水陸機動団

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水陸機動団
創設 2018年平成30年)3月予定
所属政体 日本の旗 日本
所属組織 Flag of the Japan Self-Defense Forces.svg 陸上自衛隊
部隊編制単位
所在地 長崎県 佐世保市
編成地 佐世保
上級単位 陸上総隊
担当地域 日本全国
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水陸機動団(すいりくきどうだん、英称:Amphibious Rapid Deployment Brigade[1])は、2013年(平成25年)に策定された平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について(25大綱)に基づき、陸上自衛隊に新編される予定の部隊。

水陸両用作戦を強く意識した部隊であり、新たに編成される陸上総隊直轄の部隊となる予定である[2]

概要[編集]

島嶼への上陸訓練を行う西部方面普通科連隊の隊員。

21世紀初頭、中華人民共和国(以後は中国と表記)は増大する国力に合わせるように、その軍事力を国外へ膨張させてゆく状態にあった。中国は第一列島線に示されるようにその防衛線を周辺国に設定した。これに合わせる様に原子力潜水艦航空母艦の整備をはじめとする水上戦闘艦艇などの増勢を推し進め、中国水上治安当局の船艇が尖閣諸島周辺の領海に侵入を繰り返すようになった。また、それまで台湾への侵攻を主目的とした上陸訓練であったが、新たな内容に日本の尖閣諸島もその対象となった[3]

この脅威に対応すべく新たに策定された25大綱にて水陸機動団の新編が明示され、手始めに水陸両用準備隊を編成し、水陸両用車をはじめとする各種検証を通じて戦力化に必要なノウハウの取得にあたり早期戦力化を推進する。これに先立ち、アメリカ海兵隊との合同演習「アイアンフィスト」および三自衛隊が参加した統合演習「ドーンブリッツ」への派米訓練が行われている[4]

2014年の環太平洋合同演習では陸上自衛隊が初参加し、多国間演習とは別にアメリカ海兵隊と2国間で水陸両用戦の訓練を実施した[5]。日本国内でも、相馬原演習場(群馬県)などに米海兵隊を招いて共同訓練や、陸自隊員を在沖縄米海兵隊に派遣しての研修を実施している[6]

予定される編成[編集]

LCACによる上陸訓練を行う第6師団の隊員。
上陸訓練を行う西普連の隊員(2015年)。手にしている89式小銃にはピカティニー・レールが追加されスコープなどが装着されている。また、水が抜けるようにズボンの裾を靴に入れていないことが分かる。

編成計画[編集]

新たに編成される水陸機動団は西部方面隊直轄部隊である西部方面普通科連隊を基盤に、3個連隊を基幹に編成され、約3,000人規模の部隊となる予定である。この3個連隊の内、主戦力となる第1連隊は西部方面普通科連隊を発展的に改組し団本部と共に佐世保市(相浦駐屯地及び海上自衛隊佐世保地方隊崎辺地区[7])に拠点を置くとされ、第2および第3連隊はそれぞれ700人から900人規模の部隊となる予定[2]。各連隊の編成は本部中隊、AAV中隊、ヘリボーン中隊およびボート中隊(強襲戦闘偵察用ボートを装備)からなるとされる[8]

水陸機動団用地確保のため、相浦駐屯地に所在する西部方面混成団は平成29年度末に団本部と第5陸曹教育隊を久留米駐屯地に移駐することが発表された(先行処置として第118教育大隊を平成29年3月で久留米駐屯地へ移駐)[9]。平成29年3月27日には水陸機動団に配属される隊員の教育部隊が駐屯地内で発足した[10]。このほかに、諸部隊の駐屯地として、大分県の玖珠駐屯地湯布院駐屯地が挙がっている[11]

水陸両用車を装備した新部隊は南西諸島が侵攻された際、戦闘地域から数キロメートル離れた海域から上陸部隊を進発、戦闘部隊を揚陸させ島嶼部の確保を図る[2]。また住田和明陸幕防衛部長(当時)は、3カ所の事態に対して同時3個の初動部隊を投入できるようにする、と説明している。

以下は平成27年版防衛白書「図表II-2-3-1」より抜粋した水陸機動団の編成[12]および、長崎新聞に掲載された編成表[13]を示す。ヘリボーンについては陸上自衛隊航空科部隊が支援を行う。

編成表[編集]

  • 団本部等 - 西部方面普通科連隊本部を基幹に相浦駐屯地に編成
  • 水陸機動連隊(3個連隊) - 第1連隊を西部方面普通科連隊を基幹として編成。第2連隊・第3連隊は新編されるが、うち第2連隊は相浦駐屯地に新編予定。
  • 戦闘上陸大隊(2個中隊基幹) - 水陸両用車を基幹とした部隊。崎辺地区に大隊本部と1個中隊を、玖珠駐屯地に1個中隊を設置予定。玖珠駐屯地部隊は第4戦車大隊第2中隊を母体として編成予定。
  • 特科大隊 - 西部方面特科隊第112特科大隊を母体として、第8特科連隊の一部を編入し編成。
  • 偵察中隊 - 水陸機動準備隊に偵察部隊準備班を設置。
  • 施設中隊 - 第5施設団に施設中隊準備班を設置し、団および第4施設大隊及び第8施設大隊の一部から編成予定。
  • 通信中隊 - 西部方面通信群に通信中隊準備班を設置し、群および第4通信大隊第8通信大隊の一部から編成予定。相浦、崎辺、玖珠、湯布院に設置予定。
  • 後方支援大隊 - 西部方面後方支援隊及び第4後方支援連隊第8後方支援連隊の一部をもって編成予定。相浦、崎辺、玖珠、湯布院に駐屯予定。
  • 水陸機動教育隊 (相浦駐屯地)[14][15]

以上の通り、西部方面隊直轄及び4師団8師団の隷下部隊を再編、編合による新編等により編成される予定。 なお平成29年度末(2018年)の発足時は1個水陸機動連隊を欠いた定員約2,100人の編成だが、将来的には3,000人規模まで拡大・充足させる予定である[16]

編成までの流れ[編集]

水陸機動団の設立準備に備え、第4戦車大隊にAAV7が訓練用として1両先行配備されたほか、西部方面特科隊第112特科大隊などでは現行装備から120mm迫撃砲への転換訓練を行っている[17][18]。また、西部方面普通科連隊では、他編成部隊の隊員向けへの転換教育や資格取得を支援している。

主要幹部[編集]

官職名 階級 氏名 補職発令日 前職
水陸機動準備隊長 1等陸佐 小野田宏樹 2017年03月27日 空挺教育隊長
→2017年3月23日付 西部方面総監部付
水陸機動教育隊長 2等陸佐 中村英昭 2017年03月27日 西部方面普通科連隊付

予定される教育[編集]

上陸訓練を行う西普連の隊員(2006年)。手にしているのは訓練用ラバーガン。ブーニーハットを被っているが現在ではプロテック社のバンプヘルメットも使用されている。

水陸機動団の第1連隊に改編されると言われる西部方面普通科連隊には、水陸両用戦に関する教育課程が複数存在しており、2013年5月からは第1空挺団の「基本降下課程」のように陸上自衛隊正式の教育課程となっている[19]。特に水陸両用課程については西普連の隊員全員が取得する課目となっている[20]。なお、「水陸両用き章」、「洋上潜入き章」、「艇長き章」をすべて付与された隊員には「水路潜入き章」が付与される[21]

ただし教育隊では水陸両用課程1回で80人の教育しか行えておらず[19]、今後は教育部隊の拡充や教育内容の変更、さらにAAV7を運転するための大型特殊免許や船舶免許を隊員に新たに取得させる必要があると思われる。

水陸両用基本訓練課程
ボートオペレーションの最も基礎的な訓練であり、ヘリによる訓練も含まれる。教育期間5週間[19]。修了者には「水陸両用き章」が付与される。
洋上潜入課程
洋上斥候としての能力を身につける課程。修了者には「洋上潜入き章」が付与される。
艇長課程
8人乗りボートの艇長として応急対処や洋上生存術などを身につける課程。修了者には「艇長き章」が付与される。
潜水課程
海上自衛隊で行われている潜水課程を修了した隊員も存在しており、これらの隊員はフロッグマンや洋上訓練時の安全係として活動すると思われる[22]修了者には「潜水員き章」が付与される。
レンジャー
西普連ではレンジャー資格保有者の割合は他部隊に比して圧倒的に高く、また各中隊にはレンジャー隊員のみで編成された「レンジャー小隊」が編成されており、これに所属する隊員は特殊作戦隊員手当が支給されている[23]特殊作戦群以外でこの手当てが支給されているのはこのレンジャー小隊のみである。ただし、水陸機動団として規模が拡充された場合その比率やレンジャー小隊がどうなるのかは不明である。
爆撃誘導員
陸上自衛隊ではF-2戦闘機から投下されるレーザーJDAMを地上から誘導するために、アメリカ空軍統合末端攻撃統制官(JTAC)のような爆撃誘導要員を育成するとしており、この誘導員を水陸機動団に優先配置することを検討していると報道されている[24]。2013年に日米合同で実施された「ドーン・ブリッツ2013」演習では護衛艦あたご」からの艦砲射撃を米海兵隊の「航空艦砲連絡中隊(ANGLICO)」の協力の下で観測する訓練も行われている。2017年の富士総合火力演習の後段では、模擬爆撃ながらも火力誘導班が初登場し、模擬誘導を行っている。

予定される装備[編集]

陸上自衛隊仕様のAAVP7A1 RAM/RS

26中期防において水陸機動団に配備する水陸両用車52両の調達が計画され、平成27年度防衛予算においてAAV7水陸両用車30両が調達された。これに先立ち平成25年度防衛予算において性能確認や運用検証等を行うための参考品としてAAVP7A1 RAM/RS(人員輸送車型)4両が調達され、2014年2月20日に横浜港に到着した[25][2]。平成26年度防衛予算でも参考品としてAAVC7A1 RAM/RS(指揮車型)とAAVR7A1 RAM/RS(回収車型)が1両ずつ調達された。2014年12月2日、防衛省は平成27年度概算要求に計上した陸上自衛隊の水陸両用車の車種をAAV7A1 RAM/RSに決定した[26]。なお、参考品として調達した6両は前述の52両には含まれない。

また、特科の火器については、輸送性等の都合から第1空挺団空挺特科大隊同様、120mm迫撃砲RTを装備する予定。

おおすみ型輸送艦に対し水陸両用戦機能を強化すべく大規模な改修も進め、いずも型ヘリコプター護衛艦の司令部機能を強化する。他にも、最新鋭の強襲揚陸艦を導入することも検討されている[27]

これ以外に駐屯地施設として水陸機動団の有力候補駐屯地である相浦駐屯地には、不時着水したヘリコプターから緊急脱出するための訓練施設と水路潜入用の訓練施設の整備が認められる。両施設は2年から3年かけて整備される予定[28]

なお米国有識者の見解によれば、自衛隊は既に水陸両用戦に必要なハードウェアの8割を保有しており、ソフトウェアについては必要なノウハウの20の内、米国から5つ程度が提供されており、これを発展させるべく系統的な教育努力が必要であると評価されている[29]

予定装備品[編集]

脚注[編集]

  1. ^ NATIONAL DEFENSE PROGRAM GUIDELINES for FY 2014 and beyond, P13. {{{1}}} (PDF)
  2. ^ a b c d MSN産経ニュース 「尖閣有事」へ備え 水陸機動団、2千~3千人規模で佐世保に司令部 2014年2月3日
  3. ^ YOMIURI ONLINE 中国軍が尖閣奪取訓練、昨秋に実施…米海軍協会 2014年2月20日
  4. ^ 我が国の防衛と予算 平成26年度概算要求の概要 (2) 島嶼部に対する攻撃への対応 防衛省 {{{1}}} (PDF)
  5. ^ MSN産経ニュース リムパックで陸自、米海兵隊と水陸両用訓練 6~8月、ハワイ沖 離島防衛、中国の前で連携示せ 2014年2月6日
  6. ^ “陸自「水陸機動団」準備着々/創設まであと1年・離党防衛強化へ米海兵隊と訓練”. 産経新聞朝刊. (2017年3月20日). http://www.sankei.com/politics/news/170320/plt1703200003-n1.html 
  7. ^ 同地区に建設中の崎辺分屯地(仮称)
  8. ^ 佐々木 俊也「輸送艦部隊と陸上水陸機動団」、『世界の艦船』2014年4月No.795。
  9. ^ “水陸機動団新設へ 陸自相浦駐屯地に中澤新司令が着任(長崎)”. 産経新聞朝刊. (2017年3月24日). http://www.sankei.com/region/news/170324/rgn1703240025-n1.html 
  10. ^ “陸自、離島奪還拠点に新部隊 水陸機動団員を教育”. 産経新聞朝刊. (2017年3月27日). http://www.sankei.com/politics/news/170327/plt1703270010-n1.html 
  11. ^ 陸自、水陸機動団の部隊を玖珠、湯布院に配置へ - 大分合同新聞 電子版『GATE』 (大分合同新聞9月24日付朝刊掲載、2016年11月7日閲覧)
  12. ^ 防衛省・自衛隊|平成27年版防衛白書|2 基幹部隊の見直しなど
  13. ^ “陸自水陸機動団新編まで1年 創設以来の大改革”. 長崎新聞朝刊. (2017年4月30日) 
  14. ^ 平成28年度概算要求の概要(防衛省)
  15. ^ 平成29年3月27日付で相浦駐屯地で編成完結(防衛省人事発令:平成29年3月27日付1佐職人事)
  16. ^ 第193回国会 外交防衛委員会 第6号
  17. ^ 湯布院駐屯地開庁59周年記念式典式辞より
  18. ^ 駐屯地機関紙「湯布院」第29号(pdf) - 陸上自衛隊湯布院駐屯地
  19. ^ a b c 【軍事のツボ】日本版海兵隊、西部方面普通科連隊の“ヒヨコ”たち(上)3ページ
  20. ^ 【軍事のツボ】日本版海兵隊、西部方面普通科連隊の“ヒヨコ”たち(上)4ページ
  21. ^ 自衛官の職務又は技能を識別するために用いるき章の制式等に関する訓令 {{{1}}} (PDF)
  22. ^ 【軍事のツボ】日本版海兵隊、西部方面普通科連隊の“ヒヨコ”たち(上)6ページ
  23. ^ 陸上自衛隊訓令第22号
  24. ^ 陸自が「爆撃誘導員」養成着手 空自と連携、離島奪還 2014.3.30
  25. ^ NHK NEWS WEB 米の水陸両用車が日本に到着 2014年2月20日
  26. ^ 防衛省・自衛隊:陸上自衛隊の水陸両用車の車種決定について
  27. ^ “「尖閣」中国に自由にさせぬ、日本版「海兵隊」が島を守る…防衛相発言「強襲揚陸艦」が海上輸送力を担保する”. 産経新聞. (2014年7月15日). http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140715/waf14071507000001-n1.htm 2014年8月11日閲覧。 
  28. ^ 長崎新聞社 相浦駐屯地に上陸訓練設備 2014年1月10日
  29. ^ 「統合および共同海洋作戦についての米国人の考察」グラント・ニューシャム 日本戦略研究フォーラム

関連項目[編集]