ヒッピー
ヒッピー(英: Hippie)とは、伝統・制度などの既成の価値観に縛られた人間生活を否定することを信条とし、また、文明以前の自然で野生生活への回帰を提唱する人々の総称。
1960年代後半に、おもにアメリカ(発祥地はサンフランシスコのヘイト・アシュベリー地区との説がある。ロス郊外のローレル・キャニオンとする説もある[1])の若者の間で生まれたムーブメントで、のちに世界中に広まった。彼らの多くは、自然と愛と平和とセックスと自由を愛していると主張した。
1960 - 70年代前半
- 「正義無きベトナム戦争」への反対運動を発端とし、愛と平和を訴え徴兵や派兵に反発した若者達がヒッピーの中心である。戦争に反対し、徴兵を拒否し、自然と平和と歌を愛し人間として自由に生きるというスタイルで、戦時下にあった全米で一大ムーブメントが起こった。初期は薬物による高揚や覚醒や悟りから出発し、各地にコミューンと呼ばれるヒッピー共同体が発生する。若者を中心に爆発的な人気を誇ったロックバンド「ビートルズ」によるインド巡礼やマリファナやLSDを使用した精神解放等により全米・そして世界へとそのムーブメントは広まっていくことになる。
- 彼らは伝統的な社会や制度を否定し、個人の魂の解放を訴えた。伝統的キリスト教的価値観を否定し、欧米においては東洋の思想・宗教が広く紹介され、その系統を引くカルト宗教が多数創設され、社会問題化した。モットーが "Back to nature" であったためにヒッピーの中には文明を否定して自然に回帰する者も現れ、現在の自然保護活動家の中にはこの系統を引く者も少なくない。しかし、ベトナム戦争の終結と薬物に対する取り締まりにより、1970年代前半頃から、徐々に衰えていく。
- 1960年代後半の日本においては、オリジナルのヒッピーという呼び名のほかに、新宿を中心に呼ばれた「フーテン」という呼称もあった。ただし、自らフーテンであったと自称する作家の中島らもは、「ヒッピーとフーテンは違う[2]」との自説を述べている。
- 思想を持ち、そのためのツールとしての薬物使用を是とするヒッピーに対し、「フーテンは思想がないんよ。ラリってるだけやん[2]」と評価し、ヒッピー・ムーブメントが生んだ文化のみを摂取してスローガンを持たなかった日本のフーテンと、ヒッピーとを同義化する風潮を批判すると同時に、「自由ほど不自由なものはないんだよ[2]」と述べ、ヒッピーの思想自体に懐疑的な立場を表明している。
ムーブメント退潮後から現在
- その後、1970年代半ば以降、ヒッピー・ムーブメントはいったん衰えた。やがて、1980年代後半(大きくは1990年代初期)に入って、1960年代回帰の風潮とともに、再びヒッピー的な傾向を持った新しい世代の若者が現れるに至って、ネオ・ヒッピーやトラヴェラーなどの呼称も生まれた。
- 日本では「団塊の世代」が伝統と制度の破壊を担うこととなり、学生運動の流れが各方面へ分散された。
- この思想・信条を旨としていた代表的な人物がスティーブ・ジョブズである。
- これらの新しい傾向のヒッピーは、レイヴ(おもに野外のレイヴ・パーティ)やアンダーグラウンドのクラブ、トランス(おもにサイケデリックトランス)、グランジロック等の文化とリンクした形で誕生し、1960年代ほどの思想性を伴った大きなムーブメントとはならなかったが、静かに広がりを見せて、現在に至っている。
- 1986年クリント・イーストウッド主演の映画作品『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』において、イーストウッド演ずるトム・ハイウェイ軍曹が放浪の若者に対しヒッピーの形容を用い、この事自体が時代遅れとして揶揄される場面がある。
対義語
英語圏では、ヒッピーの対義語として、スクウェア(スクエア)が使用されるのが一般的である。頭の固い者たち・上流階級・保守的な人々と解釈できる。ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのヒット曲に、「ヒップ・トゥ・ビー・スクエア」という曲もある。
ヒッピームーブメントに関連する項目
地名
- 北米
- カリフォルニア(アメリカ西海岸) - 現在でもヒッピーが多い。
- サンフランシスコ - 米国におけるヒッピームーブメントの中心地。
- ヘイト・アシュベリー(Haight-Ashbury) - 1960年代にヒッピーが多く集まった街。
- サンフランシスコ - 米国におけるヒッピームーブメントの中心地。
- ヨーロッパ
- オセアニア
- アジア(日本以外)
- カトマンズ(ネパール) - 俗にヒッピー三大聖地の一つ。
- カーブル(アフガニスタン) - 俗にヒッピー三大聖地の一つ。
- ゴア(インド西海岸) - 俗にヒッピー三大聖地の一つ、バックパッカーの沈没地、レイヴ、ゴアトランスでも有名。
- カオサン通り(タイ) - 重慶大厦とおなじくバックパッカーの聖地として有名。
- パンガン島 - Full Moon Partyが行われ、ヒッピーの聖地とされている。
- 重慶大厦(香港) - バックパッカーの聖地として知られる。
- 日本
- 長野県諏訪郡富士見町 - 日本のヒッピー文化の発祥の地
- 新宿 - 1960年代にヒッピーによく知られた喫茶店風月堂が新宿東口に存在した。
- 国分寺 - かつてヒッピーコミューンが存在し、「ほら貝」という店は国際的拠点でもあった。現在でもナチュラル系の店舗が多い。
- 西荻窪 - 短期間に終わった国分寺コミューンの崩壊後、ヒッピーらは主に中央線沿線各地に散らばっていった。その拠点のうちの一つに西荻窪の「ほびっと村」がある。
文化・芸術・思想・サブカルチャー
- アメリカン・ニューシネマ
- カウンターカルチャー
- ナチュラリズム、エコロジー、オルタナティブ
- ヒンズー教、東洋思想、瞑想、ヨーガ、ガイア仮説、シタール、ニューエイジ
- サイケデリック、サイケデリック・ロック
- ドラッグ、マリファナ
- ビート・ジェネレーション(ビートニク)、デカダンス、レトロヌーボー
- アンダーグラウンド (文化)
- サマー・オブ・ラブ、フラワーチルドレン
- ウッドストック・フェスティバル、モンタレー・ポップ・フェスティバル
- 前衛芸術、前衛音楽、前衛映画、前衛美術
- フリーセックス
- ホームレス、ホーボー
- 吟遊詩人、ジプシー、ボヘミアン、ボヘミアニズム
- ドラッグ、マリファナ
- フェミニズム、LGBT、ベジタリアン、菜食主義、反原発、有機農業、生協
- ヒッピー・トレイル、バックパッカー、ヒッチハイク
- ネオ・ヒッピー、トラヴェラー、レイヴ
- ドラッグ、マリファナ
政治運動
人物・グループ(文化・芸術・思想)
この項目では、ヒッピーとして行動した人、ヒッピー・ムーブメントに関わったか、影響を受けた人々、グループを記述している。
- アビー・ホフマン - 68年シカゴデモ
- アレン・ギンズバーグ - 詩人
- ウィリアム・バロウズ
- アンジェラ・デイヴィス
- ウィリアム・ブレーク
- ウォーレン・ベイティ
- オルダス・ハックスレー
- ケン・キージー - 小説家
- ゲーリー・スナイダー - 禅ヒッピー
- J・D・サリンジャー - 小説家
- ジェリー・ルービン - 68年シカゴデモ
- ジェーン・フォンダ - ベトナム反戦運動に参加。
- ジッドゥ・クリシュナムルティ - 俗にヒッピーたちの3大グルの一人(本人はグルであることを否定し、弟子や信奉者になることの危険性を説き続けた)
- ジャック・ケルアック - 小説家
- ジョージ・マクガバン - 民主党の反戦候補
- ジョン・シンクレア - 詩人。マリファナで逮捕され、ジョン・レノンらが解放を求めるコンサートを開いた。
- スティーブ・ジョブズ - アップル インコーポレイテッド共同創業者
- ティモシー・リアリー - サイケデリックの教祖として知られる思想家、元大学教授)
- チャールズ・マンソン - ファミリーを組み殺人事件を起こしていった。シャロン・テート殺人事件の主犯。
- デニス・ホッパー - 俳優。後に共和党員。
- ニール・キャサディ - ビートニクスと交流
- ピーター・フォンダ - 俳優。イージー・ライダーに出演。
- マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー - 俗にヒッピーたちの3大グルの一人
- ユージン・マッカーシー - 民主党の反戦候補
- ラルフ・ネーダー
- アンドレアス・バーダー - 後にドイツ赤軍リーダー。
- いしだ壱成
- 植草甚一
- 大島渚
- 小田実
- 北公次
- 今野雄二
- 芹明香 - アングラ劇団出身
- 竹中労
- 寺山修司
- ビートたけし
- 益戸育江
- 松田英子- 天井桟敷出身
- 山尾三省(屋久島)
- 横尾忠則
- 横山リエ
- 若松孝二
- 天井桟敷 - アングラ劇団の一つ。寺山修司が主宰した。
- ベ平連
- ななおさかき(ナナオサカキ)(伊豆、長野)
人物・グループ(音楽)
- ジョン・レノン
- ニール・ヤング
- ジェリー・ガルシア
- グレイトフル・デッド(ヒッピー・バンド)
- インクレディブル・ストリング・バンド(本物のヒッピー・バンド)
- オノ・ヨーコ
- カントリー・ジョー&フィッシュ
- クイックシルヴァー・メッセンジャー・サービス
- クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング
- ゴング_(バンド)
- ジェファーソン・エアプレイン
- ジャニス・ジョプリン
- ジョージ・ハリスン
- ジョニ・ミッチェル
- ジョン・セバスチャン
- スコット・マッケンジー
- デヴィッド・ピール - ジョン・レノンの友人
- ドアーズ
- ドノヴァン
- バフィー・セント・メリー
- ザ・ビートルズ
- ファグズ
- ボブ・ディラン
- ホーリー・モーダル・ラウンダーズ
- ママス・アンド・パパス
- メラニー
- モビー・グレイプ
- ラヴィン・スプーンフル
- ラヴ
人物(個人のトラヴェラー、その他)
ヒッピーに関連する主な作品
映画
- ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間
- 俺たちに明日はない
- イージー・ライダー
- いちご白書
- 砂丘(ザブリスキー・ポイント)
- モア
- マッシュ
- モントレー・ポップ・フェステイバル
- ワイト島音楽祭
- バニシング・ポイント
- 白昼の幻想(ザ・トリップ)1968年
- バングラデシュ救援コンサート
- フレンズ
- ふたりだけの恋の島 - ヒッピーが登場
- ハルーシネイション・ジェネレーション 1967年
- ライオット・オン・サンセット・ストリップ 1967年
- ザ・ラブ・インズ67年
- Psych-Out68年
- ワイルド・イン・ザ・ストリーツ 1968年
- ザ・ビッグ・キューブ69年
- アイ・ドリンク・ユア・ブラッド 1970年
- ヘアー
- ローリング・ストーンズ・ハイドパーク・コンサート
- ラスト・ワルツ
- ウッドストックがやってくる!
小説
演劇
薬物
関連項目
出典/脚注
- ^ Inside The LC: The Strange but Mostly True Story of Laurel Canyon and the Birth of the Hippie Generation
- ^ a b c 中島らも『異人伝』(講談社文庫)pp.77-78
- Summer of Love. A film part of PBS´s American Experience series. Includes the film available to watch online and other information on the San Francisco event known as the Summer of Love as well as other material related to the hippie subculture
- Hippie Society: The Youth Rebellion. A Canadian program by the CBC public network on the hippie rebellion including videos to watch
- UK Hippy