女王陛下万歳
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
女王(国王)陛下万歳(じょおう(こくおう)へいかばんざい)、または、神よ女王(国王)を護り賜え(かみよじょおう(こくおう)をまもりたまえ、英:God Save the Queen (King))は、イギリスの国歌、ニュージーランドの国歌の一つ。
目次 |
[編集] 概要
イギリスにおいては国歌として法律で制定されているのではないが、一般に国歌として広く認知されている。かつてイギリス連邦諸国でも国歌として採用されていたが、現在は公募などして別の歌を国歌として採用している。ニュージーランドでは今日でも『神よニュージーランドを守り給え』とともに国歌のひとつである。カナダ、オーストラリア、バハマ、ジャマイカ、マン島では王室歌(Royal Anthem)として採用されている。イギリス連邦ではないが、リヒテンシュタインでは同じ旋律を流用して独自の歌詞を乗せて国歌としている(かつてのスイス・ドイツ帝国・ロシア帝国も同様であった)。
公式行事などで使用される場合、通常第一節のみが歌われる。時代により王が男性 (King) であるか女性 (Queen) であるかで、曲名および歌詞が変わる珍しい国歌である。
[編集] 歴史
一般に編曲者として知られているのはトマス・アーンである。1744年にイギリス上陸に失敗した小僭称者チャールズ・エドワード・ステュアートは、1745年に側近のみを引き連れてスコットランドに上陸した。スコットランド高地地方の氏族は小僭称者の下に結集し、政府軍をプレストンパンズ (Prestonpans) において破り、以後ジャコバイトはイングランドへ向けて侵攻を開始した。ジャコバイトがイングランド中部ダービーまで南下してロンドンを脅かす中で、アーンは君主と国家の安寧を祈って「神よ、国王陛下を護り給え」を編曲した。
1745年9月28日、ドルリー・レーン王立劇場においてベン・ジョンソンの歌劇『錬金術師』(The Alchemist) 終演後に公式に演奏され、以後ロンドン各地の劇場で演奏されるようになって爆発的に広まった。この熱狂的な雰囲気によるものか、1746年のカロドン・ミュアの戦いにおいて政府軍はジャコバイトを決定的に破り、小僭称者は命からがらフランスに逃げ帰ることになる。
ただし、以上はあくまで現在確認されている公式の初演の経緯であり、アーンが自ら作曲したとは考えられていない。1740年にヘンリー・キャリー(Henry Carey)が作曲したという説もあれば、さらに遡って16世紀の聖書の詩句、賛美歌にその起源を求める声もある。そもそもイングランド起源ではなく、ジャコバイトの側の歌であり、フランスから輸入されたものだとする者もいる。このように多くの研究があるものの、明確な起源は今なお判明していない。
[編集] 歌詞
第6節はジャコバイト蜂起の記憶が薄れ、イングランドとスコットランドの融合が進む中で19世紀初頭にはほとんど歌われなくなった。近年になって「反逆せしスコットランド人を破らしめむ~」という節がスコットランドの住民に対して悪いイメージを与えるとして、一部議員から第6節を国歌から削除する案が提出されているが、反対意見が多くまだまとまっていない。
- 1.
- God save our gracious Queen,
- Long live our noble Queen,
- God save the Queen:
- Send her victorious,
- Happy and glorious,
- Long to reign over us,
- God save the Queen.
- 2.
- O Lord, our God, arise,
- Scatter her enemies,
- And make them fall.
- Confound their politics,
- Frustrate their knavish tricks,
- On Thee our hopes we fix,
- God save us all.
- 3.
- Thy choicest gifts in store,
- On her be pleased to pour;
- Long may she reign:
- May she defend our laws,
- And ever give us cause
- To sing with heart and voice
- God save the Queen.
在位している国王が男性の場合は、Queenの代わりにKingを、herの代わりにhimを用いる。また、第3節第6行は"With heart and voice to sing"となる。
[編集] 歌詞(日本語訳)
- 1.
- おお神よ我らが慈悲深き女王(国王)陛下を守りたまへ
- 我らが気高き女王(国王)陛下よとこしへにあれ、
- 神よ女王(国王)を守りたまへ:
- 君に勝利を幸を栄光をたまはせ
- 御世の長からむことを:
- 神よ女王(国王)を守りたまへ
- 2.
- おお主よ、神よ、立ち上がられよ
- 汝と君の敵を消散せしめたまへ
- 打ち砕きたまへ
- 彼らが策を惑はしたまへ
- 彼らが騙し手を挫きたまへ
- 我らが望みは汝の上に!
- 神よ我等を救いたまへ
- 3.
- 汝(な)が選り抜ける進物の
- 君に喜びと注がれむことを;
- 御世の長からむことを:
- 我らが法を守りたまひ
- 絶えず理想を与へたまへ
- 声無きも声高きも謳ひぬ(歌ふ心で歌ふ声で)
- 我らが神よ女王(国王)を守りたまへ
- 4.
- 神の御慈悲は
- この御土のみでなく
- そのくまなきに知らるる!
- 主はこの御国に、この広き世界の
- 全て人間は一つ兄弟たり、
- 一つ家族たることを知らしめす
- 5.
- 闇に潜みし敵より
- 暗殺者の魔の手より
- 神よ女王(国王)を守りたまへ
- 君が上に汝が腕を広げ
- ブリテンが為に防がむ
- 我らが母(父)にして君にして友
- 神よ女王(国王)を守りたまへ
- 6.
- 主はウェイド元帥をして
- その強き祐けにより
- 勝利をもたらしめむ
- 乱を制しめむ
- 轟々たる濁流の如くして
- 反逆せしスコットランド人を破らしめむ
- 神よ女王(国王)を守りたまへ
[編集] その他
- セックス・ピストルズはこの曲を揶揄して同名の曲(en:God Save the Queen (Sex Pistols song))を作った。
- クイーンは、アルバム“オペラ座の夜”で、最後にエレキギターでこの国歌を演奏している。これはオペラや劇場で、終演時にその国の国歌を演奏するという慣習に従ってアルバムの題に合わせたもので、このアルバムの発表以降のコンサートの最後でも毎回演奏していた。
- ベートーヴェンがこの曲を主題にした変奏曲(ピアノ曲)を作曲している。
- フランツ・リストはこの曲を編曲している。
- 映画『ウエスト・サイド物語』では、シャーク団がジェット団との喧嘩の申し合いの後でドックの店から出て行くとき、この曲を口笛で吹く。
- アメリカでは同じ旋律に別の歌詞が付けられ、「アメリカ」という題名で讃歌として歌われていた。
- ジミ・ヘンドリックスは、1970年のワイト島フェスティバルにてこの曲をエレキギターで演奏した。
- コモンウェルスゲームズではこの曲はイギリス連邦歌とされるため、イングランド国歌には「ルール・ブリタニア」を使用する。
- また、ビートルズは1969年のルーフトップ・コンサートで同曲を演奏した。
- 日本の英語教育では"God save ~"の下りなどを命令法であると教えることがあるが、実際には接続法、あるいは仮定法である。
[編集] 外部リンク
- God Save the Queen (MIDI)
- God Save the Queen (MIDI)
- God Save the Queen (MP3)
- God Save the Queen

