FN MAG
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![]() FN MAG 58にモダンなポリマー製ファニチャーを装着 | |
FN MAG | |
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種類 | 軍用機関銃 |
製造国 |
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設計・製造 | FNハースタル |
仕様 | |
種別 | 汎用機関銃 |
口径 | 7.62mm |
銃身長 | 630mm |
使用弾薬 | 7.62x51mm NATO弾 |
装弾数 | ベルト給弾式 |
作動方式 | ガス圧利用(ロングストロークピストン式)、ティルトボルト式、オープンボルト |
全長 | 1,263mm |
重量 | 11,790g |
発射速度 | 650-1,000発/分 |
銃口初速 | 840m/s |
有効射程 | 800m |
歴史 | |
設計年 | 1950年代 |
バリエーション |
M240機関銃 L7汎用機関銃 Ksp 58 74式小隊機関銃 |
FN MAGは、1950年代にベルギーのFN社で開発された汎用機関銃である。名前の由来は、フランス語で汎用機関銃を意味する"Mitrailleuse d'Appui General"の頭文字を取ったもの。英語の"General Purpose Machine Gun"(GPMG)の語源とも言われている。
1958年より製造が開始され、7.62x51mm NATO弾を使用する汎用機関銃として、NATO加盟諸国など80ヶ国以上で広く採用されている。
概要[編集]
運用思想としては、第二次世界大戦中のドイツ製MG34/MG42によって証明された汎用機関銃の有効性を受け継ぐものである。
FN MAGのメカニズムは、ブローニング BARのボルト閉鎖機構を基礎としたが、ベルト給弾機構とボルト閉鎖機構との連動性はMG42が参考にされた。また、引き金まわりの機構や、プレス加工を多用することにより生産性を向上している点も、MG42の影響を受けている。ただし、NATOはベルトリンクも規格化したので、正確にはMG42と同じものではない(1968年に再設計されたMG3がMG42の直系)。
作動方式は、オープンボルト式のガス圧作動方式であり、ティルトボルト式のボルト閉鎖機構が採用されている。銃身の下にあるロングストロークガスピストンにより作動し、オペレーティングロッド(ガスピストン)の前進に伴いロッド上のボルトキャリア後部にあるカムが回転し、ボルトに取り付けられたアーム後部が斜めに下降しアーム後端がレシーバー内部下面の窪みにはまることによりボルトが閉鎖され、オペレーティングロッド(ガスピストン)の後退に伴いアーム後部が上昇することでボルトが開放される[1][2][3]。カムの回転方向とアーム後部の揺動方向をブローニング BARと上下逆さにした機構であり、ベルト給弾機構とボルト閉鎖機構とのリンクがボルト上側に位置するため、ボルトに取り付けられたアーム後部の揺動方向が下向きに変更された。
FN MAGは、全ての状況下において非常に信頼できる機関銃であることが判明した。アメリカ陸軍におけるテストでは、動作不良(部品故障含む)の頻度は26,000発に1回というもので、弾詰まりによる射撃停止はさらにそれよりも低かった。
この機関銃の特筆すべき点は、銃身を非常に素早く交換できるという点である。よく訓練された兵士は、およそ3秒以内に新しい銃身に交換することができる。機構的な過熱を防ぐため、継続射撃を行う際にもベルトリンクは100連に制限されている。訓練の際にはこの制限がしばしば省略されるが、それでも継続して射撃を行うことができる。
たとえば、フォークランド紛争におけるグース・グリーンに対する攻撃の際、イギリス軍空挺(エアボーン)部隊の兵士は、交換用の銃身なしで5,000-8,000発もの弾丸を発射しなければならなかった。結果的に、銃身が白くなるほど過熱したが、それでもこの機関銃は作動し続けることが証明された。
これらによって本機関銃は後述の通り多くの国で採用されるに至るほどの優秀な機関銃として仕上がっているが、唯一の欠点としては重量が11.79kgと、歩兵が携行する機関銃として運用するにはやや重く、同時代に開発され使用弾薬も同じであるM60や、同クラスの弾薬を用いるPKよりは不利である。加えて、1960年代より5.56x45mm NATO弾を使用するM16アサルトライフルの登場を皮切りに、NATO加盟国の歩兵銃が5.56mm口径のアサルトライフルへとシフトしていくのにつれ、歩兵が携行する機関銃も本機関銃と同じくFN社が開発したミニミ軽機関銃に代表される、より小型軽量な小口径の機関銃へとシフトしていった。しかし、人力での運搬を考慮しない陣地機関銃や車載機関銃、ヘリコプターのドアガンとしては21世紀現在に至ってもなお現役である。
運用国[編集]
FN MAGは、80ヶ国以上で採用されている。下記に五十音順で列挙する。また、アメリカ、イギリス、アルゼンチン、エジプト、インド、シンガポール、台湾ではライセンス生産されている。
- M240機関銃として制式採用。陸軍ではM240Bとして、海兵隊ではM240Gとして採用している。陸軍は、1977年から戦車の同軸機銃として搭載し、海兵隊は、1980年代からハンヴィーなどの車載機銃として搭載している。さらに、陸軍は1990年代から、海兵隊は1991年(湾岸戦争)から、それぞれM60E4の後継機関銃として歩兵部隊への配備を始め、あらゆる部隊・作戦でM60の代替機関銃として使われている。
- M240Bには反動吸収装置を内蔵し、他にも若干の改修を加えたモデルや、部品の一部にチタン合金を使用した軽量モデルが存在する。M240と一部のM249、残存しているM60は、21世紀初頭には新軽量機関銃に交換する計画がある。
- 砂漠地帯における信頼性の高さ故に採用された。歩兵用機関銃としての役割は、イスラエル国産のIMI ネゲヴ軽機関銃に代替されたが、メルカバやマガフ、ショット、アチザリット、ナグマホンなどの車載用機関銃として現役である。特に近年のイスラエル国防軍は、戦車の対人戦闘力強化のために車長用キューポラと装填手用ハッチに1挺ずつ、合計2挺のFN MAGを装備させている。
- Pindad SPM2-V2 GPMGとしてライセンス生産。
- オーストラリア国防軍に採用された。特に陸軍は、MAG 58として制式採用した。
- 歩兵部隊において長期間運用され続けている。
- C6 GPMGとして制式採用。一般的に、1個ライフル小隊につき1挺が割り当てられている。
- GPMGとして歩兵部隊に配備されている。新兵に対する教練では「汎用"General Purpose"」という単語について、「何に対しても撃つことができる」という意味で教えている。車載機銃としても採用されており、トラックや装甲戦闘車両などに搭載されている。
- Ksp 58として制式採用。初期のKsp 58は、旧来のスウェーデン軍標準小銃弾である6.5x55mm弾仕様だった。これらは後に7.62x51mm NATO弾仕様のKsp 58Bへと改修された。また、Ksp 58Bを原型に短銃身や折畳式銃床などを備える近代化改修モデルが設計されており、Ksp 58DFとして試験運用されている。
- CSF(Combined Service Forces、旧Hsing-Hua Arsenal)が74式小隊機関銃としてライセンス生産している。
- 特殊部隊が運用している。
- ブラジル軍が運用している。
登場作品[編集]
映画[編集]
- 『GODZILLA ゴジラ』
- M240機関銃の代わりとして登場し、アメリカ陸軍のM1A2 エイブラムスの砲塔上に搭載されている。
- 『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』
- 終盤のアズメニスタンの戦闘で、CIAのマックス・ドラマーが操縦するUH-1の機内で本機関銃を、彼に雇われたトレンチとイン・ヤンが使用。上空から敵兵多数を機銃掃射で仕留める。よく見ると2人とも本機関銃を直接保持して発砲している。
- 『トランスフォーマー』
- エアポリスのハンヴィーに装備されている。
- 『ポリス・ストーリー3』
- マレーシア警察のバンの上に二脚を展開して搭載されている。
- 『ランボー3/怒りのアフガン』
- SA 330 ピューマを改造して作ったMi-24 ハインドのドアガンとしてストックレス仕様が登場。前半の村襲撃の際、ソ連兵がムジャーヒディーンに向けて銃撃を行う。中盤のソ連軍基地から主人公のジョン・ランボーがMi-24を奪って脱出する際にはトラウトマン大佐がソ連兵に向けて使用。しかし、Mi-24が銃撃を受けて損傷して墜落したため、使用不能になる。終盤の戦いでは、ソ連兵がムジャーヒディーンの騎馬隊に向かって激しい銃撃で応戦するが、トラウトマン大佐が使用したエリコンFF 20 mm 機関砲により機関部を破壊され、無力化される。他にも、ランボーが操るT-72にも同軸機銃として搭載され、クライマックスでは先述のとは別のMi-24に乗ったザイセン大佐に向けて猛烈な銃撃を行う。