パトリアAMV
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| 基礎データ | |
|---|---|
| 全長 | 7.7m |
| 全幅 | 2.80m |
| 全高 | 2.30m |
| 重量 | 16-26t |
| 乗員数 | 3名+兵員12名 |
| 装甲・武装 | |
| 機動力 | |
| 整地速度 | 100km/h以上 |
| 不整地速度 | 10km/h(水上) |
| エンジン |
スカニア DI 12 ディーゼル 480hpもしくは543hp |
| 懸架・駆動 | 6×6もしくは8×8 |
| 行動距離 | 800km |
パトリアAMV(英語: Patria AMV)は、フィンランドのパトリアが設計した、8輪式ないし6輪式の軍用多目的装輪装甲車である。AMVとは、"Armored Modular Vehicle(装甲モジュラー車両)"の略称である。
開発
[編集]AMVの開発は、1995年にフィンランド陸軍司令部が新しい装甲車両のコンセプトの研究をパトリアに依頼したことがきっかけである。1996年から開発が開始され、既存のXA-180装甲兵員輸送車の後継車両には8輪式が最もふさわしいと判断した。
フィンランド軍は、パトリアに対して1999年に正式にコンセプトの研究を発注し、翌2000年に研究が完了した。2001年には試作車の製造と運用試験が開始され、2003年には量産が開始された。
なお、6輪式と8輪式のほかに10輪式の車両も試作されたが、後に10輪式は製作が中止された。
設計
[編集]AMVの最大の特徴は、モジュラー構造化された車体であり、各種の砲塔や兵装、センサー、通信システムを必要に応じて組み合わせて運用することを可能としている。これにより、ほぼ同一の車体構造とパワーパックを持ちながら、装甲兵員輸送車や歩兵戦闘車、指揮通信車、装甲救急車、戦車駆逐車、自走迫撃砲、機動砲車両などの派生型を製造することが可能である。
車体はかなり高度な防御力も有しており、10kgまでのTNTの爆発に耐えられるほどの対地雷、IED防御能力のほかに、口径30mmまでのAPFSDSの直撃にまで耐えることが可能な前面装甲を有している。車体後部の兵員室は座席が向かい合わせに配置されている。
また、機動力もかなり高く、不整地走行においても速度と登坂力、乗員の乗り心地を高いレベルで両立させているほか、車体後部の左右に1基ずつのスクリューを備えており、最大時速10kmで水上航行も可能である。
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SISU XA-200とAMV
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XA-360の車体側面
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車内
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後部兵員昇降ドア
派生型
[編集]- AMV
- 基本型。装甲兵員輸送車、歩兵戦闘車、指揮通信車、装甲救急車、偵察車、迫撃砲運搬車、戦車駆逐車、機動砲車両などに使用される。
- AMV SP(System Platform)
- 基本型よりも車体後部の兵員区画の天井を高くして車内容積を増やしたタイプ。上級部隊用の指揮通信統制車両や大型の装甲救急車、工作車両などに使用される。
- AMV MC(Module Carrier)
- モジュラー構造のタイプ。車体からエンジンや操縦士区画、後部兵員区画を分離するとともに、各種のモジュラーや兵装、そのほかの補給物資などを運搬する。
- AMVXP
- 2013年に発表された改良型。
- AMV35
- CV9035の砲塔を搭載した歩兵戦闘車型。オーストラリア陸軍にBAEシステムズが提案した。
- AMOS
- AMOSは120mm重迫撃砲の連装砲塔で、フィンランド軍はAMVに搭載した自走迫撃砲型18両を配備。単装砲とした軽量版のNEMOも輸出に売込中。
ポーランド
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- KTO ロソマク
- オート・メラーラ製ヒットフィスト-30P砲塔を搭載した、歩兵戦闘車仕様の基本型。砲塔には赤外線暗視装置を組み合わせた先進的な射撃管制装置のほか、Obra レーザー警報装置に連動した発煙弾発射機を搭載している。兵装はMk 44 ブッシュマスター II30mmチェーンガンとUKM-2000C同軸機関銃である。
- KTO ロソマク-M1
- ロソマクをアフガニスタンでの作戦行動に最適化するように改造した型。防御力強化のために追加装甲を装着しているが、その代償に水上浮航能力が失われている。
- 操縦席前や砲塔にワイヤーカッターを追加したほかに通信装置を改良し、後方・側面監視用のCCD カメラを追加し、兵員区画内に2基のLCD スクリーンを搭載している。この他にも射撃を受けた方角を割り出すPilar システムが搭載されている。
- KTO ロソマク-M3
- 装甲兵員輸送車仕様。増加装甲などはロソマク-M1と同様の改良が施されているが、兵装はOSS-D オープンターレットにMk19 グレネードマシンガンかブローニングM2重機関銃を搭載する。
- KTO ロソマク-WEM(Wóz Ewakuacji Medycznej)
- 装甲救急車。乗員3名のほかに、担架に乗せた3名と座席に乗せた4名の合計7名の負傷兵を乗せることができる。
- KTO ロソマク-S
- スパイク-LR対戦車ミサイルを運用する2個対戦車班が搭乗する、装甲兵員輸送車仕様。
- KTO ロソマク-WD(Wóz Dowodzenia)
- 大隊長を搭乗させる指揮通信車仕様。
- KTO ロソマク-Łowcza
- Łowcza防空システムを搭載した、防空指揮車仕様。
- M120 ラク
- Rakはポーランドが独自開発した120mm重迫撃砲砲塔で、AMV他の各種車両に搭載可能。
採用国
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フィンランド- XA-180 シリーズの後継として86輌を導入。そのうちの62輌はXA-360装甲兵員輸送車であり、プロテクターM151RWSを介してブローニングM2重機関銃かH&K GMWを装備する。残りの24輌はAMOS連装後装式自動迫撃砲システムを搭載したXA-361自走迫撃砲である。
北マケドニア- 2006年にクロアチアでのトライアルの結果から採用を決定(国内ではトライアルができなかった)。発注予定数は不明であるが、あまり多くはない模様。
クロアチア- 2007年に84両、2008年12月に42両を追加発注。2024年時点で、クロアチア陸軍が派生型を含めて126両のAMVを保有[1]。
アラブ首長国連邦- 2008年1月に導入を発表し、初期評価用に15輌を導入。一部はNEMO自走迫撃砲システムを搭載し、その他の車両はBMP-3の砲塔を搭載している。
スロバキア- 2017年に81輌のAMVXPの導入を発表した。BMP-1とBMP-2を代替する予定。
スロベニア- 当初は135輌を発注し、その中の一部はNEMO自動迫撃砲システムを搭載した自走迫撃砲である。後にパトリア社のスロベニア軍将校に対する贈賄疑惑(パトリア事件)が持ち上がったほか、経済危機により発注を80輌に縮小した。
ライセンス生産国
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- 2009年に113輌を発注するが、同国の裁判所が制式採用トライアルのやり直しを命じた。2010年8月13日に国内でのライセンス生産をするという条件で、同国の防衛資材管理が新たな契約を獲得した。製造を担当したのはスカニア・SAAB・Åkers Krutbruk Protection ABである。
- 2014年からスウェーデン陸軍でPansarterrängbil 360として運用している。
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車体上部のハッチから載り出す兵士。
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降車する兵士。
ポーランド- OT-64 SKOTの後継として採用し、KTO ロソマク(ポーランド語: kołowy transporter opancerzony Rosomak)として833輌をライセンス生産した。アフガニスタンに派遣されている国際治安支援部隊にも配備されている。

- ラーテル歩兵戦闘車の後継として採用、デネル・ランド・システムズがライセンス生産し、バジャー(Badger)として264輌を発注。対弾丸・対地雷防御力を向上させる改良を施しており、歩兵戦闘車、指揮通信車、戦車駆逐車、自走迫撃砲、機動砲車両などの派生型が開発されている。
不採用
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オーストラリア- Land 400 Phase 2にてBAEシステムズがAMV35を提案した。オーストラリアに試験車両2両を持ち込んでボクサー装輪装甲車と共にテストされたが、ボクサーが選定され敗退した。
チェコ- 売り込みも行われたが、チェコ陸軍はオーストリア製のパンデュールIIを制式採用した。
リトアニア- リトアニア陸軍の新型装甲兵員輸送車/歩兵戦闘車の採用候補の一つ(競合出品はピラーニャIIIとパンデュールII)としてトライアルが行われ、ボクサー装輪装甲車も途中から競合参加した。
- 最終的に、ボクサーが選定された。
日本における運用
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防衛省は防衛装備庁が96式装輪装甲車の後継車両としていた装輪装甲車(改)の開発中止を受けて、代替となる後継車両の選定を行った[3]。企業からの提案を受け試験用車種に選定されたのは、機動装甲車(16式機動戦闘車ベース)、パトリアAMV、LAV6.0の3案であったが、LAV6.0は納期に納入されなかったため除外された。そのため選定は機動装甲車とAMVで行われた[2]。
2022年(令和4年)12月9日、防衛省は基本性能や経費面でより優れていると評価したことからパトリアAMVの採用を決定した[2]。取得方法は日本製鋼所によるライセンス生産であり、装輪装甲車の生産経験がない同社をパトリア社が技術供与や人員交流で協力する形である[4][5]。国内生産の初期は輸入部品によるノックダウン生産であり、順次部品の国内生産を進めていく[5]。
2025年(令和7年)9月2日、陸上自衛隊は「装輪装甲車(人員輸送型)AMV」として量産初号機の出荷式が行われたことを発表した[6]。
取得数量を810両(派生型込み)、一両あたりの運用期間を20年と見込んでいる[7]。
| 予算計上年度 | 調達数 | 予算額 |
|---|---|---|
| 令和5年度(2023年) | 26両 | 136億円 |
| 令和6年度(2024年) | 28両 | 200億円 |
| 令和7年度(2025年) | 28両 | 225億円 |
| 合計 | 82両 | 561億円 |
配備
[編集]登場作品
[編集]アニメ・漫画
[編集]- 『ガールズ&パンツァー 最終章』
- 第3話に登場。前面にドーザーブレードを取り付けた車両が、県立大洗女子学園と継続高校の試合会場で除雪作業をしている。
ゲーム
[編集]- 『War Thunder』
- コッカリル 3105ライフル砲を搭載した車両が登場している。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ IISS 2024, p. 79.
- ^ a b c “次期装輪装甲車(人員輸送型)の車種決定について” (pdf). 防衛装備庁 (2022年12月9日). 2022年12月9日閲覧。
- ^ “次期装輪装甲車の試験用車種の選定について”. 防衛装備庁 (2019年9月10日). 2025年9月16日閲覧。
- ^ “パトリア社とのライセンス契約の締結について”. JSW日本製鋼所 (2023年9月4日). 2025年9月16日閲覧。
- ^ a b “Patria's partner Japan Steel Works is preparing to begin production of Patria AMV XP 8x8 vehicles in Japan. The assembly of the vehicles will commence as planned in September.”. Patria (2025年5月16日). 2025年9月17日閲覧。
- ^ ““荒井陸上幕僚長は、9月2日、株式会社日本製鋼所の室蘭製作所において、装輪装甲車(人員輸送型)AMVの量産初号機の出荷式に参加しました。” X(旧Twitter)” (2025年9月4日). 2025年9月17日閲覧。
- ^ プロジェクト管理対象装備品等の現状について (取得プログラムの分析及び評価の概要について)2023年8月31日、防衛装備庁。別紙第9
- ^ “予算の概要”. 防衛省. 2024年3月31日閲覧。
- ^ 陸上自衛隊 富士駐屯地 (富士学校) @公式 [@FujiSchool_pr]「9月16日(火)96式装輪装甲車の後継として富士学校普通科部に装輪装甲車AMVの初号機が納入されました。」2025年10月8日。X(旧Twitter)より2025年11月15日閲覧。
- ^ “自衛隊の新型「8輪装甲車AMV」教導連隊で運用開始! 早くも「アップグレード」の計画あり”. 乗りものニュース (2025年11月15日). 2025年11月15日閲覧。
- ^ 陸上自衛隊 土浦駐屯地(武器学校) [@JGSDF_Tsuchiura]「【陸上自衛隊初展示!】装輪装甲車(人員輸送型)AMVを陸上自衛隊で初めて展示いたします!」2025年9月25日。X(旧Twitter)より2025年10月1日閲覧。
- ^ 陸上自衛隊 名寄駐屯地【公式】 [@JGSDF_Nayoro]「名寄駐屯地 に所在する第3即応機動連隊はAMVの導入に伴う「入魂式 」を行いました。」2025年11月8日。X(旧Twitter)より2025年11月25日閲覧。
- ^ “テロ・暴動など「治安出動」を想定 警察・自衛隊が共同訓練 陸自の新型輸送車を公開 熊本”. TBS NEWS DIG (2025年12月1日). 2025年12月2日閲覧。
- ^ 陸上自衛隊 第8師団 [@8sidan]「【警察との共同訓練】」2025年12月4日。X(旧Twitter)より2025年12月6日閲覧。
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