対物ライフル

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対物ライフル(たいぶつライフル、: anti-materiel rifle)は、かつての対戦車ライフルに相当する大型のである、「anti-materiel-rifle」からそのままアンチマテリアルライフルとも呼ばれることがある。主に狙撃に使われる。

概要[編集]

対物ライフルは、重機関銃機関砲などに使用される大口径弾を使用するである。重い大口径弾の優れた弾道直進性を活かして、一般の小銃弾を使用する狙撃銃をはるかに上回る距離で狙撃を行える。

使用弾種にも依るが土嚢や壁などの障害物に隠れる敵や、軽車両に対して損傷を与える事も可能である。ただし、対物ライフルは通常のライフルよりも遥かに長く大きく重く、また反動も強力であり、設置による支持射撃状態(いわゆる伏射が主流)以外から、すなわち通常のライフルのように肩づけや腰だめで正確に射撃するのはほぼ不可能である。

歴史[編集]

第一次世界大戦に、ドイツ戦車狙撃を目的とした大口径ボルトアクション式対戦車ライフルマウザー M1918」を開発した。M1918は戦車の装甲板を貫通して内部の乗員を殺傷することが目的の火器だった。

対戦車ライフルは、後に装甲技術の向上などで対戦車兵器としては陳腐化したこともあり一時的に姿を消したものの、対戦車ライフルと同様の大口径・強装薬な弾薬を用いる重機関銃機関砲は、その弾薬の強大な反動を本体の多大な重量が相殺してしまうため優れた威力と射程と命中精度を持ち、単射での超長距離狙撃にも有効であった。この事は経験的に知られており、独ソ戦ベトナム戦争において、現場兵士の即興で対人・対物狙撃用として使用した例が見られた。

正規軍が組織的に重機関銃弾を狙撃に使用したのはフォークランド紛争におけるアルゼンチン軍であると言われる。ブローニングM2重機関銃スコープを取り付けて遠距離狙撃を行うアルゼンチン軍に対し、同口径の火器を退役させていたイギリス軍歩兵は一方的な攻撃を受け、いちいち高価なミラン対戦車ミサイルを撃ち込んで敵陣地ごと破壊するという戦法を採らざるを得なかった。結果、簡便な大口径ライフルによる狙撃が見直されることになった。

また、ミュンヘンオリンピック事件などで、1km超での狙撃能力や、強化ガラス航空機キャノピーを貫通できる火器を必要とした警察などにおける対テロ特殊部隊でも大口径ライフルの需要が発生し、これらの理由が複合的に検討された結果、再び50口径級のライフルが開発されるようになる。

この種類の火器として最も実績を挙げたバレットM82が、スウェーデン軍地雷IED除去の目的で「対物銃」として最初納入されたため、以後同クラスの弾薬を用いるライフルもそのように呼ばれるようになっていった。 湾岸戦争アフガニスタン紛争イラク戦争など開けた場所が多い戦場でアメリカ陸軍アメリカ海兵隊がバレットM82などによる遠距離狙撃で戦果を挙げた。

戦時の対物ライフルによる対人狙撃は、ハーグ陸戦条約で禁止されている「不必要な苦痛を与える兵器」に該当している説が出ることもあるが、明示的に、これも含め諸条約に該当している部分はない[1][2]。一部の12.7mm弾等が、人体に向け発射され、体内で炸裂する場合は、炸裂弾を禁止したサンクトペテルブルグ宣言に抵触するとされるものの、対物攻撃の場合と区別できず、規制には至っていない[3][4]

主な対物ライフル[編集]

マクミラン Tac-50
PGM ヘカートII

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

イギリスの旗 イギリス

フランスの旗 フランス

ロシアの旗 ロシア

南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国

その他

脚注[編集]

  1. ^ Maj W. Hays Parks (1988年). “Killing A Myth”. Marine Corps Association. 2016年8月7日閲覧。
  2. ^ (English) Guns of Special Forces 2001 – 2015. Casemate Publishers. (2016). p. P188. ISBN 9781473881013. 
  3. ^ ICRC. “Rule 78. Exploding Bullets,Customary IHL”. 2016年8月7日閲覧。
  4. ^ ICRC. “Practice Relating to Rule 78. Exploding Bullets,Customary IHL”. 2016年8月7日閲覧。

関連項目[編集]