ニコロ・パガニーニ
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ニコロ・パガニーニ(Niccolò [あるいはNicolò] Paganini, 1782年10月27日 - 1840年5月27日)はイタリアのヴァイオリニスト、ヴィオラ奏者、ギタリストであり、作曲家である。
目次 |
[編集] 概説
[編集] 人物
パガニーニはヴァイオリンの鬼神と呼ばれ、当時はそのヴァイオリン演奏のあまりの上手さに、「パガニーニの演奏技術は、悪魔に魂を売り渡した代償として手に入れたものだ」と噂されたという。そのため彼の出演する演奏会では聴衆は本気で十字を切ったり、本当にパガニーニの足が地に着いているか彼の足元ばかり見ていた観客もいたという。それどころか死後に教会から埋葬を一時拒否すらされ、その遺体は各地を転転とする羽目になったほどである。
彼がヴァイオリンを弾き始めたのは5歳のころからで13歳になると学ぶべきものがなくなったといわれ、そのころから自作の練習曲で練習していた。それら練習曲はヴァイオリン演奏の新技法、特殊技法を駆使したものと言われる。
青年時代には、恋愛と賭博を好み、ナポレオン1世の妹のエリーズ・ボナパルトとポーリーヌ・ボナパルトと浮名を流した。賭博では、演奏会の前日に商売道具のヴァイオリンを博打に大負けしてとられたことがある。
[編集] 健康
彼は病弱だったために痩せていて浅黒く、そのことが彼の伝説に貢献した。その上、パガニーニは猛特訓の末に左手が柔軟になっていた。この事が彼の超絶技巧を可能にした。これは、マルファン症候群によるものという説があるが、パガニーニは中背だった(しかし、絵画等には長身の人物として描かれている)という記録が残っていることから、この説は考えにくいという説がある(ただし、マルファン症候群の罹患者は全て長身と言うのは俗説であり、身長はマルファン症候群と診断する際の必須の条件ではない)。
その一方、アイザック・アシモフはその著書において、悪魔的とまで言われた演奏技術は、マルファン症候群特有の指の長さや、関節のなめらかな動きがもたらしたものではないかとする見方を示している。
[編集] 音楽作品
作曲家としても活躍しヴァイオリン曲を残したが、極めて速いパッセージのダブルストップ・左手のピチカート・フラジョレット奏法など、どれも高度な技術を必要とする難曲として知られている。パガニーニ自身は技術が他人に知られるのを好まなかったため、生前はほとんど自作を出版せず自分で楽譜の管理をしていた。
[編集] 作品への態度
その徹底ぶりは凄まじいもので、自らの演奏会の伴奏を担当するオーケストラにすらパート譜を配るのは演奏会の数日前(時には数時間前)で、演奏会までの数日間練習させて本番で伴奏を弾かせた後、配ったパート譜はすべて回収したというほどである。しかも、オーケストラの練習ではパガニーニ自身はソロを弾かなかったため、楽団員ですら本番に初めてパガニーニ本人の弾くソロ・パートを聞くことができたという。 その背景として、パガニーニ自身が無類の”ケチ”だったと言う事の他に、 この時代は、著作権などがまだ十分に確立しておらず、出版している作品ですら当たり前のように盗作が横行していた為、執拗に作品管理に執着するようになったとする説もある。
このようにパガニーニ自身が楽譜を一切外に公開しなかったことに加えて、死の直前に楽譜をほとんど焼却処分してしまった上、彼の死後に残っていた楽譜も遺族がほぼ売却したため楽譜が散逸してしまい、大部分の作品は廃絶してしまった。現在では、無伴奏のための24の奇想曲や6曲のヴァイオリン協奏曲(12曲あったといわれている)などが残されている(第3番~第6番が見つかったのは20世紀に入ってからである)。現存している譜面は、彼の演奏を聴いた作曲家らが譜面に書き起こしたものがほとんどだと言われている。 また、同じ理由から弟子をカミッロ・シヴォリ一人しかとらず、そのシヴォリにも自分の持つ技術を十分には伝えなかったため、演奏の流派としてはパガニーニ一代で途絶えることとなってしまった。
パガニーニは、1800年から1805年にかけて表立った活動をやめ、ギターの作品を数多く作曲している。これは、フィレンツェの女性ギター奏者を愛人としていたためといわれている。
パガニーニは子供の頃から病弱であったが、1820年に入ると慢性の咳など体調不良を訴え、『毒素を抜くため』に下剤を飲み始める。1823年には梅毒と診断されて水銀療法とアヘンの投与が開始された。さらに1828年頃には結核と診断され、甘汞を飲み始め、さらに下剤を飲み続けた。その後、水銀中毒が進行して次第にヴァイオリンを弾くことができなくなり、1834年頃についに引退する。そして1840年に水銀中毒による上気管支炎、ネフローゼ症候群、慢性腎不全によりニースで死去。
一般にパガニーニの死因は喉頭結核もしくは喉頭癌といわれているが、主治医の診断から結核ではなかったことがはっきりとしており、記録に残る症状(歯肉炎、震戦、視野狭窄など)から、水銀中毒だったことは明らかである(参考資料:『音楽と病 病歴に見る大作曲家の姿』、ジョン・オシエー著、法政大学出版局、ISBN 4-588-02178-8)。
遺体は防腐処理を施されて各地を転々とし、改葬を繰り返した末に1926年にジェノヴァの共同墓地にようやく安置された。
[編集] 演奏家
パガニーニには興行師としての才能もあり、木靴に弦を張って楽器として演奏し一儲けした後、金に困った女性を助けたなどの逸話もある。また演奏会にて、弾いている最中にヴァイオリンの弦が切れていき、最後にはG弦しか残らないも、それ一本で曲を弾ききったと言う逸話もある。しかしながら弦が頻繁に、高いほうから都合よく順に切れていく事、一番低いG弦は決して切れなかった事(弦楽器は開放弦より低い音を出す事は出来ない)などからパガニーニ本人がパフォーマンスの一環として、伸ばして鋭くした爪で演奏中に弦をわざと切っていたと言われている。
[編集] 一面
また、パガニーニは自身の利益や金銭に執着する人物であったと言われる。高い評価や人気を得るに連れ、演奏会のチケット代は高額を要求するようになった。やがて偽造チケットも多く出回ったため、自ら会場の入口に立ちチケットをチェックするほどの徹底ぶりであったと言われる。
[編集] 楽器
パガニーニが演奏するのに使用したヴァイオリンは1742年にグァリネリ・デル・ジェスが製作した「カノン」が有名である。上記のように賭博でヴァイオリンを賭け、それを取られてしまうということがあったが、1802年にリヴロンという商売人がパガニーニに、演奏会で自身が所有する上記のグァリネリのバイオリンを使用してほしいことを申し出た。パガニーニはそれを承諾し、演奏会でそのヴァイオリンを使用したところ演奏会は予想以上の成功を収めた。それを見てか、リヴロンは感激し貸したヴァイオリンを「一生使用する」ことを条件に譲渡した。以後パガニーニはこの楽器を音の大きさから「カノン」と命名し、愛用した。
なお「カノン」はパガニーニの遺言で「他人に譲渡、貸与、演奏をしない」ことを条件に故郷ジェノヴァ市に寄贈した。この遺言は当初は守られたが、1908年に定期的な修理をかねてヴァオリニストに貸与することを決定。1937年の全面修理を経て、現在にいたるまでパガニーニの遺言を無視する形で貸与と演奏がされている。
[編集] ロマン派作曲家への影響
[編集] シューベルト
シューベルトはパガニーニがウィーンに来た時、家財道具を売り払ってまで高いチケットを買って(友人の分まで奢って)パガニーニの演奏を聞き(ちなみに、この時にシューベルトが聞いたのが「鐘のロンド」を持つヴァイオリン協奏曲である)、「天使の声を聞いた」と感激した。
- 金銭に関して執着しないシューベルトらしい逸話である。この台詞は正確には「アダージョでは天使の声が聞こえたよ」と言ったものである。派手な超絶技巧よりもイタリアオペラに近い音色の美しさをとらえるシューベルトの鋭い感性も覗える。
[編集] リスト
またリストは初恋に破れ沈んでいた20歳の時にパガニーニの演奏を聞いて「僕はピアノのパガニーニになってやる」と奮起し超絶技巧を磨いたという逸話もある(リストはヴァイオリン協奏曲第4番を聞いたといわれている)。
[編集] その他の影響
イングヴェイ・マルムスティーンが非常に深い影響を受けるなど、HR/HMの世界に対する影響力は大きい。
[編集] 主要作品
- 24の奇想曲 Op.1 (無伴奏ヴァイオリン独奏曲)
- ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 Op.6
- ヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調 Op.7 (第3楽章が「鐘のロンド(ラ・カンパネッラ)」として有名)
- ヴァイオリン協奏曲第4番ニ短調
- 弦楽四重奏曲(3曲)
- 無窮動 ハ長調(モト・ペルペトゥオ)Op.11 (ヴァイオリンと管弦楽のための作品)
- ヴァイオリンとギターのためのソナタ集 Op.2,3 (12曲)
- パイジェルロのアリア「ネル・コル・ピウ」(わが心はもはやうつろになりて)による変奏曲 (無伴奏ヴァイオリン独奏曲)
- 魔女たちの踊り ニ長調 (ヴァイオリンと管弦楽のための作品)
- モーゼ幻想曲 (ヴァイオリンと管弦楽のための作品)
[編集] その他の作品
- ヴァイオリン協奏曲第3番
- ヴァイオリン協奏曲第5番(紛失?)
- ヴァイオリン協奏曲第6番
- ヴァイオリンと管弦楽ためのポプリ(紛失?)
[編集] パガニーニの主題
パガニーニの演奏、楽曲はリストやシューマンなど当時の作曲家に多大な影響を与え、以後様々な作曲家がその主題によるパラフレーズや変奏曲を書いた。特に『24の奇想曲』の最終曲「主題と変奏 イ短調」や『ヴァイオリン協奏曲 第2番』の終楽章「鐘のロンド」は繰り返し用いられた。パガニーニの主題を用いた他の作曲家の作品を以下に示す。
[編集] 24の奇想曲 Op.1
- ヨハン・ネポムク・フンメル
- ピアノのための幻想曲「パガニーニの思い出」
- イグナーツ・モシェレス
- パガニーニ風の珠玉(3曲)
- ヨハン・バプティスト・クラーマー
- パガニーニの回想
- ロベルト・シューマン
- パガニーニのカプリスによる練習曲 Op.3 (6曲)
- パガニーニのカプリスによる練習曲 Op.10 (6曲)
- フランツ・リスト
- パガニーニによる超絶技巧練習曲集 S.140 (6曲)
- パガニーニによる大練習曲 S.141 (6曲)
- フェルッチョ・ブゾーニ
- パガニーニ風の序奏とカプリッチョ
- ルイージ・ダッラピッコラ
- パガニーニのカプリッチョによるカノン風ソナチナ
[編集] 第24番「主題と変奏」
- イグナッツ・フリードマン
- パガニーニの主題による練習曲(変奏曲形式で作曲)op.47b
- ハンス・ブレーメ
- パガニーニアーナ
- ユルク・バウアー
- パガニーニアーナ
- フランツ・リスト
- パガニーニによる超絶技巧練習曲集 S.140 より第6曲 イ短調「主題と変奏」
- パガニーニによる大練習曲 S.141 より第6曲「主題と変奏」
- ヨハネス・ブラームス
- パガニーニの主題による変奏曲 イ短調 Op.35(2巻)
- セルゲイ・ラフマニノフ
- パガニーニの主題による狂詩曲 イ短調 Op.43(ピアノと管弦楽)
- ヴィトルト・ルトスワフスキ
- ボリス・ブラッハー
- パガニーニの主題による変奏曲
- アレクサンドル・ローゼンブラート
- パガニーニの主題による変奏曲
- ファジル・サイ
- パガニーニの主題による変奏曲
- 中野二郎
- パガニーニの主題による30の変奏曲 (ギター独奏)
- 一柳慧
- パガニーニ・パーソナル (マリンバとピアノ)
- 川島素晴
- パgani蟹 Paganinissimo (コントラバス独奏。左手を蟹に、右手の弓をシオマネキの鋏に見立てた喜劇的シアターピース)
- パgani鐘(ヴァイオリンと打楽器。24番のテーマを用いているという意味で上記作品と同様だが、打楽器に銅鉢を含むのでこの名になった。)
- ナタン・ミルシテイン
- パガニーニアーナ(ヴァイオリン独奏)
- ジョージ・ロックバーグ
- カプリース変奏曲
- アルフレット・シュニトケ
- ア・パガニーニ(ヴァイオリン独奏)
- ジェイムズ・バーンズ
- パガニーニの主題による幻想変奏曲(吹奏楽)
[編集] 鐘のロンド
- フリードリヒ・クーラウ
- ピアノのための華麗なロンド「鐘」
- アンリ・エルツ
- 「鐘」による行進曲とロンド
- フランツ・リスト
- パガニーニの「鐘」による華麗な大幻想曲 S.420
- パガニーニによる超絶技巧練習曲集 S.140 より第3曲 変イ短調「ラ・カンパネッラ」
- パガニーニによる大練習曲 S.141 より第3曲 嬰ト短調「ラ・カンパネッラ」(一般にピアニストのレパートリーとしての「鐘(ラ・カンパネッラ)」はこの曲を指す)
- ヨハン・シュトラウス1世
- パガニーニ風のワルツ Op.11
- マルカンドレ・アムラン
- 全ての短調に拠る12の練習曲集から第3曲「鐘」
[編集] その他
- フレデリック・ショパン
- 「パガニーニの思い出」変奏曲 イ長調
- 4手の為の変奏曲 ニ長調
- 上記2曲とも「ヴェネツィアの謝肉祭」を主題にしている。
- アンリ・エルツ
- パガニーニの最後のワルツ
- パガニーニのロンド
- フランツ・レハール
- 喜歌劇「パガニーニ」
- アルフレード・カゼッラ
- パガニーニアーナ
- マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ
- 悪魔のカプリッチオ~パガニーニ讃(ギター独奏)
[編集] 外部リンク
- ニコロ・パガニーニ簡易作品表
- IMSLP - International Music Score Library Project 内のニコロ・パガニーニのページ。無料で楽譜PDFが入手可能。


