実録 私設銀座警察
| 実録 私設銀座警察 | |
|---|---|
| 監督 | 佐藤純彌 |
| 脚本 |
神波史男 松田寛夫 |
| 製作 | 永田雅一 |
| 出演者 |
安藤昇 渡瀬恒彦 藤浩子 中村英子 郷鍈治 室田日出男 葉山良二 待田京介 梅宮辰夫 |
| 音楽 | 日暮雅信 |
| 撮影 | 仲沢半次郎 |
| 編集 | 長沢嘉樹 |
| 製作会社 | 東映東京撮影所[1] |
| 配給 | 東映[2] |
| 公開 |
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| 上映時間 | 94分[3] |
| 製作国 |
|
| 言語 | 日本語 |
実録・私設銀座警察(じつろく・しせつぎんざけいさつ)は、1973年(昭和48年)7月4日に公開された日本映画[4][5][6][7]。東映東京撮影所製作[1]、配給東映[1]。
昭和21年(1946年)から25年(1950年)の復興著しい銀座を舞台に暴力団の拡張戦争を描いた実録映画の一本で[8]、戦後の混乱と復興の中、生きんがために自然発生的に生まれた暴力グループの興亡をリアルに捉えた日本製フィルム・ノワール[2][5][6][7][9]。公開時『映画時報』1973年10月号の本作の紹介に「当時の実話にもとづいて映画化された」と書かれているが[8]、佐藤洋笑は「"実録"という看板には大きな偽りがある。高橋輝男率いる大日本興行(私設銀座警察)の逸話から断片的なキーワードのみが取り入れられたまったくのフィクション」と述べている[9]。
あらすじ
[編集]昭和21年。三国人や米兵がのさばるようになった新橋の闇市で、博徒・宇佐美義一、元伏龍特攻隊員・池谷三郎、復員兵・岩下敏之、樋口勝らは、鬱憤を晴らすために「私設銀座警察」なる暴力グループを結成した。銀座にて三国人が住む集落を襲撃した事件の後、退役兵である渡会菊夫を鉄砲玉として銀座を仕切っていた中根兄弟との抗争に勝利し、銀座の裏社会の顔役となる。しかし、池谷と宇佐美がシノギのことで中国人と公団職員が経営するキャバレー絡みの利権から内部抗争を起こし、「私設銀座警察」は暴力とセックスにまみれた破滅の道を歩んでいく[1][8]。
キャスト
[編集]- 池谷三郎:安藤昇
- 渡会菊夫:渡瀬恒彦
- 京子:藤浩子
- 金子善江:中村英子
- 中根順:郷鍈治
- 岩下敏之:室田日出男
- 三好:近藤宏
- 福山:内田朝雄
- パンパン:渡辺やよい、小林千枝
- 二条華子:碧川ジュン
- 長谷川ミツ:森みつる
- 芸者:松井康子
- 篠悦子:森秋子
- 斉藤実:田口計
- 倉田陽吉:日尾孝司
- 関博:小林稔侍
- 木島敏也:滝波錦司
- 藤井猛:中田博久
- 岡村文吾:堀田真三[10]
- 春日昭造:北川恵一
- 小寺安夫:佐藤晟也
- 黒木俊太郎:団巌
- 三国人:伊達弘
- 飲み屋の親父:植田灯孝
- 刑事:相馬剛三
- 銀座警察子分:木川哲也
- 三国人:久地明
- 小野徳次:花田達
- 三国人:佐川二郎
- 銀座警察子分:太古八郎
- 刑事:山浦栄
- 銀座警察子分:清水照夫、溝口久夫
- 橋本典男:宮地謙吾
- 波島健助:沢田浩二
- 刑事:五野上力
- 馬場勇作:須賀良
- 三国人:高月忠
- パンスケ:谷本小代子、三上深雪、亀井和子
- 胴元:滝島孝二
- 銀座警察子分:桐島好夫
- 芸者:高野恵子、宮崎あかね、竹村清女、岡田奈津子
- 外人兵:オスマン・ユセフ、フレッド・ボサード、バート・ヨハンソン、ナポレオン・ホンセカー、ストロング・イマリティー
- ウィリー:ウイリー・ドーシー
- 憲兵:チャールズ・スミス、シロムス・デェビッド、ダビド・アンソン、ジョニー・エスリジ
- 宇佐美義一:葉山良二
- 中根譲:待田京介
- 樋口勝:梅宮辰夫
スタッフ
[編集]製作
[編集]実録路線
[編集]1973年の東映正月映画第二弾『仁義なき戦い』の予想外の大ヒットで、岡田茂東映社長は任侠路線を打ち切り、急速に実録路線への転換を進めた[11][12][13][14][15]。このため1973年に当初は全く製作予定のなかった実録映画、『仁義なき戦い』の続編、『山口組三代目』安藤組の続編などを、どんどんラインナップに入れた[16][17][18][19]。この決定により、実録路線でない映画は延期されたり、製作中止された[17][20]。この路線変更で、スターも新旧交替した[17]。本作の製作確定のアナウンスがあったのは1973年5月17日に東映本社であった記者会見の席だった[21]。佐藤純彌監督は「当時、実録路線が成功していましたけど、まだきれいごとみたいな部分があって、実際はもっと凄いんだ、というところを映画にしようとしたんだ」などと述べている[22]。
企画
[編集]企画は東映の社員プロデューサー・吉田達[4][23][24]。佐藤監督は「多分プロデューサーが、『私設銀座警察』という名前(題名)だけ会社に提出して企画を通して、後はこちら任せといった感じだったように思います。この時期の企画をいい加減なものが多かったですから(笑)」などと述べている[24]。銀座警察を題材とする映画は、佐藤監督にとっては、1967年の『続・組織暴力』、1969年の『組織暴力 兄弟盃』に続いて三作目になる[24]。「私設銀座警察」という名前は『夕刊読売』1950年3月9日付で初めて用いられたとされており[25]、東映の命名したタイトルではない。
脚本
[編集]ノンクレジットながら実際は安藤昇の原作があり[22]、脚本は勝手に作り変えたという[22]。脚本の神波史男と松田寛夫が「混沌を描きたい」と言い出したが、佐藤監督は「映画で混沌を描くのは難しい」と感じていた。二人が書いてきたホンは混沌ではなく混乱のように思えた。それで3人で旅館に籠り1カ月かけてホンをまとめた[24]。佐藤と神波は日比谷高校の同級生で、好き勝手言い合える仲[24]。佐藤は神波は屈折しているところが面白いと評価していた[24]。3人は同世代で馬が合ったという[24]。銀座警察を題材とした前二作に比べると主人公が途中であっさり死んだり、ストーリーが意表を突きまくるもので、ラストはヤクザと芸者衆たちの乱交パーティ[9][24]。ボカシが入りまくるため、梅宮辰夫を始め、男女の役者のヘアや局部が映っているものと見られる[24]。裸踊りをする太古八郎(たこ八郎)が目立つが、宇佐美義一(葉山良二)が芸者を強姦するシーンで「大陸戦線で…36人突きの腕前見せてやる」と言う。佐藤は「今だと映倫に引っ掛かってしまうでしょうし、今(2018年)のTV局主体の製作状況では、もうああいう描写は出来ないでしょう。映画はいわゆるヤクザ映画のルーティンからどれだけ外れるかという実験だったんです。この時期、もうヤクザ映画が嫌になっていた。やけっぱちな気持ちが、こういうものをやってみようという風に繋がった」などと述べている[24]。
撮影
[編集]佐藤は「戦後、日本が新生していく生みの苦しみの中から派生していく悪夢のような混沌を、蓋をせずに描いてみた」と述べている[4][24]。当時の東映は勢いがあり[22]、「好き勝手にやらせてくれた」という[22]。1:00頃、樋口勝(梅宮辰夫)が「なんせ天〇陛〇が毛唐の大将に尻尾振る世の中だからよ」という。逮捕された斉藤実(田口計)が、築地警察署と看板を掲げた建物から出てくるシーンがある。後半、福山(内田朝雄)が天ぷらで揚げられた後、豚小屋で豚に喰われるシーンは[9]、2018年の『孤狼の血』の冒頭シーンにオマージュとして使用されている[24][26]。
宣伝
[編集]キャッチコピー
[編集]- 「銀座暗黒史の厚い壁に埋もれた暴力《地雷原》をいっきにえぐる!」[25]。
作品の評価
[編集]批評
[編集]- 佐藤監督は「公開当時はみんなから『相当ひどい』と言われた」と述べている[22]。
- 本作はカルト映画化しており[22]、名画座等で上映される機会も多く、その都度盛況といわれる[24]。『映画秘宝』は「黒い肌の子どもをフルスイングで窓から放り投げ、女をブロックで撲殺すると陰惨なアバンタイトル。朝鮮人差別、売春などえげつない描写の連続で、終戦戦後の日本の混沌を描く。ヒロポン中毒になった渡瀬恒彦は冒頭から衝動殺人や暗殺を繰り返し、ラストで胃潰瘍で大量出血し血塗れになりながら死んでいくナチュラル・ボーン・キラーぶりを見せる。東映実録路線の極北で、体調にいいときにしか見れない」などと評価している[9][22]。
- 安藤昇は途中退場してしまう役ながら「自分が出演した中で一番面白かった」と発言している[24]。
- 野村正昭は「残酷ショットのオンパレードで、佐藤監督のフィルモグラフィの中でも最も異彩を放つ代表作」と評している[24]。
- 増當竜也は「『仁義なき戦い』が公開された同じ年にヤクザ映画のとどめを刺す作品が作られていたという事実は、強く訴えておきたい」などと評している[24]。
同時上映
[編集]関連項目
[編集]出典
[編集]- 1 2 3 4 杉作J太郎、植地毅「第2章 拡大する東映実録映画の世界 【作品紹介】実録 私設銀座警察」『東映実録バイオレンス 浪漫アルバム』徳間書店、2018年、80-83頁。ISBN 978-4-19-864588-5。
- 1 2 “実録私設銀座警察”. 日本映画製作者連盟. 2026年4月25日閲覧。
- ↑ “実録・私設銀座警察”. Japan Search. 2022年12月28日閲覧。
- 1 2 3 逝ける映画人を偲んで 2019-2020 17 実録 私設銀座警察 - 国立映画アーカイブ
- 1 2 実録・私設銀座警察 - 東映ビデオ
- 1 2 実録私設銀座警察 - 東映チャンネル
- 1 2 実録 私設銀座警察 - WOWOW
- 1 2 3 「内外映画封切興信録」『映画時報』1973年10月号、映画時報社、41頁。
- 1 2 3 4 5 江澤隆志・田野辺尚人他「実録やくざ映画大全」『映画秘宝』、洋泉社、2013年、96–97頁、ISBN 978-4-86248-984-5。
- ↑ 第113回 堀田眞三が語る!伝説の漢 安藤昇とは?【俳優 堀田眞三】 – 英雄星チャンネル
- ↑ 岡田茂『波瀾万丈の映画人生 岡田茂自伝』角川書店、2004年、220-227頁。ISBN 9784833425681。
- ↑ 野地秩嘉「第十章 実録映画の衰退と和製カラテ映画」『東映の仁義なき戦い 吹けよ風、呼べよ嵐』プレジデント社、2025年、162-163頁。ISBN 4-04-883871-7。
- ↑ 俊藤浩滋、山根貞男『任侠映画伝』講談社、1999年、227-246頁。ISBN 4-06-209594-7。
- ↑ 春日太一『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』文藝春秋、2013年、324-325頁。ISBN 4-1637-68-10-6。
- ↑ 多田憲之 (2022年). “第3回〝不良性感度〟という二代目社長岡田茂のビジョン 映画は死なず 実録的東映残俠伝― 五代目社長 多田憲之が見た東映半世紀 1972~2021― 文=多田憲之(東映株式会社代表取締役会長)p.1-2”. コモ・レ・バ?. CONEX ECO-Friends. 2022年1月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年4月26日閲覧。
- ↑ 「東映三月までの決定番組実録ものに全力を注入!」『週刊映画ニュース』全国映画館新聞社、1973年2月3日、4面。
- 1 2 3 日本シナリオ作家協会 編「作品解説 文・鬼頭麟平」『年鑑代表シナリオ集 '73』ダヴィッド社、1974年、316頁。
- ↑ 「藤純子が引退して一年 鶴田浩二と高倉健も東映映画から消える? 東映王国に何が起きたのか カギ握る俊藤プロデューサー 鶴田や健さんがポルノ、劇画路線に追われるなんて!」『週刊明星』1973年3月11日号、集英社、193-195頁。
- ↑ 「東映五、六月の確定番組 俊藤参与今後方針語る」『週刊映画ニュース』全国映画館新聞社、1973年4月21日、4面。
- ↑ 「映画界東西南北談議 粒揃いの各社の企画ラインアップ」『映画時報』1973年3月号、映画時報社、34頁。
- ↑ 「東映六ー七月の確定番組発表 若山久しぶりの東映作出演」『週刊映画ニュース』全国映画館新聞社、1973年5月26日、3面。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 「『男たちの大和/YAMATO』佐藤純彌ロング・インタビュー/佐藤純彌、この傑作を観ろ! 東映実録路線の極北 『実録・私設銀座警察』」『映画秘宝』2005年2月号、洋泉社、20–25頁。
- ↑ “【国立映画アーカイブ】上映企画「逝ける映画人を偲んで 2019-2020」開催のお知らせ 70名以上の映画人を偲ぶ追悼上映企画 文化庁”. PR TIMES (2021年7月5日). 2021年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年4月26日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 #佐藤「第6章 安藤昇の"脱"ヤクザ映画 渡瀬恒彦の怪演が光る混沌映画ー『実録・私設銀座警察』pp.163–166
- 1 2 江澤隆志・田野辺尚人他「実録やくざ映画大全」『映画秘宝』、洋泉社、2013年、7頁、ISBN 978-4-86248-984-5。
- ↑ 森直人 (2021年9月11日). “1【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画評論家・森直人】”. 映画『孤狼の血 LEVEL2』公式note /note. note. 2026年4月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年4月26日閲覧。
- ↑ 浦上信之 - 任侠大辞典 YAKUZA WIKI
- ↑ 高橋輝男 - 任侠大辞典 YAKUZA WIKI
参考文献
[編集]- 佐藤純彌著 聞き手・野村正昭・増當竜也『映画監督 佐藤純彌 映画よ憤怒の河を渉れ』DU BOOKS/ディスクユニオン、2018年。ISBN 978-4-86647-076-4。