特殊作戦群

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特殊作戦群
Special Forces Group of the JGSDF.jpg
中央即応集団編成完結行事に参列した
特殊作戦群隊員
創設 2004年(平成16年)3月29日
所属政体 日本の旗 日本
所属組織 Flag of the Japan Self-Defense Forces.svg 陸上自衛隊
部隊編制単位
兵科 諸職種混成
兵種/任務/特性 特殊部隊、諸職種混成、対テロ、対ゲリラコマンド空挺
人員 約300名[1]
所在地 千葉県 船橋市
編成地 習志野
愛称 特戦群
上級単位 陸上総隊
担当地域 全国(海外も含む)
現司令官  
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特殊作戦群(とくしゅさくせんぐん、JGSDF Special Forces Group : SFGp)とは、陸上自衛隊および防衛省において公式に特殊部隊と定義された部隊である[注 1]。編成単位は。詳細な内容は安全保障上、日本国政府から公表されていない。略称で「特戦群」と呼ばれている。

概要[編集]

2004年(平成16年)3月29日にアメリカ陸軍のグリーンベレー(アメリカ陸軍特殊部隊群)デルタフォースのような特殊部隊を目指して設立され、第1空挺団の拠点である習志野駐屯地に群本を置く。初代群長は直接部隊創設に携わった荒谷卓が就任した。

発足当時の陸上幕僚長先崎一陸将は記者団に対し会見で「(隊員には)ハードな知識や技能、メンタルな部分が要求されるので(特殊作戦群の実戦化には)10年 - 15年はかかると思う」と述べており、初代群長の荒谷卓は、訓練や練度は部外者が知り得ない防衛秘密であり、守秘義務に抵触するとして言及を避けている。有事の際は、他の陸上総隊隷下部隊(第1空挺団水陸機動団第1ヘリコプター団第102飛行隊)、中央即応連隊等)や任務に該当する一般部隊、場合によっては海上自衛隊、航空自衛隊などと連携し全国規模で行動する。

重材料運搬する特殊作戦群志願者

選抜[編集]

選抜試験の受験資格は公開されていない。公表されている防衛省訓令[注 2]では、特殊作戦隊員の要件として、空挺基本降下課程、もしくは空挺基本降下課程と特殊作戦課程両方の履修が必須とされているが、レンジャー資格については特に書かれていない(※戦闘中隊配属を希望する場合は、レンジャーが必須ともいわれている)。選考検査(セレクション)から教育(特殊作戦課程)を経て特殊作戦群の隊員になれるのは訓練参加者全体の1割から3割程度といわれている。

母体が第1空挺団であったため設立当時は空挺団内から優秀な隊員を選抜にかけていたが、以後は全国の隊員から職種に関係なく選抜されている。最初のセレクションに約2週間、セレクションを突破した隊員のみさらに1年間選考をかねた特殊作戦課程が行われる。セレクションを突破した隊員の中で空挺徽章を持っていない隊員は、第1空挺団の基本降下課程へ入校し卒業後、特殊作戦課程へ入校する。卒業し特殊作戦群の隊員になっても、陸海空の各種教育(海上自衛隊のスクーバー課程、陸上自衛隊の自由降下課程、冬季遊撃レンジャーなど)を受ける必要があり、中核をなす隊員になるには、セレクションから数年はかかるとされている。

セレクションの詳細な内容は非公開であるが、部隊の創設者がアメリカ陸軍特殊部隊グリーンベレー養成課程(通称:Qコース)へ留学しており、その内容に準じていると考えられる。実際の話においては、すでに肉体的に優れた者が集まるため、主に精神的ストレスをかけ、その耐久力を観察するという方法が取られていると言っていた[2]。創設時のセレクションにおいては各部隊が自信を持って送り出した優秀な人材を次々と脱落させたため、抗議が殺到したものの、初代群長の荒谷卓は一切取り合わなかった[3]

隊員[編集]

特殊訓練に参加している自衛官と思わしき人物(defender pacific 2021にて)

イラク派遣前に普通科部隊と合流して訓練した際には、生身の隊員を的の両わきに立たせて10m以上離れた場所を移動しながら拳銃の弾を的に命中させるなど、諸外国の特殊部隊と同様に一般部隊ではありえない訓練を行っている[4]

隊員の意欲は高く、使いやすい装具や衣類を自費で購入したり休暇に自費で海外のボランティアや民間軍事会社 (PMC) での研修を行う者も多く存在する[3][4]。初代群長の荒谷卓も2、3日の休暇であっても訓練の制約の多い日本を離れて海外でトレーニングするなど、最初の1年でほぼ全財産の300万円以上を投じたとされる[3]

特殊作戦群が創設された当初は空挺団から裏切り者扱いされたり手当などで冷遇を受けたものの、文句を言う隊員は誰もいなかったと言う[3]。 公の場(日本国内)に姿を見せたのは上級単位である中央即応集団(~2018年)及び陸上総隊(2018年~)における式典のみ[注 3]で、その際も目出し帽で顔を覆った一部の隊員と群長のみが出席するなど秘密部隊として徹底した機密情報の保持がなされている。

沿革[編集]

  • 1998年(平成10年)頃:第1空挺団内に編成準備室と特殊作戦研究部隊(G、Sの2つの対抗部隊)が極秘裏に設置される。
  • 2000年(平成12年):関連施設等の要望。
  • 2001年(平成13年):予算要求開始。留学要員の帰国、それに合わせて施設の確保とプレ準備隊(群本部基幹要員と訓練支援小隊)編成を完結。
  • 2002年(平成14年):夏から翌年春頃:1次から3次までの準備隊の編成完結。それと平行して、要員選抜基準、訓練要領および基準の設定。群本部要員と中隊要員の2系統で隊員の募集・選抜開始(前者はレンジャー未修了者の志願可)。
  • 2003年(平成15年)12月:極少数の準備隊員が第1次イラク復興業務支援隊としてイラク入り(後に特殊作戦群に引き継がれる)。
特殊作戦群

服制[編集]

  • 陸上自衛隊の戦闘服には複数の種類があるが、特殊作戦群に属する隊員等は任務に応じてその内の「戦闘服市街地用」を着用する[11]
  • 特殊作戦に関する教育等を受けた特殊作戦群の隊員は、「特殊作戦き章」を、自衛隊の施設内及び特に群長が必要と認めた場合にのみ着用する[注 5]。特殊作戦き章は、左胸ポケットに着用する[12]。この特殊作戦き章は、日本の国旗である日の丸、正義や軍事等を意味する、急襲が得意な、陸上自衛隊の徽章である桜星及び古来から神聖な木とされてきたからなっている[注 6]

主要幹部[編集]

官職名 階級 氏名 補職発令日 前職
特殊作戦群長 1等陸佐 後藤仁志 2020年08月01日 陸上自衛隊教育訓練研究本部
訓練評価調整官
歴代の特殊作戦群長
(1等陸佐)
氏名 在職期間 前職 後職
01 荒谷卓 2004年03月29日 - 2007年03月22日 第1空挺団本部勤務 陸上自衛隊研究本部主任研究開発官
02 古田清悟 2007年03月23日 - 2009年11月30日 陸上自衛隊研究本部研究員 統合幕僚監部運用部運用第1課
特殊作戦室長
03 青木伸一 2009年12月01日 - 2012年03月31日 中央即応集団司令部付 中央即応集団司令部幕僚副長
04 平田隆則 2012年04月01日 - 2015年03月31日 中央即応集団司令部付 陸上自衛隊研究本部主任研究開発官
05 上大迫淳 2015年04月01日 - 2017年07月31日 中央即応集団司令部付 陸上自衛隊研究本部主任研究開発官
06 藤村太助 2017年08月01日 - 2020年07月31日 第14旅団司令部第3部長 統合幕僚監部運用部運用第1課
特殊作戦室長
07 後藤仁志 2020年08月01日 - 陸上自衛隊教育訓練研究本部
訓練評価調整官

主要装備[編集]

  • 迷彩服3型
  • 市街地用迷彩3型
通常部隊配備されている迷彩服の他、濃紺の迷彩服など独自の装備品が支給されている。陸上自衛官服装細則(昭和43年2月28日陸上自衛隊達第24-8号)第4条第1項及び別表第1では、戦闘服装を一般用、航空用空挺用機甲用及び市街地用に分類しており、戦闘服装市街地用は「特殊作戦群の自衛官(配置予定を含む)が出動、教育訓練等に従事する場合」に着用することができるものとされ、戦闘服市街地用、防寒戦闘外衣市街地用、戦闘帽市街地用、戦闘手袋市街地用及び戦闘靴市街地用がその着用品とされている。
隊員がマルチカム迷彩を使用していたことが判明している。
光学照準器などを米政府に無許可で日本に輸出し、起訴された米陸軍大尉飯柴智亮の声明文により陸上自衛隊M4カービンを購入、採用していることが判明した[13]。また、2007年2008年にQDSS-NT4 サプレッサーM203A2とともにFMSM4カービンを購入していることも確認されている[14]
特殊小銃Bとして調達され、米軍ヘリコプターに搭乗していた隊員が装備していたのが確認されている。また、海上自衛隊への配備も確認されている。
改造された状態で隊員が携帯。レーザーサイトなどを装備していたことが明らかになっている。
2021年、陸上自衛隊及び特殊作戦群への調達が確認。
陸上自衛隊普通科連隊で配備されているため、配備していると見られる
UH-60JAに搭乗していた特殊作戦群と見られる隊員の一部が携帯。
試験用機関けん銃及び試験用9mm普通弾(MPX)が防衛装備庁で調達されている。
2007年3月31日の中央即応集団編成完結式で報道陣の前に姿を現した際にレッグホルスター(サファリランド6004)に入れて携帯。
元力士、水戸泉政人のブログ「水 戸 泉 メ モ リ ー」の2004年12月16日の記事[16]に写真が掲載されている。
迷彩塗装が施されている[15]
中央即応集団編成完結式で第1空挺団で使用されているものと同じ3点式あご紐を装備。

登場作品[編集]

映画[編集]

相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ
デスノート Light up the NEW world

漫画[編集]

BUGS -捕食者たちの夏-
オメガ7
空母いぶき
日本国大統領 桜坂満太郎
魔法少女特殊戦あすか
アニメ版にも登場

アニメ[編集]

Re:CREATORS

小説[編集]

Op.ローズダスト
劇中においては「発足間もなく、実戦運用のレベルに達していない」として出動はせず、非公式情報機関「防衛庁情報局」が擁する特殊部隊の一つ「729SOF」が部隊の性質上特殊作戦群の名称を借りて出動している。
『SFGp 特殊作戦群 導火線』
『北朝鮮ゲリラ侵攻〜自衛隊特殊部隊ブラックアウルズ』
ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
漫画版、アニメ版にも登場
交戦規則-ROE-
『ゴルゴタ』
『ゼロの迎撃』
『テロ・クルーズ〜血塗られた航海〜』
『瀕死のライオン』
『北朝鮮核侵略』
『黎明の笛』
『東京×異世界戦争 自衛隊、異界生物を迎撃せよ』
『邦人奪還』
『特殊作戦群追跡す!』
『封鎖海域』
『南沙艦隊殲滅』
『消滅世界』

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 特殊作戦群設立以前にも、第1空挺団冬季戦技教育隊西部方面普通科連隊など特殊部隊的な役割を担う部隊はいくつか存在したものの、公式に特殊部隊と発表されたのは特殊作戦群が初である。
  2. ^ 特殊作戦隊員の範囲等に関する訓令 (特殊作戦隊員の範囲等)第1条 2016年11月26日閲覧
  3. ^ 2007年3月28日の中央即応集団司令官着任式、同年3月31日の中央即応集団編成完結式、それ以降の中央即応集団司令官着任式、2013年5月18日の座間駐屯地開設及び中央即応集団創隊6周年記念行事など。
  4. ^ うるま沖ヘリ墜落 対テロ訓練、陸自に実演 米軍、定員超過認める”. 琉球新報. 2015年8月14日閲覧。
  5. ^ 「き章の付与及び着用について(通達)」(昭和53年7月25日陸幕人計第215号)によると、着用資格者は「陸上自衛隊の教育訓練実施に関する達(陸上自衛隊達第110-1号)に定める特殊作戦に関する教育訓練を修了した者又は外国軍隊において特殊作戦に関する教育訓練を修了した者のうち、特殊作戦群に所属する者」とされている。
  6. ^ 「赤色の金属製の日の丸、いぶし銀色の金属製の剣、金色及び銀色の金属製のとび並びに銀色の金属製の桜星を組み合わせたものを中心にして、その両側にいぶし銀色の金属製のさかきを配したもの又は緑色の布製台地に黒糸で縫取りをした日の丸及び剣並びに茶糸で縫取りをしたとび及び桜星を中心にして、その両側に黒糸で縫取りをしたさかきを配したものとする。形状及び寸法は、図10-2のとおりとする。」(自衛官の職務又は技能を識別するために用いるき章の制式等に関する訓令(昭和49年3月12日防衛庁訓令第6号)別表第1)。

出典[編集]

  1. ^ 自衛隊の部隊編成に関する質問に対する答弁書:答弁本文:参議院”. www.sangiin.go.jp. 2020年6月28日閲覧。
  2. ^ 武道教育新聞”. 予備役ブルーリボンの会 (2010年9月26日). 2019年2月21日閲覧。
  3. ^ a b c d 特殊作戦群と武士道”. 予備役ブルーリボンの会 (2011年8月19日). 2019年2月21日閲覧。
  4. ^ a b 【仕事人】陸自特殊作戦群の初代群長・荒谷卓さん、信念を貫き新たな戦場へ(MSN産経、リンク切れ)
  5. ^ 沖縄本島沖で米軍ヘリ墜落 自衛官2人搭乗”. NHKニュース. 2015年8月14日閲覧。[リンク切れ]
  6. ^ 伊勢志摩サミット、街中が2万人の警官だらけの裏で、市街戦や航空機撃墜も想定されていた!
  7. ^ 日豪首脳、陸自特殊部隊を視察 対北朝鮮で連携アピール” (日本語). 日本経済新聞 電子版. 2020年6月28日閲覧。
  8. ^ アブドッラー2世ヨルダン国王による習志野演習場地区視察について(概要)”. 防衛省 (2018年11月28日). 2019年3月22日閲覧。
  9. ^ 菅首相、陸自特殊部隊を視察 加藤官房長官」『時事通信社』、2021年6月30日。2021年6月30日閲覧。
  10. ^ TBS報道特集「安全保障の最前線・水陸機動団と影の部隊の実像」”. JCC株式会社. TBSテレビ. 2021年12月18日閲覧。
  11. ^ 陸上自衛官服装細則(陸上自衛隊達第24-8号)別表第1。
  12. ^ 自衛官服装規則(昭和32年2月6日防衛庁訓令第4号)附図第1第12項。
  13. ^ 全文掲載:飯柴大尉の声明文
  14. ^ 5.56 X 45mm; 2007 A Chronology of Development by Daniel WattersA 5.56 X 45mm; 2008 A Chronology of Development by Daniel Watters
  15. ^ a b ARMY第47号
  16. ^ a b 2004年12月16日の記事
  17. ^ 公告 第 輸調-350号平成 24年9月14日 (pdf)”. 2012年10月15日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2021年9月18日閲覧。

防衛省人事発令”. 2015年4月1日閲覧。

関連項目[編集]