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軽装甲機動車

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軽装甲機動車
JGSDF Light Armored vehicle 20120429-01.JPG
基礎データ
全長 4.4m[1]
全幅 2.04m[1]
全高 1.85m[1]
重量 4.5t[1]
乗員数 4名[1]ターレットハッチを開け、後部座席間に機関銃手を座らせた場合は5名)
乗員配置 前席2名、後席2名(+1名)
装甲・武装
装甲 圧延鋼板・防弾ガラス
機動力
速度 約100km/h[1]
エンジン 4ストローク水冷ディーゼル
160ps/rpm
懸架・駆動 フロアシフトタイプ4速AT(運転席右端の操作パネル部分にはボタン式のATスイッチが装備されている)およびHi・Lo切替レバー装備、デフロックなど(高機動車と同様の装備)
前輪:ダブルウィッシュボーン
後輪:セミトレーリングアーム
登坂能力:tanθ60%[2]
行動距離 約500km[1]
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軽装甲機動車(けいそうこうきどうしゃ)は、陸上自衛隊航空自衛隊に配備されている装輪装甲車である。製造は小松製作所

防衛省は、略称をLAV(Light Armoured Vehicle)、愛称を「ライトアーマー」としており[3]、保有する部隊内では略称をもとに「ラヴ」とも呼ばれている。


概要

CH-47Jで輸送中の軽装甲機動車

普通科などの隊員の防御力と移動力を向上させるのが目的の装甲車であり、性能や想定する任務は、歩兵機動車(Infantry mobility vehicle, IMV)に類する。

固定武装は無いが、乗員が天井ハッチから身を乗り出して5.56mm機関銃MINIMI01式軽対戦車誘導弾などの火器を使用できる設計になっている。車体は装甲化され、避弾経始も考慮されているが、具体的な防弾・防爆性能は公開されていない。小型かつ軽量であるためC-1 輸送機C-130H 輸送機CH-47J/JA 輸送ヘリコプターなどで空輸することが可能となっている[4]

平成9年度から「小型装甲車」の名称で開発が開始され、平成12年度に部隊使用承認された。コスト低減を目的に、比較的短い周期でモデルチェンジされる民生部品が多用されたため制式化はされておらず、○○式という名称は付けられていない[5]

政策評価においては、*) 従来の隊員の機動力がトラックや高機動車等の非装甲車両であったことから、装甲防護力が脆弱であるため脅威下における戦闘には適さなかったが、軽装甲機動車の整備が進むことによりゲリラや特殊部隊等に対応するために必要な機動力と防護力の強化を実現できた、*) 遠隔地や島嶼部に展開する場合、従来の装甲車両は空輸性に制約があり迅速に集中・展開させることが困難であったが、軽装甲機動車の整備が進むことにより遠隔地や島嶼部への展開能力を向上することができた、*) イラクやハイチなど我が国とは大きく異なる過酷な環境下においても、その性能を十分に発揮しており、これらの任務の遂行に寄与している、と評価されている[4]

東日本大震災時に汚染地域の偵察活動に従事し除染を受ける車両

部隊では、汎用車である1/2tトラック(通称ジープ)の代わりとしても使用されている。そのため、使用部隊からは「車体が大きくて重い」、「防弾性向上のためにフロントガラスが2分割され、中央にピラーが走っているために視界(特に左方の)が悪い」、「エンジンの騒音とタイヤの振動が大きく、椅子の悪さも相俟って、長距離移動時の疲労がジープより更に大きい」、「目立つため、コンビニなどに立寄るのが憚られる」などの、ジープと比較しての不満が出ている。乗車人数が少ないので、同じ人数を運ぶためにはより多くの車両が必要となる。そのため、東日本大震災の際には、災害派遣されたLAVをメインに装備する部隊が、駐車スペースの確保に苦労するという事態も生じた。ただし、エアコンの効きはジープより良好であると言われている。また、燃費が悪いため、燃料補給や整備の負担が大きいとの声もある[6]

一方、戦闘車両としては、車内が狭いために4名分の装備が収まらないという問題が指摘されている。また、重心が高く横転しやすいとの指摘があるのに対しては「最近の装輪装甲車両全般がその傾向にある」としながらも、不整地走行能力は他の装輪装甲車両と比較しても悪いと評価する自衛官もいる[7]

自衛隊の海外活動では頻繁に使用されており、現在までにイラク派遣ハイチPKO南スーダンPKOソマリア沖海賊の対策部隊派遣などに参加している。

他国の四輪装甲車両との比較
軽装甲機動車 日本の旗 LMV イタリアの旗 VBL フランスの旗 イーグル スイスの旗 エノク ドイツの旗 コブラ トルコの旗 GAZ-2330 ロシアの旗 M1151 アメリカ合衆国の旗
画像 Komatsu LAV - 1.jpg LinceVM.jpg VBL.svg Mowag Eagle IV.jpg Light Armoured Patrol Vehicle ENOK.jpg Paradbaku98.jpg GAZ 2975 Tigr.JPG M1151.jpg
全長 4.4m 5.50m 3.87m 5.37m 4.82m 5.23m 5.70m 4.93m
全幅 2.04m 2.05m 2.02m 2.16m 1.90m 2.22m 2.30m 2.31m
全高 1.85m 1.95m 1.70m 2.0m 1.90m 2.1m 2.3m 1.99m
重量 約4.5t 約6.5t 約3.59t 約8.5t 約5.4t 約6.2t 約7.6t 約6.1t
最高速度 100km/h 130km/h 95km/h 110km/h 96km/h 115km/h 160km/h 113km/h
乗員数 1+3-4名 1+3-6名 2-3名 1+4名 2-6名 1+8名 2+10名 1+3-4名

武装

5.56mm機関銃MINIMIを装備した車両
軽装甲機動車の車上から01式軽対戦車誘導弾を構える中央即応連隊の隊員

固有の武装は備えていないが、一部の車両には車体上面ハッチに全周旋回可能なターレットと防楯付き銃架が取り付けられており、5.56mm機関銃MINIMI89式5.56mm小銃を据え付けて射撃することができる。ターレットの下にはブランコのような形をしたベルトが取り付けられており、射手はここに座って射撃を行う。ただし、機銃に空薬莢受けを付けないと、排出されたベルトリンクがターレットのガイドレールに詰まり動かなくなるという問題も指摘されている[8]

上面ハッチからは01式軽対戦車誘導弾(軽MAT)を発射する事も可能。各駐屯地で行われる創立記念行事での訓練展示では、過去に87式対戦車誘導弾の発射機や84mm無反動砲を上面ハッチ上から構える隊員が確認された事もある[9]。しかし、ハッチのサイズが充分ではないため、カールグスタフなどを取り出すのは大変であるという現場の声もある[10]

制式装備ではないが、2006年1月に行われた「平成18年度第1空挺団降下訓練始め」[11]や、2010年10月に行われた「中部方面隊創隊50周年記念行事」において、部隊で独自に改造(両者の改造方法は異なる)を行い、12.7mm重機関銃M2を搭載した軽装甲機動車が登場したことがある。これらの改造は車体に直接銃架が設置されているため、全周射撃は不可能である。

平成21年度(2009年度)から平成23年度(2011年度)まで、将来的に本車に搭載する可能性もあるリモートウェポンステーションの研究が行われた[12]

調達状況

航空自衛隊の車輌
陸上自衛隊の車両とは異なり、オリーブドラブ一色で塗装されている(入間基地
航空自衛隊の車輌

防衛庁(当時)の技術研究本部小松製作所によって開発が行われ、小松製作所が生産している。

陸上自衛隊では、平成27年度(2015年)補正予算までに1,818両を調達しており、全国の普通科部隊と機甲科偵察部隊(偵察隊)への配備が進んでいる。調達ペースは数百両で生産を終了した60式装甲車73式装甲車と比べて非常に早い。

航空自衛隊基地警備隊向けに導入を行っており、平成27年度(2015年)予算までに119両を調達している。車体は陸上自衛隊のものと異なりオリーブドラブ一色で塗装されている。現在生産されているタイプは陸上自衛隊イラク派遣で使用されたもの(後述)と同型のワイヤーカッターと予備タイヤ用ラックが追加されている。

調達価格は平成13年度約3,500万円[13]、平成17年度約3,100万円[14]、平成22年度約3,000万円[15]。開発段階において、車両の構成品をユニット化したことによる部品点数と工数の削減および民生部品の活用により、1両当たり約630万円の調達価格の低減を実現している[4]

軽装甲機動車の調達数[16]
予算計上年度 陸上自衛隊 航空自衛隊 合計
平成13年度(2001年) 102両 - 102両
平成14年度(2002年) 149両 - 149両
平成15年度(2003年) 150両 4両 154両
平成16年度(2004年) 157両 8両 165両
平成17年度(2005年) 160両 8両 168両
平成18年度(2006年) 180両 8両 188両
平成19年度(2007年) 173両 8両 181両
平成20年度(2008年) 180両 21両 201両
平成21年度(2009年) 180両 23両 203両
平成22年度(2010年) 93両 26両 119両
平成23年度(2011年) 56両 9両 65両
平成24年度(2012年) 49両 2両 51両
平成25年度(2013年) 44両+34両[17][18] 1両 79両
平成26年度(2014年) 30両+43両[17] 1両 74両
平成27年度(2015年) 0両+38両[17] 0両 38両
平成28年度(2016年) 0両 0両 0両
合計 1,818両 119両 1,937両


仕様

いくつか納入時の仕様によって大別される

  • 無線機搭載車 - アンテナを1-3本装備。中隊長など各種指揮官用として配備。アンテナの基台そのものは現在確認されているすべての車両が装備している。
  • 発煙弾発射機搭載車 - 側面後部に4連装のタイプを2基装備している。偵察隊・普通科連隊情報小隊用として配備。
  • 機関銃搭載車 - 機関銃用の防盾を装備した型。普通科連隊普通科小銃小隊(機関銃手)用に配備、他には偵察部隊(情報小隊)の威力偵察用。後部に装備積載用ラックを現場にて改修した車両も存在。
  • 海外派遣仕様 - 部隊管理でなく補給処にて一括管理品。
  • 航空自衛隊仕様 - 基地警備隊用。
  • 警務隊仕様 - パトライトと拡声器を追加し、「MP」という表記がされたタイプ。イラク派遣時に使用されたと見られ各種報道で姿が散見されるが[19]、その後は確認されていない。
自衛隊車両の比較図
1/2tトラック 1 1/2tトラック 3 1/2tトラック 高機動車 軽装甲機動車 96式装輪装甲車 輸送防護車
画像 1-2tトラック (8465244716).jpg Type73chugatatruck.jpg JGSDF 73 Ougata Truck (ISUZU) 1.jpg JGSDF Koukidousha (TOYOTA) 1.jpg JGSDF Light Armored vehicle 20120429-01.JPG JGSDF APC Type 96 20120108-03.jpg Dutch Bushmaster with remote turret 2008.jpg
全長 4.14m 5.49m 7.15m 4.91m 4.4m 6.84m 7.18m
全幅 1.76m 2.22m 2.48m 2.15m 2.04m 2.48m 2.48m
全高 1.97m 2.56m 3.08m 2.24m 1.85m 1.85m 2.65m
重量 約 1.94t 約 3.04t 約 8.57t 約 2.64t 約 4.5t 約 14.5t 約 14.5t
最高速度 135km/h 115km/h 105km/h 125km/h 100km/h 100km/h 100km/h
乗員数 6名 19名 22名 10名 4名 10名 10名


海外派遣仕様

側面防弾ガラスが強化された車両
海外派遣仕様

イラク人道復興支援活動部隊で使用された車両には以下の改造が行われており、警備やパトロールの際の隊員の安全性が向上している[20]

  • 上面ハッチ全周をカバー可能な装甲板の追加。
  • 機関銃手をワイヤートラップから保護するためのワイヤーカッターの追加。
  • 防弾ガラスを7.62mm小銃弾(普通弾)に抗たん可能なものに変更
    (側面と後方の防弾ガラスは厚さが増し、ボルト止めされているが、フロントガラスは外観の変化が無いため改造されているのかは不明)
  • 予備タイヤや燃料缶用のラックの追加。
  • ラジエーターなどを砂塵から防護するための改修。

これらの改修作業は、設計から取り付けまで3ヶ月程度で行われた[21]

派遣部隊が戦闘や治安維持を目的としない人道復興支援活動部隊であることを強調し、武装勢力の攻撃対象とされるのを避けるため車体の随所に日章旗が描かれ、英語アラビア語で「Japan」「اليابان」と表記された。塗装も他国軍のような砂漠迷彩ではなく、オリーブドラブ一色に塗り替えられていた。

現在、この改造(国籍表示などを除く)が施された車両は国際活動教育隊に配備されているが[22]、防弾ガラスや予備タイヤ用ラックなど一部の改造が施された車両は全国に配備されている。

2010年から行われている自衛隊ハイチPKO派遣においてもこの改造車が使用されているが、この任務で使用されている車両には国際連合を意味するUNの文字が車体に貼り付けられている[23][24]

海賊対処のためジブチに派遣されている部隊に配備されている車両は、上面ハッチ周囲の装甲板に屋根を追加するなどの現地改造が施されている[25]

模型

2004年(平成16年)にタミヤイラク派遣仕様を1/35スケールでプラモデル化しており、後にタミヤ、京商がそれぞれラジコンカーを発売、タカラトミーから2006年トミカ2008年にはCAULとしても販売された。また、トミカハイパーシリーズ内には軽装甲機動車をベースとした架空車両として、救急車仕様の「山岳救急処置車」と、消防車仕様の「機動耐熱救助車」がラインナップされている。

登場作品

映画・アニメ映画

ヱヴァンゲリヲン新劇場版
国連軍およびNERV所属車両が登場。
クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!
UNTI(ウンツィ)が装備・使用。
ゴジラ×メカゴジラ
実物が日本映画初登場。オープニングで、県道89号線に向かう道路に張られた規制線に配置されている。
ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS
走行する自衛隊の車列の中に確認できる。
戦国自衛隊1549
第三特別実験中隊救出のために、現代から1549年に送り込まれたロメオ隊に2両配備されている。1両は襲撃してきた戦国武者たちに囲まれてしまい、掛けられたに火をつけられ炎上、走行不能になり放棄された。もう1両は残り少ない戦力として活躍し、上面ハッチより84mm無反動砲AH-1S コブラに対して使用した。

実写作品

幻星神ジャスティライザー
国防軍の車両として第50話に登場。
戦国自衛隊・関ヶ原の戦い
冒頭のタイムスリップした自衛隊の車両が集合している場面で存在が確認できるが、ほとんど出番はない。
空飛ぶ広報室
航空自衛隊高射部隊の車両が第5話に登場。

アニメ

アウトブレイク・カンパニー
自衛隊の車両が映画撮影に使われる。
イノセント・ヴィーナス
世界征服〜謀略のズヴィズダー〜
陸上自衛隊所属のものが第1話に登場。
絶園のテンペスト
国防軍の車両として登場。近づいてくる魔法使いに向けて、上面ハッチより01式軽対戦車誘導弾5.56mm機関銃MINIMIを使用した。
デジモンテイマーズ
トータル・イクリプス
日本陸軍所属車両が第1話に登場。
ハヤテのごとく!
第31話に登場。
やわらか戦車
ロケットガール

小説

MM9―destruction―
主人公たちが東海村の神社からの逃走に使用。
ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
主人公が所属する深部偵察隊に配備されており、12.7mm重機関銃M2を搭載している。
『中国完全包囲作戦』(文庫名:中国軍壊滅大作戦)
陸上国防軍の車両が96式装輪装甲車機動戦闘車と共に登場し、新型UGV「HG03」の牽引に使用する。
『ピノキオ急襲』
第1空挺団特殊部隊「サイレント・コア」が移動や偵察に使用する。

ゲーム

大戦略シリーズ
日本偵察車ユニットとして組み込まれる。
マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス
主人公が所属するPMCが所有。
メビウスオンライン
ジープ」の名称で登場している。
龍が如く OF THE END
自衛隊の車両として登場。隔離エリアでは補給所となったり、プレイヤーが搭載機銃を使う事が可能。
状況開始っ!
作中内では型名には言及されてないが軽装甲機動車に酷似した車両が登場する。

脚注

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参考資料

外部リンク