兵役逃れ

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兵役逃れ(へいえきのがれ)とは、さまざまな手段を用いて国家が強制的に課す兵役(徴兵制度)から逃れる行為。一般に兵役に初めから参加しないで済ませる行為を指す。徴兵忌避(ちょうへいきひ)とも呼ばれる。

概要[編集]

入隊中に兵役から逃れる人々は、「脱走兵」と呼ばれ、戦闘中に部隊から許可なく離脱すると逃亡兵となる。個人で行われる場合は、入隊時に必要な徴兵検査を利用して行われることが多い。

日本においては、律令時代には兵役がありこれを逃れるために戸籍上女子にした。 近代では明治政府が発足し法制として徴兵令が施行された。 当初、免役規定対象の「一家の主人たる者」、「嗣子並に承祖の孫」(承継者)、「養家に住む養子」となるため養子になるものや、徴兵令施行、免役規定の縮小・廃止が遅れた北海道の一部地域に本籍地を移すものが続出した。 夏目漱石も北海道に本籍を移して(送籍)[1]、兵役を逃れたという。その後も志願制の植民地支配下の朝鮮台湾などの「外地」に移住し、逃れる者もいた。

第二次世界大戦中では、理工系の旧制大学旧制専門学校の所属によって兵役が免除されたため、進路を理工系にとるものが発生した[2]。 また、政治的有力者の子弟などはさまざまな手段で兵役を逃れるものもあり、国会議員の息子の鶴見俊輔のように、軍属となることで兵役を逃れ、前線に比べ安全な内地にとどまるものもいた[3][4]。なお、三島由紀夫は、入営検査の時(徴兵検査は合格していた)に軍医気管支炎肺浸潤と誤診し帰郷となったが、三島の父親はキャリア官僚でもなく、三島が徴兵時にはすでに役人ではなかった[5]

また、醤油の一気飲み(一時的に肝炎と同じ症状になる)などによって体調を悪化させることによって徴兵検査で不合格となる手段が存在していたとされるが、実際に行うことはほとんど不可能であった。理由は日本の徴兵制度において、個人の特技や健康状態から思想までが一つの帳簿として各村役場の職員に把握されており、にわかな病気はすぐに見破られたからである。

兵役法によれば、兵役を免れるために逃亡潜匿し、または身体を毀傷し、病気を作詐し、その他詐りの行為をなす者は3年以下の懲役に処せられる。現役兵として入営すべき者が正当の事由なく入営の期日に後れ10日を過ぎた場合は6月以下の禁錮に処せられる。 戦時には5日を過ぎた場合に1年以下の禁錮に処せられる。 正当の事由なく徴兵検査を受けない者は100円以下の罰金に処せられる(74条以下)。

日本以外では、韓国においては、男性タレントやスポーツ選手・政治的有力者の子弟などが身体的な不都合などを捏造し、兵役逃れを行っていることが社会的な問題となっている。全てが兵役逃れの結果ではないが、2014年に行われた韓国統一地方選挙の立候補者のうち11%が、市長、道知事候補に限れば22%が兵役未了者であった[6]。 またアドルフ・ヒトラー第一次世界大戦前に母国であるオーストリア=ハンガリー帝国軍からの兵役をドイツ国内で逃れたのち、ドイツ帝国陸軍志願入隊した。

手段[編集]

兵役逃れの方法として、以下のような方法がある。

心身を自ら害する行為を行ったり、害しているように見せかけて徴兵検査で不合格となる手法

  • 尿検査で、尿をすりかえ、異常があるように見せかける。
  • 薬を飲んで、血圧を一時的に上昇させる、代謝障害を装うなど「病気を捏造」する。
  • わざと骨折する、手足を切断するなどの自傷行為を行う[7]
  • 視力検査で「見えない」と嘘をつく(現在はあまり行われない)。
  • 聴力検査で「聞こえない」と嘘をつく(現在はあまり行われない)。
  • 精神障害を装う。

制度の抜け穴を利用する方法

  • 海外など、国家主権(警察・司法)の手の届かないところに逃亡する。
  • 外国人と結婚して相手の国に帰化するなど、自国の国籍を放棄する。
    • 海外出産などによって二重国籍を保持している者は、頃合を見計らって徴兵義務の無い国籍に切り替える。
  • 免除規定を活用して、兵役対象外になる。国情によってさまざまだが、以下に例を挙げる。
    • 文官である軍属に志願入隊する。
    • 大学の神学部神学校を卒業して従軍牧師や従軍神父になる。
    • 特定の宗教に入信する。
    • 独居老人の養子になり、相続や介護に関する免除規定を活用する。
    • 家制度において戸主が兵役免除となる規定を活用して分籍をして戸主となる。

非合法な手段を用いる方法

  • 担当の管理官に賄賂を送ったり、コネで兵役が免除されるように取り計らってもらう。
  • 意図的に犯罪行為を犯して、兵役不適格とされる量刑を受けることで逃れる。

脚注[編集]

  1. ^ ここから同音で漱石という筆名を考え出したという説が存在する
  2. ^ 学徒出陣で対象となったのは主に文科系の学生である。
  3. ^ しかし、一般の市民が兵役を逃れた場合村八分などにより、親族みなが肩身の狭い思いをすることや、厳しい官憲の監視がありほとんどが兵役についた。また鶴見は結核にも関わらず何故か徴兵検査に合格したので、軍属になって逃れるしかなかった
  4. ^ 徴兵検査の診察を行うのは軍医であり、軍医学校では兵役逃れのための詐病(仮病)の見破り方が教育されていた。また逆に士官学校などの志願者の診察も行うために匿病の見破り方も教育されていた。
  5. ^ 『決定版 三島由紀夫全集第42巻・年譜・書誌』(新潮社、2005年)
  6. ^ “韓国・統一地方選「候補者の4割が前歴者」の衝撃…「有権者の自尊心は?」”. 産経新聞. (2014年6月2日). http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140602/waf14060207000003-n1.htm 2014年6月4日閲覧。 
  7. ^ “兵役逃れ”目的にサッカー選手92人が自ら肩脱臼

関連作品[編集]

関連項目[編集]