練習機

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練習機(れんしゅうき、英:Trainer)とは、操縦士の操縦訓練に使用される航空機のことである。訓練機とも呼ばれる。

自社養成を行う航空会社や民間のフライトスクール、軍の訓練部隊などで利用される。

構造[編集]

航空機が登場した当初は他の機体の兼用だったが、1920年代頃から専用の練習機が開発されるようになり、航空機の高性能化が進むと訓練が必要な要素も増えたため多彩な機種が開発された。それに伴い訓練期間も伸びている。

練習機[編集]

かつては飛行訓練では段階を追った飛行訓練ができるように、初等練習機基本練習機および中等練習機(旧日本軍では中間練習機とした)、高等練習機と段階に合わせた機体が用意されていた。現代では飛行適正は面接と医学診断で判定できることに加え、アビオニクスの進化により初等~基本の課程は同一の機体で対応、計器飛行に対応した機体で計器飛行訓練を行った後、高等練習機は使わず実機(複座型や運航中の同乗訓練)やフライトシミュレータで訓練することが多くなっている。また自家用操縦士であれば初等練習機のみで訓練が完結する。気球飛行船は練習専用機が存在しないため、最初から実機で訓練を受ける。

コックピットの配置には、座席を前後に並べるタンデム配置と、左右に並べるサイド・バイ・サイド配置の2種に分けられる。

タンデム配置では教官は後ろ、訓練生は前に座る。機体中心線上での操縦となるため戦闘機パイロットの養成に向く、欠点として教官から訓練生の操作が見えず指示がしにくい。

サイド・バイ・サイド配置では教官は右、訓練生は左(機長席)に座る(ヘリコプターは逆)。訓練生の操作が教官から見え手本を見せることも出来る。大型機と同じ配置であるため民間ではこちらが採用される。欠点として操縦席が機体中心線上から外れ、訓練生はスロットルレバーを右手で操作するため、単座機とは感覚が異なる。

初等・基本練習[編集]

初等練習機は不慣れな訓練生の操縦に対応した設計が求められる。この段階では頻繁な指導が必要であり訓練生の将来の適正も不明であるため、サイド・バイ・サイド配置が主流である。訓練生と教官の2名だけか、後部に補助席を追加した小型機が多い。

操縦性は安定性を重視し、教官がミスをカバーできるように機械式のリンクを有する操縦系統が好まれる。この段階では高度なアビオニクスの操作は必要ないため、計器類は基本的なアナログ計器が見やすく配置された伝統的なレイアウトが主流である。エンジンは整備しやすく安価なレシプロエンジン主流だが、軍隊では燃料を統一するため低出力のターボプロップエンジンにリミッターをかけて運用する。荒い操縦や頻繁なタッチアンドゴーに耐えるため耐久性が重視され、飛行機では固定脚ヘリコプターでは固定式のスキッドが採用される。航続距離は必要ないため燃料タンクは小さい機体が多い。

軍隊では地上の教官からも飛行中の姿勢を把握しやすくするため、白地に視認性の高いラインを入れることが多い。またこの課程は軍隊でも民間のパイロットスクール等に委託する国も多い。

代表的な機種としてボーイング・ステアマン モデル75T-34などがある。練習専用では無いが、セスナ 172ビーチクラフト ボナンザロビンソン R22などの汎用機は求められる性能を満たしながら低価格であるため、民間では多く利用されている。

初等練習の段階からターボジェットエンジンを搭載したT-37フーガ・マジステールなどを使用した国もあったが、初等訓練では飛行適性を欠いた者をふるい分ける過程も存在するため、その目的でジェット機を用いるのはコスト高と墜落リスクおよび訓練生への負担増があり、現在はあまり行われていない。

近年ではエアラインパイロットの訓練として、初等訓練の段階から機長と副操縦士の連携を重視した実際の運行状況に近い訓練法『Multi Crew Pilot License(MPL)』が普及しているため、ダイヤモンド・エアクラフト DA-40の様な操縦席に余裕があり、グラスコックピットを採用した練習機が選択されている[1]

計器飛行・航法訓練[編集]

かつて計器飛行に対応した航法装置が小型化されていなかったため、航法装置を搭載した中型・大型機に複数人が乗り込んで航法士の席で訓練を行っていた。また天測航法も重要であったため、大型機には機体上面に天測窓が設置されており、同時に天測航法の訓練も行っていた。

現代では航法装置の小型化により、小型の練習機にも搭載できるため、対応した練習機を利用する。また天測航法やアナログ計器とフライトコンピューター(航法計算盤。計算尺の一種)を使用する伝統的な訓練より、各種の電波航法装置やオートパイロットグラスコックピットの操作など複雑化したアビオニクスを操作する訓練に時間が割かれるようになっている。

ヘリコプターでは計器飛行訓練が行えないため、まず固定翼機で計器飛行訓練を経てからヘリコプターに移行するのが一般的であった。現在ではEC 135など計器飛行に対応した機種が登場したことで、最初からヘリコプターで訓練することも可能になっている。

ビーチクラフト モデル 18にはアメリカ陸軍航空隊向けとして、機体上面に天測窓を追加した『AT-7 Navigator』が製造された。

中等練習[編集]

より高度な訓練を行うため実機に近い特性の機体が選ばれる。

戦闘機パイロットの養成ではより実機の戦闘機に近いタンデム配置のターボファン機やターボプロップ機が利用される。武装したCOIN機や各種機器を搭載する観測機など実用に耐えうる機体も多い。RFB ファントレーナーダクテッドファンにより低速ながらターボファン機に近い特性であり戦闘機パイロットの訓練機として売り込まれた。

代表的な機種としてピラタス PC-9エンブラエル EMB-312JL-8 カラコルムなどがある。

大型機パイロットの訓練にはビーチクラフト クイーンエアビーチクラフト キングエアなど双発のビジネス機が利用される。

ヘリコプターではこの段階から実機を使うことが多い。

高等練習[編集]

戦闘機のパイロットを目指す本格的な課程に進む場合は、高等練習機ないし戦闘機の複座型において基本的な戦闘訓練などを行う。かつては超音速飛行は音速以下の飛行とは隔絶した差があると考えられており、そのため戦闘機にかなり近い性能もしくは実機の戦闘機・攻撃機の派生形である超音速練習機(T-38T-2ジャギュア)を用いる国もあった。しかし現在ではそれほどの差はないと認識されたため、亜音速機が主流である。

代表的な機種としてT-4アルファジェットホークL-39などがある。

大型機パイロットの訓練では実機に乗り、他の乗員(航空士)を目指す訓練生と一緒に訓練を受ける。

LIFT機[編集]

近年は戦闘機のアビオニクスが高度化しているため、その操作に慣れて効率よく作戦機に移行できるよう、現代の戦闘機に近いアビオニクスや兵装搭載能力を持つLIFT(リフト機、Lead-in fighter trainer, 戦闘機前段階練習機の略)という上級高等練習機が登場している。

代表的な機種としてM-346マスターT-50ゴールデンイーグルなどがある。

機上作業練習機[編集]

かつては航法や通信機器の操作が複雑で学習に時間がかかるため、操縦以外の訓練を行う機上作業練習機が用意されていた。現在は機器の自動化により、操縦訓練と平行してを行うことが多い。

爆撃機哨戒機など乗員(航空士)が機内作業に習熟するため、内部に実機と同等の装置を搭載した訓練機は現代でも利用されている。

ビーチクラフト モデル 18にはアメリカ陸軍航空隊向けとして、爆撃機の射撃手や爆撃手の訓練のため爆撃手席や透明張り出し、胴体下に爆弾架を追加した『AT-11 Kansan』が製造された。

YS-11には海上自衛隊向けとして、哨戒機の航空士を養成するため哨戒機材を搭載した『YS-11T-A』が製造された。

練習機の運用[編集]

領空が狭く訓練空域が確保できない国や天候が不安定で訓練飛行に危険が伴う国は、練習機の保有はしないか小規模に留め、海外(アメリカなど)に飛行訓練を委託している。前者の1つであるシンガポールオーストラリアフランス、アメリカなどに練習機部隊を派遣して訓練を行っている。後者の1つであるドイツはかつては自前の練習部隊を保有していたが、近年はアメリカ空軍に候補生を派遣して練習を委託している(使用する練習機はアメリカ空軍と同じだがドイツ空軍に所属)。

グライダー[編集]

初等訓練では安価で低速な軽飛行機グライダーが用いられることもある。

民間のパイロットの多くはグライダーのクラブで操縦感覚を掴み、飛行機にステップアップすることが多い。軍隊でもかつてはグライダー課程が初等練習だったが、現代の先進国では最初から初等練習機を使用する。イギリス空軍には、各種グライダーを使って最初等訓練を行うボランティア・グライダー学校(VGS)が存在する。

関連項目[編集]

脚注[編集]