野性の証明

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野性の証明』(やせいのしょうめい)は、森村誠一の小説、およびその小説を原作として1978年10月7日に公開された日本の映画。また、1979年1月から3月にかけて毎日放送東映制作TBS系列にてテレビドラマ版が放映された。

東北の寒村で大量虐殺事件が起こる。その生き残りの少女と、訓練中、偶然虐殺現場に遭遇した自衛隊員。この二人を主人公に、東北地方都市を舞台にした巨大な陰謀を描く。

映画[編集]

野性の証明
監督 佐藤純彌
脚本 高田宏治
原作 森村誠一
製作 角川春樹
坂上順
遠藤雅也
出演者 高倉健
中野良子
薬師丸ひろ子
音楽 大野雄二
主題歌 町田義人戦士の休息
撮影 姫田真佐久
編集 鍋島惇
製作会社 角川春樹事務所
配給 日本ヘラルド映画
東映
公開 日本の旗 1978年10月7日
上映時間 143分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 21億8000万円[1]
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人間の証明』に続き、森村誠一が角川春樹の依頼により映画化を前提として執筆した原作を、角川書店が映画化。原作には無かった主人公と自衛隊との戦闘シーンが作品後半に追加された。薬師丸の「お父さん、怖いよ。何か来るよ。大勢でお父さんを殺しに来るよ」の台詞はTVCMで流された。作中に自衛隊が登場するものの本作では自衛隊が好意的に扱われていないため、防衛庁(当時)の協力は一切得られなかった。第52回キネマ旬報ベスト・テン第40位、読者選出第7位となった[2]

ストーリー(映画版)[編集]

味沢岳史が所属する自衛隊の機密組織・特殊工作隊が北上山地で行った山岳行動訓練中、岩手県のとある寒村で斧により13人が殺されるという大量虐殺事件が発生する。集落の全人口と同じ13人の遺体があったことから被害者は全員村人かに思われたが、警察の調べで被害者の1人が偶然村に立ち寄った女性登山客と判明する。翌日、奇跡的に助かった村の少女・長井頼子が他所の家の納屋から見つかるが、警察からの問いに「青い服を着た男に連れてこられた」と証言するだけで事件当時の記憶を失くしていた。

忌まわしい事件から一年後、東北の羽代市(はじろし)では大場グループの会長・大場一成が、長年に渡り事業拡大と共に地域貢献を行い地元で絶大な支持を誇っていた。そんな中市内の湖から転落事故を起こした車が引き上げられ、助手席から地元新聞の男性記者の遺体が発見されるが運転していたはずの女の姿が見つからない。羽代市の保険会社に転職した味沢岳史は、その女性の保険担当者だったことから遺体のない生命保険の支払いに関して調査を始める。

一方、亡くなった男性記者の同僚・越智朋子も彼の死に疑いを持つが、ある夜暴走族に襲われそうになった所偶然通りかかった味沢に助けられる。翌日怪我をした味沢の見舞いに自宅アパートに訪れた朋子は、彼と頼子の出迎えを受けるが、その様子をドア越しにうかがう男がいた。男は虐殺事件を追う刑事・北野で岩手県の署内に戻ると、「頼子を引き取った味沢が自衛官の元特殊工作隊隊員で、朋子が虐殺事件で殺された登山客の妹であること」を上司に報告する。複雑に絡んだ事件は大場、警察、自衛隊を巻き込み、事故の真相を調べようとする味沢は朋子、頼子と共に命を狙われ始める。

特殊工作隊と山岳行動訓練について[編集]

作中に登場する自衛隊の特殊工作隊[3]とは、自衛隊の中でも特に厳しい対ゲリラ戦を想定した訓練により戦闘力の高いエキスパート集団である。特殊工作隊は存在そのものが極秘事項なため、政府や自衛隊のごく限られた人のみが知るだけで、基本的に一般人はその存在を知らない。

特殊工作隊が行う山岳行動訓練とは、ヘリから一人ずつ山岳地帯の無作為な場所に降ろされた後、所定の目的地まで自分の力だけでたどり着くという訓練。実施期間が約1ヶ月であっても事前に渡される食料は3日分で、飢えや孤独、野生動物との対峙なども自力で乗り越えるという過酷なものとなっている。前述の通り特殊工作隊は機密事項なため、この訓練期間中も一般人との接触は禁止されている。

出演者[編集]

主要人物[編集]

自衛隊の特殊工作隊員。生前の越智美佐子と会っている。虐殺事件から1年後羽代市に転居し保険外交員となり頼子を養女として迎え、育ての父となる。自身が保険契約を担当した顧客の女性が事故死をするが、不審に思い調査にあたる。
虐殺事件で唯一生き残った少女。目の前で両親が殺されたショックで事件当時の記憶を失くすが、その後短時間後の予知などの超感覚的知覚(超能力)の力が目覚める。事件直後に親戚に預けられるが、1年後岳史と暮らし始め実の父のように慕う。

味沢と関わる主な人たち[編集]

  • 越智朋子(妹)・越智美佐子(姉)(二役):中野良子
朋子は羽代新報の記者。美佐子は冒頭で登山に訪れた時に運悪く虐殺事件に巻き込まれる。数年前に両親を事故により亡くしている。同僚の事故死に疑いを持ち、数日後味沢と知り合い一緒に調査をするようになる。
宮野署の捜査課。虐殺事件の捜査にあたり、味沢が事件に関わっていると疑い事件直後に自衛隊を辞めた彼を調べ始める。その後羽代市に訪れて単独で捜査を続け、味沢を逮捕することに執念を燃やす。
大場グループの会長。多岐にわたる事業を展開し羽代市の発展に貢献してきた大物。味沢の上司によると羽代市の住民の約8割の人が大場グループの恩恵を受けているとのこと。子供の剣道教室の指導などもしており、市民に慕われている。
一成の息子。姉が3人おり自身は末っ子。姉たちとは違い、一成から跡取りとして溺愛されている。学校を出たばかりで今は一成の会社で見習いをしているが、夜は暴走族のリーダーとして暴走行為などをしている。

自衛隊・政府関係者[編集]

特殊工作隊のリーダー。日々の訓練や冒頭の事件で隊員たちを取り仕切る。味沢を信頼しており、上官に「味沢の除隊は自分が責任を持ちます」と告げて除隊させた。
特殊工作隊の顧問。特殊工作隊の訓練の状況を見ながら監督する立場の皆川に助言を与える。
陸上自衛隊奥羽総監部の幹部。味沢が除隊しようとした時に引き留める。
陸上自衛隊奥羽総監部のトップ。一成の功績を称えるパーティーに訪れる。部下の皆川たちに指示を出す。
冒頭の立てこもり事件の対策本部に訪れ、上役からの決定を受けて特殊工作隊投入を指示する。
ゲリラたちが米大使山荘で人質事件を起こしたため、特殊工作隊を派遣するよう総理に決断を迫る。
演習場の小屋の中から自衛隊のヘリ本隊の隊員と無線で連絡を取り合う。

警察関係者[編集]

宮野署の捜査課。過疎の村で起きた大量虐殺事件の捜査にあたる地元の刑事。
宮野署の署長。虐殺事件の捜査に村長警部たちと訪れて被害状況を聞く。
宮野署の捜査課。虐殺事件の捜査にあたり、犯人の意図や行動を推理する。
羽代署の刑事。自動車沈没事故死の捜査にあたる。
冒頭の裏磐梯の米大使山荘で起きた立てこもり事件について野村に状況を説明する。

羽代市で働く味沢と朋子の仕事関係者[編集]

保険会社の味沢の上司。味沢の顧客が保険契約10日後に事故死したことに疑問を持つ。
保険会社の味沢の部下。新規の契約をするため味沢と2人で民家を周って飛び込み営業をする。正体は自衛隊の特殊工作隊員で、除隊した味沢の監視役であった。
羽代新報の社員。朋子が仕事を始めたきっかけや同僚の事故死について味沢に伝える。
羽代新報の社員。新聞を印刷する輪転印刷機の作業を担当。
  • たちかわ
羽代新報の記者。朋子の同僚。冒頭で車ごと湖に沈み事故死している。朋子によると大変慎重な性格。

頼子と関わる人たち[編集]

頼子の父。頼子の目の前で犯人に斧で殺されてしまう。
頼子の学校での様子で彼女の予知能力などを心配して味沢に助言する。
頼子が通う学校の教師。家族が殺される所を間近で見た頼子が当時の記憶を失くしたため心配する。
頼子の親戚。5人の幼子を抱え貧しい生活をしている。事件直後1人だけになった頼子を引き取る。
東京のとある大学で記憶障害の研究をしている。頼子の不思議な力を調べ味沢に結果を説明する。

一成の関係者[編集]

建設業者中戸組の幹部。前科持ち。亡くなった妻・あけみの保険金が支払われないため味沢に凄む。
中戸組の長。一成のボディガード的存在で、彼とよく行動を共にしている。
中戸組の息がかかるクラブで見張りを担当。味沢に余計なことを言ったひろみに焼きを入れる。
一成の次女の婿。羽代交通社長。
一成の三女の婿。羽代新報社長。

その他の主な人たち[編集]

革命家。冒頭で仲間と共にアメリカ大使家族を人質に取り、日本首相と面会させることを要求する。
ゲリラの首領と共に米大使の山荘を占拠し、米大使家族を人質に取る。
虐殺事件の生存者である頼子の健康状態を診察して、特に怪我もなく問題ないと診断する。
羽代市の市長。大場家のパーティに訪れたり一成と共に自衛隊の演習を空から見学する。
羽代市内の河川敷近くの古い自宅で暮らす。自動車沈没事故死の調査をする味沢と出会う。
味沢の保険契約者の女の仕事仲間。生命保険の支払調査に来た味沢と会話する。
八戸市のバー。刑事から八戸駐屯地の自衛隊員だった味沢についての聞き込みを受ける。
八戸市で働く。刑事から八戸駐屯地の自衛隊員だった味沢についての聞き込みを受ける。
成明の暴走族仲間。味沢たちにバイクで取り囲んで脅したり、暴力を振るって襲いかかる。

その他の人たち[編集]

飛び込み営業で保険を売り込みに来た味沢に冷たく対応する。
冒頭で政府や自衛隊関係者などごく少数しか知らない特殊工作隊や、その訓練内容を説明する。

スタッフ[編集]

製作[編集]

野性軍団[編集]

自衛隊員役のエキストラ(「野性軍団」と呼ばれた)を一般から募集した[6]。100メートルのウサギ跳びやフィールドアスレチック競技などによる選考を行い、全国から200人が選ばれた[6]。合格者には、アメリカへの旅費と小遣い10万円が支給された[6]。頭を五分刈りにした野性軍団は、千葉県にある陸上自衛隊・第1空挺団への体験入隊を経た後渡米し、キャンプ・ロバーツでの撮影に臨んだ[6]

逸話[編集]

  • 1978年9月29日の20:00からフジテレビ系「金曜ファミリーアワー」の番組枠で「野性の証明スペシャル ネバー・ギブアップ! 決死の上陸大作戦!」という映画公開直前スペシャル番組が制作され放送された。出演者は高倉健、中野良子、薬師丸ひろ子、夏八木勲、松方弘樹、角川春樹。またその1週間後の同年10月6日には、「ゴールデン洋画劇場」(当時は金曜21:00 - 22:54)で本作公開を記念し、『人間の証明』を20:00 - 22:48の拡大版で放送した。
  • 1979年12月14日にフジテレビの「ゴールデン洋画劇場」枠で地上波初放送されたが、「完全ノーカット」との宣伝にも関わらず約20ヶ所の音声が削除された。削除されたのは「部落」という語だが、本作では単に「集落」の意味合いであり、「被差別部落」のことではない。近年の地上波放映(主に深夜放送)では、「部落」という台詞箇所はノーカットでオンエアされている。
  • 劇中で自衛隊員が使用している自動小銃はAR-18で、実際には現在自衛隊で使用されている89式小銃を開発するための参考には使用されたが、当時から現在に至るまで正式採用されたことはない。この映画がアメリカ本土で実銃や本物の戦車を用いて撮影されたため、自衛隊で制式採用されていた64式小銃に形状が近いAR-18を使用することになった。
  • オープニングの特殊部隊訓練で隊員たちが「レンジャー」と叫んでいるが、実際の陸上自衛隊のレンジャー訓練においても同様に「レンジャー」と呼称するように指導されている。
  • 2000年にDVD版、2011年にDVDデジタル・リマスター版、2012年にBlu-ray Disc版がリリースされている。

主題歌[編集]

作詞:山川啓介/作曲・編曲:大野雄二

テレビドラマ[編集]

1979年、角川春樹事務所・毎日放送の企画、毎日放送・東映の制作で、「森村誠一シリーズII」として全国放映(関東地区はTBS)。

  • DVDが2010年9月21日に発売された。
  • 放映期間:1979年1月6日 - 1979年3月31日
  • 放送時間:毎週土曜日 22:00 - 22:55
  • 主題歌:「戦士の休息」町田義人

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

視聴率[編集]

第1回12.3%、第2回11.1%、第3回9.5%、第4回9.6%、第5回10.6%、第6回9.8%、第7回9.5%、第8回10.9%、第9回10.7%、第10回11.3%、第11回16.1%、第12回13.2%、最終回12.7%[7][要ページ番号]

原作、映画版との差異点[編集]

  • 主人公・味沢は自衛隊出身者ではない。ストーリーに自衛隊は一切登場しない。
  • 風洞(原作では風道)集落の大量殺人事件の真相と味沢の生い立ちの謎解きが主テーマ。
  • 越智朋子殺害の経緯と犯行自体の大場一族の関与が異なる。
  • 大場一成は映画版のような地方帝国確立をもくろむ人物ではなく、典型的な悪人。長男・成太にある程度権力を移譲していた。
  • 味沢の過去を追うのは北野刑事ではなく村長刑事。北野は村長の助手的立場。
  • 羽代市は映画版ほど大場の支配度は強くなく、羽代署も一部をのぞいて公正な捜査を行う。

前後番組[編集]

TBS 土曜22時台(当時は毎日放送の制作枠。一部地域を除く)
前番組 番組名 次番組
森村誠一シリーズII・野性の証明

コミカライズ版[編集]

1978年11月8日東京スポーツ新聞社より田丸ようすけによる本作のコミカライズ版が発行された。

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 中川右介『角川映画 1976-1986 日本を変えた10年』KADOKAWA、2014年、280頁。ISBN 978-4-04-731905-9
  2. ^ 40周年記念映画祭開催!角川映画はいかにして昭和後期の日本映画界を改革していったか?(前編)”. シネマズ. 松竹 (2016年7月23日). 2016年8月12日閲覧。
  3. ^ 架空の部隊。
  4. ^ 鉄腕脚本家 高田宏治|作品解説1/ラピュタ阿佐ケ谷
  5. ^ 緊急追悼連載! 高倉健 「背中の残響」(5)“夏八木抜き”の演出を進言
  6. ^ a b c d 冷泉さとし「「野性の証明」アメリカ・ロケ 体験ルポ」、『キネマ旬報1978年昭和53年)9月上旬号、キネマ旬報社1978年、 102 - 105頁。
  7. ^ 「テレビ視聴率季報(関東地区)」ビデオリサーチ。

外部リンク[編集]