偽装請負
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偽装請負(ぎそううけおい)とは、業務請負や業務委託の契約形式を採る、または該当者が個人事業主として契約主体となっている場合であっても、実態が労働者供給あるいは供給された労働者の使役である、または労働者派遣として適正に管理すべきである状況を指す。これらすべてが民法上の取り扱いでは請負であり、契約形態を偽装・隠蔽することからこの名がついた。業務委託によるものは偽装委託(ぎそういたく)と表現する場合がある。
雇用契約では、使用者は労働者に業務命令をする権利を持つと共に、労働環境を適正に保つ義務がある。しかし請負では使用者は労働者に直接命令する権利がない代わりに(請負会社を通じて命令する)、労働環境がどんなに劣悪であってもこれに対し責任を負わない。ここまでは適法な契約行為である。しかし、労働環境に対する責任を免れたまま、請負契約の相手に直接命令を下すことは違法行為である。労働者は使用者から直接命令を受けることで、契約にない過重な仕事や残業を強いられる(労働者側は立場が弱いため「契約にないことはできません」といえない)。その一方で、使用者は労働環境を保護する義務は回避したままである。この使用者側のメリットは、そのまま労働者側のデメリットである。
違法行為である(詳細は後述)。しかしながら、1986年の労働者派遣法の制定やそれ以前にも請負に対する問題は内在しており、2004年の法改正による製造業派遣規制の解禁がきっかけとなり、労働者派遣に対する認識が高まった事や、2006年の公益通報者保護法の制定による通報者の増加により社会問題に発展したという意見が出されている[1]。 事実、2006年7月末以降断続的に朝日新聞が実態を報じた(ニュース特集「偽装請負」)ことなどによって問題が顕在化した結果、労使双方が対策に乗り出すこととなり、派遣業界などでは、俗に、日付を取って、「7・31ショック」と呼ばれている。
類似語として偽装派遣(ぎそうはけん)という用語があるが、これはほとんどの場合「請負偽装派遣」の省略であり、同一の行為を指す。「偽装された派遣」という表現をあらわすために使われる傾向があるが、本来の契約実態である「請負の偽装」と言う意味合いを含まないため、適切とは言えない。しかしながら同様に、「偽装請負」もその行為の実態が派遣であることを含んでおらず、また文法上も「請負の偽装」であれば「請負偽装」と表記すべきところであるが、語順が逆転し不自然な接続となっており、適切とは言えない。このような用語の混乱は、物書きのプロでさえ混同することがあるほど[2]で、偽装請負と偽装派遣が混在して理解されているのが現状と言える。「請負などの非雇用契約を偽装した違法派遣」または「請負偽装派遣」などとするのが、実態をより反映した表現になる。
なお、世間一般が認知する大きな問題となったのは、先述の朝日新聞による報道が大きく寄与している。しかし2003年ごろから経済誌などによる特集報道がいくつかなされていたため、朝日新聞が初めてではない。だが、この報道までは社会的認知度が低かった主たる要因として、ラディアホールディングス・プレミア(旧クリスタル→グッドウィル・プレミア)が些細なことでも批判記事を書かれる度に法外な損害賠償訴訟提起を連発したことで、報道した機関または他機関に関連報道を躊躇させる状況を作ってきた事などがあげられる(SLAPP;Strategic Lawsuit Against Public Participation、「公衆の言論を抑圧する戦略的訴訟」と呼ばれる)。
こうした偽装請負が後を絶たない根本的な理由のひとつとして、企業にとっては総人件費を削減することがもっとも手軽な経営改善策であるからである。
しかし、企業が自社の業績を回復させても国内全体の景気回復に結びつくわけではなく、労働分配率の低下はマクロ経済的には景気悪化要因であり、「国内経済の活性化に貢献するという意識」は誤りである。労働者の待遇悪化は社会の安定を損ない、社会を維持するコストを増大させるため、社会全体に不利益を与えた分を自社に利益として移転する行為であるといえる。だからこそ、法はこれを禁じ、企業は違法と知りつつ偽装請負をやめようとしないのが現状である。
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[編集] 概要
業務請負および業務委託や個人事業主の場合、本来はメーカーなどの顧客から仕事の発注のみが行われ、請負側は作業責任者を置き配下に人員がいる場合は、作業指示を行うのは請負側である。偽装請負となるのは請負側が人の派遣のみを行って責任者がいないか実質的に機能しておらず、顧客側の社員が作業指示を行っている状態を指す。
請負労働者の場合、労働基準法が適用されないため、派遣労働者と比べて顧客が作業員の身分に注意する必要はなく、生産効率の低い作業者は容易に交代させられるため、顧客は派遣契約をしたがらない傾向が強い。
偽装請負が生まれた主な理由は、旧法において、26種のポジティブリストに含まれていない製造業への派遣が行えず止む無く請負または業務委託という形をとっていたこと。そして、専門分野26種については3年、その他一般業務については1年という期間に対する法的制限の回避が行われていたこと。そして派遣先という立場よりも請負注文者という地位を求めていた[1]という事情にある。
社会保険・有給休暇・福利厚生といった負担を強いられる正規の人材派遣会社が、これらを負担しない請負企業とは営業面において公正な競争が出来ているとは言えず、派遣社員が被る手数料率の増大への近因となっている。請負企業が所得税や社会保険料の源泉徴収を行わない(違法行為)ことで表面的な手取り額が大きく、一部の求職者を魅了するといった側面もあり、こうした一部の求職者の特性に目をつけた偽装請負専門の違法業者の参入が後を絶たない。また、そうした違法業者を利用することで源泉徴収を免れた労働者が脱税行為に及ぶといった、二次的な問題も存在する。 桐野夏生作『メタボラ』(朝日新聞の連載小説)では、偽装請負の派遣会社に登録、派遣先工場で作業を始めた登場人物の様子が描かれる。
日本経団連会長の御手洗冨士夫は本件に関連し、「請負労働者に技術指導できないのが制約になっている」・および「偽装請負のおかげで産業の空洞化が抑止できている」旨の主張を経済財政諮問会議の席上などで行なっている。これらの発言に対しては、「偽装請負の合法化を企図している」として、また毎日新聞における特集記事においても、「経営者の立場と諮問機関メンバーの立場を混同する著しいモラル低下」である、と非難されている[3]。
主に就業者への営業機能を提供する派遣事業モデルは、資本主義の根底概念に反する部分を有しており、違法性が高いと考える声もある。
[編集] 日本の法律上の取扱い
[編集] 契約類型の解釈
一般に使用者が雇用契約を締結する場合には、雇用契約に基づいて労務を提供する者は労働者として、労働法による保護を受けることになる。ところが、民法におけるいわゆる典型契約としては、類似するものとして請負という契約類型が用意されており、請負人にはいわゆる労働法の適用がないのが原則である。
請負契約の特質は、請負人は仕事の完成を請け負うものであって、発注者は仕事の完成に関して対価を支払うものとされている点にある。この点が、労務に服することを約して労務に対して対価を支払う雇用関係との顕著な違いであり、裏返せば、雇用と請負を区別する判断基準となる。労働関係を規律する労働法に比して、請負関係における請負人を「保護」する法制は緩やかなものであることから、実質的に雇用関係にある場合であっても「請負」との形式を「偽装」することで、労働法令の規制の潜脱を企図する、というのが偽装請負の出発点である。
なお、法令の適用上、特定の契約が雇用契約なのか請負契約なのか、などの契約類型に関する判断は、当事者が用いた用語に拘束されることなく、実質的な内容の判断によりなされる、というのが一般的な解釈である。
[編集] 職業安定法と労働者派遣法との関係
上記の理は、間接的な雇用関係というべき労働者派遣の場面においても当てはまる。したがって、どういう内容の契約を締結した場合に、形式的には請負契約を謳っていたとしても、雇用契約ないしは労働者派遣契約としての規律に服せしめるかの基準が問われることとなる。
職業安定法施行規則第4条によれば、労働者を提供しこれを他人の指揮命令を受けて労働に従事させる者(労働者派遣法に基づく者は除く)は、たとえその契約の形式が請負契約であっても
- 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負う
- 作業に従事する労働者を、指揮監督する
- 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負う
- 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでない
を全て充足しないものは労働者供給事業を行う者、すなわち派遣を行っている者とみなされる。
また、同条2項によれば、
- 前項の各号のすべてに該当する場合であっても、それが法第44条(労働者供給事業の禁止)の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が労働力の供給にあるときは、法第4条第6項の規定による労働者供給の事業を行う者であることを免れることができない。
とあるので、請負契約なのに人手を集めて送り込むだけの行為であれば職業安定法違反(許可されていない労働者供給行為)及び労働者派遣法違反(特定派遣事業者については無届け営業、登録型または紹介予定派遣事業者は無許可営業)―つまり違法な人貸しとなる。
[編集] 労働災害の責任負担
偽装請負の状態でひとたび労働災害が発生すれば、労働者を送り込んだものだけではなく、労働者を受け入れた者も責任を負わされる。責任の負担に当たっては、形式的な契約形式にとらわれず、労働者を受け入れた者は、実態に応じて、当該労働者の雇用者または派遣労働者を受け入れた者などとしての責任を負う。
「派遣と判断された場合は派遣元の責任ではないか」と誤解される可能性もあるが、そもそも派遣であれば派遣元派遣先双方が安全上の責任義務がある。よって法的責任の回避の意図ありととられて、コンプライアンス上の責任も問われる。
[編集] 税法上のリスク
平成16年から導入された外形標準課税制度(資本金一億円以上の法人が対象)において、正当な請負であれば請負契約金額は課税標準に組み入れなくとも良い(=課税対象外にできる)が、偽装請負と判定された場合は請負契約金額全額が報酬給与額と認定され課税標準に組み込まれ、結果として税金が重くなる。
なお正規の派遣において、派遣料金における課税標準は75%である。
[編集] 契約上のリスク
請負契約・業務委託契約は労働契約・雇用契約ではないため、労働基準法が適用されない。偽装が巧妙化されていたり、労働者が知らぬ間に請負・委託契約という形態で労働させられていた場合、偽装請負であるという立証は難しいといえる。
[編集] 偽装請負の事例
[編集] キヤノン
朝日新聞が2006年7月31日付、2006年10月18日付などで複数回にわたって報道。 キヤノンの宇都宮工場や、子会社の大分キヤノンなどで偽装請負が発覚し、2005年に労働局から文書指導を受けた。キヤノングループでは、請負労働者が約15,000人居るとされ、2006年8月1日に偽装請負の完全解消を目指して「外部要員管理適正化委員会」を社内に設置し、派遣・請負労働者のうち数百人を正社員に採用すると報じられた。
しかし、2007年02月18日、キヤノンは新卒採用を優先し、派遣・請負の正社員化は後回しにする方針である事が朝日新聞により報道された。この報道に対し、キヤノン側は2006年中に430名の派遣・請負労働者を直接雇用しており、決して直接雇用に消極的なわけではない、と反論している。但し、「正社員化」についてはこの反論においても触れられていない。[1]
[編集] キヤノン宇都宮工場とフジスタッフグループ
キヤノン宇都宮工場にてフジスタッフグループ傘下の業務請負会社アイラインは偽装請負を行なっている。雇用主はアイラインであるにも関わらず労働者はキヤノンの正社員より教育を受けていた。
当初は請負契約であったものが、2005年5月に労働者派遣契約に変更し、2006年5月に請負契約に変更するといった、雇用形態の変更が複数回行なわれた。
2007年2月にはキヤノンユニオン宇都宮支部長が衆議院予算委員会の公聴会に招かれ、本偽装請負について意見を述べている。(日経ビジネス2007年4月2日号「『抜け殻』正社員:派遣・請負依存経営のツケ」、2006年7月31日朝日新聞「「偽装請負」労働が製造業で横行」、2007年2月21日朝日新聞「偽装請負への思い、国会で訴えへ キヤノン工場の男性」、2007年2月22日朝日新聞「キヤノン請負労働者「生身の人間。正社員と同じ賃金を」)
2007年8月中旬から本項目、およびフジスタッフホールディングス、アイラインの項目において株式会社アイライン、及びその意を受けたと見られるIT調査会社IDC Japan(インターナショナルデータコーポレーションジャパン)を所有者とするIPアドレスから、偽装請負関連の情報に言及した部分を、繰り返し削除するという荒らし行為が発覚している。
2007年8月29日、毎日新聞の報道によると、キヤノンはアイラインの従業員82名を直接雇用すると発表した[2]。ただし、正社員としてではなく、最長2年11ヶ月の「契約社員」としての直接雇用であるという。また同記事の最後に「請負労働者の直接雇用は初めてという」というくだりがある事から、上項の「派遣・請負の正社員化」については一向に進んでいないことも明らかになった。
[編集] トヨタグループ
[編集] トヨタ車体精工
トヨタ自動車グループの部品メーカー「トヨタ車体精工」(TSK、愛知県高浜市)の高浜工場において、2006年3月、請負労働者が全治4週間のけがをしたのにもかかわらずTSKも労働者が所属する請負会社「大起」(同県岡崎市)も労働安全衛生法で義務づけられている労災報告をしていなかったことが報道された。記事によると、TSKによる「偽装請負」が行われていたとされる。「労災隠し」の疑いありとして高浜市を所管とする刈谷労働基準監督署が捜査に乗り出している。TSKも大起も7月に報道機関から指摘されるまで報告していなかった。
本件は2006年8月12日付朝日新聞で報じられたほか、同日付東京新聞にも掲載が確認されている。
[編集] 光洋シーリングテクノ
2006年8月6日付朝日新聞による報道。これ以前に毎日新聞が2005年末より展開している特集記事「格差の現場から」の2006年2月28日付記事に記載がある(外部リンク参照のこと)。このほかの詳細はクリスタルグループを参照のこと。
[編集] いすゞ自動車グループ
2006年8月13日付朝日新聞による報道。
偽装請負が労災隠しの要因になった例として、いすゞ自動車系の部品メーカー「自動車部品工業」(神奈川県)で、2003年~2004年に起きた6件の労災隠しがある。厚木労基署は「偽装請負を知られたくないという動機があった」と認定し、2005年2月、同社と当時の幹部らを書類送検した。
[編集] 松下グループ
2006年10月25日付読売新聞、同年11月1日付徳島新聞、朝日新聞など、複数メディアかつ複数回に渡って報道されている。
松下電器産業(現パナソニック)の子会社「松下プラズマディスプレイ(現パナソニック プラズマディスプレイ)」(大阪府茨木市、以降本節上ではMPDP社ないし松下と表記)が、茨木工場で勤務する社員を請負業者側に出向させ、請負労働者に直接業務の指揮をしているのは、労働者派遣法に抵触する恐れがあるとして、大阪労働局が実態調査に乗り出している。
MPDP社は2005年7月に茨木工場で「偽装請負」を行っているとして同労働局から是正命令を受け、松下側は請負労働者全員を松下側が直接指揮できる派遣社員に切り替えた。しかし、松下側は2006年5月、再び請負契約に戻し、自社社員を「技術指導」の名目で業者側に出向させ、請負労働者を直接指揮する形に変更した。派遣社員には、労働者の労務、安全管理などの責任を松下側が負う必要があり、労働者側から「請負契約に戻したのは、責任回避のための脱法行為ではないか」との指摘が出ていた。この契約変更を厚生労働省は10月31日までにMPDP社の職業安定法違反にあたるとして是正を求める行政指導を行った。同時に尼崎工場でも同様の実態があったことが明らかとなっている。
また、偽装請負に反対したある偽装請負被雇用者はMPDP社に対し正規の雇用形態への変更を求めるとともに内部告発した。それに対し松下側は、当該者の雇用を契約社員に切り替えたがその業務内容は今までに例のないもので、窓のない狭い場所に単独で閉じ込め廃棄する部材をわざわざ修理させ、さらに契約期間満了として雇用を打ち切った。それに対し松下は、当該従業員の希望を尊重したと主張している。この被雇用者はMPDP社に対して裁判を提起し、2007年1月現在係争中。
[編集] 日亜化学工業
2006年11月1日付朝日新聞、しんぶん赤旗などによる報道。
日亜に就業していた労働者7名が、偽装請負であるとして徳島労働局に申告したところ、翌11月、徳島県の仲介もあって、日亜は3年以上働く請負労働者を採用選考の後に順次直接雇用するなどと提示したため、労働者側は申告を取り下げた。同社工場で働く請負労働者(約1600人)のほぼ全員について、勤続年数が3年を超えた労働者を順次契約社員として直接雇用する方針を徳島県の立会いのもとで決めた。直接雇用を決めた人数規模では現時点では最大規模であった。しかし、上記7名が就業していた職場は廃止され、2007年1月と5月から行われた選考試験でも全員不採用になり、職を失った。そこで同年7月23日、上記7名は、日亜に対し直接雇用と契約解除の撤回を指導、勧告するよう、徳島労働局に申告した。
[編集] ゼンショー
出典:週刊東洋経済2008年2月16日号
牛丼チェーン「すき家」渋谷道玄坂店のアルバイト従業員が06年に不当解雇を訴え社内に労働組合がないため首都圏青年ユニオンに相談したところ、同社の残業代の割増分の不払いが判明。解雇は撤回され、ゼンショーは謝罪。過去2年分の割増賃金も支払われたが、その後、組合に加入した仙台泉区店のアルバイト従業員に対する支払いは拒絶。組合との団体交渉も拒否するようになった。組合は東京都労働委員会に救済申し立てを行う。2007年11月末、審理の場に提出された準備書面でゼンショーは「会社とアルバイトとの関係は、労働契約関係ではなく、請負契約に類似する業務委託契約である」との見解を示した。しかし、アルバイト・パート募集の際に請負について一切触れられていない事、個人請負ならば契約関係は対等であるはずなのに給与明細がある事、個人事業主は確定申告で税金を支払うはずだがその税金が源泉徴収されている事、請負業務は労働結果に対して報酬を貰うものだが時給で給料が支払われている事、フランチャイジーが存在せず直営店のみであるにも拘らずこのような主張をするなど多くの矛盾・不可解な点が存在する。[4]
[編集] 大和製罐
[編集] TOTO
2008年9月5日付朝日新聞、毎日新聞などによる報道。
TOTOの滋賀工場(滋賀県湖南市)に1993年から勤務していた人材派遣会社の男性社員が、2007年5月に、作業中に機械と支柱に挟まれ死亡した。これを巡り、東近江労働基準監督署が、同年9月に偽装請負を認定し、労働安全衛生法違反で同社を書類送検した。また、男性の遺族が、「偽装請負状態で働かされ、会社が安全管理義務を怠った」として、2008年9月に、同社を相手取り1億円の損害賠償を求めて大津地裁に訴えを起こした[5]。
[編集] クボタ
2008年9月25日付読売新聞、2008年9月30日付毎日新聞などによる報道。
クボタの『恩加島事業センター』(大阪市)で勤務する日系ブラジル人や中国人ら約10人が、同社での偽装請負の発覚後、期限付きの契約社員となったが、その後期限切れで契約を打ち切られることになった。このため、この10人の外国人従業員は、2009年4月以降の同社の従業員としての地位確認を求める集団訴訟を、2008年9月30日に大阪地裁に起こした[6]。同社は、関東所在の工場で偽装請負を指摘され、これを契機に雇用形態を見直し、請負会社の従業員だった労働者らを、2007年4月から2年間の期限付きで直接雇用している[7]。
[編集] 国土交通省
2008年12月6日付毎日新聞、12月12日付毎日新聞、2009年3月16日付毎日新聞などによる報道。
中央省庁の一つである国土交通省でも、公用車の運転を巡り、偽装請負があったことが指摘されている。
同省発注の公用車の運転を巡り、大手車両運行管理請負会社・『日本総合サービス』に請負として勤務し、広島国道事務所などの同省の出先機関で公用車運転に当たっている九州・広島地区の運転手計35人が、日本総合サービスからではなく、出先機関から直接業務指示を出されているなどとして、偽装請負があったと主張[8]。このうち、広島地区の運転手計7人が、偽装請負の解消を求め、広島労働局に対し、是正勧告申告書を提出[9]。これについて、同労働局は、翌2009年に立入検査を行い、同年2月23日に、広島国道事務所に対し、是正勧告を行った[10]。
またその後、遠賀川河川事務所の3人と山国川河川事務所(いずれも九州地方整備局管内)の1人の運転手が2009年3月16日に、同様な偽装請負があったとして、是正勧告申告書を福岡労働局に提出した[11]。
[編集] 三菱重工業
三菱重工業高砂製作所(兵庫県高砂市)で、約8年間に亘り請負・派遣双方で勤務してきた同県加古川市在住の46歳の男性が、長年に亘り偽装請負状態で勤務させられたとして、同年1月13日に、同社を相手取って、神戸地裁姫路支部に対し、正社員としての地位確認を求める訴訟を起こした[12]。
[編集] 日本化薬
日本化薬の姫路工場(兵庫県姫路市)で、50歳の男性が、2005年6月から請負契約社員として、その後、翌2006年10月から2009年1月まで派遣社員として勤務していたが、請負契約期間中にあっても、同工場の正社員の指揮下で働かされており、偽装請負の状態だったと主張して、正社員としての雇用確保を求め同社と交渉したものの、反応が無いとして、2009年3月6日に同社を相手取り、正社員としての地位確認を求める訴訟を神戸地裁姫路支部に対して起こした[13]。
[編集] 大成建設
2009年5月8日付毎日新聞による報道。
同社に1997年から11年間に渡り勤務してきた40歳の男性は、同社の本社部門で設計本部のグループで勤務してきた。しかしこの男性は、派遣会社から設計の請負会社に派遣され、そこからさらに大成建設へ派遣され、二重派遣の状態だった。また、同社内では、同社社員の指揮命令の下で働いてきた。その後2008年11月に、派遣会社に登録し直すか、これまでの時給制ではなく個人請負として業務1つ当たりの単価制で働くかを迫られ、拒否したところ雇用を打ち切られた。また、2003年10~11月の半月間に亘り、過労死ラインである月100時間を大幅に超える238時間の残業を命じられ精神障害を発症したのに、同社は社会保険に加入させず、「労災は適用されない」などと説明を受けた。このため、この男性は偽装請負の是正を求め東京労働局に申告を行い、同局から2009年4月20日に是正指導を実施したとの連絡を受けた。これを受け男性は、社員としての地位確認と、過労での精神的障害を受けたとする損害賠償など約3,000万円の支払いを求め東京地裁に提訴。男性は、「大成建設が契約変更を言い出したのは、偽装請負があったため」と主張している。ホワイトカラーの労働現場を巡る偽装請負を巡る提訴は異例[14]。
[編集] 厚生労働省の見解
2007年9月27日、厚生労働省は個人事業主として存在するメッセンジャー(バイク便・自転車便運転者)に対して、正式に「労働者」と認定を下した。 判定基準は以下の通り。
これを「労働者性がある」とし、各都道府県労働局に対しても同様の判定基準を通告した。
しかしその後同省は、2009年3月末に、請負従業員を使う企業と請負会社の労働者とが同職場内で混在して勤務していたり、同一の制服(もしくは作業服)を着用して勤務するなど典型的な偽装請負の事例であっても、それだけでは偽装請負とは判断されないとする内容の通達を出した。これについて同省は、「実態を踏まえて判断するという趣旨」と説明しているが、事実上の解釈変更と受け取られており、労働組合の全国ユニオンの間からは、「これでは違反企業を取り締まれず、かえって偽装請負を助長しかねない」などという主張が出ており、ユニオンでは撤回を申し入れている[15]。
[編集] 被害者の対応策
実態が派遣であるにも関わらず業務委託(個人事業主)という名目で契約をしてしまった場合は、処遇に応じて労働局、労働基準監督署、国税庁、税務署、社会保険事務所に速やかに通報することが肝要である。
労働関連諸局による斡旋は強制力がなく、労働団体による団体交渉も実効性に欠ける。現状としては、裁判所にて地位確認(労働者認定)を行う以外、有効的な救済法はない。労働者にとっては数ヶ月から数年と長期間を要し、さらに弁護士費用・当分の生活費など、ハードルが高く、あきらめざるを得ないケースがほとんどである。
最も重要な論点とされる指揮権問題については、企業側によって「相談」「指導」「随時発注」などと、巧妙な言い回しによって誤魔化されるため、明確に立証できるケースは極めて少ない。ゆえに偽装請負が堂々行われる根本原因になっている。
[編集] 参考文献
- プラマックス 偽装請負のリスクについて -※PDFファイル
[編集] 脚注
- ^ a b 労働調査会 外井浩志著 偽装請負:労働者派遣と請負の知識(ISBN 978-4-89782-965-4, NBN 21288416, NDL AZ-512-H250)
- ^ コンプライアンス、内部統制の時代に、偽装請負、隠れ派遣の問題を考える
- ^ 労働ビッグバン 労働法制の主導権争い
- ^ 個人請負という名の過酷な”偽装雇用”(1) | 社会・政治 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン
- ^ TOTO:「偽装請負」で労災…死亡男性の遺族が損賠提訴 毎日新聞 2008年9月5日
- ^ 偽装請負:問題対策「雇用形態変更は違法」 外国人労働者ら、クボタを提訴--大阪 毎日新聞 2008年9月30日
- ^ 偽装請負発覚「クボタ」の外国人労働者、地位確認求め集団提訴 読売新聞 2008年9月25日
- ^ 国交省:公用車運転業務問題 10年超す偽装請負 「国交省は直接雇用を」 毎日新聞 2008年12月6日
- ^ 国交省:公用車運転業務問題 運転手「直接雇用を」 違法是正求め申告書--広島 毎日新聞 2008年12月12日
- ^ 公用車運転めぐり 国道事務所が「偽装請負」 広島労働局が是正指導 産経新聞 2009年2月23日
- ^ 偽装請負:直接雇用求め福岡労働局に申告書 運転手4人 毎日新聞 2009年3月16日
- ^ 提訴:「偽装請負だ」と三菱重工を--兵庫の男性 毎日新聞 2009年1月14日
- ^ 「偽装請負で働かされた」元派遣社員が日本化薬を提訴 産経新聞 2009年3月6日
- ^ 偽装請負:大成建設を提訴、解雇の男性「雇用関係あった」 毎日新聞 2009年5月8日
- ^ 厚労省の偽装請負判断基準 「かえって助長」撤回要請 朝日新聞 2009年4月10日

