飛行船

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USSロサンゼルス号
1924-1932年頃のニューヨーク市南マンハッタン上空

飛行船(ひこうせん、英:airship)とは、空気より比重の小さい気体をつめた気嚢によって機体を浮揚させ、これに推進用の動力や舵をとるための尾翼などを取り付けて操縦可能にした航空機(軽航空機)の一種である。

概要[編集]

機体の大部分を占めるガス袋(気嚢)に水素もしくはヘリウムが充填されている。通常、ガス袋は空気抵抗を低減させるため細長い形状をしており、乗務員や旅客を乗せるゴンドラや、エンジンおよびプロペラなどの推進装置が外部に取り付けられている。機体後部には尾翼があり、方向安定を得るとともに取り付けられた舵面を動かして船体の方向を変える。

20世紀前半には大西洋横断航路などで旅客運行に従事していたが、1937年に発生した「ヒンデンブルク号」の爆発事故を契機に水素利用の飛行船の信頼性は失墜し、航空輸送の担い手としての役割を終えた。その後、広告宣伝用や大気圏の観測用等として、不燃性のヘリウムガスを利用した飛行船が小規模に使われている。

近年では、構造上不可能とされていた完全な球体型の飛行船「ボール・オブ・ドリーム」も開発された。

歴史[編集]

伊土戦争にてリビアを爆撃するイタリア王国陸軍航空隊(世界初の航空爆撃)
ツェッペリンの飛行船 (1900)

ヒンデンブルク号爆発事故[編集]

ヒンデンブルク号爆発の瞬間

当時、ヘリウムアメリカでしか生産されておらず、アメリカがナチス・ドイツへのヘリウムの供給を拒否したため、爆発の危険を冒しながらも水素ガスを利用していた。そのため、この事故は水素ガスによるものと推測され、水素ガスを使用する飛行船の安全性に対する信用は失墜し、以後水素による飛行船が使われなくなる原因となった。

種類[編集]

軟式飛行船
浮揚のためのガスを詰めた気嚢と船体が同一で、ガスの圧力で船体の形を維持する形式。重量やコストの面で有利であり、現代の飛行船はほとんどがこのタイプである。しかし、ガスの放出によって圧力が弱まると船体を維持できなくなる。突風などによって船体が変形するとコントロールを失ってしまう。また、一旦気嚢に穴が開くとガスの漏出が全体に影響するなどの欠点もある。また、船体の剛性が確保できなくなるため大型化に適しない。
硬式飛行船
アルミなどの軽金属や木材などで頑丈な枠組みを作ってそれに外皮を貼り、複数の気嚢をその内部に収納する形式。金属製の枠組みにより船体の重量が増加する欠点があるが、船体の強度が高くなるため大型化、高速飛行が可能。
特にツェッペリン伯爵製作による一連の飛行船が有名であり、「ツェッペリン」は硬式飛行船の代名詞となった。しかし、船体が頑丈といっても強風や荒天に耐え切れるほどではなく、悪天候による「難破」事故も多発している。また航空機の進歩により大型飛行船の存在意義自体が消滅したため、現代では生産・運用はされていない。
半硬式飛行船
ゴンドラを吊り下げる部分など一部分にのみ金属等による骨格を用いた軟式飛行船や、骨格がたとえば3本(機首から尾部まで骨格は通じている)と第一次大戦時の飛行船と比べて明らかにそれが少ないツェッペリンNTがこのタイプである。また、イタリアの飛行船『イタリア号[1] のように、気嚢の下半分のみに放射状の枠を持ったものもあった。これも半硬式飛行船と呼ばれていた。
現在、ツェッペリンNTが『半硬式』と呼ばれるように、ただ単に構造上において気嚢の半分だけが枠組みを持っているわけではないことに注意が必要である。
半硬式の利点として、硬式よりも骨格が少なく軽量化できるにもかかわらず、硬式飛行船と同様に大型化が可能である事、硬式同様に枠組みにエンジン船室を取り付けられるので設計に柔軟性があり制約が少ない事がある。たとえばエンジンと船室を離れた場所に設置できるので、船室内の環境が快適である利点がある。
全金属製飛行船
第二次世界大戦前、アメリカ海軍が全長44.5メートルの全金属製飛行船(ZMC型)を造ったが、当時はジュラルミンの薄板を300万本のリベットで接合するなどの苦労があり、主力飛行船型には採用されなかった。しかし現在の素材や接合技術を用いれば、こうした構造もまた十分再検討に値すると考えられる[2]

高高度プラットフォーム[編集]

無人制御の飛行船の用途として、地上局・人工衛星と並ぶ第三の情報通信網としての「成層圏プラットフォーム」飛行船が注目されている。地上20キロメートルの成層圏に全長300メートル以上の大型無人飛行船を停留させ、無線通信の基地局として用いるというものである。基地局として必要な電力は飛行船上面に取り付けられた太陽電池でまかなうアイデアもある。地上局に比べ広範囲をカバーでき、人工衛星に比べ遅延時間が短く運用コストが低いという利点がある。

「成層圏プラットフォーム」実用化に向けた取り組みは世界各国でなされており、日本では政府による「ミレニアムプロジェクト」の一つとして、成層圏滞空飛行船を利用した通信・放送サービスが計画された。2004年には大規模に税金が投入され、北海道大樹町多目的航空公園で全長60メートルの実験機(ラジコンの軟式飛行船)の飛行試験が行われたが、資金難から中止された。

日本国内での飛行船を用いた広告[編集]

飛行船を用いた富士フイルム広告
ニッセン「スマイル号」
メットライフアリコ「スヌーピーJ号」

飛行船が登場する作品など[編集]

小説
映画・ドラマ
アニメ・漫画
ゲーム

脚注[編集]

  1. ^ 1928年建造。全長80メートル。小学館「国際版少年少女世界伝記全集第23巻-〈ワシントン/ツェッペリン〉」P125、1982年9/10刊行
  2. ^ 「航空用語辞典」Airshipの項目より(鳳文書林出版。同名の本があるので注意。)。および外部リンク参照。
  3. ^ ピーナッツ関連情報|SNOOPY.co.jp :スヌーピー公式サイト
  4. ^ スヌーピーが大活躍 |MetLife Alico
  5. ^ 最近、飛行船を見ましたか?(Excite Bit コネタ) - エキサイトニュース
  6. ^ その後日本支社は2012年に日本法人「メットライフアリコ生命保険株式会社」として独立、また同社も2014年に「メットライフ生命保険株式会社」(通称:メットライフ生命)に改名。

参考文献[編集]

  • マイケル・マクドナルド『悲劇の飛行船 ヒンデンブルク号の最後』平凡社、1973年
  • 柘植久慶『ツェッペリン飛行船』、中央公論社、1998年、ISBN 4-12-002744-9
  • 天沼春樹『夢みる飛行船 イカロスからツェッペリンまで』時事通信社、2000年、ISBN 4-7887-0074-3
  • ヘニング・ボエティウス『ヒンデンブルク炎上』(フィクション)天沼春樹 訳、新潮社、2004年、ISBN 4-10-215021-8

関連項目[編集]

外部リンク[編集]