天然ガス
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天然ガス(てんねんガス、Natural gas)は一般に、天然に産する化石燃料である炭化水素ガスのことを指す。
広義には、地下に存在するガス、または地下から地表に噴出するガス一般のことであり、この中には化石燃料ガス(可燃性ガス)だけでなく、窒素や酸素、炭酸ガス、硫化水素ガス、亜硫酸ガス、硫黄酸化物ガスなどの不燃性ガスも含まれる。これら不燃性ガスの多くは火山性ガスである。
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[編集] 天然ガス
地下から産出する状態の「天然ガス」について以下に述べる。液化したものは後半部の「液化天然ガス」を参照のこと。
[編集] 組成
天然ガスにはメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン以上の炭素化合物、窒素が含まれ、産出する場所によってその割合は少しずつ違ったものになる。 例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン以上の炭化水素、窒素のそれぞれの割合は、
- ケナイ(アラスカ) : 99.81%、0.07%、0%、0%、0%、0.12%
- ルムート(ブルネイ) : 89.83%、5.89%、2.92%、1.30%、0.04%、0.02%
- ダス(アブダビ) : 82.07%、15.86%、1.86%、0.13%、0%、0.05%
といった具合である。
これらの他に不純物として、水、炭酸ガスや硫黄酸化物、硫化水素などを含む[1]。例外的に、北アメリカ産やアルジェリア産の天然ガスには1%~7%ものヘリウムが含まれており、世界の数少ないヘリウムの供給源となっている[2]。
[編集] 特性
揮発性が高く常温では急速に蒸発し、常温では空気よりも軽いので大気中に拡散する。この点では、常温で空気より重く低い場所に滞留しやすいプロパンやブタンガスに比べれば安全性が高いといえる。
[編集] 物性
以下に天然ガスに含まれる主なガスの物性を示す。
| 名称 | メタン | エタン | プロパン | ブタン (ノルマル/イソ) |
|---|---|---|---|---|
| 分子式 | CH4 | C2H6 | C3H8 | C4H10 |
| 分子量 | 16.04 | 30.07 | 44.09 | 58.12 |
| 沸点 | −161.5 | −88.7 | −42.2 | −0.5/−11.7 |
| 臨界温度 | −82.6 | 32.2 | 96.7 | 152/135 |
| 臨界圧力 | 45.4 | 48.8 | 42 | 37.5/36 |
| 比重 液体(沸点、1気圧) | 0.425 | 0.546 | 0.580 | 0.605/0.590 |
| 比重 気体(0℃、1気圧) | 0.554 | 1.047 | 1.522 | 2.006 |
| 燃焼範囲 上限 (空気中容積%) |
15.0 | 12.5 | 9.5 | 8.4 |
| 燃焼範囲 下限 (空気中容積%) |
5.5 | 3.0 | 2.2 | 1.8 |
| 気体/液体容積比 (0℃、1気圧) |
595 | 432 | 292 | 277/231 |
| 毒性 | なし | なし | なし | なし |
| 腐蝕性 | なし | なし | なし | なし |
メタンの沸点は-161.5℃であり、LNGの沸点は-160℃程度になる。このため1気圧の環境下で液化するには極低温が必要になり、臨界温度が-82.6℃ということはいくら加圧してもこれ以上の温度では液化はしない。
メタンの液体での比重は0.43でありLNGになると他の成分の割合に応じて0.43~0.48になる。 原油の比重約0.85と比べても液体メタンはかなり軽いため、運搬時には重量に比べて大きな体積を必要とする。
気体のメタンは空気と比べて約55%の比重でありかなり軽いが、気体でも低温の状態では-113℃で空気と同じ重さとなり、それ以下の温度では空気より重くなる。
事故などで極低温状態のメタンが漏れて-161.5℃以上で気体になると空気の1.4倍程度の重さとなりまず地上に漂うことになる。このガスと周囲の空気との境界で空中の水分を凍らせ白い雲を作る。これが蒸気雲(ベイパークラウド)と呼ばれ、透明なガスが間接的に人の目に触れることになる。 この状態では爆発的な燃焼や凍傷、窒息の危険がある。しばらくは地上に留まった低温メタンガスも、温度が-131℃を越えると空気よりも軽くなり空中へと上昇・拡散していく。
5%~15%の燃焼範囲は他の可燃性ガスと比べれば比較的狭い。気体のメタンが液体になると体積は約1/600になるため、運搬には適している。
燃焼による発熱量は13,300kcal/kgで炭化水素中では最大である。これは5,000~7,000の石炭や9,250の石油よりも大きい。メタンもLNGも共に人体への毒性はない[1]。
[編集] 分類
産出場所での分類では油田地帯で出るものは油田ガス、石油系天然ガスと呼ばれ、炭田地帯では炭田ガス、炭層ガスと呼ばれ、遊離型ガス鉱床では水溶性ガスと呼ばれる。
ガス田からのガス田ガスは「乾性ガス」とも呼ばれ、メタンが85%~95%と主体を占めその他のエタン、プロパン、ブタンなどは比較的少ない。ガス田ガスは液化されてガス田由来のLNGとなる。 油田地帯から出る油田ガスは、10~15m³のガスから1リットル程度のガソリンが採取できるため「湿性ガス」とも呼ばれ、幅広い組成を持つこのガスは中東地帯などでの産出では従来はすぐに燃焼によって破棄されていたもので、21世紀初頭現在はこれも液化によって回収されている。この湿性ガスはメタン成分が多ければ液化されて油田由来のLNGとなり、少ない時はLNGの原料ではなくLPGの原料となる石油ガスであり液化されてLPGとなる。 また、原油の精製プラントから生まれるガスは「精製ガス」と呼ばれ、液化されてLPGとなる[1]。
[編集] 環境への影響
燃焼したときの二酸化炭素排出量はカロリー当りで、石油より少ない。ただし、主成分であるメタンの地球温暖化係数は、「21」と大きいため、大気への放出は避ける必要がある。
[編集] 埋蔵量
2002年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量は約155.8兆立方メートル(5501兆立方フィート)といわれており、国別には旧ソ連が一番多く、イラン、カタールなどがそれに続く。 今後採鉱が盛んになることで、確認可採埋蔵量の増加が期待されている。BP統計2005年版では確認可採埋蔵量は約180兆立方メートルという報告がなされた(可採年数は66.7年)。
日本では関東地方だけでも埋蔵量は4千億立方メートル以上あると推定され、南関東ガス田を形成している。南関東ガス田から自然放出される天然ガスによって度々事故が起きている。
深海底に存在するメタンハイドレートは、採掘技術が確立されていないため2008年現時点では未利用資源に留まる。
[編集] 紛争
天然ガスをめぐる紛争がある。
- インドネシア: アチェ(アチェ独立運動)
- イエメン、エリトリア: ハニーシュ群島紛争
- ボリビア国内: ボリビアガス紛争
- 日本、中華人民共和国: 東シナ海ガス田問題
- ロシア、ウクライナ: ロシア・ウクライナガス紛争
[編集] 液化天然ガス
液化天然ガス(LNG、Liquefied Natural Gas)は、気体である天然ガスを-162℃以下に冷却して液体にしたもの。LPGと異なり常圧で液体である。体積は気体の約1/600しかない。輸送・貯蔵を目的として液化される[1]。
[編集] 液化
天然ガスは主成分であるメタンの他にもエタン、プロパン、ブタンなどのガスが含まれているが、LNGへの液化の過程でこれらのガスも同時に液化されるために、LNGも元となる天然ガスの産地によってこれら炭化水素の構成比に違いがある。LNGの液化の初期段階過程では、水和物を作ってパイプを閉塞させる炭酸ガスや、プラントを腐蝕する硫黄酸化物などの不純物が除去されるため、LNGは人体にとって無害となる[1]。
液化には「C3-MCR」「TEALARC」「PRICO」「CASCADE」の4つの方式が存在する。CASCADE では冷媒にメタン、エチレン、プロパンの純成分を個別に3段階で使用しており、他の3方式は窒素、メタン、エタン、プロパンを混合して使用している。液化プラントで使用されているのは C3-MCR 方式が多い[3]。
[編集] 輸送
輸送方法には大別して2つある。1つがパイプラインによる気体での輸送で、1930年代頃からアメリカで行われており、現在ではロシアから東欧(ソ連時代の名称は「友好パイプライン」)へ、北アフリカから南欧への天然ガス輸送に使用されている。そしてもう一つがLNGタンカーによる液化天然ガスの輸送で中東や東南アジアから日本への輸送に多用されている。
LNG船の海難事故は極めて少なく、大規模なガス爆発やガス漏洩を含む環境破壊事故は一度も発生していない。
[編集] 施設
LNGを利用するためには、ガス井、パイプライン、液化プラント、LNGタンカー、受け入れ設備、気化設備など「LNGチェーン」と呼ばれる一連の設備が必要である。
LNG受入れ基地の近辺には気体に戻す際の気化熱を冷熱源とする施設を設置し、エネルギーの利用効率を高めている。阪神港泉北コンビナートでは、キンレイの冷凍うどん製造工場や業務用冷凍庫などの他に大阪府立臨海スポーツセンターのスケートリンクなどが存在する。
[編集] 用途
- 都市ガス
- 日本での都市ガス利用は、関東より関西が先行、大阪ガスは昭和44年に天然ガス導入を決定1975年(昭和50年)から1990年(平成2年)までの16年間で石炭改質系からの転換を完了した。あわせて阪神港に天然ガスコンビナートを形成した。都市ガス12A・13Aである。
- 火力発電
- 日本でのLNGによるガス焚きの火力発電は関西電力姫路発電所を皮切りに各電力会社の主力となりつつあり、東京電力は東事業所の中核発電所である袖ケ浦火力発電所に東京ガスと共同で大型のLNG受け入れ施設を建設した。その主要な設備は三菱重工が建設した巨大な地下式断熱LNGタンクである。
[編集] 事故
万一、大量のLNGが漏洩する事故が起きれば液化の為の-162℃以下の超低温状態から-113℃以上に暖められるまでは空気よりも重く、極低温のガスが地上に滞留する。LNGタンクが作られた初期の1944年10月20日、米国、クリーブランドのLNG漏洩事故では防液堤を備えなかったために大量のLNGが市中に広がり、下水溝内で爆発・燃焼するなど死者128人を出した。この大事故を教訓に、現在はLNGタンクの周りは防液堤で囲われており、万一漏洩事故が発生しても周辺被害はそれほど拡大しないと期待されている[1]。
[編集] LNG受け入れ基地
- 東新潟基地(東北電力)
- 港基地(仙台市ガス局)
- 根岸基地(東京ガス・東京電力)
- 扇島基地(東京ガス)
- 東扇島基地(東京電力)
- 袖ケ浦基地(東京ガス・東京電力)
- 富津基地(東京電力)
- 袖師基地(静岡ガス)
- 知多LNG共同基地(東邦ガス・中部電力)
- 知多基地(中部電力)
- 知多緑浜基地(東邦ガス)
- 四日市基地(東邦ガス・中部電力)
- 川越基地(中部電力)
- 泉北I基地(大阪ガス)
- 泉北II基地(大阪ガス)
- 姫路製造所(大阪ガス)
- 姫路LNG(関西電力)
- 水島基地
- 廿日市基地(広島ガス)
- 柳井基地(中国電力)
- 戸畑基地(九州電力・新日本製鐵)
- 福岡基地(西部ガス)
- 長崎基地(西部ガス)
- 新大分基地(九州電力)
- 鹿児島基地(日本ガス)
[編集] 圧縮天然ガス
圧縮天然ガス(CNG、Compressed Natural Gas)とは、高い圧力で圧縮された天然ガスのこと。環境に優しい自動車の燃料として注目を浴びるようになった。天然ガスに仮にオクタン価を付ければ135になる[4]。
{main|天然ガス自動車}
[編集] 出典
- ^ a b c d e f g 糸山直之著 「LNG船がわかる本」 成山堂出版 2005年1月18日 増補改訂初版発行 ISBN 4-425-32123-5
- ^ サイエンス日本語版 2007年12月号
- ^ 日本エネルギー学会編 「よくわかる天然ガス」 社団法人 日本エネルギー学会 2000年2月16日初版発行 ISBN 4-339-08232-5
- ^ ケネス・S・ディフェス著 秋山淑子訳 「石油が消える日」 パンローリング株式会社 2007年8月5日初版第一刷発行 ISBN 978-4-7759-7088-1
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (探鉱、備蓄)
- 石油資源開発株式会社 (探鉱、生産、パイプライン)
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| 主な燃料 | ガソリン (高オクタン価ガソリン (ハイオク)、無鉛ガソリン (レギュラー)) | 軽油 |
| その他燃料・エネルギー | バイオ燃料 (バイオディーゼル、バイオガス、バイオマスエタノール) | 天然ガス | 電気 |
| 関連項目 | Category:燃料 | Category:バイオ燃料 | ガソリンスタンド |

