悪魔の飽食

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悪魔の飽食
(あくまのほうしょく)
①悪魔の飽食 「関東軍細菌戦部隊」恐怖の全貌! 長編ドキュメント
②続・悪魔の飽食 「関東軍細菌戦部隊」謎の戦後史衝撃のフィクション
③悪魔の飽食 第三部
④〈悪魔の飽食〉ノート
⑤ノーモア悪魔の飽食
著者 森村誠一
発行日 [第1部]1981年11月
[文庫版]1983年6月2日
[Kindle版]2012年10月1日
[第2部]1982年7月
[文庫版]1983年8月3日
[Kindle版]2014年1月8日
[第3部]1983年8月
[文庫版]1985年7月30日
[Kindle版]2014年1月8日
[ノート]1982年5月
[ノーモア]1984年1月
発行元 光文社角川書店晩声社
ジャンル 歴史
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 新書文庫単行本電子書籍
ページ数 [第1部]246頁
[文庫版]311頁
[第2部]227+5頁 図版16枚
[文庫版]263頁
[第3部]235頁
[文庫版]280頁
[ノート]237頁
[ノーモア]267頁
公式サイト 第1部
第2部
第3部
コード [第1部]ISBN 978-4-334-02451-2
[文庫版]ISBN 978-4-04-136565-6
[Kindle版]ASIN B009GPM8LE
[第2部]ISBN 978-4-334-02477-2
[文庫版]ISBN 978-4-04-136566-3
[Kindle版]ASIN B00HEB8XSE
[第3部]ISBN 978-4-04-770299-8
[文庫版]ISBN 978-4-04-136573-1
[Kindle版]ASIN B00HEB8X20
[ノート]ISBN 978-4-89188-110-8
[ノーモア]ISBN 978-4-89188-131-3
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悪魔の飽食』(あくまのほうしょく)は、小説家の森村誠一日本共産党機関紙の「赤旗」の記者(現在の「しんぶん赤旗」)で日本共産党員[1][2]下里正樹との共同取材に基づいて、関東軍731部隊を扱かった作品である。第1部1981年(昭和56年)に『しんぶん赤旗』日刊紙版に、第2部1982年(昭和57年)に『しんぶん赤旗日曜版』に連載され、二冊は光文社から単行本として刊行された。第3部1983年(昭和58年)に角川書店の「カドカワノベルズ」から単行本として刊行された。

概要[編集]

1981年(昭和56)の5月に、常石敬一海鳴社から『消えた細菌戦部隊』を刊行していた[3][4][5]が、有名出版社から、推理作家として名が知れていた森村の名前で出た本著以降、731部隊に関する賛否さまざまな視点からの著作が発表される事となる。本著を元にした、混声合唱組曲(池辺晋一郎作曲)・劇も作られ、この劇を元に中国では映画が制作された。著者の森村誠一は写真を誤用していたことについて、「誤用はしたが内容は真実であると、徹底的な取材を踏まえて私は自信があった。マスメディアも内容についてはほとんど言及しなかった」[6]、「捏造ではありません。すでに多数の読者および学者、研究者、作家等、また多数の現地中国人たちによって確認、証明されています」と述べている[7]中川八洋は「ノンフィクション作品」ではなく、「プロパガンダ小説」であると批判している[8]

書誌情報[編集]

単に『悪魔の飽食』と呼ぶ場合は第1部を指す。続編である『続・悪魔の飽食』は第2部を指す。第1部と第2部は最初、光文社から出版された。その後、角川文庫に収録された第1部と第2部は光文社版から改訂されているので新版と呼ばれる。第3部は『悪魔の飽食 第三部』として、最初、カドカワノベルズとして出版され、その後、角川文庫に収録された。『〈悪魔の飽食〉ノート』はノートと略記する。『ノーモア悪魔の飽食』はノーモアと略記する。

『悪魔の飽食』分類表
略称 出版社 シリーズ 書名 副書名
第1部 光文社 カッパ・ノベルス 悪魔の飽食 「関東軍細菌戦部隊」恐怖の全貌! 長編ドキュメント
角川書店 角川文庫 新版 悪魔の飽食 日本細菌戦部隊の恐怖の実像!
第2部 光文社 Kappa novels ドキュメントシリーズ 続・悪魔の飽食 「関東軍細菌戦部隊」謎の戦後史衝撃のノンフィクション
角川書店 角川文庫 新版 続・悪魔の飽食 第七三一部隊の戦慄の全貌!
第3部 角川書店 カドカワノベルズ 悪魔の飽食 第三部
角川書店 角川文庫 悪魔の飽食 第三部
ノート 晩声社 〈悪魔の飽食〉ノート
ノーモア 晩声社 ノーモア悪魔の飽食

第1部[編集]

ノート[編集]

  • 森村誠一 『〈悪魔の飽食〉ノート』 晩声社、1982年5月。ISBN 978-4-89188-110-8 - 関東軍防疫給水部略歴:pp.230-235。

第2部[編集]

  • 森村誠一 『悪魔の飽食』続、光文社〈Kappa novels ドキュメントシリーズ〉、1982年7月。ISBN 4-334-02477-7 - 「続」編の副書名:「関東軍細菌戦部隊」謎の戦後史衝撃のノンフィクション。
  • 森村誠一 『新版 悪魔の飽食』続、角川書店〈角川文庫 5476〉、1983年8月3日ISBN 978-4-04-136566-3 - 「続」編の副書名:第七三一部隊の戦慄の全貌!
    • 森村誠一 『新版 悪魔の飽食 第七三一部隊の戦慄の全貌!』続、角川書店〈角川文庫〉、1994年、改訂新版。ISBN 978-4-04-136566-3 - 改訂新版。
  • 森村誠一 『新版 続・悪魔の飽食 第七三一部隊の戦慄の全貌!』続、KADOKAWA〈角川文庫〉、2014年1月8日、Kindle版。ASIN B00HEB8XSE - 「続」編の副書名:第七三一部隊の戦慄の全貌!

第3部[編集]

  • 森村誠一 『悪魔の飽食』第3部、角川書店〈カドカワノベルズ〉、1983年8月。ISBN 978-4-04-770299-8 - 正、続の出版者:光文社。
  • 森村誠一 『悪魔の飽食』第3部、角川書店〈角川文庫 6110〉、1985年7月30日ISBN 978-4-04-136573-1 - 折り込図1枚:関東軍防疫給水部本部施設全図。
  • 森村誠一 『悪魔の飽食 第三部』第3部、KADOKAWA〈角川文庫〉、2014年1月8日、Kindle版。ASIN B00HEB8X20

ノーモア[編集]

批判[編集]

不正確な写真掲載と改版[編集]

元隊員であったという人物から提供されたとする写真を、新発見のものとして第2部の単行本に収録したところ(初出紙にはその写真は載っていない)、その一部が別の事件(20世紀初頭の「満洲」におけるペスト流行のときの写真であった)の写真であることが判明した。森村自身も「提供写真への混入」として、写真に偽物が含まれていたことを認めている。この問題により光文社版は続刊を含むすべての版が回収され、絶版となった。その結果、第3部と、第1部第2部の改訂版が、問題の写真を削除した上で、角川書店より新たに出版されることとなった[9][10][11][12]2014年(平成26年)時点ではKADOKAWAから電子書籍版も販売されている[13][14][15]

人体実験の信憑性に対する疑問[編集]

現在では常石敬一[3][4][5]松村高夫青木冨貴子[16][17]等によって731部隊の全貌が徐々に明らかにされており、731部隊の細菌戦研究や人体実験そのものを否定しようとする歴史学者は存在しないものの、以下に示す項目などを根拠として、『悪魔の飽食』の信憑性に疑いを持つ者も一部で存在する。秦郁彦は、自著の中で731部隊による細菌戦研究や人体実験の事実を認めつつも、『悪魔の飽食』を、小説とノンフィクションがごちゃ混ぜになった作品と評している[18]

  • 関係者はすべて匿名であり、その証言の裏付けがとれない。
  • 731部隊に関する資料をアメリカが回収し、米国立公文書館が細菌戦研究などに関する米情報機関の対日機密文書10万ページ分を公開したが、裏づけとなる資料はまだ見つかっていない。[19][20]
  • 戦後のハバロフスク裁判で発言の信憑性自体が研究者から批判されている[21]
  • 真空室にほうり込み、内臓が口、肛門、耳、目などからはみ出し破れる様子を記録映画に撮る。→宇宙開発での実験により、このようなことは起きない事がわかっている[22][23][24]。本記述を否定する実例として、ソユーズ11号の事故が存在する。

著者による反論など[編集]

一方、著者の森村誠一は写真の誤用について「元隊員から提供された第二部に使用した写真の中に、七三一部隊とは関係ない明治四十三(一九一〇)年から翌年にかけて中国東北部に流行したペストの惨状の写真が混入されていた。提供者は本物の資料と混ぜて提供したので、真贋見分けられなかったのである」と釈明し、「写真は誤用したが、内容は真実である」と反論[6]。「『悪魔の飽食』発刊後、三十余年後の今日に至っても、インターネット上に『悪魔の飽食』は贋作(がんさく)、模倣であるという書き込みが載っている。ネットの書き込みには署名がない。署名がない人間の言動や非難は、自分の言ったこと、行ったこと、書いたこと、他人の非難、中傷、妨害などについて一切責任を持たないということである。脅迫状の大半も匿名であった」と述べている[6]

森村は本書刊行後に右翼の街宣車から集団攻撃を受け、最大音量の拡声器で「国賊」「売国奴」「非国民」「日本から出て行け」と罵声を浴びせられた[6][25]。また嫌がらせ電話や窓への投石を受けたほか、仕事場の玄関の扉に赤いペンキをぶちまけられ、抗議文や脅迫状を山のように送りつけられたという[6][25]。森村は「ペンの暴力団」「拝金主義者」「悪魔」などと匿名の投書で誹謗されたのをウェブサイトで紹介し、「あなたのように匿名で他人を中傷する人が、ペンの暴力団です」「匿名、住所を秘匿する人は、他人を中傷、攻撃するだけで、自分の言動、その結果等に責任を負いません。責任を負わない人は卑怯です」と反論している[7]

脚注[編集]

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  1. ^ 後に日本共産党から除名処分
  2. ^ 「下里正樹元赤旗記者の規律違反の内容について」『赤旗評論特集版』926号、1994年10月24日
  3. ^ a b 常石 (1981)
  4. ^ a b 常石 (1989)
  5. ^ a b 常石 (1993)
  6. ^ a b c d e 回想~悪魔の飽食~卑怯な匿名
  7. ^ a b 匿名、住所秘匿した手紙
  8. ^ 中川八洋「『悪魔の飽食』は旧ソ連のプロパガンダだった」、『正論』、産経新聞社、2002年11月、 276-287頁。
  9. ^ 森村 (1983a)
  10. ^ 森村 (1983b)
  11. ^ 森村 (1983c)
  12. ^ 森村 (1985)
  13. ^ 森村 (2012)
  14. ^ 森村 (2014a)
  15. ^ 森村 (2014b)
  16. ^ 青木 (2005)
  17. ^ 青木 (2008)
  18. ^ 秦 (1999a, p. 538)
  19. ^ 山本秀也 (2007年1月18日). “旧日本軍「細菌戦研究」 米が機密文書公開”. 産経新聞 (産経新聞社). オリジナル2007年1月18日時点によるアーカイブ。. http://blog.goo.ne.jp/think_pod/e/2bd852e3cc16c0c6cfa656106a65224b 2014年6月7日閲覧。 
  20. ^ Japanese War Crimes” (英語). The U.S. National Archives and Records Administration (2007年1月12日). 2014年6月7日閲覧。
  21. ^ Е.Ю. Бондаренко. «Судьбы пленных: Токийский и Хабаровский международные процессы над японскими военными преступниками и их последствия». Россия и АТР. 1993, No.1.小林昭菜「「シベリア抑留」研究の現状と課題」異文化 論文編 (11), 267-285, 2010-04 法政大学国際文化学部.
  22. ^ The Effect on the Chimpanzee of Rapid Decompression to a Near Vacuum, Alfred G. Koestler ed., NASA CR-329 (Nov 1965)
  23. ^ Experimental Animal Decompression to a Near Vacuum Environment, R.W. Bancroft, J.E. Dunn, eds, Report SAM-TR-65-48 (June 1965), USAF School of Aerospace Medicine, Brooks AFB, Texas.
  24. ^ Survival Under Near-Vacuum Conditions in the article "Barometric Pressure," by C.E. Billings, Chapter 1 of Bioastronautics Data Book, Second edition, NASA SP-3006, edited by James F. Parker Jr. and Vita R. West, 1973.
  25. ^ a b 悪魔の飽食【著者解説 2002/8/1】

関連文献[編集]

図書[編集]

記事[編集]

以下、発表された順に配置する。

  • 森村誠一、下里正樹「「悪魔の飽食」から「新・人間の証明」へ」、『文化評論』、新日本出版社、1982年1月、 192-206頁、 ISSN 0521-789X
  • 森村誠一「「悪魔の飽食」が読まれる状況は何か」、『』、潮出版社、1982年5月、 164-167頁。
  • 今崎暁巳「「悪魔の飽食」のしめすもの」、『民主文学』(201号) (通号 251)、日本民主主義文学会、1982年8月、 128-133頁、 ISSN 1342-5587
  • 平岡正明「満州貧民街における小悪魔の飽食」、『潮』、潮出版社、1982年9月、 77-104頁。
  • 中島誠「森村誠一/偉大な「悪魔の飽食」から遁走するベストセラー作家(続・現代虚人列伝)」、『現代の眼』第23巻第12号、現代評論社、1982年12月、 202-209頁、 ISSN 0435-219X
  • 森村誠一「私が知った「A氏」の正体――「続・悪魔の飽食」ニセ写真事件の全貌」、『文藝春秋』第61巻第1号、文藝春秋、1983年1月、 190-223頁。
  • 渡部昇一「「悪魔」と「天使」の間――森村誠一氏「私が知った『A氏』の正体」に対する疑問」、『文藝春秋』第61巻第2号、文藝春秋、1983年2月、 380-386頁。
  • 「「続・悪魔の飽食」ニセ写真事件を考える」、『文藝春秋』第61巻第2号、文藝春秋、1983年2月、 362-386頁。
  • 杉山隆男「ニセ写真で曝かれた出版スキャンダル――「悪魔の飽食」虚構の証明」、『諸君!』第15巻第2号、文藝春秋、1983年2月、 244-264頁、 ISSN 0917-3005
  • 中田建夫「"飽食"したのは誰だ」、『文藝春秋』第61巻第2号、文藝春秋、1983年2月、 362-378頁。
  • 森村誠一「「七三一部隊弁護論」への反論」、『諸君!』第15巻第3号、文藝春秋、1983年3月、 244-254頁、 ISSN 0917-3005
  • 「誌上対決 「悪魔の飽食」スキャンダル」、『諸君!』第15巻第3号、文藝春秋、1983年3月、 244-254頁、 ISSN 0917-3005
  • 杉山隆男「森村反論・虚構の証明」、『諸君!』第15巻第3号、文藝春秋、1983年3月、 255-263頁、 ISSN 0917-3005
  • Lilli Segal「ドイツにもあった"悪魔の飽食"――科学者よ,おごるなかれ」、『技術と人間』第21巻第3号、技術と人間、1992年3月、 27-36頁、 ISSN 0285-5186
  • ジョン・ウィリアムパウエル、下里正樹、松村高夫「悪魔の飽食 七三一部隊の黒い爪痕(鼎談)」、『金曜日』第5巻第33号、金曜日、1997年9月5日、 28-31頁。
  • 山崎薫「悪魔の飽食 七三一部隊」、『文献探索』、金沢文圃閣、1998年3月23日、 349-353頁。
  • 常石敬一「戦争 七三一部隊――森村誠一『悪魔の飽食 新版』」、『國文學』第46巻(13号) (通号 676)、學燈社、2001年11月、 66-71頁、 ISSN 0452-3016
  • 中川八洋「『悪魔の飽食』は旧ソ連のプロパガンダだった」、『正論』、産経新聞社、2002年11月、 276-287頁。
  • 田中嘉治「「日本人の良心の灯」をともす」、『人民中国』、人民中国雑誌社、2005年8月、 22-25頁、 ISSN 0449-0312
  • 森村誠一「'82 『悪魔の飽食』事件 街宣車20台、投石…「作家の使命」を知った」、『週刊現代』第51巻(14号) (通号 2518)、講談社、2009年4月11日
  • 片岡輝「次の世代への責任を持つということ――カンタータ「悪魔の飽食」を歌う意味と3・11原発事故」、『子どもの文化』第43巻第10号、文民教育協会子どもの文化研究所、2011年10月、 2-7頁。
  • 松村高夫「森村誠一『悪魔の飽食』の今日的な意味」、『語りの世界』第53号、語り手たちの会、 16-19頁、 ISSN 1345-9945
  • 根岸恵子「今夏、森村誠一氏とともにロシア公演 加害を歌い続ける「悪魔の飽食」合唱団」、『金曜日』第21巻第35号、金曜日、2013年9月13日
  • 斎藤美奈子「中古典ノスヽメ(第31回)旧日本軍の暗部を暴く:森村誠一『悪魔の飽食』(一九八一年)の巻」、『Scripta』第8巻第3号、紀伊國屋書店出版部、2014年Spr.、 2-4頁。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]