導兵器を攪乱・無効化することでMS同士の白兵戦に説得力を持たせた。従来の戦争物でおざなりになっていた兵站についても、兵器・物資補給シーンを描いたりマチルダなど補給や整備に関わる人々のドラマを描いている。無重力状態の描写などにも注意が払われ、細かい設定によって作品世界に奥行きを持たせた作品となっている。

主人公アムロはもちろん、彼をサポートする人々や敵対する兵士についても個性的な人物像がセリフや行動で描かれた。また必ずしも主人公サイドの連邦軍が一枚岩でない様子や、シャア・アズナブルの復讐劇の要素も交えて奥行きのあるドラマを展開。全体のプロットには直接触れない登場人物までそれぞれが信念を持ってこの戦争を生き抜いている様子が描かれ、従来作品に比して作品世界が豊かになっている。

本作の重要なキーワードの一つが「人類の革新『ニュータイプ』」である。超能力にも似た特別な感覚を得た人々として設定されたニュータイプは、当初は主人公アムロに超人的活躍をさせるためのアイデアだったが、やがて宿敵シャアもまたニュータイプであることが明かされ、そして同じくニュータイプである少女 ララァ・スンとの出会いと3人の間で起こる悲劇を通じて、「人類の革新」とは何なのかという抽象的なテーマへと昇華された[註 6]

当時は「制作者側が自身の"作家性"を発揮できる余地が大きい最後の時代」とも言われている[2]。本作はロボットアニメという枠組を破綻させることなく、現実味を持たせた物語や設定によって、高年齢層の視聴に堪えうる作品作りが可能であることを示すこととなった。

企画の経緯

本作の企画の根底には『宇宙戦艦ヤマト』のヒットがあった[註 7]。サンライズの山浦栄二は当時、『ヤマト』の制作会社からデータを入手[註 8]、『ヤマト』の関連事業は一部の熱狂的なファンを相手にした商売であることがわかり、「ハイターゲットに絞って、30万-40万の熱狂的なファンをつかめば、それで十分に商売になる」という結論を得た[3]結果、本作は『ヤマト』と同じく中学生以上を取り込むことになった[4][註 9]。一方、富野は「ヤマトをつぶせ!」と強い反発を持っていた[註 10]。富野の反発をよそに本作は作品構成も『ヤマト』が意識されたが、そのままでは活劇的な展開になりにくい事とキャラクターの年齢が高いことが問題になり、『十五少年漂流記』から着想を得て、宇宙船に乗り込んだ少年少女が宇宙戦争の中で協力しながら生き延び成長するというストーリーが構想された。この時点では主人公たちは宇宙船ペガサスに乗り宇宙戦闘機で異星人と戦うという設定だった[4][註 11]

このように当初の企画『フリーダムファイター』ではロボットを登場させる予定がなかったが、クローバーの小松志千郎社長は「こんな木馬みたいな物のおもちゃを作っても商売にならないから、やっぱりロボットを出してくれよ」と要求した。困ったスタッフに、SF作家でスタジオぬえの一員でもある高千穂遥ロバート・A・ハインラインSF小説宇宙の戦士』を紹介した。これに掲載されている、宮武一貴による装甲強化服「パワードスーツ」の挿画を元に大河原邦男が「突撃攻撃型機動歩兵」をデザインした[註 12]。これは潜水服のようなもので『宇宙の戦士』と同じく全高2.5m程度のものだったが子供に受けないとされ、当時主流だった50mから100mの巨大ロボットとパワードスーツのぎりぎりの妥協点としてマジンガーZと同じ18mに設定された[註 13]。実際の戦争にならい、長距離戦、中距離戦、白兵戦と距離別にタイプが違う三つのロボットが構想された(それぞれ後のガンタンクガンキャノン、ガンダムである)[註 14][4]。最初は『宇宙の戦士』の挿絵に強い影響を受けたガンキャノンが主人公機になる予定だったが、スポンサーに反対され[5]、従来のロボット的デザインである「日本的甲冑」が取り入れられたガンダムが主人公機となった。ロボットの名称について、山浦は「パワードスーツでいいだろ」と言ったが、『宇宙の戦士』の作者が訴訟大国のアメリカ人のため訴えられる懸念があったので「モビルスーツ」にした。当初は宇宙ステーションをロボットの活躍の舞台とする予定だったが、18mでは宇宙ステーションに入らない。困ったスタッフは神田の三省堂で買った宇宙関係の本の中でジェラルド・オニールスペースコロニーを見つけた。直径数kmのコロニーなら18mのロボットが入ると喜び、本作に取り入れることにした[3]

この時点での仮題は『ガンボーイ』だった。これが当時人気を博したアメリカ映画「コンボイ」から『ガンボイ』に、さらにチャールズ・ブロンソンがTV-CMで流行語にした「う~ん、マンダム」から「フリーダム」のダムとかけて『ガンダム』という名前が生み出された[4]

初回放映時の評価と後の社会現象

初回放送時の視聴率は名古屋地区で平均9.1%、関東地区で5.3%[6]と振るわなかった。

視聴率低迷のため、スポンサーの要望により量産型の他に、いわゆる「やられメカ」を毎回出すことになった。試作機が投入されたという設定で グフドムなどの新MSやモビルアーマーが登場したが視聴率は好転しなかった[4][註 15]

視聴率低迷は関連商品の不振につながった[7]。スポンサーから「シャアという陰気なキャラクターがいけない」と指摘され作中でシャアを左遷したが、「何でシャアが出ないのだ」という抗議の手紙が殺到した[8]。こうした手紙は中高生のファンからであり、サンライズ側の当初の狙い通り、本作には中学生以上のファンがついていた[7](ちなみに名古屋テレビの関岡渉によると左遷どころか殺す予定だったそうである。関岡がスタッフを説得して取りやめになったとのこと[9])。

その後もテコ入れが試みられたが(後述)、視聴率も売り上げも挽回できず全52話の予定が全43話に短縮される形の打ち切りとなった[註 16][註 17]

ところが打ち切りが決まった直後から人気が上昇。最終回でアムロは死ぬ予定だったが関岡が人気の盛り上がりから再放送や続編制作が期待できるため反対して取りやめになった[9](後に書かれた小説版では、アムロが予定通り死んでいる)。また、放送当時からアニメ雑誌がたびたび熱意ある特集記事を組んだり、アニメファン向けの商品がファンを盛り上げる(後述)など、中高生、特に女子を中心に口コミで徐々に評判が高まった[註 18]。本放送終了後もアニメファンによる再放送要請嘆願署名が行われるなど熱意は衰えず、これらを受けてクローバーは再放送を決定した[10]。こうして再放送、再々放送が重ねられ、世間一般へ本作が浸透していった。再放送では平均視聴率も10%を超え、1982年における再放送では名古屋地区で25.7%(最高視聴率29.1%)を記録した。

放映終了半年後にバンダイから発売されたMSのプラモデルが爆発的な売れ行きを見せ、『ガンプラ』と呼ばれた(後述)。後の劇場版公開もあわせ、社会現象ともいえるブームを巻き起こした。その後も本作と世界観や設定、歴史などを踏襲、あるいは共有する小説漫画が数多く制作された、メディアミックスの先駆けともいえる作品である。

一方で、作中におけるMSの描写やニュータイプの存在に対して高千穂遙がSF考証の観点から批判する意見を述べ「ガンダムSF論争」を巻き起こした。

劇場版三部作と「アニメ新世紀宣言」

前述のように本作は小学生以下からは支持が薄かったものの、女子中高生には高い人気を得た。このため子供向けであることや玩具販促に縛られない劇場版にして女子中高生向けの内容にしようとする動きがあった[7]。1980年10月、TVシリーズの再編集に新作カットを加えストーリー、設定を一部変更した劇場版の制作が発表された。第1話から第13話までを再編集した第一作の題名は『機動戦士ガンダム』とされ1981年3月14日全国松竹系にて公開された[註 19]。題名に数詞が付かなかったのは、第一作の興行成績次第では第二作が製作されない可能性もあったからである[11]。松竹初のアニメ映画である。

これに先立つ1981年2月22日、新宿にて「アニメ新世紀宣言」と呼ばれるイベントが開催され、1万5千人ともいわれる数多くの若者が詰めかけた。中にはシャアとララァなど登場人物の(今で言う)コスプレをして現れた者達もいた(彼らはラポート発行の雑誌「ファンロード」1980年8月号(創刊号)の記事中、当時流行した竹の子族と富野とをもじって「トミノコ族」と呼ばれている)。彼らを前に富野は、これだけの若者がアニメ映画のイベントのために集まったことを通じて、アニメを低俗、俗悪と決めつける社会の認識を問う発言をしている。

第一作の成功を受けて、『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』(第16~31話前半を再編集、1981年7月11日公開)が公開された。前述のように第1作は女子中高生を対象としていたが、実際は観客の35%は小学生以下だった。この結果を受けて松竹は第二作の対象年齢の幅を広げる方針を取った[10][註 20]

第二作では、TV版と第一作の録音監督である松浦典良が降板した。「松浦さんが降りるなら、僕たちも降りる」と古谷徹鈴置洋考井上瑤鵜飼るみ子と主だった声優陣が反対したが、サンライズは拒否。声優陣が松浦の自宅をたずねた時に、松浦が説得して騒動は収束した。この騒動の余波でガンダムの声優陣の待遇が改善された[12]

続けて『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』(第31話後半~第43話を再編集、1982年3月13日公開)が公開された。またこれらの映画の主題歌がオリコンチャートの上位にランキングされるなど、大きな社会現象にまで発展した[註 21]

アニメ史上の評価と後続作品への影響

本作のヒットは新たなアニメブームをもたらし、これに影響されたアニメも玉石混淆で無数に製作されることになる。特にロボットアニメは本作同様に、登場人物や世界観の描写に力を注ぐことで高年齢層も意識した作品作りがなされるようになり、数多くの作品を生み出した[註 22]

「アニメ新世紀宣言」に集まるなどしてガンダムブームを支えた視聴者達の中からは、数多くのクリエイターが生まれている。シャアとララァのコスプレをした二人も、後にメカニックデザイナー 永野護と声優 川村万梨阿として続編『機動戦士Ζガンダム』の制作に参加している。

また等身大のロボットを描いた最初のTVアニメ『鉄腕アトム』がロボット研究者の大きな目標になったように、MSもロボット研究者にとって大きな目標の1つとなっている。

商業的事情

サンライズは前述のように本作を中学生以上向けに作っていたが、スポンサーが集まらない懸念があったため創通エージェンシーはスポンサーには低年齢向けと説明していた[9]。こうして各社とも前作『無敵鋼人ダイターン3』と同じく小学生以下向けの商品を展開したためミスマッチが起き[10]、せっかくの中高生ファンを取り込むことができず関連商品は不振に陥った。

そこでクローバーは「ガンダムパワーアップ作戦」を発動[13]。クローバーの要請により1979年9月に Gアーマーが登場し、同月にはGアーマーとガンダムをセットにした「ガンダムDX合体セット」が発売されたが、売上増には結び付かなかった[10]

関岡の証言では、局の立場としては打ち切り対象にする程ではなかったが、玩具業界のサイクルでは年末年始の次は3月の春休みに需要が見込めるため、2月に新番組を投入すれば丁度その時期に玩具が売れて経営危機を乗り切れるのではないかと判断され、乗り換え需要を喚起するために1月一杯で打ち切りとなったようである[14]。サンライズの飯塚正夫は「オモチャが売れるクリスマスとお正月のお年玉のある1月まではなんとか放送してもらえることになった」と述べている[3]。ところが年末商戦で「DX合体セット」が好調な売行きを示した。クローバーは慌てて延長をサンライズに打診したものの実現しなかった[15]

前述のように本放映時に関連商品を展開した会社は軒並み失敗したが、アニメ雑誌『アニメック』を発行し、アニメショップ『アニメック』を経営していたラポートだけはアニメファンの盛り上がりをいち早くつかんでいた。同社はアニメファン向けの商品を本放映時既に展開し、ファンを盛り上げていった。

一方玩具の不振を補うべく、サンライズはクローバーにプラモデルの商品化を打診していたが、「売れないキャラクターの商品を増やしてもしょうがない」とクローバーに拒否された。そこでサンライズはクローバーの了解を得て他社にプラモの商品化を呼びかけた[4]。ところが本作のもう一つの版権元であり版権窓口でもある創通エージェンシーはクローバーの玩具販売に悪影響が出ることを懸念し、プラモの商品化を望んだバンダイ模型の要請を拒んだ。長い交渉の末、1979年の暮れに創通が折れて、バンダイ模型は商品化権を取得した[16]

こうして放映終了半年後に発売されたMSのプラモデルが爆発的な売れ行きを見せ、ガンダム人気を広げる一助となった。ガンプラは大変な人気を得たことで「モビルスーツバリエーション」と呼ばれる派生シリーズを産み、それらにおける種々の設定はアニメ雑誌において生み出された設定と合わせてガンダムの世界観をより深く掘り下げるものとなった。1982年にはプラモデル市場は過去最高の市場規模になった[17]。本作はアニメファンをプラモデルに呼び込み[18]、ミリタリーモデルのファンをキャラクターモデルに呼び込んだ[19]。本作以前はスケールモデル中心だったプラモデル市場はキャラクター中心になった[17][註 23]

こうした経緯のため「ガンダムブームはラポートが火をつけ、バンダイが築いた」と評されている[20]。劇場版公開の頃になると各社とも本作のファン層に合わせた商品展開をしていたが、ファンの低年齢化によってアニメファン向け以外の商品も売れるようになっていった[10]

前述した後続作品群は、商業上はどれも本作を越えられなかった。このため「ガンダムの後継作品はガンダム」[1]ということになり、ガンダムシリーズは多少のブランクを挟みながら今日まで続くことになった。本作以来のファンを維持しつつ、新しい設定のガンダムが若いファンを獲得して親子二世代にわたって人気があるシリーズとなっている。またガンプラや各種トイも今なお初代ガンダムやザクの新型アイテムが発売されるなど根強い人気を保っている。現在では日本のキャラクターモデルは9割がガンプラだとされている[21]

主要登場人物

アムロ・レイ
当初は一介の民間人、それも機械いじりの好きな内気な少年として登場する。彼は急遽リーダーとなった士官候補生 ブライト・ノアとの衝突や、サイド7脱出以来の宿敵 シャア・アズナブルやMSパイロットとしても人間としても経験豊富な強敵であるベテラン軍人 ランバ・ラルとの戦い、初恋の女性 マチルダ・アジャンや兄貴分 リュウ・ホセイの死といった現実を経て人間的に成長してゆく。さらに、人類の革新「ニュータイプ」として覚醒し、英雄的活躍を遂げるようになる。
シャア・アズナブル
従来からのいわゆる「美形悪役」の流れにあるキャラクターではあるが、ジオンの独裁者 ザビ家に対する復讐のためにこの戦争を巧妙に利用する人物として設定されている。ホワイトベースに乗る妹 セイラ・マスの存在に悩む一方で、ニュータイプの少女 ララァ・スンと出会い、さらに彼もまたニュータイプとして覚醒することによって、人類の進化のために戦争を利用するという高い理念を抱くようになってゆく。
その他の人物
カイ・シデンハヤト・コバヤシフラウ・ボゥミライ・ヤシマといったホワイトベースの仲間達もそれぞれに成長を遂げてゆく姿が描かれる。また、戦争を嫌悪する元軍人、戦争に加担する民間人、スパイ、武器開発者、主人公に殺される学徒動員パイロットなどそれまでのアニメーションでは無視されていたキャラクターの描写も多い。この方向性は『ザンボット3』でも試みられたが、後の作品にまで影響を及ぼすほど徹底したのは、本作の非常に大きな特徴である。

詳細については、下記のページを参照。

スタッフ

  • 企画:日本サンライズ
  • 原作:矢立肇、富野喜幸(現[富野由悠季)
  • 音楽:渡辺岳夫、松山裕士
  • キャラクターデザイン:安彦良和
  • メカニカルデザイン:大河原邦男
  • 美術設定:中村光毅
  • アニメーションディレクター:安彦良和
  • 総監督:富野喜幸(現 富野由悠季)
  • プロデューサー:関岡渉(名古屋テレビ)、大熊信行(創通エージェンシー)、渋江靖夫(日本サンライズ)
  • 脚本:星山博之松崎健一、荒木芳久、山本優、富野喜幸
  • 絵コンテ:斧谷稔(富野喜幸)、山崎和男貞光紳也、久野弘
  • 演出:貞光紳也、藤原良二、小鹿英吉、横山裕一郎、斧谷稔(富野喜幸)、行田進、関田修、久野弘
  • 作画監督:安彦良和、山崎和男、青鉢芳信、富沢和雄、大泉学、中村一夫、鈴村一行
  • 作画:スタジオZ、中村プロダクションアニメフレンド
  • 背景:アートテイクワン、アップル
  • 動画チェック:浜津守
  • 仕上:シャフトディーン
  • 特殊効果:土井通明、山本公
  • 撮影:斎藤秋男、平田隆文
  • 編集:鶴渕友彰、小谷地文男
  • 現像:東京現像所
  • 音響監督:松浦典良
  • 効果:松田昭彦(フィズサウンドクリエイション
  • 整音:日向国雄
  • 録音:整音スタジオ
  • 制作進行:豊住政弘、草刈忠良、植田益朗、望月真人、八木岡正美、深田節雄、神田豊、滝口雅彦
  • 設定制作:円井正
  • アシスタントプロデューサー:神田豊
  • 制作:名古屋テレビ、創通エージェンシー、日本サンライズ

主題歌

オープニングテーマ『翔べ! ガンダム』
作詞:井荻麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士 唄:池田鴻フィーリング・フリーミュージック・クリエイション(キングレコード)
エンディングテーマ『永遠にアムロ』
作詞:井荻麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士 唄:池田鴻、フィーリング・フリー (キングレコード)
劇場版I 主題歌『砂の十字架』
作詞・作曲:谷村新司 編曲:青木望 唄:やしきたかじん
劇場版II 主題歌『哀戦士』 『風にひとりで』
作詞:井荻麟 作曲・編曲・唄:井上大輔
劇場版III 主題歌『めぐりあい』 『ビギニング』
作詞:井荻麟、売野雅勇 編曲:鷺巣詩郎 作曲・唄:井上大輔

挿入歌

『シャアが来る』
作詞:井荻麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士 唄:堀光一路
『きらめきのララァ』
作詞:井荻麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士 唄:戸田恵子
『いまはおやすみ』
作詞:井荻麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士 唄:戸田恵子

放送リスト

各サブタイトルは画面上の表記どおり。また映画化においては、各エピソードに対し主に以下の変更点が加えられた。

  • ボトルショー(シリーズ全体で構成に影響の無い、一話完結エピソード)はカット。ただし第31話以降の『めぐりあい宇宙編』の部分については打ち切りが決定した為、ボトルショーを入れる余裕が無かった。
  • TVシリーズでは2回にまたがっていたエピソードや戦いを、1回分に集約。これによる演出上の矛盾は極力修正されているが(9話でガンダムが持っていた武器など)、修正されず矛盾が残っている所もある(第29話と第30話におけるシャア専用ズゴックの被弾位置など)
  • エピソードを前後で入れ換え。
  • 反映分は全てがTVシリーズの映像でなく、同じシーンを劇場用に描き直した部分もある。特に『めぐりあい宇宙編』では、TV版制作時に安彦良和が病気で作画から外れていたため、全面的に安彦による新規作画が行われている。
サブタイトル 初放送日
(名古屋テレビ)
劇場版での編集反映
1 ガンダム大地に立つ!! 1979年4月7日 物語の発端である為反映。
2 ガンダム破壊命令 1979年4月14日 物語の基本設定が固まる話の為反映。
3 敵の補給艦を叩け! 1979年4月21日 ボトルショーの為カット。但しガデムの補給、シャアザクとガンダムの戦闘は反映。
4 ルナツー脱出作戦 1979年4月28日 時間の都合ですぐジャブローへ出港。パオロは戦死せず下艦。クルー拘禁やマゼラン排除などは丸ごとカット。
5 大気圏突入 1979年5月5日 新舞台とガルマ登場の為反映。ガンダムの大気圏突入機能は大幅に変更。ガンダムハンマーはカット。
6 ガルマ出撃す 1979年5月12日 第9話に統合。地上部隊との戦闘は全カット。
7 コアファイター脱出せよ 1979年5月19日 ボトルショーの為カット。但しシャアザクとガンダムの自由落下戦闘のみ反映。
8 戦場は荒野 1979年5月26日 ボトルショーの為カット。但しカイのガンキャノン発進のみ反映。
9 翔べ! ガンダム 1979年6月2日 一応ボトルショーだがマチルダ登場やアムロの心理描写が重要な為反映。シャアの通信妨害はカット。
10 ガルマ 散る 1979年6月9日 ガルマ戦死やイセリナとの恋が絡む話の為反映。
11 イセリナ、恋のあと 1979年6月16日 ボトルショーの為カット。但しザビ家一党がガルマの葬儀を巡り一堂に会する場面のみ反映。
12 ジオンの脅威 1979年6月23日 グフランバ・ラル隊登場の為反映。ギレンによるガルマ国葬演説(ロングバージョン)は一作目のラストシーン。
13 再会、母よ… 1979年6月30日 ボトルショーだが第12話の前に入れ換えて反映。
14 時間よ、とまれ 1979年7月7日 ボトルショーの為カット。但しマチルダの補給のみ反映。
15 ククルス・ドアンの島 1979年7月14日 ボトルショーの為カット。
16 セイラ出撃 1979年7月21日 『哀 戦士』の導入部。セイラやコズンの投獄がある為反映。
17 アムロ脱走 1979年7月28日 ミライ入浴やアムロの脱走がある為反映。
18 灼熱のアッザム・リーダー 1979年8月4日 アムロ脱走中の話だがボトルショーの為カット。
19 ランバ・ラル特攻! 1979年8月11日 グフやアムロの伏線がある為反映。
20 死闘! ホワイト・ベース 1979年8月18日 ランバ・ラル戦死やリュウ負傷といった伏線がある為反映。ビームジャベリンはビームライフルに差し替え。
21 激闘は憎しみ深く 1979年8月25日 第25話の後に入れ換え。リュウ戦死後のクルーの反応は軽く流す。
22 マ・クベ包囲網を破れ! 1979年9月1日 ボトルショーの為カット。
23 マチルダ救出作戦 1979年9月8日 劇場版では新兵器Gファイターがコア・ブースターへと差し替えられた為カット。但しエルランがレビルへ異議を唱えるシーンのみ反映。
24 迫撃! トリプル・ドム 1979年9月15日 マチルダが死ぬ他、名シーン多数の為反映。但し黒い三連星との戦闘は1回にまとめられる。
25 オデッサの激戦 1979年9月22日 一年戦争全体の伏線の為反映。但し、エルランの内通やマ・クベの核ミサイル使用といった重要エピソードは丸ごとカット。
26 復活のシャア 1979年9月29日 シャアの再登場、水陸両用モビルスーツなど伏線が多く反映。但しハイパーハンマーやGブルはカット。
27 女スパイ潜入! 1979年10月6日 第26話に統合。
28 大西洋、血に染めて 1979年10月13日 カットが検討されたが、カイの成長を描く話の為反映。グラブロがガンペリーのミサイルで撃破されるなど細部で変更。
29 ジャブローに散る! 1979年10月20日 シャアに伏線や名シーンがある為反映。第30話と統合。但しゾックの撃破シーンはカット。
30 小さな防衛線 1979年10月27日 カツ、レツ、キッカやセイラの伏線がある為反映。但しアッガイの撃破シーンは殆どカット。
31 ザンジバル、追撃! 1979年11月3日 冒頭のホワイトベース及びザンジバル大気圏離脱部が『哀 戦士』のラスト。但しGブルイージーやビグロの戦闘シーンは全カット。
32 強行突破作戦 1979年11月10日 シャアがドレンと絡む為反映。但しザクレロの戦闘シーンとビームジャベリンは全カット。
33 コンスコン強襲 1979年11月17日 テムやカムランが関係する為反映。テムとの出会いは一回に統合。コンスコン隊との戦いも次回分と一まとめに。ブラウ・ブロや浮きドック場面はカット。
34 宿命の出会い 1979年11月24日 ララァ、シャアとアムロの出会い、カムランが関係する為反映。テムは新たに死亡シーンが追加。
35 ソロモン攻略戦 1979年12月1日 一年戦争全体の伏線の為反映。作戦開始シーンがかなり短縮されている。
36 恐怖! 機動ビグ・ザム 1979年12月8日 一年戦争全体の伏線やドズル、スレッガー戦死の為反映。
37 テキサスの攻防 1979年12月15日 第37・38話は第35話の前に移動。但しギャンとマ・クベはカット(仕掛けた種々のトラップのみ反映)。
38 再会、シャアとセイラ 1979年12月22日 サブタイトル通り伏線に絡む為反映。但しデラミンやバロム、ワッケインの戦死は全カット。
39 ニュータイプ、シャリア・ブル 1979年12月29日 上映時間の不足と安彦の意見により全面カット。
40 エルメスのララァ 1980年1月5日 以後最終回までニュータイプにからむ話の為全て反映。但しモスク・ハン登場シーンは全カット。
41 光る宇宙 1980年1月12日
42 宇宙要塞ア・バオア・クー 1980年1月19日
43 脱出 1980年1月26日

放送局

テレビ朝日系で毎週土曜日17:30 - 18:00に放送された。

前後番組の変遷

テレビ朝日 土曜17時台後半
前番組 番組名 次番組
無敵鋼人ダイターン3
(1978.6.3 ‐ 1979.3.31)
機動戦士ガンダム
(1979.4.7 ‐ 1980.1.26)
無敵ロボトライダーG7
(1980.2.2 ‐ 1981.1.24)

関連作品

機動戦士Ζガンダム』以降の新たなアニメ作品等に関してはガンダムシリーズ一覧を参照。

音楽

TVシリーズ放送終了後の1980年に中島紳介氷川竜介によってキングレコードからサントラ盤『機動戦士ガンダム III アムロよ…』が発売されており、レコード2枚にドラマ部分(とそれまでのサントラに収録されなかったBGM)が収録されている。これはTVシリーズのうち何話かを抜粋してその音声のみを収録した作品だが、当時はビデオなどの映像媒体がほとんど普及していなかったため、このような手法がよくとられた。1991年にCDとして再発されたが、現在は入手困難となっている。第1、2、9、10、19、21、24、34、36、38、41、42、43話から抜粋して収録されている。なお劇場版も公開当時にドラマ編レコードが発売されている。

劇場版第二作、第三作においては、富野の大学時代一時期同窓生で、当時ポップスやCMソングの作曲で人気を得ていた井上大輔が新たに主題歌を作り、自ら歌った。

2008年7月現在下記の作品が復刻発売されており入手可能。シングルはEP盤時代には収録されていなかった「Off Vocal Version(カラオケ)」が収録されている。

ファーストガンダム主題歌・復刻プロジェクト

  • 翔べ!ガンダム(2006年10月25日発売)
  1. 翔べ!ガンダム
    作詞:井荻 麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士
    歌:池田 鴻
    コーラス:フィーリング フリー / ミュージック クリエイション
  2. 永遠にアムロ
    作詞:井荻 麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士
    歌:池田 鴻
    コーラス:フィーリング フリー
  3. 翔べ!ガンダム Off Vocal Version
  4. 永遠にアムロ Off Vocal Version
  • シャアが来る(2006年10月25日発売)
  1. シャアが来る
    作詞:井荻 麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士
    歌:堀 光一路
  2. きらめきのララァ
    作詞:井荻 麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士
    歌:戸田恵子/シンガーズ・フリー
  3. シャアが来る Off Vocal Version
  4. きらめきのララァ Off Vocal Version
  • いまはおやすみ(2006年10月25日発売)
  1. いまはおやすみ(セリフ入り)
    作詞:井荻 麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士
    歌:戸田恵子
  2. 永遠にアムロ
    作詞:井荻 麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松山祐士
    歌:戸田恵子
    コーラス:ザ・ブレッスン・フォー、フリーザー
  3. いまはおやすみ(セリフ無し)
  4. いまはおやすみ(セリフ入り)Off Vocal Version
  5. 永遠にアムロ Off Vocal Version

ファーストガンダム主題歌・復刻プロジェクト第2段

  • 砂の十字架(2006年11月22日発売)
  1. 砂の十字架
    作詞:谷村新司 作曲:谷村新司 編曲:青木望
    歌:やしきたかじん
  2. スターチルドレン
    作詞:井荻麟 作曲:やしきたかじん 編曲:飛澤宏元
    歌:やしきたかじん
  3. 砂の十字架 Off Vocal Version
  4. スターチルドレン Off Vocal Version
  • 哀 戦士(2006年11月22日発売)
  1. 哀 戦士
    作詞:井荻 麟 作曲:井上大輔 編曲:井上大輔
    歌:井上大輔
  2. 風にひとりで
    作詞:井荻 麟 作曲:井上大輔 編曲:井上大輔
    歌:井上大輔
  3. 哀 戦士 Off Vocal Version
  4. 風にひとりで Off Vocal Version
  • めぐりあい(2006年11月22日発売)
  1. めぐりあい
    作詞:井荻 麟・売野雅勇 作曲:井上大輔 編曲:鷺巣詩郎
    歌:井上大輔
  2. ビギニング
    作詞:井荻 麟 作曲・編曲:井上大輔
    歌:井上大輔
  3. めぐりあい Off Vocal Version
  4. ビギニング Off Vocal Version

TVシリーズ、劇場版全アルバム完全複刻

1979年~1983年に渡って発売された全14タイトルを、紙ジャケットを使用しミニチュア復刻化。

小説

TVシリーズの総監督 富野喜幸(現・富野由悠季)によって、より高年齢層向けの物語として執筆され、朝日ソノラマから出版された。話が進むに従い、TVシリーズとは全く異なる展開をするため、『機動戦士Ζガンダム』など後発の作品とは相容れない内容となっている。単行本2冊で50万部を販売するヒットとなり、当時は高校生の「本離れ」が懸念されていたが映像作品である本作の小説によって相乗効果が発揮されて高校生を引きつけた。本作以降、高校生向けの小説では映像化が重要になった[22]。後に角川書店の角川文庫に版元が変更され、角川スニーカー文庫の独立後は同文庫より発売されている。通常、単に小説版といえばこの作品を指す。全3巻。朝日ソノラマ版は表紙画は大河原邦男(第1巻のみシャアの設定セル画)、本文挿絵は青鉢芳信。角川版は表紙・挿絵共に美樹本晴彦

TVシリーズとの最大の違いは、物語の途中で主人公のアムロが戦死する事であり、当時ファンに大きな衝撃を与えた[註 24]。連邦とジオンの描写についても、連邦は官僚の腐敗が進んでいるとしてむしろ批判的描写がなされている。アムロの母の名前、ギレンの秘書セシリア・アイリーン、ハヤトのガンキャノン搭乗等の小説版オリジナル設定の一部は、後の劇場版に取り入れられている。また、本作のみで登場しているシャア専用リックドムは、後に数々のゲーム作品などで使用されている。富野は角川文庫からの再版時に、アムロとハヤトの死を削るなど『Ζガンダム』との整合化作業を試みようとしたが、過去の自分を否定する事になるとして断念したと語っている。

また、外伝として富野により『密会 アムロとララァ』も執筆されたが、こちらはTVシリーズの内容に沿った内容になっている。当初は角川mini文庫で全2巻として発売されていたが、後に角川スニーカー文庫から全1巻で発売された。

なお、中根真明によって執筆された小説版も朝日ソノラマから発売されていたが、こちらはTVシリーズとほぼ同じ内容となっている(現在は絶版)。

漫画

本作が放映された1979年当時、秋田書店発行の少年向け漫画雑誌「冒険王」にて本作の漫画が岡崎優により連載された。アニメが月に約4回、30分ずつ進行する事にあわせて、ページ数が限られている中で漫画を月1回連載、かつ、同時進行し続けなければならず、また、原作がある程度青年層向けを意図して制作されているのに対して、「冒険王」は少年漫画雑誌だったため、原作とはかなりの部分で改変が行われた。また、本作は連載半ばで打ち切りとなっている。詳しくは『機動戦士ガンダム (冒険王版)』を参照。

1992年には、原作をリメイクした近藤和久による漫画がバンダイ出版発行の漫画雑誌「サイバーコミックス」にて『機動戦士ガンダム0079』という題にて連載された。その後、メディアワークス発行の漫画雑誌「MS・SAGA」、「電撃大王」と連載誌を変えながら、足掛け10年以上の長期連載が行われていたが、2005年に完結した。後述の安彦版がアニメと比べて大胆な変更が加えられているのに対し、この近藤版は設定やストーリーの変更を極力抑え、自身のデビュー作である『MS戦記』のエピソードを絡めるようになっている。

2002年からは、本編のキャラクターデザインなどを手がけた安彦良和が『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を、この作品のために創刊された角川書店発行の漫画雑誌「月刊ガンダムエース」にて連載している。ストーリーの一部や細かな設定が見直され、TVシリーズから大きく変更された部分も多い。またTVシリーズで描かれた期間以前の物語(ジオン・ダイクンの死から戦争前期まで)も詳細に描かれている。

LD、DVD

本作のパッケージ版は長らく劇場版のみで、TVシリーズは本放送から長い間発売されていなかった。

劇場版3部作は2000年DVD化された際、5.1チャンネル用にオリジナルキャスト(一部を除く)によるアフレコのやり直しや効果音、BGMの細かい変更が行われた[註 25]。オリジナル音声版は2007年12月に発売された。

LD-BOXが初回限定生産の「機動戦士ガンダムメモリアルボックス」として、1998年8月に「Part-1」(第1~22話収録:6枚組)、同年12月に「Part-2」(第23~43話収録:6枚組)の全2巻に分けて発売された。

その後DVD-BOXが初回限定生産として、2006年12月にDVD-BOX1(第1~24話収録:6枚組)、翌2007年1月にDVD-BOX2(第25~43話収録:5枚組)の全2巻に分けて発売された。DVD単品版(全11枚)も2007年6月から順次発売されている。DVD-BOX1の予約者に対し、非売品の特製アクションモデル「1/200 RX-78 GUNDAM Limited Version」が付く先行予約特典キャンペーンを行った。

DVD化に当たっては監督の富野自ら、本放送から約27年近く経過した原版フィルムの劣化部分のデジタル補正作業や、ハイビジョン仕様のリマスター制作に関るほど、大規模なリファイン作業が行われた。この為、旧作品のDVDとしては1話当たりの単価がやや高めになっている[註 26]

模倣作品

韓国アニメの『宇宙黒騎士』は、この作品からの無断剽窃が多数見受けられる。

注釈

  1. ^ なお、富野はそうした作品を「ハードロボットもの」と呼んでいる
  2. ^ 超電磁マシーン ボルテスV』や『闘将ダイモス』のように中高生を対象とする作品もあったが、『闘将ダイモス』は玩具販売が低迷。スポンサーの要請により小学生以下向けに修正させられ、中高生向け路線を定着させることができなかった(双葉社『コン・バトラーV ボルテスV ダイモス ダルタニアス 大全』)
  3. ^ このことに関して監督の富野由悠季は「スポンサーが『少し好きな話でどうぞ』と言ってきた」と述べているが(KINO vol.2)、山浦栄二によると前2作の好調を背景に「やりたいことで暴れさせてもらえないだろうか」とスポンサーに申し入れたとしている(洋泉社『ガンダム・エイジ』)
  4. ^ 上半身と下半身の間に小型戦闘機を変形させて組み込むという形を採り、僚機の「ガンキャノン」「ガンタンク」もこのシステムを取り入れた。これはクローバーの玩具で三機の上半身を入れ換えられるというギミックのためである
  5. ^ ただしこれは敵MSのシーンをバンクシステムで使い回すためでもある(月刊ascii2008年5月号)。例えば第1話のザクのシーンが第2話に既に利用されている
  6. ^ ただし富野は「実はニュータイプという単語も途中で作った」(週刊朝日ジャーナル1988年4月15日)と述べており、実際作中でニュータイプという言葉が登場するのは終盤である。後にテレビ版を再編集して作られた劇場版では、新作カットによりアムロがニュータイプとして覚醒する描写がテレビ版よりも前倒しで挿入された
  7. ^ サンライズの吉井孝幸は本作の企画について、ある意味では『ヤマト』の二番煎じの発想と語っている(講談社『ガンダム者』)
  8. ^ 山浦はその時のことを「産業スパイみたいだけど」と述懐している(http://web.archive.org/web/20030218174409/www.sunrise-inc.co.jp/30th/03.html)
  9. ^ ただしクローバーによると本作は「最近のSF・ロボット番組は低年齢層化が激しく、実際の商売になかなか結びつかない傾向も出ている。そこで『ガンダム』は、TV局や製作プロダクションの方ともよく協議して、小学校の高学年の子供たちが見ても充分楽しめるような番組にした」としている(トイジャーナル1979年5月号)
  10. ^ この反発のため『ヤマト』で多用された「愛」という言葉が本作では少ないとされている。劇場版で富野は「愛」という言葉に対する反発から「哀・戦士」を思いついたと述べている(キネマ旬報社『ガンダムの現場から―富野由悠季発言集』)。ちなみに後年の『機動戦士ΖガンダムIII-星の鼓動は愛-』では「愛」をタイトルにつけている
  11. ^ この構想は後に神田武幸監督の手でロボットアニメ『銀河漂流バイファム』として制作された。『バイファム』の原案に富野由悠季の名前があるのはこのためである
  12. ^ サンライズはスタジオぬえと付き合いがあったが、本作のメカデザインはぬえではなく大河原に発注された。これは安彦良和によるとぬえではデザインがマニアックになり過ぎ、作画上の負担になることが懸念されたからである。大河原邦男の「大らかなメカデザイン」が「描きやすい」という評価を得ていた(講談社『ガンダム者』)
  13. ^ これをサンライズの飯塚正夫は「やっぱりスーツじゃなくて巨大ロボットですよね」と評している(講談社『ガンダム者』)
  14. ^ この白兵戦の演出に関し「宇宙時代の兵隊にチャンバラをやらせるわけにはいかない」と悩んでいたスタッフにスタジオぬえは ライトセーバーの存在を示唆し、そこからビームサーベルの設定が生まれた(講談社『ガンダム者』)
  15. ^ 本作が放送された土曜夕方五時半時間帯は子どもが主な視聴層で、彼らには本作の「内容が難しすぎた」と指摘されている(キネマ旬報社『キャラクタービジネス その構造と戦略』)
  16. ^ 当初の52話分の構想について、富野がそれを記した「トミノメモ」と呼ばれるものが存在している。『機動戦士ガンダム 記録全集5』などで、打ち切りによって変更された部分を読むことが出来る。またこれに書かれたMSの名前などの中には、後に続編やモビルスーツバリエーションの中で用いられたものもある
  17. ^ 打ち切りに関して飯塚正夫は「ああ結末までヤマトと同じになっちゃった」と述べている(講談社『ガンダム者』)
  18. ^ 第2回アニメグランプリでは女性票が57%を占めて、1位を獲得。サンライズの植田益朗は放送当初は6割くらいが安彦良和の絵を好む女性ファンだったとしている(竹書房『新機動戦記ガンダムW パーフェクト・アーカイブ・シリーズ10』)
  19. ^ なお、公式リリース以外では、便宜上『砂の十字架編』と呼ばれる場合もある
  20. ^ 低年齢化した理由として指摘されるのが「兄貴が夢中になる物に弟も憧れる法則」である。これはかつての第二次怪獣ブームの時と同じ現象とされている(講談社『ガンプラ・ジェネレーション』)
  21. ^ 1977年に首位を記録した『宇宙戦艦ヤマト』のアルバムなど、それ以前にもオリコンチャート上位にランク入りしたアニメ関連楽曲は存在する
  22. ^ そうして生まれた有人ロボットとして、「バトロイド、デストロイド(『超時空要塞マクロス』)」、「コンバットアーマー(『太陽の牙ダグラム』)」、「ラウンドバーニアン(『銀河漂流バイファム』)」「アーマードトルーパー(『装甲騎兵ボトムズ』)」、「レイバー(『機動警察パトレイバー』)」などが挙げられる
  23. ^ このため東京マルイの岩澤巌は「スケールモデルは終わった」と語っている(月刊トイジャーナル1988年6月号)
  24. ^ カトキハジメも『GUNDAM FIX』最終回でそのシーンを描き、当時の衝撃を語っている
  25. ^ この作業について富野は「昔の10倍ほどに効果音を増やしたつもりだが、こんなものかという印象だった」「昔のままだったらあきれるほど貧相になっていただろう」と語っている(キネマ旬報社『映像の原則』)
  26. ^ 富野は徳間書店『富野に訊け!』の宇宙飛行士野口聡一との対談において、「ファーストガンダムのDVDをくれませんか」と言われた際、「あれは出来がひどいのであげられません」と答えている(劇場版の事を言った可能性もある)

出典

  1. ^ a b 柿沼秀樹、加藤智『バンダイ キャラクタープラモ年代記―鉄人からヤマト、ガンダムまで』学習研究社、2007年。ISBN 4054032826 
  2. ^ 『ascii』2008年5月号、アスキー・メディアワークス。 
  3. ^ a b c 『ガンダム・エイジ―ガンプラ世代のためのガンダム読本』洋泉社、1999年。ISBN 4896913795 
  4. ^ a b c d e f 『ガンダム者―ガンダムを創った男たち』講談社、2002年。ISBN 4063301818 
  5. ^ 『BSアニメ夜話(Vol.02)(キネ旬ムック)』キネマ旬報社、2006年。ISBN 4873766354 
  6. ^ 名古屋テレビ「GUNDAM HOMEPAGE PROJECT」より。外部リンク参照
  7. ^ a b c 猪俣謙次『ガンダム神話』ダイヤモンド社、1995年。ISBN 4478950075 
  8. ^ 日経BP社技術研究部『アニメ・ビジネスが変わる―アニメとキャラクター・ビジネスの真実』ダイヤモンド社、1999年。ISBN 482222550X 
  9. ^ a b c 『日経キャラクターズ』2006年8月号、日経BP社。 
  10. ^ a b c d e 『マーチャンダイジングライツレポート』1981年6月号、商品化権資料センター。 
  11. ^ 氷川竜介、藤津亮太『ガンダムの現場から―富野由悠季発言集』キネマ旬報社、2000年。ISBN 4873765374 
  12. ^ 池田秀一『シャアへの鎮魂歌 わが青春の赤い彗星』ワニブックス、2006年。ISBN 4847017005 
  13. ^ 『月刊トイジャーナル』1979年8月号、東京玩具人形問屋協同組合。 
  14. ^ 『富野由悠季全仕事―1964-1999』キネマ旬報社、1999年。ISBN 4873765145 
  15. ^ 五十嵐浩司『ガンプラ・ジェネレーション』講談社、1999年。ISBN 4063300749 
  16. ^ 猪俣謙次、加藤智『ガンプラ開発真話』メディアワークス、2006年。ISBN 4840234396 
  17. ^ a b 『月刊トイジャーナル』1984年3月号、東京玩具人形問屋協同組合。 
  18. ^ 『月刊トイジャーナル』1981年5月号、東京玩具人形問屋協同組合。 
  19. ^ 『月刊トイジャーナル』1988年6月号、東京玩具人形問屋協同組合。 
  20. ^ 『マーチャンダイジングライツレポート』1982年8月号、商品化権資料センター。 
  21. ^ http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/BodyUrlPdfDown.do?bodyurlpdf=05000892_001_BUP_0.pdf
  22. ^ 『読書世論調査』1995年版、毎日新聞社。 

関連項目

外部リンク