87式自走高射機関砲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
87式自走高射機関砲
13 12 024 R 自衛隊記念日 観閲式(Parade of Self-Defense Force) 57.jpg
基礎データ
全長 7.99m
全幅 3.18m
全高 4.40m
重量 38.0t
乗員数 3名
装甲・武装
主武装 90口径35mm対空機関砲KDA×2(俯角-5~+80度)
機動力
速度 53km/h
エンジン 三菱10ZF22WT
空冷2ストロークV型10気筒ターボチャージドディーゼル
720hp/2,200rpm
行動距離 300km
テンプレートを表示

87式自走高射機関砲(はちななしきじそうこうしゃきかんほう)は、陸上自衛隊が装備する自走式対空砲である。

防衛省では略称を「87AW」、広報向け愛称を「スカイシューター」としているが、非公式の愛称では「ガンタンク」とも呼ばれる[1]

開発[編集]

アメリカ軍から供与されていたM42自走高射機関砲及びM15A1対空自走砲の後継として、1978年に部分試作が開始された[2]

西ドイツ陸軍(当時)ゲパルト自走対空砲を参考に、当初は61式戦車の車体(架台車)を流用する構想であったが[2]、試作を作った際に61式の車体に対して砲塔が過大だったこと[2]と、計画自体が10年ほど延期されたことによるST車体の陳腐化のため、74式戦車の車体を拡大した新造車体に改めて1982年に全体試作を開始し、試作車両は1983年に完成、各種テストの結果1987年に制式化された。試作車には92式地雷原処理ローラ用の装着部があったが量産車では廃止されている。現在では陸上自衛隊広報センターに展示されている。

車体部の設計は91式戦車橋に流用されている。

特徴[編集]

対地水平射撃中の87式自走高射機関砲

架台車は三菱重工業、砲塔は日本製鋼が製造した。

砲塔の左右にスイスエリコン社製35mm対空機関砲KDAを1門ずつ、2門装備し、砲塔上部の後方にパルス・ドップラー方式索敵レーダーと、追尾レーダーが配置されている。後上方の水平棒状のものが索敵レーダーのアンテナ、前を向いた皿状のものが追尾レーダーのアンテナである。アンテナは畳むことで車高を抑えることが可能。光学照準システムはバックアップ用であるが、映像システム、TVカメラ、低光度TVカメラ、赤外線映像装置、レーザー測遠機が搭載され、夜間の電波妨害下においても行動が可能となっている。

防御装置として発煙弾発射機を砲塔基部左右に装備しているが、前期型は三連装、後期型は四連装と異なっている[2]

消費電力の大きいレーダーを同時使用するため、車体前部右側には搭載機器の電力を補う補助動力装置(APU)が搭載されている。車体の左右側面には多くの点検用パネルが設けられ、様々な機器が収納されている。

74式戦車の車体を利用し重量も同等であるため随伴行動が可能である。また車体サイズが74式と同等であるため分解せずに73式特大型セミトレーラで運搬が可能である(接触防止のためアンテナは畳む)。なお後に開発された90式戦車とは機動力に差があり一体運用に支障がある。

対空用の徹甲榴弾・榴弾(近接信管無し)を用意しており、また、対地攻撃用にAPDS-T(装弾筒付曳光徹甲弾)をも準備している[2]。搭載する機関砲は地上目標に対する水平射撃も可能であり、74式と同様の姿勢制御により走行中や斜面からの射撃も可能にしている。同じ機関砲を使用するエリコン社製35mm2連装高射機関砲 L-90と比べると有効射程や命中公算(命中精度)が向上している。

ドイツ陸軍ゲパルト自走対空砲と同様の索敵レーダー、追尾レーダー配置を理想としていたが、ゲパルトのレーダー配置は特許であるため[2]、特許に抵触しない位置に設置されている。

35mm機関砲の命中率は優れているものの、射程は戦闘ヘリコプター航空機に搭載されるミサイル誘導爆弾より短いため、アウトレンジ戦法により破壊される可能性が大きく、現代の戦場では実用性が低いとも指摘されている[3]。対策として特性の異なる地対空ミサイル(SAM)と相互に補い合うこと(ガン・ミサイルコンプレックス)や、背の高い草地などに潜み待ち伏せする[4]ことで防空能力を発揮する装備品と位置づけられている。

射撃管制装置や各種レーダーも搭載した高性能な自走高射砲だが、15億円超という高額な調達費から年に数両しか導入ができず(平成6年調達数2両、平成16年調達数1両)、2002年度契約で調達を終了、計52両で生産を終了した[5]。教育部隊以外の配備先は、第7師団第7高射特科連隊及び第2師団第2高射特科大隊第3中隊のみの少数に留まっている[2]

海外では自走高射砲に携帯式防空ミサイルシステムの車載型など小型SAMを追加装備し単独でガン・ミサイルコンプレックスをなし得るハイブリッド方式とする改修が行われている(ゲパルトはスティンガーミサイルを追加した)が、87式は改修が行われる前に生産が終了し予算も付かないため、別途、地対空ミサイルを搭載した車両が必要となるなど、調達費に加え実質的な運用コストも上昇している。


調達と配備[編集]

87式自走高射機関砲の調達数[6][7][8]
予算計上年度 調達数 予算計上年度 調達数
昭和62年度(1987年) 4両 平成 7年度(1995年) 2両
昭和63年度(1988年) 8両 平成 8年度(1996年) 2両
平成 1年度(1989年) 8両 平成 9年度(1997年) 2両
平成 2年度(1990年) 8両 平成10年度(1998年) 1両
平成 3年度(1991年) 6両 平成11年度(1999年) 1両
平成 4年度(1992年) 3両 平成12年度(2000年) 1両
平成 5年度(1993年) 2両 平成13年度(2001年) 1両
平成 6年度(1994年) 2両 平成14年度(2002年) 1両
合計 52両

配備部隊・機関[編集]

平成25年度観閲式で行進する高射教導隊の87式自走高射機関砲

JGSDF Director Directly Controled Unit.svg陸上自衛隊高射学校 - 高射教導隊

JGSDF Northern Army.svg北部方面隊


比較[編集]

海外の性能類似車両との比較
日本の旗87式 中華人民共和国の旗95式 ドイツの旗ゲパルト ロシアの旗シルカ ロシアの旗ツングースカ フィンランドの旗マークスマン
画像 JGSDF type 87 Self-Propelled Anti-Aircraft Gun 02.jpg Type 95 SPAAG - Beijing Museum 1.jpg Gepard 1a2 overview.jpg Zsu23-4.jpg Amd 2s6.jpg Marksman SPAAG.jpg
全長 7.99m 6.71m 7.68m 6.54m 7.93m 6.20m
全幅 3.18m 3.2m 3.71m 2.95m 3.24m 3.60m
全高 4.40m 3.4m[9]
4.82m[10]
3.29m[9] 2.57m[9]
3.57m[10]
3.36m[9]
4.01m[10]
不明
重量 38.0t 22.5t 47.5t 20.5t 34t 41.0t
最高速度 53km/h 53km/h 65km/h 50km/h 65km/h 52km/h
乗員数 3名 3名 3名 4名 4名 3名
武装 35mm機関砲KDA×2 87式25mm機関砲×4
QW-2地対空ミサイル ×4
35mm機関砲KDA×2 AZP-23 23mm機関砲×4 2A38 30mm連装機関砲×2
9M311地対空ミサイル×4
35mm機関砲KDA×2

登場作品[編集]

映画[編集]

ガメラ2 レギオン襲来
実車が日本映画初登場。飛翔する小型レギオン編隊の5分の4を撃墜する[11]レギオン無線レーダーなどの電波を放つ目標を優先的に狙うことから、レーダーではなく光学照準による射撃を実施した。

アニメ・漫画[編集]

GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
異世界へ派遣された自衛隊の装備として登場。帝国軍の竜騎兵を迎撃する。
オメガトライブ キングダム
自衛隊のダミー・クーデター時に登場。
最臭兵器
主人公迎撃のために出動する部隊の中に混じっているが、攻撃シーンはない。

ゲーム[編集]

Wargame Red Dragon
自衛隊デッキに「GUNTANK」の名称で登場。
War Thunder
日本ツリーの自走式対空砲として「Type 87」の名称で登場。
凱歌の号砲 エアランドフォース
日本を占拠した自衛隊の車両として登場。プレイヤーも購入して使用できる。
大戦略シリーズ
日本もしくはN国の装備として登場。

脚注[編集]

  1. ^ 【動画】陸自「ガンタンク」の強さとは? 攻撃ヘリ、ひとたまりもなく 87式自走高射機関砲 - 乗りものニュース
  2. ^ a b c d e f g PANZER 臨時増刊 陸上自衛隊の車輌と装備2012-2013 2013年1月号,アルゴノート社,P38
  3. ^ 江畑謙介「日本の軍事システム 自衛隊装備の問題点」講談社 2001年
  4. ^ 【防衛最前線(64)】北の空を守るスカイシューター 陸自の87式自走高射機関砲には「ハエたたき」の異名も…(2/2ページ) - 産経新聞
  5. ^ 装甲車両・火器及び弾薬の開発・調達について 平成23年2月 防衛省経理装備局艦船武器課
  6. ^ JapanDefense.com
  7. ^ 防衛白書の検索
  8. ^ 防衛省 予算などの概要
  9. ^ a b c d レーダー格納時
  10. ^ a b c レーダー展開時
  11. ^ 劇中の「五体に一体は雷雨を突破」というセリフから

関連項目[編集]

同種の自走式対空砲

外部リンク[編集]