解除

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解除(かいじょ)とは、広義には、当事者間に有効に締結された契約関係を終了させることをいう。この広義の解除は、講学上、解除(狭義の解除)、解約告知、解除条件、失権約款、解除契約などに細分される。

このうち狭義の解除は、民法540条以下に規定される一方当事者の意思表示によって有効に締結された契約を解消し、契約によって生じていた債権債務関係を契約成立前の状態(原状)に回復する制度を意味する(ただし、解除の効果については直接効果説と間接効果説があり考え方に相違がある)。通常、講学上において「解除」といえばこの狭義の解除を指す。

以下、この項目で単に「解除」と言う場合には法律用語としての「解除」(狭義の解除)を指すこととし、狭義の解除、解除類似の制度の順に述べる。

  • 民法は、以下で条数のみ記載する。

狭義の解除(解除制度)[編集]

概要[編集]

狭義の解除は、(1)一定の事由が起こると(2)契約当事者に解除権が発生し、(3)その解除権を行使することで(4)契約当事者双方に原状回復義務を発生させる制度である。

狭義の解除は発生の原因によって法定解除と約定解除の2種類分けられる。

法定解除
狭義の解除のうちで、解除権の発生根拠が法定の事由であるもの。法定の事由とは(1)債務不履行の場合及び(2)各契約類型が特別に定めた解除権の発生事由である。また、このときに発生する解除権を法定解除権と呼ぶ。
約定解除
狭義の解除のうちで、解除権の発生根拠が当事者間の約定(主に契約に付随してなす特約)であるもの。法定解除と違い一定の事由が起これば当然に発生するわけではなく、予め一定の場合に解除権が発生する事を特約する事で発生する。また、これによって発生した解除権を約定解除権と呼ぶ。手付解除(557条)買戻し(579条)はこの一種である。

制度趣旨[編集]

法定解除の制度趣旨は、一方当事者に債務不履行があった場合にまで他方当事者を契約関係に拘束することが相当でない点に求められる。合意解除の制度趣旨はむしろ、契約自由の原則に求められる。

解除権の発生原因[編集]

解除をなし得る権利を解除権という。

解除のうち、解除権の発生原因(解除原因)が法定の事由の場合を法定解除と呼び、解除権の発生原因が「一定の場合に解除権が発生する」旨の契約(約定)である場合を約定解除と呼ぶ。また、解除原因が法定解除の場合の解除権を法定解除権、約定解除の場合の解除権を約定解除権と言う。法定解除の解除原因たる法定の事由とは、債務不履行と各契約類型ごとの特則であり、約定解除権の発生原因は約定である。法定解除権も、約定解除権も形成権である。

法定解除権の発生原因には以下のようなものがある。

債務不履行によって発生する場合
  • 履行遅滞(541条、定期行為の場合について542条
債務者が、期限が経過したにもかかわらず、自己の責に帰すべき事由(債務者に責任があること)によって債務を履行しないときは、債権者は、相当な期間を定めて履行を催告し、期間内に履行がない場合に解除権が発生する。なお、定期行為の場合は無催告解除も可能である。
債務者の責に帰すべき事由によって、売買の目的物であった建物が焼失するなど、履行が不能になったときは、債権者に解除権が発生する。履行遅滞のケースと異なり、催告は不要である。
  • 不完全履行
個別具体的に決定される。
  • 付随的債務の債務不履行
本体債務ではなく、付随的債務について債務不履行があった場合に、本体契約を解除できるかは解釈上の問題がある。付随的債務の債務不履行が契約目的の達成に重大な影響を与えるものであるときは、解除できるとした判例がある[1]
各契約類型の特則によって発生する場合
  • 停止条件付双務契約における危険負担に基づく債権者の解除権(535条3項)
  • 手付解除(557条)
  • 他人物売買における売主の担保責任に基づく買主の解除権(561条)
  • 他人物売買における善意の売主の解除権(562条)
  • 権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任に基づく善意の買主の解除権(残存部分だけなら買受けなかったであろうとき)(563条2項,564条)
  • 数量不足又は一部滅失の場合における売主の担保責任に基づく善意の買主の解除権(残存部分だけなら買受けなかったであろうとき)(565条)
  • 用益権の有無に関する売主の担保責任に基づく買主の解除権(566条)
  • 担保権がある場合における売主の担保責任に基づく買主の解除権(567条1項)
  • 競売における担保責任に基づく買受人の債務者に対する解除権(568条1項)
  • 売主の瑕疵担保責任(570条)
  • 売主の買戻しによる解除(579条)
  • 使用貸借の借主の目的物の用法・性質に反した使用・収益による貸主の解除権(594条)
  • 賃借権の無断譲渡・賃借物の無断転貸による賃貸人の解除権(612条2項)
  • 賃貸人の担保責任による解除
  • 賃借人の意思に反する保存行為による解除
  • 賃借物の減収による解除
  • 賃借物の無承諾転貸・賃借権の無承諾譲渡による解除
  • 請負人の担保責任による解除

解除権の性質[編集]

解除権は以下の性質を持つ。

  1. 解除権は契約当事者の地位に伴うものである。(解除権の随伴性の有無につき大判大14・12・15民集四ノ七一〇)
  2. 解除権は不可分である。(解除権の不可分性544条1項)
  3. 解除権は相手方のある単独行為である。(540条1項)
  4. 解除権は一度行使すると撤回できない。(540条2項)

1の性質から、解除権を使える者は契約当事者でなければならず、その地位の移転を受けなければ、代金債権の譲受人は解除権を行使する事はできない。また、契約が解除されると、それにより発生した債権も遡及消滅する事から、その債権を譲渡している時は、解除権の行使に、債権の譲受人の同意が必要とされる。(大判昭3・2・28)

2の性質により、解除権を持つものが数人いる時は、全員が行使しないとその効力を発しない事になり、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。 但し、例外あり。詳細は544条参照の事。

解除の効果(解除権行使の効果)[編集]

解除の効果は545条で規定されている。契約は解除されると以下の四つの効力が発生する。

  1. 未履行債務などの、契約による法的拘束からの解放(契約の遡及消滅につき大判大9・4・7)
  2. 既履行債務に対する原状回復義務の発生。(545条1項)
  3. 上記で償いきれない損害がある時は、損害賠償請求権が発生。(545条3項)
  4. 但し、上記の効果により第三者を害する事はできない。(545条1項但書)

さて、一度の解除権の行使によってこれらのすべての効果を矛盾無く導き出すために、解除はどのような法的構成を持つかについては争いがある。学説対立及び各効果の詳細については545条の解説を参照されたい。

  • 直接効果説
    判例・通説によると、「解除権が行使されると、契約が遡及的に消滅し、その結果、上記の効果が発生する事になる。」とその法的構成を説明する。
    契約は、当初から存在しなかったとするため、債務不履行責任も生じないが、解除権者を保護するため特に3項で損害賠償責任を認めたと考える。
  • 間接効果説
    既履行債務の復帰を内容とする新たな物権変動が生じると捉える。

解除権の消滅原因[編集]

催告による解除権の消滅につき、547条
解除権者の行為による解除権の消滅の有無につき、548条
当事者の一方が数人ある場合の解除権の不可分性による消滅につき、544条2項。

履行遅滞解除の場合、解除権は相当期間経過後に発生するものであるから、要件事実論の観点からは、相当期間内に履行ないしその提供があったことは、解除権の消滅原因ではなく、発生を阻止する原因になる。

解除類似の制度[編集]

解約(解約告知、告知)[編集]

解除に類する用語として「解約」(解約告知告知ともいう)がある。これは賃貸借620条)、雇用630条)、委任652条)といった継続的契約において一方当事者の意思表示により、ある時期から将来に向かって契約を消滅させることを言う。解約するまでの契約は有効である点、また、原状回復義務を生じない点が解除と異なる。民法学ではこのように概念が分けられているが、民法の法文上は必ずしも「解除」と「解約」がこのような意味で使い分けられているわけではない。

解除条件[編集]

失権約款[編集]

失権約款とは、一定の事由が生じた場合には当然に契約が解除されるとする当事者間の合意である。当事者の意思表示がなくとも一定の事由が生じれば契約は失効する点で解除とは異なる。

合意解除(解除契約、反対契約)[編集]

合意解除とは、契約当事者の合意により、契約によって生じた債権債務関係を契約前の状態(原状)に戻す契約をいう。解除契約あるいは反対契約ともいう。解除権の発生などなくても、合意さえあれば解除できる事が狭義の解除と異なる。合意解除は、それ自体一種の契約であるから、その効果については、基本的に当事者間の合意内容によって決まる。そのため、民法の解除に関する規定は適用されないと解されている。

脚注[編集]

  1. ^ 最判昭和43.2.23民集22-281

関連項目[編集]