UH-60J (航空機)

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航空自衛隊のUH-60J

UH-60Jは、アメリカ合衆国シコルスキー・エアクラフトが開発したUH-60 ブラックホーク日本が救難目的に独自改良した救難ヘリコプター[1]航空自衛隊海上自衛隊に配備されている。また、三菱重工業ライセンス生産を行っている[1]。隊員たちの間ではロクマルという通称で呼ばれている。

なお、この項目では陸上自衛隊向けの多用途ヘリコプターであるUH-60JAについても述べる。

UH-60J 救難ヘリコプター[編集]

航空自衛隊[編集]

航空自衛隊のUH-60J
航空自衛隊のUH-60J
低視認(ロービジ)塗装として洋上迷彩が施されている
松島救難隊創設50周年記念塗装機
新潟分屯基地創設50周年記念塗装機

航空自衛隊向けの機体は、1988年(昭和63年)度予算から調達を開始し2014年(平成26年)度予算までに50機の予算を計上している。

救難隊用のKV-107の後継として[1]アメリカ空軍HH-60Aをベースに改良し[1]、機首に赤外線暗視装置FLIR)や航法気象レーダー[1]、機体両側面に捜索用バブルウインドウ(半球状に膨らんだ形の窓)や大型の増槽を装備している[2]。UH-60Jの開発当時には全天候型の救難専用ヘリコプターはまだ実用化されておらず(HH-60Gは開発中で、試作機のみ完成していた)、本機が初の実用化例となった[3]

実際の救難現場ではU-125Aと組んで運用される。長らく救難隊用に白と黄色の塗装であったが、2005年(平成17年)生産分からダークブルーの洋上迷彩塗装に切り替えられ、既存の機体も順次変更されている。また、48-4579号機以降の機体にはチャフ/フレア・ディスペンサーやミサイル警報装置が装備されているほか、アビオニクスも改良されている。これらの機体はUH-60J (SP)と呼ばれ、それ以前の機体と区別されている(「SP」はSelf Protectionの略)[4]。さらに98-4588号機からは空中給油用の受油プローブが装備されている[1]。また、自衛用の5.56mm機関銃MINIMIの装備も開始されている。

2011年度予算から航空自衛隊のUH-60J後継機の調達が予定されていたため[5]、提案要求書に基づき川崎重工業三菱重工業ユーロコプタージャパンが提案書を提出した。2010年11月5日防衛省は、三菱重工のUH-60Jの能力向上型「UH-60J(近代化)」を選定したと発表した[6][7]。費用は約40機分の機体と20年間の維持経費などで約1,900億円としている。

配備基地


海上自衛隊[編集]

海上自衛隊のUH-60J

海上自衛隊向けの機体は、1989年(平成元年)度予算から調達を開始し2001年(平成13年)度予算までに19機の予算を計上した。

S-61AHの後継として導入。航空自衛隊の機体とほぼ同じだが[1]海上自衛隊独自の装備があるために全備重量が若干増えているほか、増槽パイロンHH-60用のものに変更されている。こちらは白とレッドオレンジの塗装である。

なお、海上自衛隊ではUH-60Jの他、哨戒ヘリコプターとしてSH-60Jも103機採用し、続いてSH-60Kを50機程度導入中である。

配備基地

UH-60JA 多用途ヘリコプター[編集]

陸上自衛隊[編集]

陸上自衛隊のUH-60JA
ローターマスト前方にあるアンテナ状のものはワイヤー・カッター

1995年(平成7年)度予算から調達を開始し2013年(平成25年)度補正予算までに40機の予算を計上している。2015年3月末時点の保有機数は36機[8]

航空輸送を始めとする各種任務に使用されることから、赤外線暗視装置FLIR)、航法気象レーダーGPS慣性航法装置による自動操縦機能に加えて、エンジンの排気口へ装着された赤外線排出抑制装置(IRサプレッサー)やワイヤー・カッター(進路を妨げる電線やワイヤートラップなどを切断する)、チャフ・ディスペンサー、IRジャマーを追加装備し、燃料容量を増加して航続距離を1,295キロメートルに延長している。装備や燃料は増えたが、全備重量は9トンと削減されている。

当初、現在使用中であるUH-1Hの後継機として置き換える計画だったが、UH-60JA(約37億円)が大変高価なためにUH-1J(約12億円)とハイローミックスする計画に変更した。

また、アメリカ陸軍同様に、対戦車ミサイルランチャーロケット弾ポッド、ガンポッドなどを装備する計画だったが、予算の関係で見送られ増槽装備のみに止まる。状況に応じてキャビンドアに12.7mm重機関銃M2を、5.56mm機関銃MINIMIをキャビンドアとガナーズドアに搭載し、ドアガンとして運用することができる。2008年3月、キャビン内左右に機関銃を固定装備化した「ドアガン飛龍」が第1ヘリコプター団に登場した。

なお、沖縄の第15飛行隊向けの4機については、洋上飛行が多いため、不時着水時の脱出が容易となるように、コックピットドアの窓枠が廃止されているほか、主脚付け根のスポンソンにはフロートが内蔵されている沖縄仕様の機体となっている。当初は白、オレンジ、オリーブドラブの塗装である沖縄塗装が施される予定だったかが、通常の迷彩塗装で配備されている。

配備駐屯地

調達数[編集]

UH-60J/JAの調達数[9][10][11]
予算計上年度 陸自 海自 空自
昭和63年度(1988年) - - 3機
平成元年度(1989年) - 3機 2機
平成2年度(1990年) - 0機 2機
平成3年度(1991年) - 3機 4機
平成4年度(1992年) - 2機 2機
平成5年度(1993年) - 2機 1機
平成6年度(1994年) - 1機 2機
平成7年度(1995年) 2機 1機 2機
平成8年度(1996年) 4機 2機 1機
平成9年度(1997年) 4機 2機 3機
平成10年度(1998年) 5機 2機 2機
平成11年度(1999年) 3機 0機 2機
平成12年度(2000年) 3機 0機 2機
平成13年度(2001年) 2機 1機 2機
平成14年度(2002年) 2機 - 1機
平成15年度(2003年) 1機 - 2機
平成16年度(2004年) 1機 - 2機
平成17年度(2005年) 1機 - 2機
平成18年度(2006年) 1機 - 2機
平成19年度(2007年) 0機 - 2機
平成20年度(2008年) 1機 - 1機
平成21年度(2009年) 1機 - 0機
平成22年度(2010年) 3機 - 0機
平成23年度(2011年) 2機 - 3機[注 1]
平成24年度(2012年) 1+1機[注 2] - 0+2機[注 2]
平成25年度(2013年) 1+1機[注 2] - 0機
平成26年度(2014年) 0機 - 3機
平成27年度(2015年) 0機 - 1機
合計 40機 19機 51機

性能・主要諸元 (UH-60J 航空自衛隊仕様)[編集]

SIKORSKY UH-60A BLACK HAWK.png
T700-IHI-401Cエンジン

出典: 特記以外は航空自衛隊公式ウェブサイト[2]

諸元

  • 乗員: 5名
  • 全長: 19.76m
  • 全幅: 5.43m

性能

  • 最大速度: 約265km/h=M0.22 (143kt)
  • 巡航速度: 約235km/h=M0.19 (127kt)
  • フェリー飛行時航続距離: 2,200km[4]
  • 航続距離: 約1,295km
  • 実用上昇限度: 約4,000m (13,500ft)

武装

お知らせ。 使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。


登場作品[編集]

実写映画[編集]

空へ-救いの翼 RESCUE WINGS-
主人公である女性初の救難ヘリコプターパイロットが乗り込む航空機として、洋上迷彩が施された航空自衛隊航空救難団小松救難隊所属のUH-60Jが登場。コールサインは「ヘリオス」。
図書館戦争
関東図書隊の装備としてUH-60JAが登場。撮影には陸上自衛隊の実機が使われ、図書隊のマークが描かれている。
日本沈没 2006年
航空自衛隊の機体がラストシーンにて、ハイパーレスキュー隊員を乗せて救助に登場する。
マリと子犬の物語
陸上自衛隊第12旅団所属のUH-60JAが登場。新潟県中越地震の被災状況を上空から観測する。

TV番組[編集]

1億人の大質問!?笑ってコラえて!
空飛ぶ広報室
第7話において、山岳救助事案に百里救難隊所属機がU-125Aとともに登場。
密着118日!戦闘機パイロットへの道 ウイングマークにかける男たちの闘い

アニメ・漫画[編集]

S -最後の警官-
漫画版と実写映画版に航空自衛隊所属機が登場。漫画版では第2あかつき丸突入作戦時に悪天候のため飛行できない警察および海上保安庁航空隊のヘリに代わり主人公ら突入部隊が搭乗する。実写映画版では冒頭の警察・自衛隊合同訓練と第2あかつき丸突入作戦の際に登場。登場人物の1人から「UH-60の性能は国内ではダントツ」と紹介されている。なお、実写映画版では航空自衛隊の協力により実機が撮影に使われた。
学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD
陸上自衛隊所属機が、主人公たちが通う高校の上空を通過していく。
劇場版 そらのおとしもの 時計じかけの哀女神
冒頭にて空見町に現れた巨大ニワトリに対処すべく、航空自衛隊のUH-60Jが登場する。
航空自衛隊小松基地救難隊 RESCUE WINGS
小松救難隊所属機が、主人公である女性初の救難ヘリコプターパイロットが乗る機体として登場する。
ジオブリーダーズ
続・戦国自衛隊
戦国時代タイムスリップした自衛隊の装備として、漫画版では2機、小説版では1機登場する。隊員たちの輸送に使われたほか、上空から戦国武者たちに機銃掃射を浴びせる。
地球防衛企業ダイ・ガード
国連安全保障軍に参加した機体が度々登場する。
図書館戦争
関東図書隊の装備としてUH-60JAが登場。使われているのは、自衛隊からの払い下げ品という設定である。
よみがえる空 -RESCUE WINGS-
小松救難隊に配属された主人公がパイロットを務める機体として登場。

小説[編集]

MM9
第5話に海上自衛隊下総航空基地所属のUH-60Jが登場。等身大状態の少女型怪獣ヒメを阪神地区へ運ぼうとしたが、小牧基地燃料補給中に暴れたヒメによって破損してしまう。
イリヤの空、UFOの夏
自衛軍所属機として登場。第4巻の終盤にて主人公を園原中学校からアメリカ海軍原子力空母「タイコンデロガ」へと空輸する。
海の底
海上自衛隊館山救難飛行隊所属のUH-60Jが登場。横須賀甲殻類襲来事件によって孤立したおやしお型潜水艦「きりしお」の船内に取り残された民間人の救助を、事件発生3日目と6日目に試みる。
学園キノ
第4巻に航空自衛隊千歳基地所属のUH-60Jが登場。美老婆銃士ヴァヴァア・ザ・スーパーが北海道から東京までの移動手段として使用する。
ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
生存者ゼロ
海上自衛隊のUH-60Jが登場。東千歳駐屯地から根室半島沖の石油掘削プラットフォーム「TR102」へと向かう主人公らの移動手段となる。
図書館戦争
映画・アニメ・漫画版と同様。
天空の蜂
航空自衛隊のUH-60Jが登場。高速増殖原型炉「新陽」上空でホバリングするCH-5XJ「ビッグB」の機内に取り残された子供を救助するほか、終盤にも再登場する。
『日本北朝鮮戦争 竹島沖大空海戦』
陸上自衛隊敦賀原発防衛部隊の増援として1機が登場し、敗走する北朝鮮工作員の目の前に堂々と着陸し、増援の隊員15人を降着させ、北朝鮮工作員を挟撃する。
『ピノキオ急襲』
陸上自衛隊のUH-60JAが特殊部隊「サイレント・コア」の移動に使用されるが、ロボット兵士「ピノキオ」に対物ライフルエンジン狙撃され、墜落してしまう。
謀殺のチェス・ゲーム
UH-60をベースに日本が独自開発したという設定の架空の攻撃ヘリコプターが登場。防衛庁長官直轄の実験航空隊所属機として登場し、何者かに強奪された新型哨戒飛行艇PS-8の追跡に使用される。
『ルーントルーパーズ〜自衛隊漂流戦記〜』
異世界に飛ばされてしまった自衛隊の装備として登場。駐機中にドラゴンに襲われてしまう。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 航空自衛隊の調達は、この年からUH-60J(近代化)に更新。
  2. ^ a b c +は補正予算分。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g 『自衛隊装備年鑑 2006-2007』 朝雲新聞2006年、324, 424-425頁。ISBN 4-7509-1027-9
  2. ^ a b 主要装備 UH-60J”. 航空自衛隊. 2015年9月10日閲覧。
  3. ^ 『航空自衛隊航空救難団の実力 『よみがえる空 RESCUE WINGS』公式ガイドブック』 ホビージャパン〈ホビージャパンMOOK 214〉、2007年、116 - 119頁。ISBN 978-4-89425-583-8。「櫻田秀文「サンパイン号 災害派遣で開眼」」
  4. ^ a b c ホビージャパンMOOK 2007, p. 98.
  5. ^ 我が国の防衛と予算 平成23年度予算の概要 (PDF)”. 防衛省. p. 5 (2011年1月). 2015年9月10日閲覧。
  6. ^ 航空自衛隊の次期救難救助機の機種決定について”. 防衛省 (2010年11月5日). 2015年9月10日閲覧。
  7. ^ “航空自衛隊の救難救助機UH-60Jの後継機に選定” (プレスリリース), 三菱重工業, (2010年11月5日), http://www.mhi.co.jp/news/story/1011054996.html 2015年9月10日閲覧。 
  8. ^ 平成27年度防衛白書 資料35 主要航空機の保有数・性能諸元”. 2015年9月10日閲覧。
  9. ^ JapanDefense.com[リンク切れ]
  10. ^ 防衛白書の検索”. 防衛省. 2015年9月10日閲覧。
  11. ^ 予算等の概要”. 防衛省. 2015年9月10日閲覧。
  12. ^ UH-60J 救難ヘリコプタ(海自)”. 三菱重工業. 2015年9月10日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]