焼き鳥
焼き鳥(やきとり、ヤキトリ)は、主に鶏肉などの肉を一口大に切ったものを、数個(1個から5個程度)竹串で刺し通し、調味して焼いた料理。ここでは日本料理の焼き鳥について記述する。
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[編集] 概要
鍋や壺などの調理器具を用意しなくても加熱が可能なあぶり焼きという方法は、古代から行われており、山野で得た獲物を食べるには都合のよい方法と言える。しかし、大きい鳥の丸焼きは調理に時間がかかると共に骨があるために食べにくく、料理店で出すに際して、肉を小さく切って、串に刺す方法に移ったものと考えられる。
現在の日本において、焼き鳥は、多くの場合、焼き鳥屋という専門店で供されている。焼き鳥屋の多くは、庶民的な居酒屋の一種と見なされている。焼き鳥屋では、焼いた各種鶏肉とともに鶏の様々な部位も供する。ネギ、タマネギ、シイタケ、ぎんなん、ニンニクなどを一緒に使うものもある。スズメなどの小鳥を切らずに串焼きにしたものも同じく焼き鳥と呼ばれる。
焼き鳥屋以外では、スーパーマーケットなどの惣菜売場や肉屋で売られ、自宅で食べられるようにしている事も多い。その場合、既に焼き上げたものの他、焼いていないもの、真空パックにしたもの、冷凍のもの、缶詰などもある。
日本各地における消費は、青森県と徳島県が多く、次いで関東と甲信越となっている[1]。
地域差が大きく、詳細は焼き鳥の地域差の項を参照。
[編集] 調理器具
串に刺した材料は、備長炭などの白炭で焼いて調理をする。炭火の特徴である低い水分と高い温度・強い火力(赤外線)を利用し、材料の内部まで短時間で火を通し表面をカリッっと仕上げる。安価な黒炭・ガス・電気を使用する場合もあるが、炭火で焼いたものが、香りや食感がよく、美味とされている。
[編集] 串焼き料理
鳥肉ではなく豚のばら肉や内臓肉を用いたものは、多くの地域でやきとんと呼ばれるが、地域によってはやきとんを含めた肉の串焼き料理全般を「焼き鳥」と呼ぶこともある。ぎんなんやニンニク、ししとう、プチトマト、アスパラなどの植物性の素材、及びそれらを豚肉やベーコンで巻いた串焼き料理を含める地域や人もいる。串の長さは主に14cmである。
[編集] 味付け
味付けは、主に二種類で、塩のみを使用した塩(しお)と、醤油、味醂、酒、砂糖などから調整された甘辛いタレをつけ焼いたタレがある。メニューによっては塩またはタレのみのものもある。食べる際に付ける香辛料として、好みで一味唐辛子、七味唐辛子、粉山椒、ワサビ、胡椒などが用いられる。
[編集] 歴史
江戸時代初期の慶安元年(1648年)に、信州佐久郡岩村田の割元職の篠澤佐五右衛門良重が小諸城主青山因幡守に献上した料理の献立の中に「焼き鳥」の文字がある。この焼き鳥の肉の種類、調理法、調味料等は文献には記載されていないため、現在のような形態とは異なる可能性がある。同時期の武家の本膳料理などにおいては鶉や鴨、鶴などの水鳥の肉が用いられており、同資料には「鶴肉の吸い物」の記述もあるので鶴の肉を焼き鳥にして城主が食べていた可能性がある[2]。
若月紫蘭の「東京年中行事 - 雑司ヶ谷鬼子母神会式」には、祭りの名物として焼き鳥が挙げられている。「最暗黒の東京」には居酒屋のメニューとなっており、新橋から万瀬橋まで多くの店が出ていたとされている。第二次大戦後は、店舗の数が爆発的に増えていった。
[編集] 焼き鳥の種類
焼き鳥屋は、しばしばそのメニューに独特の用語を用いる。
[編集] 鶏肉を用いるもの
- 正肉、かしわ:もも肉または胸肉
- セセリ、ネック、きりん:首の周りの肉
- ささみ
- 手羽先
- 手羽元
- チューリップ:手羽元の根元にぐるっと一回り包丁目入れて引っ張ると形が植物のチューリップの様になるのが名の由来。
- ボンジリ、ボンチリ、ボンボチ、三角、テール、ヒップ:尻の肉(尾部先端の脂肪質)
- 皮、鶏皮、シロ
- ハツ、ココロ、ヘルツ:心臓
- ずり、砂ずり、砂肝:砂嚢
- アカ、レバー、肝:肝臓
- まめ、まめ肝:脾臓
- 白レバー:フォアグラのように肥大化した肝臓
- つくね:挽き肉を団子状または棒状にしたもの。卵黄と共に食べることもある。
- ねぎま(葱間):ネギと肉(本来はマグロ肉)を交互に串に刺したもの。ねぎまの「ま」は鮪(まぐろ)のことであるが後に鶏肉に転用されたものを呼称するようになった。
- マツバ(鎖骨):笹身の付け根で鎖骨の部分。左右二本の一対がつながっており、V字型がちょうど松葉に似ていることから“マツバ”と呼ばれている。
- カッパ(胸なんこつ):マツバ(鎖骨)のすぐ下にある胸の軟骨。マツバとカッパを一緒に見ると河童の顔に似ており、職人の符丁が語源。Y字の形が生薬をすりつぶす道具、薬研(やげん)にも似ていることから、“やげん”または三角とも呼ぶ。
- きんかん・チョウチン:内臓の未成熟卵
- トサカ、冠:鶏冠
- 新子焼き:鶏の半身を焼いたもの。東北・北海道の一部で食べられている。
- カン:血管
[編集] 畜肉を用いるもの
- 豚、豚バラ:豚のばら肉
- カシラ:豚の頬肉
- 豚トロ、Pトロ(ピートロ):豚の頬から肩にかけての霜降りの肉
- サガリ、ハラミ:牛の横隔膜
- ハツ、ヘルツ:心臓
- シロ、シロモツ(白物)、ダルム:豚の腸
- ハツモト、コリコリ、タケノコ、フエ、センポコ:牛や馬の心臓につながる太い血管
- 豚足
- レバー:豚の肝臓。豚レバーと呼び鳥レバーと区別することもある
- ナンコツ
- ガツ:豚の胃
- アブラ:背油
- コブクロ:子宮
- コブクロモト:膣
[編集] その他
- スズメ、ウズラ:丸焼きの状態で出される。
- いかだ(筏):ネギ(長ネギ)だけを串に刺したもの。ネギが回転しないようにしばしば2本の串が刺してある。
- ししとう
- ウズラ卵
- 厚揚げ
- キノコ類(シイタケ、エノキ、エリンギなど)
- 銀杏
[編集] 焼き鳥の地域差
同じ「焼き鳥」という呼称であっても、地域によっては味付けや付け合せ、使用する肉の部位、種類などが異なる。
[編集] 美唄(北海道)
詳細は「美唄焼き鳥」を参照
北海道美唄市では鶏肉のセイと呼ばれる正肉と、モツと呼ばれるきんかん・レバー・ハツ・砂肝等の内臓と皮を他地域のように細分化せずに1本の串に刺した2種類を塩コショウの味付けで食べるのが主流である。
[編集] 室蘭・函館などの道南地方(北海道)
道南地方では、豚肉を用い、「室蘭やきとり」の場合、タマネギがねぎまのネギとして使われ、豚肉にからしをつけて食べる[3]。鶏肉で作る場合は「鶏肉の焼き鳥」と呼ぶ。
[編集] 盛岡(岩手県)
盛岡競馬場の名物となっているジャンボ焼き鳥が有名。通常の焼き鳥で使われる肉の5倍以上はあるような巨大な鶏肉を2、3個串刺しにして焼く。味付けはシンプルに塩。これに唐辛子を大量にふりかけて食べる。市内の店舗も他地区の焼き鳥より肉が大きい店が多い。
[編集] 福島・郡山(福島県)
福島市では鶏肉、郡山市では豚肉ベースのオーソドックスな炭火の串焼が盛んであり、「福島焼き鳥党」でも知られている。福島市は、2007年に「第1回やきとリンピック」の開催地となった。
[編集] 東松山(埼玉県)
東松山市の焼き鳥は、豚肉を用い、唐辛子などをブレンドした味噌だれを塗って食べる。「やきとり」を頼むとカシラのねぎまが出され、タン、ハツなど他の部位にもネギをはさんで串に刺す。日本初の焼き鳥店同業組合(正式名称:東松山焼鳥組合[4])のある街でもある。
[編集] 今治市(愛媛県)
今治市では鉄板へヘラで押さえつけて皮を焼いて食べる。最後に、「せんざんき」(唐揚げのこと)に終わるスタイルが多い。
[編集] 長門(山口県)
山口県長門市は、鶏肉・豚肉・野菜を串焼きにして食べることが多い(「豚バラの焼き鳥」)。一味・七味だけではなくガーリックパウダーで食べるのが特徴。世界一長いやきとり挑戦を行った。
[編集] 久留米(福岡県)
屋台が多く、材料も鶏肉や豚肉のほか牛肉、豚サガリ、ダルム、ヘルツ、センポコ、野菜、魚介類(いか、ホタテ、ししゃもなど)を串焼きにしたものも「焼き鳥」として供されることもある。福岡市を中心とした地区では豚足を焼いたものが焼き鳥の一種として供されることがある。味付けは塩が中心である。久留米市では「久留米やきとり日本一の会」が「B-1グランプリ」に久留米やきとりを出展しており、2008年には久留米市で同祭典が開催された。
[編集] 海外への進出
海外においても日本料理の焼き鳥が食べられる店は増えている。居酒屋がメニューのひとつに加えているような例だけでなく、焼き鳥屋も出来ている地域がある。例えば、中国の北京市や上海市では1990年代から複数の焼き鳥屋が営業をしている。これらの中には、日本のチェーン店が出展している例もあれば、日本で働いて焼き方やたれの作り方を覚えた中国人が開いた店もある。
[編集] 販売形態
焼き鳥を調理する(焼く)ためには、一般にはほぼ焼き鳥専用となる「焼き鳥器」と呼ばれる調理装置が必要となるため、多くは「焼き鳥屋(焼き鳥店)」と呼ばれる焼き鳥専門の店舗で販売される(前述)。その場で食べさせる飲食店形式のものが多いが、持ち帰りを前提とした屋台・露天売りも多く存在する(所謂「焼き鳥店」でも持ち帰りを受け付ける店舗もある)。専門店の多くは個人営業だが、チェーンストア化した専門店の組織として秋吉、マルシェ(八剣伝)、ダイキチシステム(やきとり大吉)、とりひめ、鮒忠、竜鳳(持ち帰り専門)などがある。
専門店以外では、飲食店形式では居酒屋・小料理屋など、持ち帰り前提の販売店舗ではスーパーマーケットやコンビニエンスストア、精肉店、弁当店(「焼き鳥弁当」として)で販売される。これらの店舗では小型の焼き鳥器を導入しているか、半製品の加熱調理により供されるケースがある。
他には冷凍食品として販売される例や、缶詰、レトルト食品として販売されることもある。焼き鳥の缶詰を扱うメーカーとしてはホテイフーズコーポレーション(串に刺さず、焼き鳥の肉のみを缶詰にして販売)、天狗缶詰(串に刺さった形のやきとり缶を製造し自動販売機でも売られていた)などが知られる。
[編集] 焼き鳥から転じた言葉
- コンピュータ関係
- コンピュータのCPUであるAMD・Athlonがヒートシンクの取り付けミスなどによる冷却不足により熱で破損し故障すること。Athlon CPUの内でもコード名Thunderbirdコアのプロセスで生産された時期のものは、この種の故障が多発した事から、熱破損がこう呼ばれるようになった(鳥=Thunderbirdコア が 焼ける=熱破損)。
- 写真関係
- 航空関係
- 航空の俗語(主にターボファンジェットの旅客機のパイロットが使う)で、離陸時に鳥がジェットエンジンに突入すること(バードストライク)。また、その鳥のこと。鳥はコンプレッサによってバラバラになり、燃焼室によって黒焦げになるためこのような俗称が付いた。
- 麻雀では、アガリの時の牌の組み合わせを飛ぶ鳥に見立てている。転じて飛ぶことができない鳥を焼き鳥とかけ、一度も和了をすることができなかったプレイヤーに対するペナルティを焼き鳥という。[5]麻雀の点#焼き鳥も参照。
[編集] その他
- 北見綾野は「やきドル(やきとりアイドル)」として知られ、全国やきとり連絡協議会の公認キャンペーンソング「ハッピー!やきとりの歌」を作詞しCDをリリースしている。
- 本田技研工業が開発した可変バルブ機構「VTEC」は、焼き鳥を焼いているのを見ていた技術者が、串に打たれた具材が回ったり回らなかったりする(ネギは回るのに肉は回らない、など)のを見てその機構を思いついたと言われている。
- 近年、焼き鳥に関連したイベントとして、焼き鳥一本の長さを競うイベントが全国各地で開催されている。焼き鳥のイメージアップを目的とする任意団体「全国やきとり連絡協議会」が「1本の竹串を用いる」「焼き上がった時点で折れていない長さで測定する」などのルール『セカチョウ(世界一長い焼き鳥)競技規則』を定め、現在はこれに則ったものを“世界記録”として認定している(ギネス・ワールド・レコーズが認定したものではない)。現在の記録は2009年8月29日に福島県川俣町で記録された24m24cm。これ以上の長さは、一本ものの竹串(の材料となる竹)が入手困難なこともあり、記録更新が途絶えている。
- 相撲界では鶏が“二本足で立ち、手を着かない”ことから、縁起物として両国国技館での土産になっている。両国国技館の地下には国技館サービスの運営する焼き鳥工場があり、毎年本場所中に場内で販売される焼き鳥を製造している。
- 毎年8月10日は「や (8) きと (10) り」の語呂合わせから“焼き鳥の日”に制定されている。2007年に日本記念日協会(任意団体)に登録したのは根本忠雄が創業した株式会社鮒忠だが[6]、これとは別に全国やきとり連絡協議会でも同日には各地で記念イベントを行っている。
[編集] 出典
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 全国やきとり連絡協議会 - 全国やきとり連絡協議会のホームページ
- やきとりco.jp - やきとり総合情報サイト
