間接民主主義

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間接民主主義(かんせつみんしゅしゅぎ)、間接民主制(かんせつみんしゅせい)、または代表民主主義(だいひょうみんしゅしゅぎ)、代表民主制(だいひょうみんしゅせい)とは、民主主義の分類または制度のひとつで、構成員が選挙などの一定の方法で代表者を選出し、その代表者が議会などで決定を行うこと[1]代議制民主主義代議制民主制議会制民主主義議会制民主制、などもほぼ同義。対比概念は直接民主主義

概要[編集]

間接民主主義は、国民住民などの集団の構成員が、選挙などのある一定の方法によって民意代表者を選出し、自らの権力の行使をその代表者に信託することで、間接的に政治に参加しその意思を集団に反映させる考え方や制度をさす。対になる概念として直接民主主義がある。

間接民主主義と直接民主主義には、それぞれ長所と短所が存在するため、多くの国家や組織では両者を併用している。

歴史[編集]

歴史上、多くの時代や地域において各種の合議制が見られるが、古代ギリシアアテナイでの民会は主に直接民主主義が行われた。

古代ローマでは、特に共和制ローマ以降、主に貴族による元老院と、平民による民会が議会となり、それぞれ現在の上院下院の起源となった。

近代では18世紀の啓蒙主義自由主義思想の普及もあり、フランス革命で議会(憲法制定国民議会立法議会国民公会)が開設された。また18世紀から20世紀にかけて、多くの国や地方で、制限選挙から男子普通選挙、更に女性参政権が認められるようになった。

日本で最初の選挙による議会制民主主義制度を提言した人は赤松小三郎である。
幕末期の1867年5月に元越前・福井藩主の松平春嶽に「御改正之一二端奉申上候口上書」[2][3]を提出し、島津久光と幕府にも、春嶽宛のものと同様の建白書を提出した。

比較[編集]

長所[編集]

物理的制約[編集]

直接民主制では、国民などの構成員が増加すると議会などに会して意思決定する事が運用的に困難になる。仮に大半の構成員が1時点で1か所に集まる事ができても、時間は有限であるために相反する意見が存在するなかで実質的な議論を行うためには議論の参加者を限定する必要が発生する。間接民主制では、実際に議会などに集合し議論するのは代表者(代議員)だけで良いため、現実的で効率的な参加や議論が可能である。

質的要因[編集]

直接民主制では構成員個々の知見や意思が直接政治に反映するため、専門的・複雑な問題では、構成員全体の知識および意識が高くない限り、衆愚政治に陥る危険性がある。間接民主制では、構成員がより適任と考えた知識や意識を持った代表者を選出することが可能である。また直接民主制では参加する構成員は原則全員のため、本業の傍らでボランティアあるいは副業的に参加する形となるが、間接民主制では議員に費用を支給する事が可能であり、専業として複雑な政治課題の調査対応に専念することもできる(職業政治家)。

なお第二次世界大戦終結後のドイツでは、1930年代に国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)が国民投票住民投票の形で合法的にヒトラーによる独裁政権の確立や領土併合の事後承認を得たことへの反省から、国民投票を認めていない。

短所[編集]

正統性[編集]

民主主義の正統性はその構成員からの信託に由来するため、その正統性もまた原理的に間接的であり、間接民主制は直接民主制を超えた正統性を得る事はできない。仮に、選挙制度、選挙時点では未発生の問題の発生、選挙時の公約と選挙後の当選者の言動などに問題や相違が発生した場合には、その正統性には疑問が発生する。

民意の反映精度[編集]

直接民主制は構成員から直接意見を収集するため、手間はかかるが収集漏れは原則として発生しないことが保証される。間接民主制では、この作業は、収集数・収集範囲を含め議員の裁量に任される。このため、民意の反映は次回以降の選挙による信任となるが、その場合でも議員の行った判断やその理由などが、正しく構成員に開示され評価される事が必要となる。

選挙制度による影響[編集]

選挙制度により、選出議員の民意反映特性が大きく影響を受けるが、選挙制度は多数の歴史的・政治的経緯や要因により成立しており、各政治制度の長所・短所も存在するため、あらゆる観点から平等または公正な制度は存在していない。

小選挙区制は、二大政党制を誘導しやすく争点の明確化や政権交代が期待できるが、死票が多く、選挙結果はゲリマンダーなどの区割りや候補者調整などに大きく影響されうる。二大政党制の欠点(二大政党間で合意された談合に対する抵抗手段を有権者は持たない等)も負わねばならない。

比例代表制は、構成員の民意の分布を、比較的正確に議員の比率に反映させる事が可能だが、小党分立が長期化する場合があり、政党を立候補単位とする方式では政党中心の選挙および選択となる。

職業政治家による判断能力の独占[編集]

構成員は選挙の時のみ政治に関与し、多くの場合には次の選挙までは代議員に委託してしまう。構成員は議会での実質的な議論や情報から排除され、議員のような責任や給与も提供されないため、政治課題調査能力を養成する機会に乏しく、一部は民主主義本来の構成員としての当事者意識や責任感が希薄となり、政治的無関心に陥る。辛うじて当事者意識を保つ構成員も、行政情報へのアクセス権限や政治課題調査能力に於いて職業政治家との圧倒的な差があるため、職業政治家を検証・理解することができない。十分に発達した技術は、魔法と見分けがつかない。もはや理解を越える存在となった職業政治家に対し構成員ができることは、根拠を検証せずに盲信するか、根拠を検証しない点は盲信と変わらないが逆に、不信感を募らせることの二つしかない。

この状態になると、職業政治家の持つ能力・質の高さは、その職を獲得・維持するのに役立たなくなる。質が落ちても、職業政治家を盲信する構成員は支持し続けるし、質を上げても、職業政治家に不信感を募らせる構成員は、自分たちで検証・理解できる程度の能力・質しか持たない大衆迎合的政治家への支持を変えようとしない。そして、一般構成員には持ち得ない政治判断能力の維持には、一般構成員では負担しきれないほどの多大なコストが掛かる。役立たなくなったこのコストに力を奪われる分だけ、職業政治家は大衆迎合的政治家との議席獲得競争(選挙)で不利となる。

議論[編集]

  • ジャン・ジャック・ルソーは『社会契約論』でイギリスを例に取り「人民は自由だと思っているが、それは大間違いだ。彼らが自由なのは、議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるや否や、人民は奴隷となり、無に帰してしまう。その自由な短い期間に、彼らが自由をどう使っているかを見れば、自由を失うのも当然である」と述べ、真の民主制は直接民主制と主張した。

出典[編集]

  1. ^ 間接民主制 - 大辞林、デジタル大辞林、日本大百科全書
  2. ^ 赤松小三郎「御改正之一二端奉申上候口上書」”. 蚕都上田アーカイブ. 2017年11月5日閲覧。
  3. ^ 『続再夢紀事 第六』日本史籍協会、1922年、pp.245-252

関連項目[編集]