労働者派遣事業

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労働者派遣事業(ろうどうしゃはけんじぎょう)とは、雇用事業の一つ。事業主(以下派遣元という)が、自分が雇用する労働者を自分のためにではなく、他の事業主(以下派遣先という)に派遣して、派遣先から指揮命令を受けて派遣先のために労働させ(、報酬を受け)る事業である[1]。隣接する事業に、職業紹介事業がある。

当記事では労働者を派遣先に派遣する事象そのものを指す労働者派遣についても言及する。労働者派遣は俗に人材派遣とも呼びかえられる。

以下では特に断り書きがない限り、日本での事例について述べる。

目次

[編集] 概要

[編集] 労働者派遣の法的な位置づけ

労働者派遣業を行う業者は、1975年頃から急速に増えた。これに対応し、1985年6月に、派遣労働者の保護を目的とした「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(以後労働者派遣法)が成立し、翌1986年7月に施行された[2]

労働者派遣法第2条では、労働者派遣を以下ように定義している[3]

自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする

[編集] 法的制限

期間は原則1年。延長は最長3年まで可能だが、労働者の代表(過半数により組織される労働組合、または過半数により選任された代表者)の意見を聴取する義務がある。 なお、派遣労働者・派遣事業者の交代の有無にかかわらず、期間は同一業務について通算される[4]。 期間を越えて同一の業務を継続する場合、派遣労働者を直接雇用しなければならない。

但し、情報処理システムの開発や保守(IT関連)など政令で定める26の業務([3])については専門的な業務であるか、特別の雇用形態が必要とされることにより、期間の制限は設けられていない。

紹介予定派遣
労働者派遣の内、派遣先企業での直接雇用を前提とする形態。
一定期間派遣社員として勤務し、期間内に派遣先企業と派遣社員が合意すれば、派遣先企業で直接雇用される。ただし必ずしも正社員になれるとは限らない。前提になっているのはあくまで「直接雇用」なので、契約社員アルバイトも含まれる。派遣事業者は労働者派遣事業と職業紹介事業の双方の許可(届出)が必要。派遣期間は6ヶ月以内。
業種の制限
医療業務2006年3月1日より、紹介予定派遣出産育児介護休業の代替要員、僻地および社会福祉施設への派遣のみ可能になる)、建設業務警備業務港湾業務に労働者を派遣することはできない(特に、警備はそれ自体が派遣同等になる)。
再派遣の禁止
派遣社員を派遣先からさらに派遣させること(二重派遣)はできない。
特定派遣先のみの派遣(専ら派遣、またそのための企業を設立すること)も禁止されている。
事前面接の禁止
派遣を受けようとする事業主は紹介予定派遣である場合を除き、事前面接や履歴書の提出など派遣社員を「特定することを目的とする行為」をしてはならない。

[編集] 業務請負契約との相違

労働者派遣法によって労働者派遣契約は従来の業務請負契約と明確に区別されることになった[3]という。

業務請負では、請負労働者は自身が雇用関係を結ぶ企業(=請負業者)と注文主の企業との間で締結した請負契約にもとづいて労働を提供する。そのため、労働者の指揮命令権は注文主の企業ではなく、あくまでも請負業者にあると定義されている[3]

一方、労働者派遣では、派遣業者と派遣先の企業が派遣契約を結び、派遣業者と派遣労働者が雇用関係を結び、派遣先の企業と派遣労働者が使用関係を結ぶ、言うなれば三角形の関係にある[3]。そのため、労働者の指揮命令権は派遣先の企業に認められている[3]

[編集] 派遣労働者の分類

[編集] 常用型派遣

派遣先の有無に関わらず、常に派遣業者と雇用契約が結ばれている状態の派遣[5]。正社員派遣、定常型派遣ともいう。 下記の労働者が、常用型派遣の労働者にあてはまる:

  • 特定労働者派遣事業主に、正社員として雇用される労働者
  • 雇用主が一般労働者派遣事業主であっても、正社員として雇用されている労働者

なお、いわゆる契約社員は有期直接雇用であり、正社員(無期直接雇用の被雇用者。つまり常時雇用される労働者)には当たらないため、常用型派遣され得ない。次節の登録型派遣を参照。

[編集] 登録型派遣

派遣先が存在する時のみに、派遣業者と雇用契約の関係が生じる状態の派遣。派遣労働者の4分の3以上がこの登録型派遣に当てはまる。

[編集] 日雇い派遣

登録型派遣のうち、雇用契約の関係が生じる期間が30日以内のものを特に「日雇い派遣」と呼ぶ[6]

[編集] 派遣事業の分類

[編集] 特定労働者派遣事業

通常は派遣元に常時雇用される労働者(自社の正社員)を他社に派遣する形態。届出制。 一般労働者派遣の業者に比べると、派遣先として対応する企業・職種の幅は狭いが、特定の事業所に対し技術者(主にコンピュータ・IT・エレクトロニクス機械設計関連)などを派遣するような業者が多い。 スキルアップのための講習会が充実しているところが多い。

[編集] 一般労働者派遣事業

通常は派遣元に常時雇用されない労働者(自社の契約社員)を他社に派遣する形態。許可制。 臨時・日雇い派遣もこれに該当する。 一般的に「派遣会社」といえば、この形態の事業者が広く知られている。 スキルアップのための講習会を用意していないところもある。

[編集] 歴史

日本で初めて、現在の形での労働者派遣事業を採用したのは航空機業界である[7]

  • 1986年7月1日:施行
  • 1999年12月1日:改正(派遣業種の拡大)[8]
  • 2004年3月1日:改正(物の製造業務の派遣解禁、紹介予定派遣の法制化など)
    • この改正は内閣に設置された民間人による『規制改革会議』(議長 宮内義彦オリックス会長、奥谷禮子委員他)が提出した2002年「第2次答申」に基づいている[9][10]。このときに適正なセーフティーネットや雇用者に対する派遣先企業の責任が全く盛り込まれなかったため、今日の安易な『派遣切り』に結びついたといわれる(ちなみに宮内は、規制改革会議議長を1996年から2007年の小泉内閣終了まで11年間に渡って務めている)。2009年に時の厚労相・長妻昭は製造業務における単純作業への派遣及び受け入れを改めて禁止したい意向を示し、法案も存在するが、民主党政権成立以後も一年単位で繰り返されている内閣総辞職と新内閣構成により、法案成立の目途は立っていない。
  • 2006年3月1日:改正(派遣受入期間の延長、派遣労働者の衛生や労働保険等への配慮)

[編集] 労働者派遣法制定に至るまで

江戸時代に口入屋と呼ばれる人身売買業があった。これは、戦国時代の武将と豪族との間で取り交わされた寄親寄子という制度を起源とする主従関係が、江戸時代の経済の発展と共に広まったもので、都心に出てきた求職者と口入屋の間で主従関係が取り交わされる。また、口入屋は一見(いちげん)の口利きによる労働者斡旋も行っており、武家奉公人から遊女に至るまで、ほとんど全ての職業を扱っていた。その他に「人夫貸し人夫出し」や「人入れ業」ともいう。

労働者派遣法施行以前は、上記のように、江戸時代以降に行われていた労働者派遣の劣悪な労働環境が深刻な問題となっていたため、職業安定法により間接雇用が禁止されていた。それにも関わらず「業務処理請負業」として、労働者派遣会社が違法と知りながら労働者の派遣を行っていた。

労働者派遣法の制定にあたっては、施行前年の1985年女性差別撤廃条約を批准し雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律を改正したことにより、秘書受付嬢などのいわゆるピンクカラーを募集できなくなったため、派遣という形で引き続き対応させるために労働者派遣法を制定した、と言う説がある[11]

[編集] 「人材派遣」への言い換え

法令上は「労働者派遣」が正式の名称であるにもかかわらず、わざわざ「人材派遣」という名称を使用する業者や人がいる[12]。これは以下のような理由によるともされている[1]

  • 派遣先への直接雇用の意味合いを持たれるため
  • 「労働者」という言葉が、「ブルーカラー」をイメージさせることがあり、それを避けるため
  • 適正な「人材」を派遣して、労働サービスを提供する事業形態であるという印象を持たせるため

人材派遣という言葉の意味が明確ではないことの行政上の実例として、商業登記先例が挙げられる。2006年までは、会社の目的登記の表現には具体性が要求されており、会社目的の登記先例を掲載した目的事例集[13]によれば、「人材派遣業」という用語は具体性を欠くものとして登記不可とされていた。このため、登記実務上は、「労働者派遣事業」など労働者派遣法に則した表現を用いている。

2006年以降、人材派遣業でも登記は可能となっているが、法人が一般労働者派遣事業の許可申請や特定労働者派遣事業の届出を都道府県労働局に対して行う場合、定款の目的には、「労働者派遣事業」を行うことが記載されていることが求められており、「人材派遣業」では認められない運用である[14]。 よって、労働者派遣事業を行おうとする事業者は、事業目的を、「人材派遣業」ではなく、「労働者派遣事業」と定める必要があるのが原則ではある。

[編集] 問題点

[編集] 社会構造としての問題、格差の元凶としての問題

派遣社員の状況については、退職した後の就業機会など希望して派遣社員としての働き方を選択する人間が多いとの調査結果もありはするが[15]他に選択肢がないためやむにやまれず派遣社員となったケースも存在する[16]。なお、厚生労働省『就業形態の多様化に関する総合実態調査』によると派遣社員を選択した理由として最も多かったのは「正社員として働ける会社が無かったから」であり、派遣社員の51.6%が「他の就業形態に変わりたい」と回答、うち91.6%は正社員を希望している。正規雇用が減少する中で、派遣社員の雇用が増えていることなどから、格差社会の元凶との指摘もさかんにされるようになっている。

だが、派遣業界側は「派遣社員が非正規雇用の8%しか占めていないことや、派遣と請負の混同などで現状を誤解した誤った認識である」などと主張していた[17](ちなみに2010年現在の派遣社員は96万人であり、全労働者の1.9%、非正規雇用に限っても5.5%しか占めていない[18])。

2008年2月8日の衆議院予算委員会で日本共産党の志位和夫が行った質問で、労働者派遣事業の現状の問題を取り上げた。質疑の詳細は志位和夫#日雇い労働と派遣に関する質問を参照。

なお、日雇い派遣については、派遣元企業あるいは派遣先企業での違法行為が相次いで発覚したため、2009年を目途に日雇い派遣事業を原則禁止する方向で厚生労働省が検討している。詳細は、日雇い#日雇い雇用の問題点を参照。

なお、秋葉原通り魔事件マツダ本社工場連続殺傷事件の加害者は派遣社員であったことや[19]、派遣の仕事がなくなってコンビニ、タクシー強盗、スーパーでの窃盗に手を出す事件が報じられ[20][21]、「ハイリスク・ローリターンで、経済的に追いつめられた者による場当たり的犯行が目立つ」ようになった[22]。派遣社員が置かれている経済的基盤が貧弱なことによる犯罪発生という観点から報じられている。

また「日本の財界の者やそれと関係のある政治家たちが、企業経営者側の都合ばかりを優先し、経営者にとって都合のよい派遣労働者の割合が非常に増えてしまうように法律を変えてしまった。日本の雇用のしくみ、つまり日本人の社会の構造をこのようにしてしまったことに根本的な問題がある」「もはや"個々人の選択の問題"などといったことにとどまるものではなく、未来の展望を持つことを望んでいるのにどうにも持てない人々を大量に作りだしてしまう、社会構造としての問題だ」「こういう社会構造を放置しておくこと、苦しむ人々を放置しておくことは、社会や政府として問題がある」といった主旨のことは(特に2008年ごろ以降は)マスコミ(TV、新聞など[23])などでも時々言及されるようになっている。だが、問題は根深く、日本政府の対応(改善策)は遅々としてあまり進んでいない(2010年現在)。[要出典]

[編集] 事前面接の横行

労働者派遣事業は本来、派遣先企業の要望を受け、登録された者から最適な者を選び出し、派遣先企業の詳細を正確に登録者に伝達するサービスである。そのため、労働者派遣法第26条で「派遣労働者を特定することを目的とする行為」は制限されているにもかかわらず、「見学」「面談」「業務確認」などの様々な呼称を用い、派遣業者が派遣先に派遣労働者を紹介する行為が横行している。業務を紹介する立場である派遣業者の社員が、その業務についてよく分からないと称して事前に面談を行なうケースが多い。これは法令順守以前の業務不履行であるため、政府は法令順守を強化するよう派遣企業に求めている。

日本経団連は、政府に対する雇用・労働分野の規制改革の要望に、事前面接の全面解禁を盛り込んでいる。全面解禁になると、派遣労働者の立場が今以上に弱くなるのは決定的と見られており、派遣労働者からは、パワーハラスメントの更なる横行が懸念されている。

また一部の面談では、面談時に正社員採用も考えると、実質虚偽の内容が含まれた面談も報告されている。特に上場企業で派遣社員を正社員として採用した例は極めて稀である(工場勤務等は除外)。

[編集] 契約更新の問題点

大手労働者派遣会社に多く見られる3ヶ月更新の労働条件は、使用者と労働者双方にとって更新を拒否する自由があることを意味するが、実態は労働者側からの更新拒否を、法律の原因なく甘受しない企業も少なくない。「1年以上の長期間の就労を期待しつつも、契約は3ヶ月更新を要求する」など、労働者にとって不利な提示がなされている。

[編集] 日本の国際競争力低下の懸念

日本は原材料を輸入して加工し、製品を輸出して成り立っている典型的な加工貿易国家である。日本は世界でも最高水準の品質の製品を多数生産し国際競争力を保持しているが、社外の人間であり、短期就労がほとんどの派遣社員に製品への忠誠心や品質意識を要求するのはほとんど不可能である[要出典]

現在は純粋にコスト面から労働者派遣制度を利用する例がほとんどであるが、国際競争力保持を視点に入れた労働者派遣制度に転換していかないとコスト面よりも主に品質の面から、日本の国際競争力を徐々に低下させる危険性があり、コスト・品質を両立させうる長期的観点からの対策が求められている。自動車総連が非正規雇用者について所属組合に実施したアンケート調査(カッコ内は回答比率、複数回答)では、「技能・技術の伝承で課題がある」(52.6%)、「製品・サービスの質が低下する」(28.3%)といった点へ影響が出ているとの指摘がある[24]

また、労働者派遣等の非正規雇用による生活の不安定化は、独身者の増加を招き少子高齢化をさらに進行させている。雇用の不安定化は根本的かつ長期的に日本の国際競争力の低下を招き、日本の国内市場を縮小させている大きな要因であるとの指摘がある。

[編集] 利益相反

派遣社員が勤勉に働くほど、派遣先企業は従来正社員が行っていた業務が派遣社員でも遂行可能なら、正社員の雇用を抑制可能と判断する現象がおきている。正規雇用の見込みがなければ、派遣社員の勤勉さと派遣先企業とは根本的に利益相反であるとの指摘がある[誰?]。 派遣社員を必要とするのは大企業とその子会社・関連会社をはじめ、一定規模以上の会社がほとんどだが、上場企業とその子会社にあたる会社が実際に派遣社員を正社員として採用することは事実上ほとんどない。

派遣社員側からすると、派遣先企業は他社であるため、派遣先企業で正規雇用される見込みや、契約更新時に賃金単価の上昇がない場合、契約停止されない最低限の労働しか必要なくなる。また派遣先企業固有の業務知識は、他社の人間であり最長3年契約が主流の派遣社員にとって本来関係ないため、派遣先企業固有の業務知識習得の士気は低調であり、業務の質にも影響がでてくる。

近年派遣社員に対し「正社員としての採用も考えると甘言で誘い、安く使おう」というケースが横行している。ほとんどの派遣社員が「派遣先企業から正社員としての採用も考慮してあげるから、賃金単価の上昇はないけれども契約内容以上にもっと頑張ってほしい」と、虚言と圧力を受けたの報告がなされている[誰?]。 実例:2005年8月にさいたま市常盤にある東京電力系の子会社では、当時の常務、部長などから「早ければ1年、遅くとも3年後には正社員採用となる」旨の言動が派遣社員の事前面接で行われた。業務の3年間は昇給が抑えられ、契約外業務等も任せられるなどしたが、3年後には契約を打ち切られた。 若者の誠実さ・純真さに付け込んでいるだけの非常に悪質なケースが多いとの報告も多数もたらされている。中には大手労働者派遣会社が求職者を正規雇用の面談と称し、実際は非正規雇用の面談に連れ出した極めて悪質な例も報告されている。

[編集] 健康保険組合

労働者派遣を行う事業者の業界団体である「社団法人日本人材派遣協会」は、2002年に人材派遣健康保険組合(通称「はけん健保」)を設立した。従来、派遣労働者は、派遣元である労働者派遣事業者との契約が月単位となっていることを利用し、継続雇用されていないことを理由に健康保険制度厚生年金保険制度に加入しないことが多かった(これら制度に加入するためには、3ヶ月以上の継続雇用が必要であるが、3ヶ月以上継続雇用されれば必ず加入させなければならない)。

この取扱いは、派遣労働者にとっては保険料を負担しないことによる手取り収入の増加、派遣元である派遣事業者にとっては保険料負担軽減および社会保険関係事務の軽減、派遣先企業にとっては派遣単価の圧縮、というメリットが存在したため、雇用関係が実質3ヶ月を超えても、健康保険制度へ加入させない脱法状態が長く続いていた。特に労働者派遣事業を専業にしている者には、意図的に社会保険制度未加入を行うものも存在した[25]

しかし、2002年に会計検査院が厚生省に行った検査の中で違法であると指摘[26]。さかのぼって健康保険を適用し、多額の保険料が追徴される事態となった。この状況をみて、業界団体が主導して、やむをえず健康保険組合を設立するにいたったものである。政管健保に加入する方法もあったが、比較的若い派遣労働者のみで保険の母集団を構成したほうが、健康保険料率を低く設定できるため健康保険組合制度が採られたとされているが、後期高齢者医療制度の影響により現在では高い保険料率となったことや高齢者医療制度への拠出金(国への納付金)ために、平成21年以降は経常収支が赤字に転落している(この制度は加入者数に応じた頭割り計算で拠出金を決めるため、若く所得が低い者が多い組合では非常に大きな負担となる傾向がある)。[27]

また、健保組合(組合健保)であるため、国民健康保険(国保)に比べ休業補償等の補償が手厚いというメリットもある。

労働者派遣事業者の中には、商社銀行系列を中心に、「はけん健保」成立前にすでに健康保険に加入しているものも多数あった。

なお、派遣事業者が商社や銀行、大手メーカなどのグループ企業の1つである場合、親会社の健康保険組合に加入する形式を採ることもある。

[編集] 労働者派遣肯定側からの反論

労働者派遣業界への批判に対し、主として派遣先と派遣元の経営側からは以下のような反論が行われている。

[編集] マージンを多く取りすぎている

労働者派遣会社は派遣先企業からの支払いのうち50%前後の額を派遣会社が徴収し、純益としているといった話が広く浸透しており、しばしば「派遣=奴隷制度」「搾取社会の象徴」、また労働者派遣業者は「ピンハネで不当に儲けている」といった批判の対象となっている。

厚生労働省が公開している調査である労働者派遣事業報告書の集計結果[28]からは 派遣労働者の8時間換算の賃金と派遣会社の8時間換算の派遣料金から一般労働者派遣では31%が特定労働者派遣では33%が派遣会社のマージンとなっているが、これはあくまで平均値であり、この数値からも、派遣会社の中には平均値を大幅に引き上げるような50%前後の額をマージンとして徴収している派遣会社が存在しているという疑いを持たれても仕方の無い話である。

労働者派遣会社側は否定しているが、大半がその企業の決算報告書から導きだせる割合ではなく、真偽の確認が困難で信憑性に乏しい。真実と仮定しても、統計的見地から導き出された数値ではないケースがほとんどである。 また、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(平成20年厚生労働省告示第37号)は、13.情報の公開により、労働者派遣会社に対して、派遣労働者の単価、経営情報、派遣事業報告書等々の事業運営の状況に関する情報を、派遣先企業および派遣労働者に公開することと定めているが、この告示自体がほとんど周知されていないのが実情である。

アデコフジスタッフ(現・ランスタッド)や新潟キャリアステーションなどの独立系の労働者派遣会社の場合、利益は社会保険(労使折半)や有給休暇の負担、福利厚生、事務所の地代家賃や人件費などの経費を加味してのことなので例えば一等地にある大型の労働者派遣会社のマージンが30%だとしても、額面どおりの利益にはならない。 これは一般企業(たとえば印刷業や流通業)の年商を社員数で割った数字が、そのまま社員各々の年収となるよう分配することが出来ないことと同じ道理である。大まかにであるが有休には派遣社員の給料の5%程度が当てられ、社会保険には7~10%程度が当てられている。また、上記のような義務的経費に加え、経理担当者や営業担当者やスタッフへの指示担当者の人件費、広告費、大型ビルの地代家賃・光熱費また、など派遣事業にかかる経費などをも総合して加味すると、営利企業として利益を上げるには30%程度のマージンを取らざるを得ないと反論しているが[29]、日本は批准はしていないが、国際労働機関に加盟している以上、国際条約であるILO111号条約である、同一労働同一賃金の原則を尊重せねばならぬ義務があり、経済協力開発機構(OECD)が2008年に「Japan could do more to help young people find stable jobs(日本は若者が安定した仕事につけるよう、もっとやれることがある)」と題した報告書の中で、「正規・非正規間の保護のギャップを埋めて、賃金や手当の格差を是正せよと勧告されているように派遣会社が経費を差し引いて支給される派遣労働者の賃金は国際的な水準より低く、派遣会社は派遣労働から差し引く、経費をさらに引き下げる経営努力が必要である事は否定できない。

実際の労働者派遣業は薄利多売であることは労働者派遣企業の財務諸表からも分る。例えば、労働者派遣大手であるテンプスタッフの2007年度の売上高が1618億円なのに対して、営業利益が70億なことからも推察できる。売り上げ額の1600億円に対して70億円程度を純益としている場合は、派遣企業がマージンから経費を除いた純粋な利益は4.5%程度である。 また、2006年度の決算での業界上位五社の営業利益[30]はテンプスタッフの4.5%が最大であり、労働者派遣最大手のパソナの営業利益は3%にしか過ぎないにしても、派遣業界全体の売り上げは平成22年度の厚生労働省の調査では、5兆円を超えており、そのわずか3%が純益であっても1500億という巨額な利益である。

[編集] 正社員が派遣で代替され、正社員としての雇用機会を奪っている

日本の正社員は身分保障が非常に強く、その分企業の労働力需要を抑制し、労働者の雇用機会を損ねているという指摘がある。実際新卒以外の人が正社員として企業に就職するには手段が限られており、派遣労働者が企業の労働需要を満たしている。

[編集] 派遣社員は低収入で、いわゆる格差やワーキングプアの原因になっている

本来、労働者派遣会社は同時通訳や財務処理、ソフトウェア開発など一般企業の正社員には困難な、特筆すべき技能を有している者を「一時的に外部から拝借する」手段であることを想定しているため、かつては派遣社員というのは一般的に正社員よりも高給取りで、様々な会社を転々とするスペシャリスト(プロスポーツにおける「ジャーニーマン」)だとみなすことが一般的であった。しかし、一般企業(特に製造業の現業)が人件費を圧縮する手段として労働者派遣会社を利用する傾向が1999年(法改正後)から顕著化し、2008年現在においては技能未習得者のみならず、就労未経験者をも受け入れ、即戦力としてでなく「定型的な単純作業を行わせるための人材」を確保する手段として、派遣会社を利用する企業が急増している。2009年には製造業の単純業務における労働者派遣・受け入れ禁止が時の厚生労働大臣・長妻昭によって提案されたが、その後一年単位で繰り返されている内閣総辞職・新内閣成立により、法案成立の目途は立っていない。

[編集] 労働者派遣企業は本来労働者が全額を得るべき労働対価を収益源としている

企業が正社員を雇用するということは莫大な経費が発生し、かつその社員を原則、定年まで雇用し続けることを前提とした賃金設定を行う必要がある(ボーナスは除く)。さらに、たとえば1万人の派遣社員を正社員として雇用した場合、1万人分の労働管理や経理事務が発生することを意味する。必然的に管理職や経理担当者の増員を迫られ、これらの人件費も発生する。また正社員は景気循環や季節変動に応じた雇用の調節が困難である。 こうしたことから、企業が正社員を雇い入れるということはイニシャルコスト・ランニングコスト両面で大きな負担を強いられる。労働者派遣会社が純利益とできるマージンを仮に5%得たとしても、企業はこの負担を相殺し、さらに企業にとって利益となる。労働者派遣企業は派遣先企業の労務費に弾力性を与え、企業体質を強化するサービスの対価として利益を得ている。

[編集] 派遣先企業の誤った認識がトラブルの原因である場合も多い

派遣先の企業担当者が、派遣労働者に誤った認識を持って接し、トラブルにつながる例も多い。労働者派遣を利用して日の浅い企業でよく見られるケースだが、派遣先担当者が派遣労働者に対して、社員に準じて仕事を自ら進んでするべきとの態度で接し、ノルマ・成績まで社員に準じて要求する場合がある。派遣社員側が保険加入でない場合は、短期のアルバイトとしか考えていないケースがほとんどのため、大企業の正社員に準ずる労働水準という、極めて過剰な要求を受け、トラブルになり早期に派遣社員側が退職し、双方に不利益な結末となる例が多い。

なかには派遣社員に高度情報処理技術者試験に合格するよう要求する極めて過剰な要求例も報告されている[要出典]。高度情報処理技術者試験に合格できる人間は情報処理技術者の中でも限られており、対応の困難な要求であるし、高度情報処理技術者試験に合格できる実力を持つ人間が派遣社員としてそのまま勤務し続けることはほとんどない。

また正社員側が、派遣元にクレームを入れるぞと派遣社員を恒常的に恫喝し続け、正社員に準ずる労働水準を強要し関係が極度に悪化し派遣社員側が辞職したく故意にミスを犯したり、故意に派遣先に損失を引き起こし、派遣社員が辞めるときに派遣先の問題点を全て派遣先の人事・総務に報告し、トラブルになるケースが報告されている[要出典]

派遣社員側からは企業の総務・人事担当者に、恒常的に恫喝し続けるというような行為を取締まるよう求める声がある。 中には正社員が私的都合のために、派遣社員に社内規則に違反したことを指示したり、会社の損失さえ無視する極めて悪質な例や、正社員が責任を回避するために、派遣社員に明確な指示を与えず業務を遂行させ、問題が発生したら自分は派遣社員に対して指示を出していないと主張する例がかなりの数報告されている[要出典]。派遣社員側から総務・人事へ正社員の悪質な行為を通報する制度の整備や、それによって派遣社員側の不利益が発生しないよう環境の整備が必要との声が、派遣先企業・派遣社員双方からある[誰?]

また派遣社員側は外部の人間のため、派遣先の指示なしでは動けない場合も多い。また派遣会社も場合によっては指示なしで行動せず、言動には慎重を期すよう教育していることもあり、社員に準じて率先して自ら動く労働者を求める場合は、準社員や契約社員の方が労働者派遣よりも適している場合が有り、派遣先企業の認識不足で労働者派遣がミスマッチとなっている例も多く報告されている[要出典]。また労働者派遣では派遣社員に完成責任は無いため、完成責任を有する請負の方が適した場合もある。

[編集] 派遣制度は一部の労働者にはメリットのある制度である

大手労働者派遣会社の場合は3~6ヶ月毎の更新契約が多いため、このことが精神的な圧迫になる者もいるが、逆にイニシアチブを一生就業先に預ける必要がないことに魅力を感じる者も少数存在する。

正社員では社内規定に基づいた平均化された給与と同一化され、能力に応じた支払いを受けることが難しい企業もなかにはあるが、高度な技術を身につけた労働者は高額な給与と時間的な自由度が高い派遣先だけを選ぶことにより、年収を向上させていくことができる。企業の人材育成意欲が低下している中[31]、企業に頼ることなく自らのキャリアアッププランを明確に持つことで、長期的にみれば会社に頼るのに比べ安定した収入を得ることができる。特に、派遣社員には原則、退職金やボーナスなどの待遇はない代わりに、業種や派遣社員の技能によっては月々の手取額が、中小企業のキャリアの浅い正社員よりも高くなることがある。このことで得た一時的な現金を元手に、留学や習い事に自発的に投資してさらなる能力を身に付けるという自己啓発計画をメリットに感じる者もいないとはいえない。一方大企業の正社員より給料が高いことはほとんどない。[要出典]

しかし製造業で働く派遣労働者の中で、何某かのメリットによって積極的に派遣労働者を選んだのは約3割だったという調査結果もある。 [32]

[編集] 関連作品

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ a b 原田二郎『あなたの知らない人材派遣』p.13
  2. ^ 南山大学)渡辺直登、水井正明、野崎嗣政 1990「人材派遣会社従業員のストレス、組織コミットメント、キャリアプラン」経営行動科学 第5巻 第2号
  3. ^ a b c d e 「人材派遣会社従業員のストレス、組織コミットメント、キャリアプラン」p.76
  4. ^ 「業務を処理する最小単位の組織において営まれる業務は、すべて単一の業務とみなされる。一般的には係、班のレベルと考えればいい」(日本労働弁護団常任幹事で弁護士の中野麻美氏)(「【特集】派遣の現場 頼りすぎたメーカーの現実」『日経ものづくり』11月号、日経BP、2008年。pp.44-61)
  5. ^ [1] 『政策レポート(労働者派遣制度について)』, 厚生労働省 職業安定局 需給調整事業課
  6. ^ 登録型派遣の規制を
  7. ^ 夢の追える社会をつくるために 植松電機 植松努さんの挑戦 ―赤平―」『カムイミンタナ』2007年09月号
  8. ^ 日本経営者団体連盟(現在の日本経済団体連合会の前身の片方)が1995年にコア事業以外の一般職を派遣に切り替える案を発表しており、それを受けての改正という説がある『東洋経済』2007年6月23日号
  9. ^ 総合規制改革会議「第2次答申」
  10. ^ http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo/sassi2/05.pdf 派遣労働者が多様な働き方を選択できるようになりました
  11. ^ ダニエル・H・フット『裁判と社会―司法の「常識」再考』溜箭将之訳 NTT出版 2006年10月 ISBN:9784757140950
  12. ^ 業界団体の社団法人も、その名に「人材派遣」の語を用いている。
  13. ^ 日本法令や、各法務局が編纂
  14. ^ 労働者派遣事業、労働者派遣業、一般労働者派遣事業、特定労働者派遣事業、いずれも可能。
  15. ^ [2]名古屋市:契約・派遣社員に対する意識調査」
  16. ^ 瀬戸久美子「“ハケン”を続けて、幸せになれますか?派遣社員の女性の実態に迫る」『日経ビジネスオンライン』日経BP社、2008年7月15日付配信
  17. ^ 「派遣は格差社会の元凶ではない」(日本人材派遣協会
  18. ^ 総務省『労働力調査』
  19. ^ 「【秋葉原通り魔事件】犯行使用のナイフとは別の刃物も所持 過去30年で被害最悪か」産経新聞2008.6.8
  20. ^ http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090128/crm0901280130001-n2.htm
  21. ^ http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090117/crm0901171228004-n1.htm
  22. ^ http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090128/crm0901280130001-n2.htm
  23. ^ NHKや新聞各社など
  24. ^ 「非正規、自動車技能伝承に課題 製品・サービスの質にも影響」共同通信、2008年9月4日付配信
  25. ^ 公演録「パソナの企業戦略と経営理念」南部靖之(株式会社パソナ代表取締役社長)1999年1月29日
  26. ^ 会計検査院 平成11年決算検査報告
  27. ^ 平成20年4月から高齢者医療制度が変わり、健保組合の保険料が急増します
  28. ^ 平成22年度労働者派遣事業報告書の集計結果
  29. ^ 派遣料金の仕組みについてご説明します 派遣スタッフの皆さま|社団法人 日本人材派遣協会
  30. ^ 派遣会社経営/上場5社の損益計算書主要指標比較
  31. ^ 教育訓練に取り組んだ企業の割合が低下、労働者一人当たりの教育訓練費も減少
  32. ^ 派遣労働者:製造業の7割が「消極的理由で」NPO調査」毎日新聞2008年11月2日
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