ウィキギャップ

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ウィキギャップ
WikiGap.svg
ウィキギャップのロゴ
現地名 WikiGap
英語名WikiGap
期間不定期
場所世界各地
種別エディタソン
フェミニズム運動
テーマウィキペディアへの
女性に関する記事の追加
主催者各国に駐在する
スウェーデンの大使館
ウィキメディア財団
関係者ウィキペディアン
ウェブサイトwikigap.jp

ウィキギャップスウェーデン語: WikiGap英語: WikiGap)は、スウェーデン政府が始めたキャンペーン活動である。インターネット上での男女格差を解消する一環として、約2割にとどまるウィキペディアにおける女性に関する記事の増加を目指している[1]。2021年4月28日時点で、日本を含む60か国以上で開催され、30以上の言語で5万本以上の記事が編集された[2]

背景[編集]

「ウィキギャップエディタソン・イン・東京」で講演する駐日スウェーデン大使ペールエリック・ヘーグベリ(2019年9月29日在日本スウェーデン大使館

ウィキペディアは世界的に影響力の強いウェブサイトであり、2019年時点でのアクセス数は世界5位に達しているとされる[1]。しかしながら、ウィキメディア財団によれば、全世界におけるウィキペディアの人物記事のうち男性記事が8割を占めており、女性記事は2割に過ぎないという。ウィキペディア日本語版では比較的女性比率が高い(世界14位)ものの、2019年9月27日時点で22.3%となっている[1]

そのため、「女性著名人や女性の関心が高い事柄は軽視されやすい」と北村は指摘している。例えば、イギリス王室の王子妃であるキャサリン・ミドルトンのウェディングドレスに関する記事や、ブラックホールの撮影に携わった女性科学者であるケイティ・バウマンに関する記事が「百科事典として取り上げるに足らない話題」として削除依頼を出されたこともあるという[3]

こうした背景を踏まえ、ウィキギャップでは、ウィキペディアにおける女性に関する記事をより増加させることを目指している[1]。そうすることで、取り上げる記事の多様性が増し、百科事典としての質が向上すると北村は指摘している[1]

なお、ウィキペディアにおけるジェンダーバイアスに関連するエディタソンとしては、ほかに「アート+フェミニズム」がある。アート+フェミニズムが女性芸術家の記事の充実を目指しているのに対し、ウィキギャップは芸術家に限定せず広く女性に関する記事の充実を目指している。

スウェーデンでの動き[編集]

「ウィキギャップ・イン・ストックホルム」(2018年3月8日王立工科大学附属図書館
「ウィキギャップ・イン・ストックホルム」にて講演する外務大臣マルゴット・ヴァルストローム2018年3月8日王立工科大学附属図書館
「ウィキギャップ・イン・ストックホルム」にて記事を編集する外務大臣マルゴット・ヴァルストローム2018年3月8日王立工科大学附属図書館

元々ウィキギャップは、スウェーデン政府の政策の1つとして始まった。スウェーデンの首相であるステファン・ロベーンは、第1次政権においてジェンダー平等を前面に出した政策を掲げていた。そのロベーン政権下で外務大臣に登用されたマルゴット・ヴァルストロームは、「フェミニスト外交政策」の1つとしてウィキギャップを発表した[4]

ウィキギャップチャレンジ[編集]

スウェーデン外務省は、記事の作成・改善のために「ウィキギャップチャレンジ」と呼ばれる公開執筆コンテストを2019年より実施している[2][5]。このコンテストはスウェーデン大使館、国連人権局(OHCHR)、および世界中のウィキメディア関連会社の支援を受けており、2021年には3月8日から4月8日にかけて行われた[5]

批判[編集]

スウェーデンの公共ラジオ局によると、テックコミュティにおいてウィキギャップに対する批判的な声もあるという[6]。例えば、元穏健派国会議員でウィキメディア・スウェーデン協会のEUポリシーマネージャも歴任したカール・シグフリッドは、「ウィキギャップは記事の内容を充実させる手助けになる一方で、政府がエディタソンを組織することは不適切である」と指摘した[6]。シグフリッドは「社会的意図を持たずに執筆することがウィキペディアの原則」であり、「企業や国家が特定の目的に沿ってウィキペディアに影響を与えようとすることは軽視できない」としている[7]

各国の状況[編集]

ウィキギャップ発祥の地はスウェーデンであるが、その影響はスウェーデン一国にとどまらず、ウィキギャップは世界60か国で開催されている[1]。また、ウィキペディアは言語ごとにそれぞれウェブサイトが構築されているが、ウィキペディアスウェーデン語版だけでなく、ウィキギャップに賛同する動きが他言語版にも広がっている[1]

日本[編集]

日本で初めてのウィキギャップとなった「ウィキギャップエディタソン・イン・東京」(2019年9月29日在日本スウェーデン大使館

2019年9月29日に、東京都内のスウェーデン大使館において、日本で初めてのウィキギャップが開催され、参加者は女性の著名人に関する記事を執筆・編集し公開した[1]

その中で、駐日スウェーデン大使のペールエリック・ヘーグベリ外交官は、オンライン上での女性に関する情報を充実させる必要性を訴えたほか、国際連合事務次長や上級代表(軍縮担当)を務める中満泉は「世界における変革に光を当てる運動であり、多くの女性を勇気づけることになる」と応援のメッセージを贈った[1]。また、会場にはプログラマ若宮正子らも来場した[1]。若宮はウィキギャップ・ジャパンのブランドアンバサダーにも就任している[8]。同様に、漫画家オーサ・イェークストロムも、ウィキギャップ・ジャパンのブランドアンバサダーに就任している[9][10][11]

この他、2020年3月1日には、神奈川県立図書館において「WikiGap in Kanagawa」が開催された[12]

ザンビア[編集]

ザンビアではベンバ語トンガ語ニャンジャ語ムワンガ語などが話されているが、公用語は英語であるため、英語版がよく利用されている。かつてザンビアは母権制社会であり[13]、政治分野で活躍する女性も多かったが[13]イギリスからの植民者やキリスト教宣教師らの影響を受け[13]父権制社会に変容していった[13]。その後、歴史に埋もれた女性たちの業績を見直そうという動きが広がっており[13][14]、その一環として2018年にウィキギャップが開催された[13][14]。女性歴史博物館と在ザンビアスウェーデン大使館が協力し[14]、40名ほどの女性執筆者を育成した[13][14]。これらの執筆者は、ザンビアの女性に関する記事の新規作成に貢献した[13]

賛同する人物[編集]

ウィキギャップにおける主要な人物を、姓の五十音順で列挙した。賛同する人物が多数に上ることから、著名な人物のみを記載する。括弧内はウィキギャップにおける代表的な役職、ハイフン以降はその他の代表的な職業を示す。多数の国々でイベントが行われているため、氏名の前に国籍を示すアイコンを附与した。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j ウィキペディアの男女格差なくせ 女性の記事を充実”. 日経新聞 (2019年10月14日). 2021年11月9日閲覧。
  2. ^ a b WikiGap”. Government Offices of Sweden. 2021年11月9日閲覧。
  3. ^ 「ウィキペディア」にも男女格差 ネット事典、男性記事が8割占める”. 西日本新聞 (2019年12月22日). 2021年11月9日閲覧。
  4. ^ Handbook Sweden's feminist foreign policy”. Ministry for Foreign Affairs. 2021年11月9日閲覧。
  5. ^ a b WikiGap Challenge”. 2021年11月9日閲覧。
  6. ^ a b Government's feminist Wikipedia project faces criticism”. Sveriges Radio. 2021年11月9日閲覧。
  7. ^ Svenska regeringen vill påverka innehållet på Wikipedia”. 5 juli-stiftelsen. 2021年11月9日閲覧。
  8. ^ a b 「若宮正子さん」『ブランドアンバサダー | WikiGap JapanWikiGap Japan
  9. ^ a b 「オーサ・イェークストロムさん」『ブランドアンバサダー | WikiGap JapanWikiGap Japan
  10. ^ オーサ・イェークストロム「WikiGapの漫画」『WikiGapの漫画 | 北欧女子オーサ オフィシャルブログ「北欧女子が見つけた日本の不思議」Powered by Amebaサイバーエージェント2019年6月28日
  11. ^ オーサ・イェークストロム「WikiGapのイベントがありました」『WikiGapのイベントがありました | 北欧女子オーサ オフィシャルブログ「北欧女子が見つけた日本の不思議」Powered by Amebaサイバーエージェント2019年10月2日
  12. ^ 国際女性会議WAW!(第6回WAW!)シャイン・ウィークス公式サイドイベント”. 外務省. 2021年11月9日閲覧。
  13. ^ a b c d e f g h Gouri Sharma, "Museum of women -- How Zambia inherited patriarchy from colonialism", Museum of women: How Zambia inherited patriarchy from colonialism, Turkish Radio and Television, 12 Sep, 2019.
  14. ^ a b c d Nkole Nkole, "Zambian women featured on Wikipedia", Zambian women featured on Wikipedia - Zambia Daily Mail, Zambia Daily Mail, March 8, 2018.
  15. ^ a b 「Wikipedian(利用者名)」『パートナー・協力者 | WikiGap JapanWikiGap Japan

関連項目[編集]

外部リンク[編集]