労働基準法
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労働基準法 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | 労基法 |
法令番号 | 昭和22年4月7日法律第49号 |
種類 | 労働法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 1947年3月27日 |
公布 | 1947年4月7日 |
施行 | 1947年9月1日 |
主な内容 | 労働条件 |
関連法令 | 日本国憲法、民法、刑法、労働者災害補償保険法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法、労働契約法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
労働基準法(ろうどうきじゅんほう、昭和22年4月7日法律第49号)は、労働基準(労働条件に関する最低基準)を定める日本の法律である。
概説
日本国憲法第27条第2項の規定(「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」)等に基づき、1947年(昭和22年)に制定された。それ以前、我が国においては労働基準を定める法律として工場法、商店法等が存在していたが、それらはいずれも労働者を保護するには不十分なものであり、労働基準法が日本初の本格的な労働者保護法規であると言える。なお、その後、最低賃金に関する規定は最低賃金法、安全及び衛生に関する規定は労働安全衛生法にそれぞれ分離されたが、制定当初はそれらを含む労働基準の総合的な法律だったため、労働組合法、労働関係調整法と合わせて労働三法と呼ばれる。
労働基準法は、近代市民社会の契約自由の原則を修正して労働者を保護する労働法の一つで、主たる名宛人は使用者である。労働組合法に代表される集団的労働関係法に対して、個別的労働関係法に位置づけられる。また、任意法規に対し、強行法規に位置づけられる。なお、労働基準法に定める最低基準以上の労働条件については、原則として、契約自由の原則による。
労働基準法は、労使が合意の上で締結した労働契約であっても、労働基準法に定める最低基準に満たない部分があれば、その部分については労働基準法に定める最低基準に自動的に置き換える(強行法規性、第13条)として民事上の効力を定めているほか、一部の訓示規定を除く殆ど全ての義務規定についてその違反者に対する罰則を定めて刑法としての側面ももち、また法人に対する両罰規定を定めている(第13章)。さらに、労働基準監督機関(労働基準監督官、労働基準監督署長、都道府県労働局長、労働基準主管局長等)の設置を定め、当該機関に事業場(企業、事務所)や寄宿舎に対する立入検査、使用者等に対する報告徴収、行政処分等の権限を付与することで、行政監督による履行確保を図るほか、労働基準監督官に特別司法警察権を付与して行政監督から犯罪捜査までを通じた一元的な労働基準監督行政を可能にしている(第11章その他)。なお、労働基準監督機関の行政指導の範囲については、厚生労働省設置法第4条(厚生労働省組織令第7条)などによる。
施行及び履行の状況
施行後65年以上が経過した現在に於いても、中小企業から大企業に至るまで、多くの企業に於いて労働基準法の重大な違反行為が存在している。その原因としては、労働組合の組織率が低いこと等の要因により多くの企業において人事権を持つ使用者が依然として労働者に対して著しく強い立場にあること、中小企業に於いて法令知識の不十分な者が労務管理に当たる場合が多いこと(専門家である社会保険労務士の顧問契約にも至らない場合が多い)、労働基準監督官の人員が不足しており十分な行政監督が実施できていないこと等が挙げられる。
労働者は、自分の職場に労働基準法違反の事実があるときは、それを労働基準監督機関に申告(監督機関の行政上の権限の発動を促すこと)することができ、労働基準監督機関は必要に応じて違反を是正させるため行政上の権限を行使する。しかし、行政上の権限による解決には限界があることや、使用者が申告人に対して報復を行うおそれがあることから、違反事実の数に比して、労働者が違反事実を申告することは稀であると考えられる。
しかし、申告した労働者に不利益取扱をすることは犯罪を構成するほか(労働基準法第104条第2項違反)、在職中の労働者が申告した場合は、公益通報者保護法が適用される。 なお、労働基準法違反の罰則は、強制労働罪等一部のものを除き、刑事刑法というよりも寧ろ行政刑法として解釈・運用されていると考えられる。即ち、労働基準監督機関は、労働基準法違反事件に対し、告訴・告発がある場合を除き、通常は、刑事事件として立件するのではなく、主に行政上の措置(行政指導及び行政処分)により違反状態の是正及び履行の定着を図っている。しかし、現状として、労働基準監督機関は、業務改善命令、事業停止命令等の強力な行政処分権を備えておらず、行政監督を主に行政指導により行わざるを得ないことから、行政監督の実効性が不十分であると評価される場合がある。
沿革
- 1872年(明治 5年) 太政官布告第295号「人身売買ヲ禁シ諸奉公人年限ヲ定メ芸娼妓ヲ解放シ之ニ付テ貸借訴訟ハ取上ケス」
- 1875年(明治 8年) 太政官布告第128号「金銭貸借引当ニ人身書入厳禁」
- 1875年(明治 8年) 「官役人夫死傷手当規則」
- 1879年(明治12年) 「各庁技術工芸ノ者就業上死傷ノ節手当内規」
- 1905年(明治38年) 鉱業法
- 1911年(明治44年) 工場法成立
- 1916年(大正 5年) 工場法施行
- 1921年(大正10年) 黄燐燐寸製造禁止法
- 1922年(大正11年) 健康保険法
- 1923年(大正12年) 工場法改正、工業労働者最低年齢法
- 1924年(大正13年) 鉱業法改正
- 1931年(昭和 6年) 労働者災害扶助法、労働者災害扶助責任保険法
- 1936年(昭和11年) 退職積立金及退職手当法
- 1938年(昭和13年) 商店法
- 1947年(昭和22年) 労働基準法、労働者災害補償保険法
- 1959年(昭和34年) 最低賃金法
- 1960年(昭和35年) じん肺法
- 1970年(昭和45年) 家内労働法
- 1972年(昭和47年) 労働安全衛生法
- 1975年(昭和50年) 作業環境測定法
- 1992年(平成 4年) 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
- 2007年(平成19年) 労働契約法
各論
第1章 総則
- 第1条(労働条件の原則)
- 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
- この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労使関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
- 本条は、労働者に人格として価値ある生活を営む必要を充すべき労働条件を保障することを宣明したものであって、本法各条の解釈にあたり基本観念として常に考慮されなければならない。「人たるに値する生活」には、労働者本人のみならず、その標準家族の生活をも含めて考える。「標準家族」の範囲は、その時その社会の一般通念によって理解されるべきものである(昭和22年9月13日基発17号、昭和22年11月27日基発401号)。
- 労働基準法の基準を理由に労働条件を引き下げることは、たとえ労使の合意に基づくものであっても違反行為であるが、社会経済情勢の変動等他に決定的な理由がある場合には本条に抵触しない(昭和63年3月14日基発150号)。
- 「当事者」には、使用者、労働者のほか、使用者団体、労働組合も含まれる。
- 第2条(労働条件の決定)
- 第3条(均等待遇)
- 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
- 「国籍、信条、社会的身分」は限定列挙と解され、これら以外の理由で差別的取り扱いをすることは本条違反ではない。また、正社員と臨時社員とのように職制上の地位によって待遇に差を設けることは本条違反ではない。また、雇い入れにおける差別は含まれない(三菱樹脂事件、最判昭48年12月12日)。
- ここでいう「労働条件」とは、職場における労働者の一切の待遇をいう。賃金や労働時間のほか、解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎に関する条件も含まれる(昭和23年6月16日基収1365号、昭和63年3月14日基発150号)。
- 「差別的取扱」には、不利に取扱うのみならず、有利に取扱う場合も含まれる。
- 派遣労働者については、派遣元に加え、労働契約関係にない派遣先についても、労働契約関係にあるものとみなされる。
- 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
- 第4条(男女同一賃金の原則)
- 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
- 本条の趣旨は、日本における従来の国民経済の封建的構造のため、男子労働者に比較して一般に低位であった女子労働者の社会的・経済的地位の向上を賃金に関する差別待遇の廃止という面から、実現しようとするものである(昭和22年9月13日基発17号)。ここでいう「賃金」は、賃金額だけでなく賃金体系、賃金形態等も含む。賃金以外の労働条件について女性を差別することは男女雇用機会均等法で禁止される。
- 就業規則に労働者が女子であることを理由として賃金について男子と差別的取扱いをする趣旨の規定があって、現実に男女差別待遇の事実がない場合、その規定は無効であるが本条違反とはならない(昭和23年12月25日基収4281号)。
- 「差別的取扱い」とは、不利に取扱う場合のみならず、有利に取扱う場合も含む(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)。したがって女性を男性よりも有利に扱うことも本条違反となる。なお職務、能率、技能、年齢、勤続年数等によって男女労働者間に賃金の個人的差異があることは本条違反ではない。
- 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
- 第5条(強制労働の禁止)
- 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意志に反して労働を強制してはならない。
- 本条は日本国憲法第18条の趣旨を労働関係において具体化し労働者の自由の侵害、基本的人権の蹂躙を厳罰をもって禁止し、以て封建的悪習を払拭し、労働者の自由意思に基づく労働を保障せんとすることを目的とする(昭和23年3月2日基発381号)。本条違反には本法で最も重い罰則が科せられる。
- 「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」とは、精神の作用又は身体の行動を何らかの形で妨げられる状態を生じさせる方法をいう。「不当」とは、本条の目的に照らしかつ個々の場合において具体的にその諸条件をも考慮し、社会通念上是認しがたい程度の手段の意である。したがってたとえ合法的なものであっても「不当」なものとなることがある(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)。
- 「労働者の意思に反して労働を強制」とは、不当な手段を用いることにより労働者の意識ある意思を抑圧し、その自由な発現を妨げ、労働すべく強要することをいい、必ずしも現実に労働することを要しない。いっぽう、詐欺の手段を用いられても、それは通常労働者は無意識の状態にあって意思を抑圧されるものではないから、必ずしもそれ自体としては本条に該当しない(昭和23年3月2日基発381号)。
- 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意志に反して労働を強制してはならない。
- 第6条(中間搾取の排除)
- 何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
- 本条は、日本国憲法の個人の人格の尊重、基本的人権の確立の趣旨にのっとり、封建的悪習たる親分子分の従属関係や労働者の人格を無視した賃金の頭ハネ等の絶滅を期するものである。職業安定法及び船員職業安定法の規定する範囲よりも広く労働関係の開始についてのみならず、その存続についても、第三者の介入することにより生ずる弊害を排除することを目的とする(昭和23年3月2日基発381号)。
- 本条の違反行為が成立するためには、「業として他人の就業に介入して利益を得る」第三者と「就業に介入される」労働関係の当事者(使用者と被使用者)の三者関係の存在が必要である。「何人も」とは本条の適用を受ける事業主に限られず、個人・団体、公人・私人とを問わない(昭和23年3月2日基発381号)。法人が利益を得た場合において、法人の従業員に計画・実行行為があればその従業員にも本条違反が成立する(昭和34年2月16日基収8770号)。
- 「業として利益を得る」とは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいう。従って、一回の行為であっても反復継続して利益を得る意思があれば充分である。主業として為されると副業として為されるとを問わない。「利益」とは名称を問わず、又有形無形たるとを問わない(昭和23年3月2日基発381号)。
- 「他人の就業に介入」とは、使用者と労働者との中間に第三者が介在してその労働関係の開始存続について、何らかの因果関係を有する関与をなしていることである。職業紹介、労働者の募集、労働者供給事業等、労働関係の開始に介在する場合と、募集人、納屋頭等労働関係の存続に介在する場合とを問わない(昭和23年3月2日基発381号)。必ずしも雇用契約が成立する場合に関与することに限らない(最決昭和35年4月26日)。なお適法な労働者派遣は、派遣元と労働者との労働契約と、派遣先と労働者との間の指揮命令関係が全体として労働関係になるのであるから、第三者が他人の労働関係に介入するものではなく、本条違反にはならない。いっぽう労働者供給は、供給先と労働者との間に実質的な労働関係があるので、供給元と労働者との間に労働契約関係がある場合を除き、「他人の就業に介入」することとなる(昭和61年6月6日基発333号)。
- 「法律に基づいて許される場合」とは、職業安定法及び船員職業安定法の規定に基づく場合である。この場合においても、これらの法律に定める料金等を超えて金銭等を収受すると本条違反になる(昭和23年3月2日基発381号、昭和33年2月13日基発90号)。
- 何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
- 第7条(公民権行使の保障)
- 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
- 実際に権利が行使されたかどうかを問わず、拒むこと自体が本条違反に当たる。また、権利の行使を使用者の承認にかかることも違反である。
- 使用者の承認を得ずに公職に就任した者を懲戒解雇に付する旨の就業規則条項は無効であり、公職に就任することが会社業務の遂行を著しく阻害する恐れがある場合においても、普通解雇とすることは別として、懲戒解雇に付するのは許されない(十和田観光電鉄事件、 最判昭和38年06月21日)。
- 就業規則等に公民権の行使を労働時間外に実施すべき旨を定めておいて、それを根拠に労働者が就業時間中に選挙権の行使を請求することを拒否することは本条違反である(昭和23年10月30日基発1575号)。
- 公民権の行使に係る時間を有給とするか無給とするかは当事者の自由に委ねられ、無給でもよい(昭和22年11月27日基発399号)。
- 応援のための選挙活動、一般の訴権の行使、予備自衛官の招集、非常勤の消防団員の職務等は、公民としての権利・公の職務に該当しないとされる(昭和63年3月14日基発150号)。
- 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
- 第8条 削除
- 1998年改正前は第8条で本法の適用事業を列挙していたが、現行法は第8条を削除し、原則として全ての事業に労働基準法を適用することとしている。ただし、それぞれの業種の性質に応じて法規制を行う必要があるため、別表第一で業種を例示列挙している(別表第一に掲げる事業のみに本法が適用されるのではない)。
- 同一場所にあるものは原則として分割することなく一個の事業として適用され、場所的に分散しているものは原則として別個の事業として適用される。ただし、同一場所であっても労働の態様が著しく異なるときはこれを切り離して独立の事業とすることがあり、別々の場所にある事業でも著しく小規模で独立性のないものについては直近上位の機構と一括して一つの事業とすることがある。
- 第9条【労働者の定義】
- この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
- 使用者の指揮命令を受けて労働力を提供し、その労働の対価として賃金を支払われる者は、本条でいう「労働者」に当てはまる。契約の形や名称にかかわらず、実態としての雇用契約(民法623条)が締結されていると認められるかどうかが基準となる。したがって、法人の重役で業務執行権又は代表権を持たず、工場長、部長の職にあって賃金を受ける者は「労働者」に該当する。また労働組合の専従職員は、労働提供を免除されて組合事務に専従しているが、本条でいう「労働者」にあたる。
- 「労働者」にあたらない例として、個人事業主、法人・団体等の代表者又は執行機関たる者、下請負人、同居の親族、非常勤の消防団員、実習生(主目的が実習である者)等があげられる。
- この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
- 第10条【使用者の定義】
- この法律で「使用者」とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
- 「使用者」に該当するかどうかは、肩書にとらわれることなく、実質的に一定の権限を与えられているかどうかで判断する。単に上司の命令の伝達者にすぎない場合は、「使用者」に該当しない。
- この法律で「使用者」とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
- 第11条【賃金の定義】
- 第12条【平均賃金の定義】
第2章 労働契約
- 第13条(労働基準法違反の契約)
- 第14条(契約期間等)
- 第15条(労働条件の明示)
- 第16条(賠償予定の禁止)
- 第17条(前借金相殺の禁止)
- 第18条(強制貯金)
- 第13条~第18条の詳細は、「労働条件」の各項目を参照
- 第19条(解雇制限)
- 第20条(解雇の予告)
- 第21条
- 第22条(退職時等の証明)
- 第23条(金品の返還)
- 第19条~第23条の詳細は、「解雇」の各項目を参照
第3章 賃金
第4章 労働時間、休息、休日及び年次有給休暇
- 第32条(労働時間)
- 第32条の2【1ヶ月単位の変形労働時間制】
- 第32条の3【フレックスタイム制】
- 第32条の4【1年単位の変形労働時間制】
- 第32条の5【1週間単位の非定型的変形労働時間制】
- 第33条(災害等による臨時の時間外労働)
- 第34条(休憩)
- 第35条(休日)
- 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。この規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
- 休日の単位は、暦日の午前0時から午後12時までの休業をいう。ただし、8時間3交代制連続作業の交代制においては、継続した24時間でもよい。なお日曜日や祝日を休日としなくても、本条違反とはならない。
- 4週4休の場合は、その4週の起算日を明らかにする必要がある。また、4週ごとに4日の休日があればよく、どの4週を区切っても4日の休日がなければならないということではない。
- あらかじめ休日と定められている日を労働日としてその代わりに他の労働日を休日とする(休日の振替)場合は、休日労働にならないので、割増賃金の支払いは不要である。これに対し、休日に労働を行った後に、後の特定の労働日の労働義務を免除する(代休)場合は、休日労働に関する割増賃金の支払いが必要である。
- 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。この規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
- 第36条(時間外及び休日の労働)
- 第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
- 第38条(時間計算)
- 第38条の2【事業場外労働】
- 第38条の3【専門業務型裁量労働制】
- 第38条の4【企画業務型裁量労働制】
- 第39条(年次有給休暇)
- 第40条(労働時間及び休憩の特例)
- 別表第一第1号から第3号まで、第6号及び第7号に掲げる事業以外の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、第32条から第32条の5までの労働時間及び第34条の休憩に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。
- 前項の規定による別段の定めは、この法律で定める基準に近いものであって、労働者の健康及び福祉を害しないものでなければならない。
- 第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
- 労働基準法で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
- 別表第一第6号(林業を除く)又は第7号に掲げる事業に従事する者
- 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
- 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
- これらの者については、法定労働時間を超えて労働させることができ、時間外労働に対する割増賃金の支払義務も発生しない。また、法定の休憩や休日を与えなくても違法とならない。一方、深夜業、年次有給休暇、産前産後休業、育児時間、生理休暇の規定はこれらの者にも適用される(昭和63年3月14日基発150号)。
- 「監督又は管理の地位にある者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいう。具体的には、職務内容、権限及び責任に照らし、企業全体の事業経営にどのように関与しているか、その勤務態様が労働時間等に関する規制になじまないものであるか否か、給与及び一時金において管理監督者にふさわしい待遇がされているか否か、などの点から、資格及び職位の名称にとらわれることなく実態に即して判断すべきである(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号、日本マクドナルド事件・東京地判平20.1.28)。
- 「機密の事務を取り扱う者」とは、秘書その他職務が管理監督者の活動と一体不可分であり、厳格な労働時間管理になじまない者をいう(昭和22年9月13日基発17号)。
- 「監視に従事する者」とは、一定部署にあって監視を本来の業務とし、常態として身体の疲労又は精神的緊張の少ない業務に従事する者について許可される。以下の者は許可されない(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)。
- 交通関係の監視、車両誘導を行う駐車場の監視等精神的緊張の高い業務
- プラント等における計器類を常態として監視する業務
- 危険または有害な場所における業務
- 「断続的労働に従事する者」とは、休憩時間は少ないが手待ち時間が多い者をいう。その許可はおおむね以下のような取り扱いとなる(昭和22年9月13日基発17号、昭和23年4月5日基発535号、昭和63年3月14日基発150号)。
- 修繕係等通常は業務閑散であるが、事故発生に備えて待機する者は許可する
- 寄宿舎の賄い人等は、その者の勤務時間を基礎として作業時間と手待ち時間折半の程度までは許可する。ただし、実労働時間の合計が8時間を超える場合は許可すべき限りではない。
- 鉄道踏切番等については、1日交通量10往復程度まで許可する。
- その他特に危険な業務に従事する者については許可しない。
- 断続労働と通常の労働とが一日の中において混在し、又は日によって反復するような場合には、許可すべき限りではない。
- 派遣労働者については、派遣先が許可を受けた場合には、当該許可に係る業務に派遣中の労働者を従事させる場合には、労働時間等の規定に基づく義務を負わない。すでに許可を受けている場合には、派遣中の労働者に関して別途に許可を受ける必要はない(昭和61年6月6日基発333号)。
- 「監視又は断続的労働に従事する」とは、必ずしもそれを本来の業務とするものに限らず、宿日直業務の如く本来の業務外において附随的に従事する場合も含む(昭和35年8月25日基収6438号)。
- 労働基準法で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
第5章 安全及び衛生
労働基準法制定時には、安全及び衛生について一章を設けていたが、労働安全衛生法の施行により、主な条文はそちらで定めることとしたため、労働基準法上の条文は削除されている。こうした経緯から、労働基準法と労働安全衛生法とは一体としての関係に立つ。
第6章 年少者
民法の未成年者に関する規定について、労働法上の特則を定めている。
- 第56条(最低年齢)
- 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで(即ち、義務教育が終わっていない中学生以下の児童・生徒について)、これを使用してはならない。
- 満13歳以上の児童については、修学時間外に、健康及び福祉に有害でなく、その労働が軽易なものについては、行政官庁(所轄労働基準監督署長)の許可を受けて使用出来る。また、映画製作・演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても同様とする。
- 具体的に児童の使用が禁止されている業務(「健康及び福祉に有害でなく」に該当しない業務)とは、「公衆の娯楽を目的として曲馬または軽業を行う業務」「戸々について、又は道路等の場所において、歌謡、遊芸等の演技を行う業務」「旅館、料理店、飲食店又は娯楽場における業務」「エレベーターの運転の業務」とされている。
- 最低年齢違反の労働契約に就労している児童を解雇する場合についても、20条の解雇予告に関する規定は適用されるため、解雇予告手当を支払ったうえで即時解雇しなければならない(昭和23年10月18日基収3102号)。
- 第57条(年少者の証明書)
- 第58条(未成年者の労働契約)
- 第59条
- 未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者や後見人は、未成年者の賃金を代わって受け取ってはならない。
- 第60条
- 変形労働時間制(32条の2~32条の5)、三六協定による時間外労働(36条)、労働時間及び休憩の特例(40条)は、18歳未満の者に対しては適用しない。
- 56条2項の規定によって使用する児童については、休憩時間を除き、修学時間を通算して1週間について40時間を、1日について7時間を超えて労働させてはならない。
- 満15歳以上満18歳未満(満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの間を除く)の者については、次の例により労働させることができる。
- 1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内において、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の日(1日に限られない)の労働時間を10時間まで延長すること。
- 1週間について48時間、1日について8時間を超えない範囲内において、1ヶ月単位の変形労働時間制又は1年単位の変形労働時間制の規定の例により労働させること。
- 「修学時間」とは、「当該日の授業開始時刻から同日の最終授業終了時刻までの時間から、休憩時間及び昼食時間を除いた時間」となる(昭和25年4月14日基収28号)。
- 第61条(深夜業)
- 第62条(危険有害業務の就業制限)
- 使用者は、満18歳に満たない者を、厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
- 使用者は、満18歳に満たない者を、厚生労働省令で定める安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
- 第63条(坑内労働の禁止)
- 使用者は、満18歳に満たない者を、坑内で労働させてはならない。
- 都道府県労働局長の許可を受けた使用者は、認定職業訓練の訓練生に技能を習得させるために必要がある場合においては、満16歳以上の男性である訓練生を坑内労働に就かせることができる(労働基準法施行規則第34条の3)。
- 使用者は、満18歳に満たない者を、坑内で労働させてはならない。
- 第64条(帰郷旅費)
- 満18才に満たない者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。ただし、満18才に満たない者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りでない。
第6章の2 妊産婦等
女性特有の身体状況に対する特則を定める。「妊産婦」とは、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性をいう。
- 第64条の2(坑内業務の就業制限)
- 使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。
- 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性・・坑内で行われるすべての業務
- 前号に掲げる女性以外の満18歳以上の女性・・坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの(人力・動力(遠隔操作を除く)・発破により行われる鉱物等の掘削等の業務及びこれらの業務に附随する資材の運搬等の業務)
- 使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。
年齢 | 断続作業の場合(kg) | 継続作業の場合(kg) |
---|---|---|
満16歳未満 | 12 | 8 |
満16歳以上満18歳未満 | 25 | 15 |
満18歳以上 | 30 | 20 |
- 第64条の3(危険有害業務の就業制限)
- 使用者は、妊産婦を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
- 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、厚生労働省令(女性労働基準規則)で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。
- 使用者は、妊産婦以外の満18歳以上の女性であっても、以下の「女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務」に就かせてはならない。
- 重量物を扱う業務(右表)
- 特定化学物質障害予防規則、鉛中毒予防規則又は有機溶剤中毒予防規則に定める一定の有害物を発散する作業場の業務であって、呼吸用保護具の使用が義務付けられている業務及び作業環境測定の結果、第3管理区分に区分された屋内作業場の業務
- 使用者は、妊産婦以外の満18歳以上の女性であっても、以下の「女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務」に就かせてはならない。
- 第65条(産前産後)
- 第66条
- 使用者は、妊産婦が請求した場合には、以下のようにしなければならない。
- 1カ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用している場合であっても、1週間について1週の法定労働時間、1日について1日の法定労働時間を超えて労働させてはならない(フレックスタイム制についてはこの限りではない)。
- 災害等若しくは公務のために臨時の必要がある場合又は三六協定を締結している場合であっても、時間外労働・休日労働をさせてはならない。
- 深夜業をさせてはならない。
- 妊産婦が請求しなければ、時間外・休日・深夜労働をさせてよい。また、41条該当者たる妊産婦については請求があったとしても、時間外・休日労働をさせてよいが深夜業はさせてはならない(昭和61年3月20日基発151号、婦発69号)。
- 妊娠中の女性については、第65条3項の軽易な業務への転換と第66条の時間外労働等の制限のいずれか一方又は双方を行うことを妨げない(昭和61年3月20日基発151号、婦発69号)。
- 使用者は、妊産婦が請求した場合には、以下のようにしなければならない。
- 第67条(育児時間)
- 生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
- 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。
- 「生児」については、必ずしもその女性が出産した子である必要はない。
- 女性が請求しなければ、育児時間を与えなくてもよい。また、男性が請求しても、育児時間を与える必要はない。
- 育児時間は、労働時間の始め、途中、終わりのいずれの時間に与えてもよい。育児時間を有給とするか否かは、当事者の自由であり、無給でもよい(昭和33年6月25日基収4317号)。
- 1日の労働時間が4時間以内である場合には、1日1回の育児時間の付与で足りる(昭和36年1月9日基収8996号)。
- 「30分」には、託児所までの往復の時間も含むが、往復の所要時間を除いた実質的な育児時間が与えられることが望ましい(昭和25年7月22日基収2314号)。
- 第68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
- 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
- 生理であることのみをもって休暇を請求することを認めたものではない。請求は必ずしも暦日単位で行う必要はなく、時間単位で行ってもよい(昭和61年3月20日基発151号、婦発69号)。
- 「生理日の就業が著しく困難」の挙証について、特段の証明は必要なく、特に証明を必要とする場合であっても医師の診断書のような厳格な証明でなくても、同僚の証言程度の一応事実を推断せしめるに足れば充分である(昭和23年5月5日基発682号)。
- 生理休暇を有給とするか否かは、当事者の自由であり、無給でもよい(昭和23年6月11日基収1899号)。ただし、出勤率の計算等において当該女性に著しい不利益を課すことは法の趣旨に照らし好ましくない(昭和49年4月1日婦収125号)。ストライキ期間中であっても女性が休暇を請求すれば生理日に就業させなかった日として取り扱われる(昭和27年7月25日基収382号)。
- 就業規則等で休暇日数の上限を設けることは認められない。なお有給の日数を定めておくことはそれ以上休暇を与えることが明らかにされていれば差支えない(昭和23年5月5日基発682号)。
- 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
第7章 技能者の養成
- 第69条(徒弟の弊害排除)
- 使用者は、徒弟、見習、養成工その他名称の如何を問わず、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならない。
- 使用者は、技能の習得を目的とする労働者を家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させてはならない。
- 本条は、日本における従来の徒弟制度にまつわる悪習慣を是正し、特に酷使の典型である雑役への使用を禁止する趣旨であるから、その監督取締は厳格に行われる。第1項は、技能の習得を目的とする者であることを理由としない場合は労働者を酷使してもよいという反対解釈を許す趣旨ではない(昭和22年12月9日基発53号)。
- 第70条(職業訓練に関する特例)
- 職業能力開発促進法第24条第1項(同法第27条の2第2項において準用する場合を含む。)の認定を受けて行う職業訓練を受ける労働者について必要がある場合においては、その必要の限度で、第14条第1項の契約期間、第62条及び第64条の3の年少者及び妊産婦等の危険有害業務の就業制限、第63条の年少者の坑内労働の禁止並びに第64条の2の妊産婦等の坑内業務の就業制限に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。ただし、第63条の年少者の坑内労働の禁止に関する規定については、満16歳に満たない者に関しては、この限りでない。
- 就業可能業務は、教習事項を習得するために必要なもののみについて認められているものであるから、労働基準法施行規則別表第一に掲げられないものについてはたとえ技能養成工といえどもその就業を認めるものではない(昭和23年6月29日基発118号)。
- 職業能力開発促進法第24条第1項(同法第27条の2第2項において準用する場合を含む。)の認定を受けて行う職業訓練を受ける労働者について必要がある場合においては、その必要の限度で、第14条第1項の契約期間、第62条及び第64条の3の年少者及び妊産婦等の危険有害業務の就業制限、第63条の年少者の坑内労働の禁止並びに第64条の2の妊産婦等の坑内業務の就業制限に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。ただし、第63条の年少者の坑内労働の禁止に関する規定については、満16歳に満たない者に関しては、この限りでない。
- 第71条
- 前条の規定に基いて発する厚生労働省令は、当該厚生労働省令によって労働者を使用することについて行政官庁(都道府県労働局長)の許可を受けた使用者に使用される労働者以外の労働者については、適用しない。
- 第72条【職業訓練を受ける未成年者の年次有給休暇に関する特例】
- 第73条
- 第71条の規定による許可を受けた使用者が第70条の規定に基いて発する厚生労働省令に違反した場合においては、行政官庁は、その許可を取り消すことができる。
第8章 災害補償
災害補償責任は、使用者の無過失責任であり、労働者は災害の発生が「業務上」のものであることを立証すれば、たとえ使用者に故意・過失がなかったとしても補償を請求することができる。
- 第75条(療養補償)
- 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
- 第76条(休業補償)
- 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の60%の休業補償を行わなければならない。
- 第77条(障害補償)
- 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。
- 第79条(遺族補償)
- 労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の1000日分の遺族補償を行わなければならない。
- 第80条(葬祭料)
- 労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行う者に対して、平均賃金の60日分の葬祭料を支払わなければならない。
- 第81条(打切補償)
- 療養補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。
- 打切補償を支払えば、19条の解雇制限は解除される。またこの場合、行政官庁の認定は不要である。
- 療養補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。
- 第82条(分割補償)
- 使用者は、支払能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場合においては、障害補償及び遺族補償については、6年間にわたり、毎年、分割して補償することができる。
- 第83条(補償を受ける権利)
- 第84条(他の法律との関係)
- この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。
- 労働者災害補償保険(労災保険)制度の給付内容が充実した今日では、労災保険が災害補償の大部分を担っていて、労働基準法による災害補償制度が果たす役割は小さい。
- この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。
第9章 就業規則
第10章 寄宿舎
第11章 監督機関
本法に規定される事項に違反があった場合について、労働基準監督機関による監督行政の対象となる。
- 労働基準主管局(厚生労働省の内部部局として置かれる局で労働条件及び労働者の保護に関する事務を所掌する)
- 都道府県労働局
- 労働基準監督署
- 女性主管局(厚生労働省の内部部局として置かれる局で女性労働者の特性に係る労働問題に関する事務を所掌する)
- 各機関に置かれる労働基準監督官の権限
- 第101条
- 第102条
- 第103条
- 労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関して定められた基準に反し、且つ労働者に急迫した危険がある場合においては、労働基準監督官は、第96条の3の規定による行政官庁の権限を即時に行うことができる。
- 第104条(監督機関に対する申告)
- 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。使用者は、この申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
- 第104条の2(報告等)
- 第105条(労働基準監督官の義務)
- 労働基準監督官は、職務上知り得た秘密を漏してはならない。労働基準監督官を退官した後においても同様である。
第12章 雑則
- 第105条の2(国の援助義務)
- 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、この法律の目的を達成するために、労働者及び使用者に対して資料の提供その他必要な援助をしなければならない。
- 第106条(法令等の周知義務)
- 使用者は、本法及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、労使協定並びに労使委員会の決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。
- 使用者は、本法及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によって、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。
- 第107条(労働者名簿)
- 第108条(賃金台帳)
- 第109条(記録の保存)
- 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。
- 第111条(無料証明)
- 労働者及び労働者になろうとする者は、その戸籍に関して戸籍事務を掌る者又はその代理者に対して、無料で証明を請求することができる。使用者が、労働者及び労働者になろうとする者の戸籍に関して証明を請求する場合においても同様である。
- 第114条(付加金の支払)
- 裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあった時から2年以内にしなければならない。
- 付加金支払義務の発生時期は、裁判所の支払命令時とするのが判例である。
- 裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあった時から2年以内にしなければならない。
- 第115条(時効)
- この法律の規定による賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
- 第116条(適用除外)
第13章 罰則
本法違反には罰則が科せられる。なお第1条・第2条違反に対する罰則はない。
- 第117条【1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金】
- 強制労働の禁止(5条)違反
- 第118条【1年以下の懲役又は50万円以下の罰金】
- 中間搾取禁止(6条)、最低年齢違反(56条)、坑内労働の禁止・制限(63条、64条の2)違反
- 第119条【6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金】
- 均等待遇(3条)、男女同一賃金(4条)、公民権の行使(7条)、賠償予定の禁止(16条)、前借金相殺の禁止(17条)、強制貯金の禁止(18条1項)、解雇制限(19条)、解雇予告(20条)、退職者の就業妨害(22条4項)、法定労働時間(32条)、休憩(34条)、休日(35条)、健康上特に有害な業務の労働時間の延長(36条1項但書)、割増賃金(37条)、年次有給休暇(39条)、深夜業(61条)、18歳未満の者の危険有害業務の就業制限(62条)、妊産婦の就業制限(64条の3~67条)、職業訓練生の年次有給休暇(72条)、災害補償(75条~80条)、寄宿舎生活の自治(94条2項)、寄宿舎の設備及び安全衛生(96条)、監督機関に対する申告を理由とする不利益取り扱い(104条2項)違反等
- 第120条【30万円以下の罰金】
- 契約期間(14条)、労働条件の明示(15条)、任意貯蓄の返還(18条7項)、退職時の証明書(22条1項~3項)、金品の返還・賃金の支払い(23条~27条)、労使協定の届出(32条の2第2項、32条の4第4項、32条の5第3項、38条の2、38条の3)、1週間単位の変形労働時間制において1日10時間まで労働させる場合の通知(32条の5第2項)、災害等による時間外労働で事態急迫のために事後に届出る場合(33条1項但書)、年少者の労働契約(57条~59条)、帰郷旅費(64条)、生理休暇(68条)、就業規則(89条~91条)、寄宿舎規則の届出(95条)、危険事業又は有害事業の附属寄宿舎の設置、移転、変更の届出(96条の2)、労働基準監督官等の守秘義務(100条3項、105条)、周知義務・記録保存義務(106条~109条)違反等
- 第121条【両罰規定】
- この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する。ただし、事業主(事業主が法人である場合においてはその代表者、事業主が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人である場合においてはその法定代理人(法定代理人が法人であるときは、その代表者)を事業主とする。次項において同じ。)が違反の防止に必要な措置をした場合においては、この限りでない。(第1項)
- 事業主が違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかつた場合、違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた場合又は違反を教唆した場合においては、事業主も行為者として罰する。(第2項)
別表第一(第33条、第40条、第41条、第56条、第61条関係)
- 物の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む。)
- 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業
- 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
- 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
- ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業
- 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
- 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
- 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
- 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
- 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
- 郵便、信書便又は電気通信の事業
- 教育、研究又は調査の事業
- 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
- 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
- 焼却、清掃又はと畜場の事業
関連文献・記事
関連項目
外部リンク
- 「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱」等についての労働政策審議会からの答申について - 厚生労働省
- 労働基準関係情報メール窓口 - 厚生労働省 - 労働基準法等における問題に関する情報を匿名で提供することができる。
- 労働基準法の基礎知識 - 労務行政研究所 - 労働基準法がわかりやすく解説されている。