ソードオフ・ショットガン
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ソードオフ・ショットガン (Sawed-off shotgun) は、銃の一種で、ショットガンの銃身を切り詰め、銃床も短くした(あるいは無くした)ものを指す。この呼称はアメリカ合衆国で用いられることが多いが、イギリスやオーストラリア・ニュージーランドなど、イギリス英語圏ではソーンオフ・ショットガン (sawn-off shotgun) と呼ばれており、アメリカでもこう呼ばれることがある。しかし、アメリカの法律用語ではショートバレル・ショットガン(short-barreled shotgun, SBSと略されることもある)と呼ばれる。
概要[編集]
ソードオフ・ショットガンは、その名前の通り(sawed offは、のこぎりで切り落とすこと)、普通のショットガンを持ち主が自分で改造して作るほか、銃器メーカーがあらかじめ短くした状態で、軍や警察向けに販売することもある。銃身を切り詰めるため、銃口付近の「絞り(チョーク)」(散弾の拡散を調節する仕掛け)が無くなり、発射直後に散弾の拡散が始まるため、通常のショットガンと比べると有効射程は短いものの、至近距離の殺傷力や有効性はむしろ増大し、さらに全体の長さが短くなることにより屋内など狭所での取り扱いが容易になるため、特殊部隊などが屋内に突入する際、出合い頭の戦闘が(敵と鉢合わせすることが)多いポイントマンがエントリー・ショットガンとして用いることもある。
その危険性から犯罪に用いられることを防ぐため、多くの国ではショットガンの銃身の最小制限が定められている。アメリカの多くの銃器メーカーは、民間向けにソードオフ・ショットガンを製造することは無いものの、多くのカスタムショップが5-200ドルの連邦税を支払い、合法的に有名メーカーのショットガンを改造したソードオフ・ショットガンを販売している。ただし、こういったソードオフ・ショットガンはほとんどの国で規制対象とされており、法執行機関や軍以外には公式に出回ることはまず無い。
法律で拳銃類の所持が規制されていたり、値段が高くて入手しにくい国では、犯罪者たちが猟銃を犯罪用の銃に作り変えていることが知られている。犯罪組織などにとっては、普通の猟銃用の弾薬が利用でき、鞄やコートなどでの隠匿や携帯も容易な点が利点であるとされる。もっとも、小型の銃が入手しにくい地域に住んでいるといった事情だけでソードオフ・ショットガンが作られるというものでもなく、単にアクション映画で見かけたなど、作られる理由はいくつもあり得る。
ソードオフの欠点としては、短銃身になったゆえの射程の短さである。室内などインドア戦においては強力な火力を持つが、遠距離での命中は期待できず、ほとんど役に立たない。また、ポンプアクション銃のような弾倉を設けるスペースが無いため、基本的に単発か2連発になってしまい、持続的な射撃には向いていない。よって、警察や軍では、建物内への侵入の際にドアの鍵の破壊や至近距離戦以外では使用されない。
マスターキー[編集]
ソードオフ・ショットガンは単体で使用されることが多いが、中にはグリップ(握り)を廃し、M203 グレネードランチャーのようにアサルトライフルなどの銃身下部に取り付けられているタイプが存在する。「建物内へ侵入する際にショットガンで錠前を破壊し、侵入後はアサルトライフルに持ち変える」というシチュエーションの際に発生するタイムラグを解消するため、考案されたシステムである。このシステムはどのような扉でも(錠前を破壊して)開けてしまうことから、万能の鍵=「マスターキー」と呼ばれている。これ以前にもM16 アサルトライフルの下部にフルサイズのショットガンが取り付けられているものが存在した。これは、ベトナム戦争などで培ったジャングル戦におけるショットガンの有用性を応用したものである。
レミントンM870などがこのマスターキーに使用されているが、フォアグリップまで手が届きにくく、次弾を装填するのに手間が掛かるという欠点などもある。また、重量も増加する。これを克服するため、M26 MASSという軽量な短銃身ショットガンなども開発されている。
事件[編集]
この項では、実際にあった事件で使用された銃器を紹介する。
- コロンバイン高校銃乱射事件
- エリック・ハリスがHi-Point 995 9mm カービンとソードオフに改造したSavage-Springfield 67H ポンプアクション式ショットガンを、ディラン・クレボルドがIntratec TEC-9とソードオフのStevens 311D ダブルバレルショットガンを犯行に使用。
登場作品[編集]
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映画・テレビドラマ[編集]
ソードオフ・ショットガンは西部劇やクライムアクション映画によく登場する。
- 『イレイザー』
- 主人公のジョンが上下2連式ソードオフモデルの「ロッキー・マウンテン・アームズ製ステークアウト O/U ショットガン」を愛用している。
- 『決断の3時10分』
- 銃身を短めにしたコルトM1878 ダブルバレルショットガンをエヴァンスが使用。2007年にジェームズ・マンゴールド監督が同タイトルでこの作品をリメイクした。
- 『コブラ』
- 主人公の敵、ナイトスラッシャーがラストシーンで使用する。他にもレミントンM870のソードオフモデルが登場する。
- 『ザ・ウォーカー』
- 主人公、イーライがレミントンM870の銃身と銃床を切り詰めたソードオフショットガンを愛用する。
- 『スーパーナチュラル』
- ディーンやサムが岩塩の弾丸が込められたショットガンを悪魔や悪霊に対して使用する。上下2連・水平2連・イサカM37・レミントンM870・ウィンチェスター M1887のソードオフモデルが登場する。
- 『西部警察』
- 大門軍団の団長こと大門圭介が使用。スコープマウントを増設したレミントンM31のソードオフモデルの改造型が登場する。
- 『ターミネーターシリーズ』
- 『ダイ・ハード/ラスト・デイ』
- 主人公、ジョン・マクレーンがチェチェン人の車のトランクに積んであったものを車ごと奪うことで入手する。その後、チェルノブイリ原子力発電所での戦闘で使用する。
- 『デスペラード』
- 主人公のエル・マリアッチがベッドルームに侵入してくる賊を水平2連式ソードオフのロッシ製オーバーランドショットガンで吹き飛ばすシーンがある。続編の『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』でも主人公が使用。
- 『ノーカントリー』
- 原作の小説通り、ルウェリン・モスがウィンチェスターM1897の銃身を鋸で切り詰めて自作するシーンがある。
- 『バイオハザードシリーズ』
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- 『バイオハザードIV アフターライフ』
- 『バイオハザードV リトリビューション』
- 上記の両作で主人公、アリス・アバーナシーが水平2連ソードオフショットガンを二丁持ちで使用。ショットシェルの弾丸には趣味として集めているコインを使用し、銃の殺傷力を高めている。特に『バイオハザードV』ではアンブレラ社の輸送機に対して射撃し、コックピットを貫通してパイロットを倒しており、殺傷力の高さがうかがえる1シーンとなっている。
- 『マッドマックスシリーズ』
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- 『マッドマックス』
- 『マッドマックス2』
- 『マッドマックス/サンダードーム』
- 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
- 上記の4作で、主人公のマックスが古典的な中折れ式水平2連ショットガンの銃身と銃床を切り詰めたソードオフショットガンを愛用する。マッドマックスを代表する銃器の1つである。
- 『野獣戦争』
- 水平2連ショットガンのソードオフモデルを主人公「T」が使用する。
アニメ・漫画[編集]
- 『スカルマン』
- スカルマンがソードオフの水平2連式散弾銃を使用。
- 『トリアージX』
- 主人公、三神 嵐の愛銃の1つとして登場。「DOUBLE JOKER」という愛称が付いてる水平2連のソードオフショットガンを使用。
- 『北斗の拳』
- 北斗四兄弟の1人ジャギが、水平2連式のソードオフショットガンを使用。北斗無双では同銃を2丁使用している。
ゲーム[編集]
- 『デビルメイクライシリーズ』
- 主人公、ダンテがソードオフの水平2連ショットガンを使用する。
- 『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』
- 砂漠マップMirramarやジャングルマップSanhok限定で登場し、ハンドガンと同じカテゴリーにカテゴライズされている。
- 『フォートナイト』
- 「2連式ショットガン」という名で救援物資、及び宝箱から出現する。
- 『レッド・デッド・リデンプションII』
- 架空のメーカー製の水平2連ソードオフショットガンがメインストーリーで手に入る。
- 『バイオハザード5』
- 『バイオハザード6』
- 架空の銃として、「ハイドラ」という名称のソードオフモデルの水辺三連式散弾銃が登場する。トリガーは一つのみで、弾薬は10ゲージショットシェルを使用し、フォアエンド部にはレーザーサイトがテープで固定されている。
- 5ではクリス・レッドフィールドとシェバ・アローマ、アルバート・ウェスカーが、6ではヘレナ・ハーパーが使用する。