総合車両製作所
コンテナの銘板 | |
種類 | 株式会社 |
---|---|
略称 | J-TREC |
本社所在地 |
日本 〒236-0043 神奈川県横浜市金沢区大川3番1号 北緯35度20分9秒 東経139度37分5.3秒 / 北緯35.33583度 東経139.618139度座標: 北緯35度20分9秒 東経139度37分5.3秒 / 北緯35.33583度 東経139.618139度 |
設立 |
2011年(平成23年)11月9日 (新東急車輛株式会社) |
業種 | 輸送用機器 |
法人番号 | 2020001093163 |
事業内容 | 鉄道車両などの製造・販売 |
代表者 | 代表取締役社長 西山 隆雄 |
売上高 |
377億2,300万円 (2024年3月期)[1] |
営業利益 |
△600万円 (2024年3月期)[1] |
経常利益 |
△1,400万円 (2024年3月期)[1] |
純利益 |
△9,000万円 (2024年3月期)[1] |
純資産 |
305億4,300万円 (2024年3月期)[1] |
総資産 |
735億2,300万円 (2024年3月期)[1] |
従業員数 | 1567名(2021年5月1日現在) |
主要株主 | 東日本旅客鉄道 100% |
外部リンク |
www |
特記事項:2012年(平成24年)4月1日に東急車輛製造株式会社より鉄道車両製造事業を継承した。 |
株式会社総合車両製作所(そうごうしゃりょうせいさくしょ、英: Japan Transport Engineering Company、英略称:J-TREC)は、神奈川県横浜市金沢区に本社を置く日本の鉄道車両メーカーで、東日本旅客鉄道(JR東日本)の完全子会社である。
概要
[編集]東京急行電鉄子会社であった東急車輛製造の鉄道車両事業を、需要の低迷などを理由にJR東日本に事業譲渡するにあたり、2011年(平成23年)11月9日、東急100%子会社の新東急車輛株式会社として設立され[2][3]、翌2012年(平成24年)4月1日付で同社へ東急車輛製造の各事業を譲渡した上で、翌4月2日付で新東急車輛の全株式をJR東日本へ売却し同社の完全子会社となるとともに、同日付で株式会社総合車両製作所と商号を変更し、現社名となる。
その上で、東急車輛製造の事業譲受以前より運営する、JR東日本直営の車両製作所である新津車両製作所を、グループ内の車両製造業務を一本化するため、車両製造事業とそれに係る資産や負債、権利および義務を、2014年(平成26年)4月1日付で当社へ会社分割により譲渡し[4]、新津車両製作所を当社の「新津事業所」とする形で現在の体制となった[注釈 1]。
これらの経緯により、東京急行電鉄(現・東急)の鉄道車両製造・修理部門を分社化した東急車輛製造、当社設立以前に東急車輛へ吸収合併された梅鉢鉄工所および帝國車輛工業、JR東日本新津車両製作所の3つの源流を持ち、旧東急横浜製作所由来の本社および横浜事業所(神奈川県横浜市金沢区大川)、旧梅鉢車輛・帝国車輛に由来し大阪府堺市から移転した和歌山事業所(和歌山県紀の川市)、JR東日本新津車両製作所を引き継いだ新津事業所(新潟県新潟市秋葉区)の3か所の製造拠点を有する。横浜事業所と新津事業所においては主に鉄道車両、和歌山事業所においてはコンテナの製造を手掛けている。
鉄道車両については、東急電鉄向けの車両は旧・東急車輛製造時代から一貫して製造を担当していたが、JR東日本向けについても、当社設立以降、一般形の電車についてはJR九州BEC819系電車のOEMであるEV-E801系電車(日立製作所製)を除いて当社に製造を集約させている。なお、新幹線車両および特急車両については、他社を含めた形での製造を継続しており、新幹線車両ではE3系の改造[注釈 2]やE7系の製造、特急車両ではE353系やE657系の製造に参画している一方、E8系やE261系など、製造に参画していない車両もある。
鉄道車両のほか、鉄道・海上用輸送コンテナの製造も行っている。分岐器・横取り装置をはじめとする軌道関連部品の製造も行っていたが2018年度をもって撤退した。なお、2017年現在、日本国内において一般型鉄道用コンテナのライン製造設備を持つ唯一の企業となっている[5][注釈 3]。
年表
[編集]- 2011年(平成23年)11月9日 - 東急車輛製造株式会社の「鉄道車両新会社」として新東急車輛株式会社を設立。
- 2012年(平成24年)
- 4月1日 - 東急車輛製造株式会社より鉄道車両事業、ならびに東急車輛エンジニアリング株式会社および京浜鋼板工業株式会社の株式保有を含む一般管理部門を継承。
- 4月2日 - 新東急車輛株式会社の全株式が東日本旅客鉄道株式会社に売却され、株式会社総合車両製作所に商号変更。
- 4月6日 - 総合車両製作所発足後、初の竣功車両として京急新1000形1153編成が落成。出場記念のテープカットを実施[6]
- 7月23日 - 横浜事業所構内にて保存中の東急5201号と東急7052号が、日本機械学会より機械遺産51号「ステンレス鋼製車両群(東急5200系と7000系)」として認定。
- 8月10日 - 総合車両製作所としてのJR東日本向け第1号車両(E657系)が落成、記念式典を開催。
- 2013年(平成25年)
- 2014年(平成26年)4月1日 - 東日本旅客鉄道株式会社新潟支社の新津車両製作所の車両製造事業等を継承[4]。
- 2019年(平成31年)3月末 - 軌道関連部品の製造から撤退。
製品
[編集]鉄道車両
[編集]車両の製作をJR東日本新津車両製作所(当時)に委託したものが一部含まれる。東急車輛製造当時に受注・製造したものについてはこちらの項を参照。
東日本地区の鉄道事業者を主要な顧客とするが、合併によって東急車輛製造大阪製作所(現在は和歌山に移転)となった旧帝國車輛工業当時から取引があった南海電気鉄道やその子会社の泉北高速鉄道は、西日本地区における数少ない顧客である。ただし、帝國車輛工業合併以前にもオールステンレス車両である6000系電車などの納入実績がある。これは当時オールステンレス車両の製造技術を有するメーカーが東急車輛製造のみであったことに起因しているが、総合車両製作所への移行後は8000系のみ製造している。なお、2015年(平成27年)秋デビューの8300系は近畿車輛での製造となった[11]。一方で京都市営地下鉄烏丸線(京都市交通局)に導入予定の新車(後の20系)デザイン検討を「1円」で落札[12]したが、2019年7月に行われた「高速鉄道烏丸線新型車両車体及びぎ装」の入札は辞退し、先代10系でも大半を製造した近畿車輛に落札させた[13]。
日本国外向けステンレス車両については、日本におけるステンレス車両のパイオニアメーカーとして「sustina(サスティナ)」というブランド名を制定、2012年9月下旬にドイツ・ベルリンで開催の世界最大の鉄道関係見本市「InnoTrans2012」に出展した[14]。sustinaとは、JIS規格で規定されるところのSUS鋼と、英単語のsustainableを合成した造語で、ステンレス車体の特徴である美しい外観・高い安全性・長期間持続する高い信頼性、さらにリサイクル性の高さから地球環境の維持にも優れていることをイメージし制定されたものである。「sustina」は後に国内向けにも用いられるようになった[15][16]。ロゴの違いはsustinaのiの上の点が海外向けは日本(の国旗としての日の丸)をイメージした赤い丸[14]なのに対し、国内向けは地球をイメージしたもの[15]となっている。
ただし、京浜急行電鉄に納入される車両では、京急の意向で「J-TREC」「sustina」のロゴを記載することが認められておらず、漢字で「総合車両製作所」とだけ記されている。
鉄道総合技術研究所と共同研究・開発した通勤車両ロングシートの円弧状手すりは、1000両余(2012年7月現在)で採用され、2012年度「人間工学グッドプラクティス賞 最優秀賞」[17]を一般社団法人日本人間工学会から受賞している。
日本車輌製造が設計幹事会社となり、同社と共同で受注している車両については、日車式ブロック工法の技術供与を受けて製造を行っている。
電車
[編集]- 東急電鉄 - 5000系列・6000系(デハ6300形)・7000系・2020系[注釈 5][18]・6020系[注釈 6]・3020系
- 京王電鉄 - 5000系(2代目)[19]・デヤ901形・902形・サヤ912(事業用車)
- 小田急電鉄 - 4000形(2代)・5000形(2代)[注釈 7][20]
- 東京都交通局 - 10-300形・5500形[21][22]
- 相模鉄道 - 11000系・12000系
- 京浜急行電鉄 - 新1000形
- 京成電鉄 - 3000形(2代)[注釈 8]・3100形(2代)[注釈 8]
- 南海電気鉄道 - 8000系
- 静岡鉄道 - A3000形[23][24]
- 泉北高速鉄道 - 12000系[25]
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)
- 青い森鉄道 - 青い森703系
- 阿武隈急行 - AB900系[30]
- しなの鉄道 - SR1系[注釈 16][31]
案内軌条式鉄道用
[編集]日本国外
[編集]- バンコク・メトロ - パープルライン用車両
- フィリピン - 南北通勤鉄道向け鉄道車両(製造予定)[32]
気動車
[編集]鉄道車両以外の製品
[編集]- 台車 - 鉄道車両用台車の生産は東急車輛製造の前身企業である東急横浜製作所当時から行っている。
- 輪重測定装置
- 分岐器など、軌道に付帯する部品 - 2019年度をもって撤退。
- 鉄道輸送用コンテナ - 京都鉄道博物館で展示するためだけのコンテナ(19D-28901)も製造した[33]。
工作機械分野では速い接合スピードを特長とする独自摩擦攪拌接合(FSW)用ツールを大阪大学監修で開発し、「Smart FSW」の名称で研究開発用に販売しており、特許・意匠・商標出願中である。
東急車輛製造時代に開発製品(メカトロニクス製品・環境システム製品)を扱った時期もあるが、現在は同分野からは撤退してサービス業務のみ継続している。
改造車両
[編集]車両の改造も実施している。主な内容を下に記す。【 】内は改造の内容。
- 東武鉄道 - 6050系【634型「スカイツリートレイン」への改造】
- 西武鉄道 - 4000系【4009編成の「西武 旅するレストラン 52席の至福」への改造】
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)
- キエフ地下鉄 - Em形電車【E-KM形への改造[注釈 19]】[34]
横浜事業所回送線
[編集]横浜事業所が京浜急行電鉄(京急)の金沢八景駅に隣接して立地する都合上、京急逗子線の金沢八景 - 神武寺間の上り線は、JRなどへの新製車両の納入や、改造車両などの入出場のために横浜事業所からJR逗子駅までの搬出入(回送)線を併設しており、1,435 mm(標準軌)と1,067 mm(狭軌)の三線軌条区間となっている。
京急向けに新製された車両については通常横浜事業所から自力で出場回送されるほか、川崎車両で新製された京急の車両については、回送線を経由して一旦同事業所に搬入され、台車交換・整備が実施された後、同様に自力回送にて出場する。また、京成電鉄・北総鉄道向けに新製された車両は同事業所製のものは直接、日本車輌製造製のものは同事業所を経由し、自力または京成の車両による牽引で京急線・都営浅草線経由にて出場する。同事業所にて都営浅草線向けに新造された車両も初期製造編成以外は自力回送にて出場する。
グループ企業
[編集]- J-TRECデザインサービス株式会社[35] - 東急車輛エンジニアリングより改称
その他
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ただし、新津事業所における従業員の雇用契約は引き続きJR東日本が保持し、当社へ出向する形をとる。
- ^ 東急車輛時代に製造を担当
- ^ 液体用タンクコンテナについては日本車輌製造でも製造。
- ^ ただし、登記上は現存している[8]。
- ^ 新津事業所でも製造。
- ^ Qシート車2両は新津事業所で製造。
- ^ 日車式ブロック工法及びefACEの設計も取り入れている車両。
- ^ a b 日車式ブロック工法を採用している車両。
- ^ グリーン車を除いて新津事業所でも製造。8000番台は新津事業所でのみ製造。
- ^ グリーン車は横浜事業所、普通車は新津事業所で製造。
- ^ 試験用の水素式燃料電池電車
- ^ グリーン車を除いて新津事業所でも製造。
- ^ a b 新津事業所でのみ製造。
- ^ 先頭車は横浜事業所、中間車は新津事業所で製造。
- ^ 5 - 7号車の3両のみ。
- ^ 100番台は新津事業所でのみ、300番台は新津事業所でも製造。
- ^ 新津事業所で改造。
- ^ 外装は秋田総合車両センターで行われた。
- ^ 改造工事自体はウクライナの車両メーカーであるクリュコフが施工し、総合車両製作所は艤装及びシステムの設計、施工要領の作成、作業指導等を担当。
出典
[編集]- ^ a b c d e f 株式会社総合車両製作所 第12期決算公告
- ^ 鉄道車両新会社の商号について (PDF) - JR東日本 2012年3月6日
- ^ 『子会社の事業の譲渡に関するお知らせ』(プレスリリース)東京急行電鉄、2011年10月27日 。2020年1月26日閲覧。
- ^ a b 車両製造事業の子会社への会社分割による継承について (PDF) - JR東日本 2013年12月18日
- ^ 特集「J-TREC 技術の源流をたずねて」 (PDF) - J-TREC 2017年12月
- ^ 交友社『鉄道ファン』2012年7月号 p.203「出来事2012.3 - 4」記事ならびに2013年1月号「株式会社総合車両製作所について」p.132記事。
- ^ 京濱産業株式会社の情報
- ^ a b 京浜鋼板工業株式会社の情報
- ^ “会社概要・沿革”. 京浜産業株式会社. 2017年6月10日閲覧。
- ^ ALSTOM社製LRTの国内導入協力に関する覚書の締結について (PDF) - 総合車両製作所 2013年6月19日
- ^ 近畿車両、南海から新型車両受注―40年ぶり、「8300系」30億円規模 - 日刊工業新聞2015年4月27日
- ^ 京都市営地下鉄の新造車両、デザイン検討は「1円」…J-TRECが落札、予定価格500万円 Response 2017年9月1日、同10月12日閲覧。
- ^ 高速鉄道烏丸線新型車両車体及びぎ装 京都市交通局 入札執行結果詳細 <物品> 入札番号4313000431 2019年7月31日
- ^ a b 海外向けステンレス車両のブランド名を「sustina(サスティナ)」に (PDF)
- 総合車両製作所 2012年9月12日 - ^ a b ステンレス車両ブランド「sustina(サスティナ)」国内向けロゴマークの制定について (PDF)
- 総合車両製作所 2013年4月9日 - ^ 〜東急電鉄と総合車両製作所が共同開発〜 次世代ステンレス車両「sustina(サスティナ)」シリーズを導入します 5月に東横線でデビュー (PDF)
- 総合車両製作所 2013年4月10日 - ^ 鉄道車両用円弧状手すり 人間工学グッドプラクティス賞受賞 (PDF)
- 総合車両製作所 2012年7月3日 - ^ 東京急行電鉄株式会社田園都市線向け新型車両製造を担当(総合車両製作所公式サイト)2017年3月23日閲覧。
- ^ 2018年春、当社初の座席指定列車を導入します!〜新型車両 「5000系」 登場〜 - 京王電鉄、2016年3月16日
- ^ 新型通勤車両「5000形」を導入 - 小田急電鉄公式サイト)2019年5月3日閲覧。
- ^ 東京都入札 契約番号27-21335 平成27年12月11日 浅草線車両の製造
- ^ 東京都交通局都営浅草線向け新型車両を製造開始 - 総合車両製作所、2016年12月7日
- ^ 静鉄電車 新型車両の製作開始について〜製作会社、形式名、外観カラーリング決定〜、2015年6月19日
- ^ 静岡鉄道新型車両スペシャルサイト“shizuoka rainbow trains / 静岡 レインボー トレインズ”
- ^ 『「泉北ライナー」用新型特急車両、泉北12000系が光明池車庫に到着しました!』(プレスリリース)泉北高速鉄道、2016年11月4日 。2016年11月12日閲覧。
- ^ E721系1000代 新造車両の投入について - 東日本旅客鉄道、2016年5月26日
- ^ 上新大介 (2016年9月27日). “JR東日本「トランスイート四季島」全車両出そろう - 中間車3両を都内へ輸送”. マイナビニュース (マイナビ) 2018年8月21日閲覧。
- ^ “「TRAIN SUITE 四季島」3両が甲種輸送される”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2016年9月28日). 2016年10月7日閲覧。
- ^ 「週刊エコノミスト」臨時増刊、2016年5月23日号「ニッポン鉄道の挑戦」p.62-64 毎日新聞出版。
- ^ <宮城県>阿武隈急行に1億円 車両更新を支援 2月補正予算 - 河北新報、2018年2月14日
- ^ しなの鉄道株式会社向け新型車両の製造を担当します
- ^ フィリピン 南北通勤鉄道向け鉄道車両104両受注について
- ^ 京都鉄道博物館にコンテナを納入 (PDF)
- ^ “ウクライナ キエフ市地下鉄 − 車両の更新工事 −”. 総合車両製作所. 2022年4月14日閲覧。
- ^ J-TRECデザインサービス株式会社の情報
- ^ “バス路線系統図・能見台営業所 2020年12月16日現在” (PDF). 京浜急行バス. 2021年3月8日閲覧。
参考文献
[編集]関連項目
[編集]- 総合車両製作所新津事業所
- 京急逗子線
- 東急電鉄 - 前身である東急車輛製造時代の親会社(東急車輛は完全子会社)。
- 日本車輌製造 - 東海旅客鉄道(JR東海)の連結子会社の鉄道車両メーカー。
- 近畿車輛 - 近畿日本鉄道(近鉄)および西日本旅客鉄道(JR西日本)の出資する鉄道車両メーカー(近鉄の持分法適用会社)。
- アルナ車両 - 阪急阪神ホールディングスの完全子会社の鉄道車両メーカー。
- 鉄道むすめ - 東急車両製造時代、溶接工という設定の「金沢あるみ」が商品化された。総合車両製作所への改称後には転属となり、生産本部技術部所属の車両デザイナーという設定になっている。