トランク (自動車)

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1931年式フォード・モデルAの外付け式トランク。トランクの前方で開いているフタはランブルシートと呼ばれるものである。これ以降のモデルではトランクはボディ側に内蔵されるようになった。
1967年式AMC・マーリンのトランクリッドを開けたところ。ファストバックスタイルのため、このような小型のトランクが装備された。カバーに包まれているのはスペアタイヤである。
1985年式シュコダ・ラピッドのトランク。ラピッドはリアエンジンのため、トランクが車体前方に置かれる。また、このモデルは後部座席とエンジンルームの間にも小さなトランクが存在する。

トランク英語:trunk)またはブート英語:boot)とは、自動車における主要な荷台、または荷箱(ラゲッジ)、あるいは貨物室(コンパートメント)である。

解説

トランクは主に北米英語ジャマイカ英語で用いられ、その他の英語圏では“ブート”の呼称が用いられる。また非英語圏、特に東アジアでは“トランク”が用いられる。それ以前の使用法では、ブートとはコーチと呼ばれる形式の馬車における、御者の座席や荷物置き場を示していた。

トランクはほとんどの場合、自動車の後部に位置している。多くはその車両のエンジンルームとはキャビンを挟んで反対側に置かれることが多い。いくつかのミッドシップen:Mid-engine design)車(例えばフェラーリ・360)と、リアエンジン(例えばフォルクスワーゲン・タイプ1)では、車体の前方に置かれる場合もある。フォルクスワーゲン・タイプ3のような水平対向エンジンを低い位置に置くリアエンジン車では、車体の前後にトランクを持つ場合もある。また、ミッドシップのフィアット・X1/9の場合も二つのトランクを持つが、後部トランクはとても小さい。このように車種のエンジンレイアウトにより、トランクの形状や容量もさまざまである。

トランクの開口部にはエンジンルームボンネットに構造が類似したフタが置かれる。日本では一般的にはこのフタそのものをトランクと呼ぶ場合もあるが、正式にはトランクリッド(trunk lid)(en:decklid)と呼ばれる。このトランクリッドについてもこの項で記述する。

分類

開放型と閉鎖型

トランクに代表される荷物室はその構造により開放型と閉鎖型に分類できる。

開放型のトランクはステーションワゴンSUVにみられる。デッキリッドを持つ閉鎖型のトランクは典型的なセダンクーペによくみられる。トランクは車体の剛性構造やトリム(内装)により客室から分離されている。閉鎖型のトランクは一般的にシンプルな素材がトリムの材料に用いられているが、多くのステーションワゴンは客室の延長上にトランクが存在するため、客室側のトリムに準じたより良い素材が用いられる場合もある。SUVやステーションワゴン、典型的なハッチバックの場合にはプライバシーの保護や荷物の盗難防止のために、トノカバーを取り付けることができる。このトノカバーはローラー状のブラインドであり、着脱が可能である。

容積の増減

トランクの柔軟性(積載性)を向上させるために、リアシートを折り畳み式とする場合もある。本来ならその車両よりも大きな車両が必要な場合でも、リアシートを畳むことでトランクのサイズが大きくなるので、臨時に大きな荷物を運ぶことが可能になる。

小型のセダンやクーペであっても、一部のメーカーではこの構造を採用してより大きなトランクスペースを確保する柔軟性を確保しているため、閉鎖型と開放型の定義は必ずしも一律に区分できるとは限らない。

能動または受動安全

トランクの存在はその車両の能動的安全性(アクティブセーフティ)や受動的安全性(パッシブセーフティ)に寄与する。一般的に荷物を積載する場合、少量であっても客室内部ではなく隔離された空間であるトランクに積むことだけでも、衝突や急ブレーキの際に移動した荷物によって乗員が傷付く事態を防ぐことができる。

さらに、下記で示されるように何らかの方法で荷物をしっかりと固定することにより安全性が高まる。

荷物積載時のアクティブセーフティ

アクティブセーフティは特に部分的に荷物を積んだ車両で促進または低下する可能性がある。荷物を部分的にトランク内に積んだ場合、トランク内部の荷掛けアイ(lashing eyes)を用いて十分な固定を行うことで、激しい操縦を行った際に車体や乗員へのダメージを最小限に出来る。特に激しいコーナリングを行う場合には、トランク内の部分的に積んだ荷物が不意に移動して急激な荷重の変化が起こることを予防することで、グリップを失って事故を起こすことの防止にも繋がる。

逆に言えば、固定が十分でない場合には移動した荷物によって荷重変化が発生し、ときに事故に繋がりかねないことを覚えておくべきである。

なお、軽トラックや軽ワンボックス車両などの比較的軽量な車体では、林道や農道などの未舗装路などを走る際に、後輪のトラクションを増やす目的で、車体後端付近にわざと重い荷物(時には土嚢など)を積む場合もある。

荷物積載時のパッシブセーフティ

もしも事故が起きてしまった場合に、トランクの荷物を荷掛けアイで十分に固定して積むことで、事故の衝撃で荷物が乗員に衝突してより厳しい事故被害を発生させるのを防ぐことができる。ヨーロッパ車、特にBMW・X3BMW・X5フォルクスワーゲンアウディのさまざまな車両ではレール上を移動する荷掛けアイシステムを採用して、より柔軟に荷物の固定が行えるように工夫されていることもある。

古くから輸送用バン航空輸送で行われているように、積載する荷物に応じて適切な積載用アクセサリーを用いることも重要である。例えば、仕切り板やバイクキャリアの使用などである。

バリアネットや仕切りバー

開放型のトランクを持つ車両では、衝突の際に固定していない荷物から乗客を保護する目的、或いはある程度乗客から隔離する必要のある荷物(例えば動物など)の隔壁として、簡素な金属製の仕切りバーが設けられている場合がある。固定されていない荷物に対するその他の解決としては、バリアネットの使用が挙げられる。

これらの機器は直接車体内部に取り付けられるか、トノカバーに似たロール状の着脱可能なカセットとして提供される場合がある。これらの機器の適切な使用により、交通事故急ブレーキの際に荷物が乗員に衝突することを防ぐことができる。

バリアネットは仕切りバーに比べてはるかに少ないスペースで設置することが可能であるが、仕切りバーは多くの場合車体内部に合わせて設計されているため、バリアネットよりもタイトな荷物積載に対応できる可能性がある。

機能の追加

ほとんどの自動車のトランクには、トリムの裏側にさまざまなほかの装備が積載されている。これらの装備は開閉可能なハッチ(場合によっては施錠されていることもある)やカーペット、サポートボードなどを取り外すことにより、顧客や整備士によって利用される可能性がある。

危険性

子供は(或いはその乗り物を運行する大人であっても)トランクに閉じこめられた場合、窒息熱中症で死亡する可能性がある。閉鎖型トランクを備える多くの車両の後部座席にはトランクからキャビンに繋がる通路が備えられているが、この通路は非常に狭い為、大人の場合にはこの通路では脱出できない場合があり、逆に子供の場合にはここからトランクに入ることで外に出られなくなる可能性がある。そのため、アメリカでは2008年販売モデルから、トランク内部に暗闇でも光る蛍光塗料で塗装されたトランクリリースの装着が義務付けられた。

しかし、ハッチバックやワゴン、バン、SUVの場合には、助手席や後部座席のドアとの間には簡易なトノカバー程度しかなく、例え閉じこめられたとしても、これらを取り外す(またはは蹴破る)ことで容易にドアにアクセスする事ができるため、この要件からは除外されている。

トランクリッド

トランクリッドにリアウイングスポイラーを装着し、内蔵型ハイマウントストップランプを持つR34スカイライン

トランクリッド英語: trunk lid)とは、モータービークルのトランクに設けられるフタであり、貨物室と外部とのアクセスを司っている。英語圏ではデッキリッド(アメリカ英語: Deck lid)、ブートリッドイギリス英語: Boot lid)と呼ばれることもある。

セダンのトヨタ・カローラをベースに5ドアハッチバックとしたトヨタ・スプリンターシエロ。このような場合はトランクリッドではなくリアハッチと呼ばれる

トランクリッドという名称はセダンなどの、キャビンから完全に隔離された閉鎖型トランクを持つ車両に限られており、ハッチバックやステーションワゴンなどのキャビンと半ば一体化した開放型トランクを持つ車両の場合には、単にリアハッチやリアゲートなどと呼ばれるにとどまる。

トランクリッドはヒンジによって車体に取り付けられ、ヒンジの位置には完全開放した際に開放位置にトランクリッドを保持するためのスプリングガスダンパーが設けられている場合もある。オーソドックスなフロントエンジンでトランクが車体後方に存在する車両の場合には、近年ではトランクリッドの中央にハイマウントストップランプが設けられることがあり、スポーティグレードなどの見た目や走りのイメージを重視した車両にはトランクリッドに装飾的なリアスポイラーが設置される場合もある。GTウイングなどの本格的な追加エアロパーツも多くはトランクリッドに設けられる。

幾つかの車両では、トランクリッドの開閉に電動モーターを用いている場合があり、運転席のスイッチやリモートオープナーの遠隔操作により自動的に開閉を行えるものもある。

トランクのオプション類

ボードやシェルフ

幾つかの車両のトランクではボード(板)やシェルフ(棚)などの装備が提供されている。それらは荷物を積むため以外にもさまざまな用途に役立つ。クライスラー・PTクルーザーに装備されているマルチポジション・リアシェルフは荷室の仕切り板や、防護柵としてのほか、ピクニックでのテーブル代わりにも使用できる。

また、シトロエン・C3のトランクには、リアシートが折り畳まれた際に利用可能な、荷室とキャビンを分類したり、床面を水平にして荷物の積み卸しを簡易にするための可動式のフロアボードが備えられている。

集中ドアロック

トランクのロックは場合によっては客室のロックと連動していることがある。

リモートオープナー

いくつかの車両は、離れた位置からトランクを開けるための機能を有している場合がある。一般的にはワイヤー駆動で運転席から操作可能なオープナーが備えられているが、近年では無線操作式のリモートオープナーを備えている場合もある。

  • トランクのラッチが開放された際に、ドアシールがトランクリッドを押しのけることでトランクが開くもの。このタイプは一般的なボンネットの構造に類似しており、開放の際に自動ではごくわずかしかトランクが開かないため、開閉操作そのものは人力で行う必要がある。
  • トランクのラッチが開放された際に、スプリングがトランクリッドを持ち上げることでトランクが開くもの。このタイプは開放の際に自動で完全にトランクが開く。
  • トランクのラッチが開放された際に、動力を用いてトランクリッドを開くもの。BMW・7シリーズのように油圧アクチュエータを用いるものや、BMW・X6のように電動モーターを用いるものがある。このタイプは開放の際にも自動で完全にトランクが開き、また閉鎖を自動で行うことも出来る。

関連項目