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「ウィキギャップ」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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'''ウィキギャップ'''({{Lang-sv|WikiGap}}、{{Lang-en|WikiGap}})は、[[スウェーデン]]にて発祥した官製運動。[[スウェーデン社会民主労働者党|社会民主労働者党]]の提唱に基づき、[[ウィキペディア]]での[[男女格差]]をなくすため女性記事を増やすよう主張している。
'''ウィキギャップ'''({{Lang-sv|WikiGap}}、{{Lang-en|WikiGap}})は、[[スウェーデン]]にて発祥した[[市民活]]。[[スウェーデン社会民主労働者党|社会民主労働者党]]の提唱に基づき、[[ウィキペディア]]での[[男女格差]]をなくすため女性記事を増やすよう主張している。


== 概要 ==
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また、ウィキペディアでは、[[特筆性]]がないことなどを理由に記事を[[Wikipedia:削除の方針|削除]]する仕組みがある。ウィキペディアの執筆者や閲覧者は、問題がある記事を見つけた場合に削除依頼を提出することができる。そのため、女性記事に対しても、他の執筆者や閲覧者から削除依頼が提出されることがある。女性記事に対して削除依頼が提出される理由について、北村紗衣は「女性に関する記事が軽視されがちな傾向がある」<ref name="shiroiwa20191014_19"/>からだ、などと主張している。
また、ウィキペディアでは、[[特筆性]]がないことなどを理由に記事を[[Wikipedia:削除の方針|削除]]する仕組みがある。ウィキペディアの執筆者や閲覧者は、問題がある記事を見つけた場合に削除依頼を提出することができる。そのため、女性記事に対しても、他の執筆者や閲覧者から削除依頼が提出されることがある。女性記事に対して削除依頼が提出される理由について、北村紗衣は「女性に関する記事が軽視されがちな傾向がある」<ref name="shiroiwa20191014_19"/>からだ、などと主張している。

また、[[福岡県]]在住の40代の[[精神障害]]を抱え、かつ40代にも関わらず美少女ゲームが好きな[[ネット右翼]]の男性などの追放も必要不可欠であるとの主張もある。


== 影響 ==
== 影響 ==

2022年6月12日 (日) 09:32時点における版

ウィキギャップ
ウィキギャップのロゴ
現地名 WikiGap
英語名WikiGap
期間不定期
場所世界各地
種別エディタソン
フェミニズム運動
テーマウィキペディアへの
女性記事の追加
主催者各国に駐在する
スウェーデンの大使館
ウィキメディア財団
関係者ウィキペディアン
ウェブサイトwikigap.jp

ウィキギャップスウェーデン語: WikiGap英語: WikiGap)は、スウェーデンにて発祥した市民活動社会民主労働者党の提唱に基づき、ウィキペディアでの男女格差をなくすため女性記事を増やすよう主張している。

概要

「ウィキギャップ・イン・ストックホルム」(2018年3月8日王立工科大学附属図書館

「ウィキギャップ」は、インターネット上での男女格差を解消する一環として[1]ウィキペディアにおける女性記事の増加を目指す社会運動である[1]スウェーデン第1次ロベーン政権により提唱され[注釈 1]外務省ウィキメディア・スウェーデン協会によって推進された[1]

ウィキペディアは世界的に影響力の強いウェブサイトであり、2019年現在ではアクセス数は世界5位に達しているとされる[1]。しかしながら、ウィキメディア財団によれば、全世界におけるウィキペディアの人物記事のうち男性記事が8割を占めており[1]、女性記事は2割に過ぎないという[1]。そのため、ウィキギャップでは、ウィキペディアにおける女性記事をより増加させることを目指している[1]。なお、全世界のウィキペディアの執筆者のうち、およそ9割は男性だと推定されている[1]

ウィキペディアにおけるジェンダーバイアスに関連するエディタソンとしては、ほかに「アート+フェミニズム」がある。アート+フェミニズムが女性芸術家の記事の充実を目指しているのに対し、ウィキギャップは芸術家に限定せず広く女性に関する記事の充実を目指している。

主張

「ウィキギャップエディタソン・イン・東京」にて講演する日本駐箚スウェーデン特命全権大使ペールエリック・ヘーグベリ2019年9月29日在日本スウェーデン大使館

日本駐箚スウェーデン特命全権大使などを歴任した外交官ペールエリック・ヘーグベリは、ウィキペディアにおける女性に関する情報を充実させるよう主張している[1]。ヘーグベリは現代を「ウィキペディアが本や百科事典に代わる時代」[1]と位置付けたうえで、「誰が社会の中で目に見えやすくなっているかに注意を払うべき」[1]だと指摘している。

一方、武蔵大学人文学部准教授などを歴任した文学者北村紗衣は「執筆する女性が増えることで記事の質が高まる」[1]と主張している。さらに北村は「歴史家ピーター・バーグが語った」[2][注釈 2]と述べたうえで、現時点でのウィキペディアの執筆者について「(ウィキペディアの)多くの著者男性で、北アメリカ出身で、コンピュータ狂か専門の学者[2]だと主張している。

また、ウィキペディアでは、特筆性がないことなどを理由に記事を削除する仕組みがある。ウィキペディアの執筆者や閲覧者は、問題がある記事を見つけた場合に削除依頼を提出することができる。そのため、女性記事に対しても、他の執筆者や閲覧者から削除依頼が提出されることがある。女性記事に対して削除依頼が提出される理由について、北村紗衣は「女性に関する記事が軽視されがちな傾向がある」[1]からだ、などと主張している。

また、福岡県在住の40代の精神障害を抱え、かつ40代にも関わらず美少女ゲームが好きなネット右翼の男性などの追放も必要不可欠であるとの主張もある。

影響

ウィキギャップ発祥の地はスウェーデンであるが、その影響はスウェーデン一国にとどまらず、ウィキギャップは世界60か国で開催されている[1]。また、ウィキペディアは言語ごとにそれぞれウェブサイトが構築されているが、ウィキペディアスウェーデン語版だけでなく、ウィキギャップに賛同する動きが他言語版にも広がっている[1]

ザンビア

一例として、ザンビア、および、英語版での状況について述べる。ザンビアではベンバ語トンガ語ニャンジャ語ムワンガ語などが話されているが、公用語は英語であるため、英語版がよく利用されている。かつてザンビアは母権制社会であり[3]、政治分野で活躍する女性も多かったが[3]イギリスからの植民者やキリスト教宣教師らの影響を受け[3]父権制社会に変容していった[3]。その後、歴史に埋もれた女性たちの業績を見直そうという動きが広がっており[3][4]、その一環として2018年にウィキギャップが開催された[3][4]。女性歴史博物館と在ザンビアスウェーデン大使館が協力し[4]、40名ほどの女性執筆者を育成した[3][4]。これらの執筆者は、ザンビアの女性に関する記事の新規作成に貢献した[3]

日本

日本で初めてのウィキギャップとなった「ウィキギャップエディタソン・イン・東京」(2019年9月29日在日本スウェーデン大使館

他の例として、日本、および、日本語版での状況について述べる。ウィキペディア日本語版は、女性記事が比較的多いことで知られている[1]。ウィキメディア財団の調査では、ウィキペディア日本語版の人物記事における女性記事の比率は、2019年9月27日時点で22.3パーセントを占めている[1]。ウィキペディアには多数の言語版があるが、日本語版の女性記事比率は2019年9月27日時点で世界14位である[1]。このウィキペディア日本語版においてもウィキギャップに賛同する動きがあり[1]、2019年9月東京都港区で開催された[1]。これが日本で初めてのウィキギャップである。会場では参加者らが実際に女性記事を新規作成している[1]。「日本ではまだ知名度が低く、記事をきっかけに多くの人に知ってもらいたい」[1]ということで、バーレーンの知名度の低い人物の記事を作成した参加者もいた[1]。会場においては、国際連合事務次長や上級代表(軍縮担当)を務める中満泉からのメッセージが披瀝された[1]。また、会場にはプログラマ若宮正子らも来場した[1]。若宮はウィキギャップ・ジャパンのブランドアンバサダーにも就任している[5]。同様に、漫画家オーサ・イェークストロムも、ウィキギャップ・ジャパンのブランドアンバサダーに就任している[6][7][8]

政治的背景

「ウィキギャップ・イン・ストックホルム」にて講演する外務大臣マルゴット・ヴァルストローム2018年3月8日王立工科大学附属図書館

ウィキギャップが始まったのは、スウェーデンの政界事情と密接な関係がある。当時の首相であるステファン・ロベーン社会民主労働党出身であり、自身の政権愛称として「フェミニスト政権」を自称するなど、イデオロギー色の強い政策を打ち出していた。第1次ロベーン政権にて外務省の大臣に登用されたマルゴット・ヴァルストロームも社会民主労働党に所属しており、ロベーンの意向に沿った外交を展開することになった。大臣就任直後、ヴァルストロームは「フェミニスト外交政策」と称する外交方針を発表しており[9]、その一環として、ヴァルストローム率いる外務省が提唱したのがウィキギャップである。

提唱者であるマルゴット・ヴァルストロームは、自身の外交政策について「スウェーデンは世界初のフェミニスト外交政策を取り入れた」[10]と自賛している。また、ヴァルストロームは、ウィキギャップについて「著名な女性とその功績をより多くの人に見てもらえるようにすることは、我々のフェミニスト外交政策の具体的な結果です」[11]と述べるなど、ウィキギャップを自身の政治的成果として誇示している。

しかし、単なる民間団体が運営するウィキペディアに対して、スウェーデンの行政府国費を投じて積極介入することには、懐疑的な意見も少なくない。一例として、公共放送であるスウェーデン・ラジオが紹介した意見が挙げられる[12]。同局は、行政府が音頭を取って執筆を積極的に呼び掛けるのではなく、女性執筆者が自発的に記事を書けばよいではないか、との批判を紹介している[12]。また、ウィキギャップにより女性記事が増えるのはよいことかもしれないが、わざわざ行政府がエディタソンを組織する必要まではない、との指摘も紹介している[12]。特に開発者界隈、いわゆる「テックコミュニティ」から、疑問の声や批判的な声が上がっている[12]。ウィキギャップを批判する人物の例としては、穏健党に所属し国会議員などを歴任したカール・シグフリッド[12]、スウェーデンの大手プロバイダであるバーンホフでコミュニケーションマネージャを務めたアーニャ・アレンバーグなどが挙げられる[12]。特にシグフリッドは、政治活動を続ける傍ら、ウィキメディア・スウェーデン協会でEUポリシーマネージャに就任するなど[12]、スウェーデンのウィキメディアコミュニティで永年活動してきた人物である[12]。このように、ウィキペディアに詳しい者たちの間でも、ウィキギャップを批判する意見が挙がっている[12]

方針・ガイドラインとの関係

「ウィキギャップ・イン・ストックホルム」にて記事を編集する外務大臣マルゴット・ヴァルストローム2018年3月8日王立工科大学附属図書館

ウィキギャップは、ウィキペディアにおける男女の記事数の格差を問題視したスウェーデンの社会民主労働党が、与党として行政府に指示して始まった官製運動である。それに対し、ウィキメディア・スウェーデン協会を経て国会議員となったカール・シグフリッドは、特定の思想に基づいて国家がウィキペディアに影響力を行使する点を問題視している[13]。シグフリットは、ウィキペディアにおいては他者からの影響を受けずに執筆するのが原則だと指摘し[13]、国家や企業団体はウィキペディアの内容に影響を与えるべきではないとしている[13]。さらに、シグフリットは、国家がウィキペディアを通じて現実社会の理想像を実現させようとすべきではない、と述べている[13]。そのうえで、シグフリッドは、ウィキペディアの方針ガイドラインを紹介し、それに従うよう求めている[13]

シグフリッドは、外務大臣のマルゴット・ヴァルストロームに対して、ウィキペディアの編集システムや方針、ガイドラインについて直接説明した[13]。さらにシグフリッドは、記事の主題を選択するのは編集上の問題であり[13]、国家や外務大臣が特定の主題で記事を作成するよう求めるのはおかしいと指摘した[13]。しかし、ヴァルストロームはそれを省みることなくウィキギャップを提唱し、その指示の下でスウェーデンの外務省と在外公館が世界各地でウィキギャップを展開し始めている。

賛同する人物

ウィキギャップにおける主要な人物を、姓の五十音順で列挙した。賛同する人物が多数に上ることから、著名な人物のみを記載する。括弧内はウィキギャップにおける代表的な役職、ハイフン以降はその他の代表的な職業を示す。多数の国々でイベントが行われているため、氏名の前に国籍を示すアイコンを附与した。

脚注

注釈

  1. ^ 第1次ロベーン政権は、社会民主労働党緑の党による連立政権である。
  2. ^ 原文ママ。「ピーター・バーグ」と名乗る著名人としては俳優文筆家が挙げられるが歴史家はいないため、おそらく歴史学者の「ピーター・バーク」と取り違えていると考えられる。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 白岩ひおな「ウィキペディア男女格差なくせ――2割どまりの女性記事充実へ――編集体験、60ヵ国でイベント」『日本経済新聞』47992号、日本経済新聞社2019年10月14日、19面。
  2. ^ a b ELLE JAPAN「男性が支配するウィキペディアを改善しよう! ウィキギャップが東京で初開催――ウィキペディアは圧倒的な“男社会”だって知ってた?」『男性が支配するウィキペディアを改善しよう! ウィキギャップが東京で初開催ハースト婦人画報社2019年9月30日
  3. ^ a b c d e f g h Gouri Sharma, "Museum of women -- How Zambia inherited patriarchy from colonialism", Museum of women: How Zambia inherited patriarchy from colonialism, Turkish Radio and Television, 12 Sep, 2019.
  4. ^ a b c d Nkole Nkole, "Zambian women featured on Wikipedia", Zambian women featured on Wikipedia - Zambia Daily Mail, Zambia Daily Mail, March 8, 2018.
  5. ^ a b 「若宮正子さん」『ブランドアンバサダー | WikiGap JapanWikiGap Japan
  6. ^ a b 「オーサ・イェークストロムさん」『ブランドアンバサダー | WikiGap JapanWikiGap Japan
  7. ^ オーサ・イェークストロム「WikiGapの漫画✨」『WikiGapの漫画✨ | 北欧女子オーサ オフィシャルブログ「北欧女子が見つけた日本の不思議」Powered by Amebaサイバーエージェント2019年6月28日
  8. ^ オーサ・イェークストロム「WikiGapのイベントがありました」『WikiGapのイベントがありました | 北欧女子オーサ オフィシャルブログ「北欧女子が見つけた日本の不思議」Powered by Amebaサイバーエージェント2019年10月2日
  9. ^ Ministry for Foreign Affairs, "Handbook Sweden's feminist foreign policy", Handbook Sweden’s feminist foreign policy - Government.se, Government Offices, 23 August, 2018.
  10. ^ Ministry for Foreign Affairs, "Sweden to increase gender equality on the internet through #WikiGap", Sweden to increase gender equality on the internet through #WikiGap - Government.se, Government Offices, 14 February, 2018.
  11. ^ Ministry for Foreign Affairs, "Handbook Sweden's feminist foreign policy", 100 million page views of articles on women through the MFA’s WikiGap initiative - Government.se, Government Offices, 15 August, 2019.
  12. ^ a b c d e f g h i Nathalie Rothschild, "Government's feminist Wikipedia project faces criticism", Government's feminist Wikipedia project faces criticism - Radio Sweden | Sveriges Radio, Sveriges Radio, 6 mars, 2018.
  13. ^ a b c d e f g h Karl Andersson, "Svenska regeringen vill påverka innehållet på Wikipedia", Svenska regeringen vill påverka innehållet på Wikipedia - Femte juli, 5 juli-stiftelsen, 23 februari, 2018.
  14. ^ a b 「Wikipedian(利用者名)」『パートナー・協力者 | WikiGap JapanWikiGap Japan

関連項目

外部リンク