一帯一路

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一帯一路(いったいいちろ、拼音: Yídài yílù英語: Belt and Road, B&R; One Belt, One Road, OBOR)とは、2014年11月に中華人民共和国で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で、習近平総書記が提唱した経済圏構想である。

概要[編集]

一帯一路の地図

中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」の意味)と、中国沿岸部から東南アジアスリランカアラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」の意味)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画であり[1]、それぞれ2013年に習総書記がカザフスタンナザルバエフ大学とインドネシア議会で演説したものである。

一帯一路構想のルートには、北極海航路、北米航路も第三のルートとして含まれている。ロシアムルマンスクの埠頭を開発し欧州〜ロシア〜日本〜中国というルートである。これはロシアのウラジミール・プーチン大統領が一帯一路と北極海航路の連結という形で提唱し[2]、中国は「氷上シルクロード」と呼んでる[2]。とりわけ日本の釧路港をアジアの玄関口、北のシンガポールという位置づけで強い関心があることも公表されてる[3]。さらに中国、ロシア、米国を繋ぐ高速鉄道構想もあるグローバルなロジスティック戦略である。また、中国と欧州を繋ぐルートとして開通した義鳥・ロンドン路線英語版義鳥・マドリード路線英語版も基本的にロシアを経由してトランス・ユーラシア・ロジスティクス英語版などが利用してるが、厳冬期でのハイテク製品の輸送に適してないロシアを迂回するルートとしてアゼルバイジャンジョージアトルコを通るルートも開発されている[4]

中国政府李克強国務院総理は、沿線国を訪問し、支持を呼び掛けている。100を超える国と地域から支持あるいは協力協定を得ており[5]、さらに国際連合安全保障理事会[6][7]国際連合総会[8][9]ASEANEUアラブ連盟アフリカ連合アジア協力対話英語版英語: Asia Cooperation Dialogue, ACD)、上海協力機構など多くの国際組織が支持を表明している[10]。李克強国務院総理は「『一帯一路』の建設と地域の開発・開放を結合させ、新ユーラシアランドブリッジ英語版(新亞歐大陸橋、英語: New Eurasian Land Bridge)、陸海通関拠点の建設を強化する必要がある」[11]としている。

そのため、諸国の経済不足を補い合い、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や中国・ユーラシア経済協力基金[12]シルクロード基金英語版(丝绸之路基金、英語: Silk Road Fund)などでインフラ投資を拡大するだけではなく、中国から発展途上国への経済援助を通じ、人民元国際準備通貨化による中国を中心とした世界経済圏を確立すると言われている[13]

2017年5月14日から15日にかけて北京では一帯一路国際協力サミットフォーラム英語版が開催された。

2017年10月の中国共産党第十九回全国代表大会で、党規約に「一帯一路」が盛り込まれた[14][15]

近年の動向[編集]

上海協力機構参加国との協力[編集]

2015年5月8日には習総書記はロシアのプーチン大統領と会談し、一帯一路をユーラシア経済連合と連結させるとする共同声明を発表した[16][17]。同年11月17日にロシアのプーチン大統領はアメリカの主導する環太平洋戦略的経済連携協定を批判し、中国のシルクロード経済ベルトとロシアのユーラシア経済連合の連結がアジア太平洋の繁栄をもたらすとする寄稿文を世界のメディア各紙に行った[18]

2016年6月17日のサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムでプーチン大統領が上海協力機構の参加国を中心[19]にASEANなど他の経済圏と連結を進めるとする「大ユーラシア・パートナーシップ」構想とその第一段階として中国のシルクロード経済ベルトとユーラシア経済連合の統合[20]を発表し[21]、25日のプーチン大統領の訪中から同構想の共同研究の準備と協力協定の交渉協議が開始され[22][23]2017年5月14日に北京での一帯一路国際協力サミットフォーラム英語版の開幕式でプーチン大統領は一帯一路、上海協力機構、ユーラシア経済連合などは同構想の基礎となると演説[24]して30日にはロシアのサンクトペテルブルクで「大ユーラシア・パートナーシップと一帯一路の連結」をテーマとした国際シンポジウムが行われ[25][26]、同年7月には同構想の共同研究が開始され[27][28]、同年10月に協定の交渉は完了した[29][30]。同年11月にはAPECに向けてプーチン大統領が発表した論文でもユーラシア経済連合と中国の協定交渉の完了や大ユーラシア・パートナーシップは中国の一帯一路を基礎にすることが述べられた[31]

2016年6月24日の中ロ蒙首脳会談では、モンゴルツァヒアギーン・エルベグドルジ大統領が掲げる草原の道構想と一帯一路とユーラシア経済連合の連結を謳った「中蒙露経済回廊建設計画綱要」が調印された[32][33]。また、習総書記は「カザフスタン訪問の際に自ら打ち出した構想が今や100を超える国の賛同を得た」としてカザフスタンとの関係を重視しており[34]、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領も自らの掲げるヌルリ・ジョーリ英語版(光明の道)構想はシルクロード経済ベルトの一部[35]と認めて一帯一路と連結するとしてる[34][36][37]

一帯一路国際協力サミットフォーラム[編集]

一帯一路国際協力サミットフォーラム

2017年2月、北京で一帯一路国際協力サミットフォーラムを5月に開催すると発表し[38]アントニオ・グテーレス国際連合事務総長ら70を超える国際機関代表団[39]やロシアのプーチン大統領ら29カ国の首脳[39]が出席を表明したのをはじめとして、世界130カ国超[39]の政府代表団が参加を決定した[40][41]。しかし、主要7か国(G7)は閣僚級などを出席させて首脳のほとんどは欠席し、出席したのはイタリアパオロ・ジェンティローニ首相だけとなった[42]

一帯一路を中国主導の巨大経済圏構想と警戒してAIIB参加を見送ってきた日米も、米国のドナルド・トランプ政権は同サミットにマット・ポッティンガーNSCアジア上級部長を団長とする代表団を派遣させており[39][43][44][45]、同サミットでポッティンガーは米国企業の参加準備と一帯一路の作業部会設置を表明しつつ透明性と民間資本の活用を主張した[46][47]。トランプ大統領自身も一帯一路への協力について米国はオープンであると述べてる[48]。トランプ大統領の上級顧問で元中央情報局(CIA)長官のジェームズ・ウールジー英語版はAIIBへの米国の不参加を前任のバラク・オバマ政権の「戦略的失敗」と批判[49][50]してトランプ政権は中国の一帯一路に「ずっと温かくなる」との見通しを述べていた[51]。米国内ではキャタピラー[52]などといった米国企業、カリフォルニア州知事ジェリー・ブラウン[53]などが独自に一帯一路構想への参加を表明している。トランプ政権になってから北京のアメリカ大使館などで米国企業と中国国有企業を集めた一帯一路での米中協力を謳う会合が行われるようになった[54]。トランプ大統領の訪中の際は習総書記と一帯一路への協力で一致し[55]、成立した約28兆円の商談の中にはシルクロード基金英語版GEの共同投資プラットフォーム[56]など一帯一路関連のものもあった[57]

日本政府も安倍晋三首相は今井尚哉内閣総理大臣秘書官[58]松村祥史経済産業副大臣[39]二階俊博自民党幹事長榊原定征経団連会長[59]ら約50人規模[60]の官民代表団を出席させ、団長の二階幹事長は「日本も積極的に協力をする決意をもってうかがってる」[61]「日本は一帯一路に最大限協力する」[62]としつつ同サミットではインフラの開放性と公平性を主張した[63]。同行した松村経産副大臣もオープンかつ公正なインフラ整備を訴えた[64]。二階幹事長はAIIBについて「参加をどれだけ早い段階で決断するかだ」と発言し[65]、安倍首相はAIIBの日本参加について「公正なガバナンスが確立できるのかなどの疑問点が解消されれば前向きに考える」と述べ[65]、一帯一路については「国際社会共通の考え方を十分に取り入れる観点から協力したい」と述べ[66]、日中首脳会談でも習総書記に協力を表明してる[67][68]。中国政府は日本政府の一帯一路への協力的な姿勢を歓迎することを表明している[69][70]。2017年8月には自民党・公明党と中国共産党の間で行われた第6回日中与党交流協議会は一帯一路への協力を積極的に検討するとする共同提言をまとめた[71]。民間でも経団連経済同友会は「AIIBへの参加を前向きに検討すべき」と主張しており[72]、2017年11月に史上最大規模の財界訪中団が中国を訪れた際に経団連などは一帯一路への協力のための窓口設置や共同研究体制を提言し[73]、中国からも経団連や安倍首相の一帯一路への協力に前向きな姿勢を歓迎され[74]、同年12月には安倍首相は「一帯一路に大いに協力できる」「自由で開放的なインド太平洋戦略を推進するとともに中国の一帯一路により広範に協力する」と述べ[75][76]、軍事利用されかねない港湾開発は対象外に指定しつつ日本政府は一帯一路に関する民間経済協力の指針を策定した[77][78]。なお、中国の日系企業は一帯一路連絡協議会を設置してる[79]

AIIBへの参加申請を拒否[80]されるなど核実験をめぐり中国と関係冷却化が伝えられる北朝鮮からも金英才(キム・ヨンジェ)対外経済相が出席したが[81]、AIIBに参加した一方でTHAADミサイル配備をめぐって蜜月ではなくなったとされる韓国から参加するのは駐中国大使と対外経済政策研究院院長ら3名のみで閣僚級の招待状すら送られなかった[82][44]。しかし、2017年大韓民国大統領選挙でTHAADに批判的な文在寅政権が誕生した同サミット直前になって中国から正式な招待状がおくられたため[83]、韓国政府は代表団の派遣を急遽決定した[84]。文在寅政権では初となる韓国と北朝鮮の要人接触も同サミットで行われた[85]。中国がこの会議に国際社会から経済制裁を受けている北朝鮮を招いたことに対し、アメリカ合衆国政府は北京のアメリカ大使館を通じて強い懸念を表明した[86]。北朝鮮は5月14日、サミット開幕に合わせて弾道ミサイルを発射し、日本の安倍首相はこれを強く批判[87]、出席した二階幹事長も安倍首相と電話で対応を協議してサミットで抗議文を読み上げ[88]、フランスのメディアは北朝鮮のミサイル発射をサミット開幕への「祝砲」と報道した[89][90]

AIIBの参加国でもあるインドの外務省は2017年5月13日、一帯一路の一環である中国・パキスタン経済回廊英語版が係争地のカシミールを通るとして「主権と領土保全における核心的な懸念を無視した事業計画を受け入れる国は1つもない」と批判する声明を発表し[91]、一帯一路国際協力サミットフォーラムからのナレンドラ・モディ首相らへの招待を拒否した[92]。また、「支えきれない債務負担を地域に作り出す事業は行わないようにするという財務上の責任の原則に従うべきだ」とも述べ、中国がスリランカを借金漬けにしてることなどを念頭に牽制している[92]

なお、この会議には、シリア内戦中のアサド政権の閣僚級も招待されたことも注目された[93]

アジア金融協力協会[編集]

2016年7月のボアオ・アジア・フォーラムで李克強首相が提唱し[94]、2017年5月11日に北京で設立された「アジア金融協力協会」は一帯一路構想との関連があるとされており[95]、邦銀からは三大メガバンク三菱東京UFJ銀行三井住友銀行みずほ銀行が加盟した[96]

脚注[編集]

  1. ^ The Huffington Post 日本語版:「一帯一路」構想に浮かれる中国(2015年03月20日)
  2. ^ a b “第3の一帯一路「氷上シルクロード」推進へ ロシアと共同開発”. SankeiBiz. (2017年11月2日). http://www.sankeibiz.jp/macro/news/171102/mcb1711022240038-n1.htm 2017年11月3日閲覧。 
  3. ^ “中国、釧路を“北のシンガポール”に 「孔子学院」開設計画、不動産の買収…拠点化へ攻勢”. 産経ニュース. (2017年2月24日). http://www.sankei.com/premium/news/170224/prm1702240007-n1.html 2017年3月28日閲覧。 
  4. ^ “「一帯一路」に新ルート ロシア迂回、3カ国鉄道開通”. 日本経済新聞. (2017年10月30日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22883280Q7A031C1FF1000/ 2017年11月3日閲覧。 
  5. ^ “スイスなどの国の「一帯一路」建設参加を歓迎=外務省”. 中国国際放送局. (2017年2月9日). http://japanese.cri.cn/2021/2017/02/09/181s258032.htm 2017年4月15日閲覧。 
  6. ^ “国連安全保障理事会、「一帯一路」支持の決議を採択”. 新華網. (2017年3月22日). http://jp.xinhuanet.com/2017-03/22/c_136148030.htm 2017年3月28日閲覧。 
  7. ^ “「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに注目する”. 人民網. (2017年1月18日). http://j.people.com.cn/n3/2017/0118/c94474-9168609.html 2017年3月28日閲覧。 
  8. ^ A/RES/71/9
  9. ^ “「一帯一路」が中国の夢と世界の夢をつなぐ”. 人民網. (2017年5月11日). http://japanese.china.org.cn/business/txt/2017-05/11/content_40792508.htm 2017年5月12日閲覧。 
  10. ^ 経済産業研究所 コンサルティングフェロー 関志雄動き出した「一帯一路」構想(2015年4月8日)
  11. ^ 日刊CARGO電子版:中国・全人代で李首相 「一帯一路」「大通関」推進(2015年3月5日)
  12. ^ “習主席が重要演説 「一帯一路」はすでに多くの成果を取得”. 人民中国. (2016年6月23日). http://www.peopleschina.com/xinwen/txt/2016-06/23/content_722987.htm 2016年9月29日閲覧。 
  13. ^ 三井住友アセットマネジメント株式会社 WEBサイト:一帯一路(中国)【キーワード】(2014年11月28日)
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  16. ^ 朝日新聞デジタル中ロ「歴史見直し認めぬ」 経済連携に合意 首脳会談(2015年5月9日)
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関連項目[編集]