レーダー

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レーダー用パラボラアンテナ(直径40m)

レーダー英語: Radar)とは、電波を対象物に向けて発射し、その反射波を測定することにより、対象物までの距離や方向を測る装置である[1][2]

名称[編集]

レーダーの基本原理。

Radarという単語は定着したアクロニムであり、英語Radio Detecting and Ranging(電波探知測距) からきている。これはアメリカ人による命名であり、当初イギリスではRadio Locator(電波標定機)と呼称されていた[3]

日本語訳[編集]

「レーダー」の日本語訳としては日本陸軍の造語である「電波探知機」の名称・呼称があり、これは「電探(でんたん)」の略称とともに一般化している。この総称「電波探知機(電探)」をさらに陸軍では、電波の照射の跳ね返りにより目標の位置を探る警戒・索敵レーダーに対し「電波警戒機(警戒機)」(および「超短波警戒機」)、高射砲などが使用する射撃レーダーに対し「電波標定機(標定機)」と二種類に区分している[4]。この「電波探知機」の名称・呼称は陸軍のレーダー開発指揮者である佐竹金次少佐(当時)が、ある会議で「電波航空機探知機」と述べたのが簡略化(「電波探知機」)されて普及したものである[5]

しかしながら、陸軍に遅れること数年後にレーダーを導入した日本海軍においては、警戒・索敵レーダーに対し「電波探信儀」の名称・呼称を使用していた。さらに、目標の電波探信儀が発した電波を傍受する一種の方向探知機に対しては、(陸軍の造語で狭義のレーダーを意味する)「電波探知機」(および「超短波受信機」。略称として「逆探」とも[6])称を充てており、「(陸軍称および一般称たる)電波探知機」と混乱が生じている。なお、戦後は「(陸軍称および一般称たる)電波探知機」が広く世間に定着したため[7]、「(海軍称たる)電波探信儀」は廃れている。

なお旧日本軍(陸海軍)のレーダー開発史においては、防空を主として重んじることから陸軍が先進的な存在であり、かつ陸軍上層部自体の理解も高いもので、陸軍科学研究所において電波を通信以外の用途に利用する研究を開始したのは1932年、航空機探知を目的とする狭義のレーダー研究を促進し始めたのは1938年春、レーダー受信実験の成功は1939年2月であった[8]

基本原理[編集]

その名の通り、電波を発射して遠方にある物体を探知、そこまでの距離と方位を測る装置である。人間の目がみている可視光線よりもはるかに波長が長い電波を使用することから、雲や霧を通して、はるかに遠くの目標を探知することができる[1]

最も基本的なレーダーはパルスレーダーである。原理的には送・受の各アンテナ送信機受信機および指示器から構成されるが、実用機では、右図のように、送・受アンテナは共用されるのが一般的である[9]

送信機[編集]

送信機の性能は、送信周波数、送信出力、送信パルス幅、パルス繰返し周波数などの諸元によって決定される[10]

従来のパルスレーダーの場合、送信周波数が低いほうが大気伝搬損失が少なく、大電力化が容易で、良好な受信系雑音指数を得やすいことから最大探知距離を延伸するには有利である。一方、周波数が高いほうが分解能の面では有利である。すなわち、探知距離の延伸と分解能の向上は原則的にはトレードオフの関係にある。ただし、例えばパルス圧縮レーダーでは、探知距離は尖頭出力ではなく平均出力によって、また距離分解能は送信パルス幅ではなく周波数帯域幅によって決定されるほか、角度分解能についても、アンテナや信号処理方式によって克服できるなど、周波数による制約は絶対的なものではなくなりつつある[10]

送信機は、自励発振形と増幅形に分類できる。増幅形は、まず安定した信号を低電力で形成したのち、必要とするだけの大電力まで増幅するものであり、信号処理の柔軟性などに優れている[10]

  • 自励発振管
    • マグネトロン
    • 多間隔クライストロン(EIO
  • 増幅管
    • クライストロン
    • 進行波管(TWT
    • 交差電力増幅管(CFA

アンテナ[編集]

リフレクタアンテナ[編集]

その名の通り、1次放射器(primary feed)から放射された電波を反射鏡(リフレクタ)に当ててビームを成形するものである。マイクロ波の領域で高い利得および狭いビーム幅を得ることができ、しかも、アレイアンテナと比して安価である[11]

アンテナパターンとしてはペンシルビームが多く用いられるが、リフレクタの形状を適切に設定することで、ファンビームやコセカント二乗ビームなどを形成することもできる(成形ビームアンテナ)[11]

また1次放射器としては、ホーンアンテナが最も多く用いられるが、Sバンド以下のように低い周波数領域では、反射板付きダイポールアンテナが用いられることも多い[11]

アレイアンテナ[編集]

複数のアンテナ素子(放射素子)を規則的に配列し、一定の励振条件で給電するアンテナのこと。放射素子の振幅・位相を電気的に制御できることから、アンテナ指向性の制御を容易に行えるという特徴がある。

  • リニアアレイ(linear array) - 直線状
  • プレーナアレイ(planer array) - 平面状
  • サーキュラーアレイ(circular array) - 円形状
  • コンフォーマルアレイ(conformal array) - 任意形状

受信機[編集]

レーダー装置においては、受信機の性能は基本的に雑音によって決定され、SN比の向上が目標となる[12]

方式としては、スーパーヘテロダイン方式、超再生方式(super regenerative)、直接検波方式(crystal video)があるが、スーパーヘテロダイン方式が大部分を占める[12]

指示器[編集]

Aスコープの一例。40マイル以内に複数の目標が存在する波形であるが、アンテナを動かし、その角度情報を元に推測をしなければ正確な方角と、二次元的な情報が得られない。
PPIスコープの一例。どの方角のどの距離に、どれだけの数の目標が存在するか、練度の低い者でも容易に判定が可能である。
Cスコープの一例。対空砲の場合射手は表示された光点を元に、射撃高度と角度を設定して射撃を行う。固定軸の航空機関砲などの場合は出来るだけ光点を表示器中央に位置させるように操縦を行う。
Bスコープの一例。射撃管制レーダーに利用されている。
A、B、Eスコープの一例。6発の一斉射撃の弾着観測。

初期のレーダーはAスコープ表示方式が用いられた。縦軸に電波強度、横軸に時間を取ったオシロスコープに波形を表示(心電図のようなイメージ)させることにより、強度が最も大きい反射波が戻ってくる時間から対象物までの距離のみを読み取っていた。ある一定距離の目標物にアンテナを向ける場合、アンテナの角度が目標物に近づくにつれ、波形の山が大きくなっていき、方向が完全に一致すると波形が極大値(ピーク)を表示する。このようなシステムの場合、レーダー送信機のアンテナの方向は別に表示されていたため、他方向に多数の対象物が存在する場合、測定結果を一覧することができなかった。

Aスコープ方式を採用していた旧日本軍の長波レーダーの運用を例に取ると、送信・受信の各アンテナは兵士が手動または電動で動かし、受信機を操作する電測兵は伝令兵や有線電話からもたらされるアンテナの角度情報と、受信機のAスコープの波形から、どの方向のどの距離にどのような対象物が存在するかを頭の中で二次元図として描き出すことで把握する必要があり、多数の敵の同時測的には大変な熟練が要求された。機器の耐久性の問題から(送信用アンテナを受信用アンテナに直接向けると受信機が入力過大で破壊されてしまうなど)、アンテナの操作一つ取っても各兵士の連携と熟練が不可欠であった。

次の世代のレーダー表示器は、PPIスコープ (Plan Position Indicator scope、Pスコープとも) と呼ばれる円形の表示器に、時計方向に回転する走査線(アンテナが探査波を発射し反射波を受けている方向を表す)によって、対象物の二次元上の所在を一覧できるようになった。表示器の中心がレーダーの発信元で、360度全方向の情報を表示できる為、この方式は一度に多数の目標を捕捉するのに適している。しかし、このような表示方式の場合、レーダー波の波長が長いと近接した複数の対象物が同一の光点として表示されてしまう為、多数の目標を捕捉する際の分解能を高める為には、レーダー波長の短波化が必須となったが、波長の短波化と送信出力の強化の両立には高度な電子技術が要求される為、枢軸国では専ら送信出力を強化しやすい長波レーダーの開発に終始し、PPIスコープの採用までには漕ぎ着けなかった。

連合軍で運用されたPPIスコープを用いる初期のレーダーシステムでは、アンテナの回転角度に旧日本軍と同様の理由で一定の制約が存在したが、やがてマイクロ波レーダーと高利得のパラボラアンテナなどが主体のシステムに発展すると、アンテナは360度自動的に回転し続けるようになった。PPIスコープ上で目標物として表示される光点は、Aスコープでいうところの波形のピークに当たる部分である。旧日本軍の場合、各電測兵がAスコープの波形情報を、経験と技術によって二次元図として変換し認識していたのが、PPIスコープでは完全に自動化されるようになったので、連合国のレーダー担当員の負担は大幅に軽減され、測的の精度も飛躍的に高まる事となった。

また、Bスコープと呼ばれる表示方式では横軸に方位、縦軸に距離(あるいは目標の速さ)を示す方式で、戦闘機などの空対空レーダーや連合軍艦船の射撃管制レーダーに利用されていた。この方式はAスコープでは比較的読み取りが明瞭な波形の強度(ピーク)情報が、PPIスコープに類似した光点の強弱のみで表されるので、正確な読み取りにはやや経験を要したものの、それまでの光学機器による弾着観測と比較して観測員の経験や練度による精度のブレが発生しにくい為、比較的練度の低い砲兵でも安定した射撃成績を挙げる事が可能となった。とりわけ夜戦や荒天下の砲撃戦では光学機器や肉眼目視の練度のみに頼っていた旧日本海軍に大きく差を付ける事に貢献した。Bスコープを元に横軸を方位、縦軸を高度としたものはCスコープと呼ばれ、高射砲の管制に用いられた。

現代のレーダー表示器は通常のラスタースキャンディスプレイ上に、対象物の情報を文字表示したり、既にデータベースにある地形情報などを合成して表示することが可能である。

レーダー方程式[編集]

レーダーと目標との関係は、レーダー方程式(radar range equation)によって表される。これはレーダーの受信電力(受信機に到達する信号エネルギー)を、レーダーの送信出力とアンテナ利得、レーダー反射断面積、送信波長(周波数)、および目標までの距離の関数として計算するものである[13]

SE = \frac{PG^2T\lambda^2\sigma}{(4\pi)^3R^4}
SE:レーダーの受信信号エネルギー [Wsec]
P:平均送信電力(尖頭電力×デューティサイクル)[W]
G:アンテナ利得(非dB形式)
\lambda:送信信号の波長 [m]
\sigma:レーダー反射断面積 [m²]
T:パルスが目標を照射する時間
R:目標とレーダーとの距離

また、パルスレーダーのようにアンテナを共用している場合のレーダー方程式は次式によって与えられる[14]。これはレーダー受信機内の受信電力を考えたものであり、レーダー受信電力方程式(radar received power equation)と称するべきものである[15]

P_r = \frac{P_tG^2\lambda^2\sigma}{(4\pi)^3R^4}
P_r:レーダーの受信電力
P_t:レーダーの尖頭電力
G:アンテナ利得
\lambda:波長
R:目標とレーダーとの距離

レーダー変調[編集]

レーダー変調には下記のような方式がある[16][17]

  • パルス波
  • 連続波(CW)
    • 無変調
    • 変調(modulated CW)

パルスレーダー[編集]

上記の通り、もっとも基本的なレーダーであり、その名の通りにパルス波を送信するものである。これはかなりきれいな立ち上がり・立ち下がり特性をもつ、極めて短い送信信号であり、そのデューティサイクル(パルス持続時間÷パルス繰返し間隔)は比較的低い[18]

パルスの送信は、相対的にはごくわずかな時間しか要さないため、送信と受信の両方に同じアンテナを共用できる。ただし送信パルスのほうが受信パルスよりもはるかに電力が高いことから、パルスが送信されているあいだの反射エネルギーから受信機を保護するため、送受アンテナ共用器(duplexer)などには何らかの対策が必要になる[19]

なおパルス繰返し周期が短いと、はるか遠方にある目標からのエコーパルスは次のパルスを送信した後に受信されることになってしまい、目標との距離を実際よりも短く誤認してしまうことがある。これらは2次エコーと称され、しばしば実目標のエコーと混同される[9]

パルス圧縮レーダー[編集]

パルスレーダーにおいては、探知距離を増大するためにはパルス幅を広くする必要があり、一方、距離分解能の向上のためにパルス幅を広げる必要があるというジレンマがある。これを克服するために採用される手法の一つがパルス圧縮である[20][21]

パルス圧縮の方式としては、下記のような方式がある。

チャープレーダー
送信パルスに線形周波数変調(linear frequency modulation)を加えた線形FMパルス(チャープパルス)を使用する方式[20][21]
符号化パルスレーダー
符号系列により離散的に位相変調を行い、受信時に符号系列の相関処理によりパルス圧縮を行う方式[20][21]

連続波レーダー[編集]

連続波(CW)信号を送信するレーダーである。純粋な(変調を行わない)CWレーダーの場合、送受信信号間のドップラー偏移を測定することで、距離変化率を測定することはできるが、リターン信号電力の測定による不確実な推定以外に、目標との距離を測定することができない[22][23]

一方、連続波レーダーであっても、適切な変調を施すことで、長所をあまり損なわずに距離の測定が可能となる。変調方式としては、送信電波の周波数を周期的に変化させる周波数変調(FM)が代表的である。目標からの反射波が受信される時には送信波の周波数が変化していることから、その周波数差(ビート周波数)を測定して、距離を測定する[22][23]

レーダー信号処理[編集]

パルスドップラー処理[編集]

パルスレーダーのうち、ドップラー処理を行うものをパルスドップラーレーダーと称する[24]

これは処理装置と変調器のあいだにCW発生器を挟んで、各送信パルスをコヒーレントとしている。各送信パルスが同じ信号の継続であるために、位相に一貫性があり、受信機はエコーパルスをコヒーレントに検波できる。コヒーレント検波は感度において著しい利点を有するほか、ドップラ偏移の測定によって目標の相対速度も測定できる[25]。これらの特性により、クラッタから移動目標を抽出する能力に優れている。しかし一方で、PRFに相当する距離以上の目標距離は不確かであるため、連続波レーダーと同様に周波数変調を用いて測距を行うものや、複数の異なるPRFを用いて不確かさを排除する方式が用いられる[24]

移動目標指示[編集]

移動目標指示装置(moving-target indicator, MTI)は、地上の移動目標の探知を目的としたレーダーの一種である[26]

これは、低PRF方式のパルスドップラーレーダーの一種であり、ドップラー処理を用いてクラッタから移動目標を抽出するという点では同様であるが、高PRF方式を採用した狭義のパルスドップラーレーダーと比して、速度(ドップラー周波数)の精度が低い一方、距離の精度では優れている[24]

特殊なレーダー技術[編集]

イメージングレーダー[編集]

目標物・地域を写真のような映像として写しだすレーダーをイメージングレーダーと総称する。高い位置分解能が求められることから、レンジ方向(レーダーと目標を結ぶ方向)の分解能向上はパルス圧縮によって、クロスレンジ方向(レンジ方向と直交する方向)の分解能向上は目標とレーダーとの相対的な運動によるドップラー周波数の解析によって行うことが多い。このうち、クロスレンジ方向の解析について、レーダー側が運動することによって行うものを合成開口レーダー(SAR)、目標側の運動を利用して行うものを逆合成開口レーダー(ISAR)と称する[27]

バイスタティックレーダー[編集]

軍事技術の一つにステルス性があり、これはなるべく敵レーダーへの反射波を返さない技術である。近年では、計算機の発展に伴い、外面が曲面で構成されたステルス兵器もあるが、ステルス兵器が出現した当初は、平面で構成された外面を持っていた。これは、レーダーが送信されてきた方向へはなるべく反射波を返さずに、送信方向とは別の特定の方向にまとめて反射させる工夫である。ステルス技術には電波を吸収する工夫も含まれており、通常は形状によるステルスと共に電波吸収剤も併用される。電波を別方向に反射するステルス兵器を発見するためには、「バイスタティックレーダー(またはマルチスタティック・レーダー)」と呼ばれる送信アンテナと受信アンテナが遠く離れたレーダーシステムが有効だと考えられている。また、電波吸収体は吸収する周波数が固定されるため、広い周波数帯のレーダーが有効だと考えられている[28]

外部環境の影響[編集]

厳密に言えば電波は空気密度の変化に応じて屈折率が変化する。標準大気の屈折率は高度が高くなるにつれて直線的に減少する。それにより電波は下方に曲がりながら伝播する。またその他に、電波が地表付近を通過すると回折現象により下方に曲がりこむ。これらにより例えば水上捜索レーダーや航海レーダーの2次元レーダーの場合、レーダー水平線までの距離(最大探知距離)は見通し距離に比べ若干ではあるが拡大する。つまりより遠方の物体を探知することができる。

サブ・リフラクション[編集]

標準大気ではない、例えば大気の密度構造が逆転状態(高さに対する温度低下が急激であったり相対湿度が高さと共に増加する場合)となる場合は、サブ・リフラクションといって電波が上方に曲げられるためレーダー水平線までの距離は短縮される。

スーパー・リフラクション[編集]

また大気の密度構造つまり高さに対する屈折率の低下の割合が急激な状態(温度の低下率が標準状態よりも少ない場合、または高さと共に温度が上昇するような温度逆転層がある場合、もしくは相対湿度が高さと共に減少する場合)となる場合は、スーパー・リフラクションといって電波が下方に曲げられレーダー水平線までの距離が延長される。

ラジオダクト[編集]

スーパー・リフラクションの状態がさらに著しくなると電波はさらに下方に曲げられて海面に達しそこで反射してまた下方に曲げられるということを繰り返し非常に遠方まで到達しレーダー水平線までの距離が大きく伸びる。この現象をラジオダクトと呼ぶ。

レーダー電波の減衰[編集]

電波は、大気中の酸素や水蒸気などの気体により吸収されたり、霧、雲、雨、雪などにより散乱して減衰したりする。波長の短い電波ほど大気中の気体に吸収され易く、電波を送信・反射・受信する間に、電波のエネルギーはその経路にある気体により吸収され減衰する。

10GHz以下の周波数では酸素や水蒸気等の気体による吸収はほとんど無視できる。雲や霧においては、視程が100m以上程度の濃度の場合、探知距離はほとんど影響を受けないが、視程が50m程度の濃霧の場合、影響を受ける。特にレーダーから測定対象までの距離が遠方にある場合(電波の往復距離が長いので影響を受けやすい。)、減衰が大きい。雨や雪の場合、雨滴が大きくなると散乱が急増し減衰が起きる。電波の波長が長くなると散乱による影響は少なくなる。雪の影響もほぼ同様の傾向を示す。

このようにレーダーでは、波長の長い(=周波数が低い。)電波を使うと電波の散乱による減衰が少なく、遠くまで探知することができるが、一方で分解能が低くなるため、目標の解像度は悪くなる。逆に、波長の短い(=周波数が高い。)電波は、空気中に含まれる水蒸気や雲・雨などに吸収・反射され易いので減衰が大きく遠くまで探知するのに困難を伴う一方で高い解像度を得ることができる。したがって、遠距離の目標をいち早く発見する必要性のある捜索用の対空レーダーや水上レーダーでは周波数が低い電波を用いる傾向があり、一方で射撃管制レーダーなど、目標の形・大きさなどを精密に測定する必要性のあるものでは周波数が高い電波を用いる傾向がある。

クラッター[編集]

軍事用レーダーでは目標以外の反射波は本来不要であり、地面、海面、雲、雨などは「クラッター英語版」として有意情報からは除外されなければならない。このことから、地面や海面からの固定した反射波をクラッターとして抑制するため、パルスドップラー処理移動目標指示が行われる。

一方、気象レーダーなどでは航空機などによる反射波は不要であり、雲や雨が有意情報である。

無線局としてのレーダー[編集]

船舶用レーダーの例。無線航行移動局に分類される。

日本では、レーダーは無線局における無線設備の一種として扱われる。

政令電波法施行令第3条第2項第7号では、「ある特定の地点から反射され、又は再発射される無線信号と基準となる無線信号との比較を基礎として、位置を決定し、又は位置との関連における情報を取得するための無線設備」と、 総務省令電波法施行規則第2条第1項第32号では、「決定しようとする位置から反射され、または再発射される無線信号と基準信号との比較を基礎とする無線測位の設備」と定義している。 関連する定義として

  • 「無線測位」を第2条第1項第29号に「電波の伝搬特性を用いてする位置の決定又は位置に関する情報の取得」
  • 「無線航行」を第2条第1項第30号に「航行のための無線測位(障害物の探知を含む。)」
  • 「無線標定」を第2条第1項第31号に「無線航行業務以外の無線測位」

がある。すなわち、レーダーには船舶・航空機の航行のための無線航行用とそれ以外の気象観測や速度測定や物体検知などのための無線標定用がある。

レーダーのみを無線設備とする無線局は無線測位局といい、用途及び移動の可否により無線航行陸上局無線航行移動局(あわせて無線航行局という。)、無線標定陸上局無線標定移動局として免許される。 詳細は各項によるものとし、レーダーのみが無線設備である無線局の操作又はその監督に最低限必要な無線従事者のみについて掲げる。

種別 資格 備考
無線航行陸上局 レーダー級海上特殊無線技士  
無線航行移動局 レーダー級海上特殊無線技士 空中線電力5kW未満の通称、第4種レーダー(無線航行移動局#実際を参照)は不要[29]
無線標定陸上局 第二級陸上特殊無線技士 陸上系の無線従事者を要するのは政令電波法施行令第3条第2項第6号の陸上の無線局であることによる。

警察用以外で空中線電力0.1W以下の適合表示無線設備技適マークのあるもの)は不要[29]

無線標定移動局 第二級陸上特殊無線技士
  • 従前の特殊無線技士(レーダー)は無線航行用と無線標定用のどちらのレーダーも操作できる。
  • レーダーのみが無線設備である航空用無線航行局は存在しない[脚注 1]ので表にない。
  • 自衛隊のレーダーについては自衛隊法第112条第1項により無線局の免許および無線従事者に関する規定が適用されない[脚注 2]ので表にない。

上述より、

  • 船舶搭載であれば資格不要な第4種レーダーでも、陸上に設置し使用するのであれば無線従事者を要する[30]
  • スピード測定器でも、スポーツ・レジャー用の通称スピードガンであれば資格不要であるが、警察の速度取締用には無線従事者を要する

こととなる。

レーダーと他の海上用または航空用の無線機器をあわせて無線設備とする無線局は、移動の可否により海上用は海岸局(あるいは無線航行陸上局)または船舶局(あるいは無線航行移動局)、航空用は航空局または航空機局として免許される。 これらの操作には各々海上系または航空系の無線従事者を要する。但し、第4種レーダーの無線航行移動局は除く。 また、自衛隊の艦船、航空機については上述と同様に自衛隊法第112条第1項により無線局の免許および無線従事者に関する規定が適用されない。

免許も無線従事者も不要な特定小電力無線局にもミリ波レーダー用又は移動体検知センサー用としてレーダーを用いた機器がある。 自動車の障害物検知用レーダーや防犯用侵入者検知センサーなどである。

電波法関係手数料令第1条第2項には「空中線電力50Wを超えるレーダーは、この政令の適用に関しては、空中線電力50Wの送信機とみなす。」としている。 また、登録免許税が非課税となる範囲として登録免許税法施行令第12条第5号に「基本送信機の規模が空中線電力(レーダーについては、財務省令で定める方法により計算した空中線電力)500W以下のもの」とし、登録免許税法施行規則および無線設備規則により、尖頭電力に衝撃係数(パルス幅とパルス周期との比)を乗じて平均電力に換算するものとしている。 これは、レーダーの空中線電力は尖頭電力で規定されるため、平均電力で規定される無線電話テレビジョンと単純に比較すると送信機の規模が不当に高く評価されるので、これを緩和するための措置である。

脚注[編集]

  1. ^ 無線航行陸上局は無線局運用規則に基づく告示の対象であるが、航空用については告示されていない。無線航行移動局は、航空機局の定義が「航空機の無線局のうち、無線設備がレーダーのみのもの以外のもの」とあるので、レーダーのみを搭載する航空機について適用されることになるが、そのような航空機は事実上ありえない。
  2. ^ 但し、同条第2項により使用する周波数について総務大臣の承認を受けること及び従事する者について自衛隊としての内部基準を規定しなければならない。

出典[編集]

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  2. ^ アダミー 2014, p. 35
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参考文献[編集]

外部リンク[編集]