熟議民主主義

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熟議民主主義(じゅくぎみんしゅしゅぎ、英語: Deliberative democracy)は熟議英語版を重んじる民主主義の形態を指す。ここでいう熟議とは、他者の意見に耳を傾けながら自らの立場を修正しようとする態度を持って議論することを指す[1][2]。熟議民主主義は「多数による横暴」に陥りかねない民主主義のあり方と対比される[3]

熟議民主主義では平等主義的な熟議の実施が一般に好まれるが、議会など選ばれたエリート間の熟議を強調する論者もいる[4]。また、市民社会における熟議を重視する立場と議会など既存の制度内での熟議を重視する立場とがある[5]

古くはアリストテレスが、市民が公共の場においてを議論することの重要性を論じた[6]。現代になって熟議民主主義の概念を再興したのはユルゲン・ハーバーマスである[6]。熟議民主主義の論者としては他にエイミー・ガットマン[7]ヤン・エルスター[7]ジョシュア・コーエン英語版[7]がいる。

呼称[編集]

熟慮民主主義[8]審議的民主主義[8]協議的民主主義[8]熟議の民主政[7]などとも呼ばれる。討議民主主義英語: Discursive democracy)との厳密な区別はないともされ[9]、区別がある[3]ともされる。かつては英語の deliberation を「熟慮」と日本語訳する用語法もあった[10]

ミニ・パブリックス[編集]

熟議民主主義を実践する仕組みの一つに「ミニ・パブリックス」がある[3][11]。ミニ・パブリックスでは、まず熟議参加者が無作為に選ばれ、専門家が参加者に知識を提供した後、参加者が小さなグループに分かれて熟議を行い、最後に参加者全体としての熟議を行う[3]。参加者の数は比較的少数とされ[11]、専門家は熟議に参加せず、情報提供のみ行う[3]政策決定をはじめとする意思決定のほか、政策提言など意見形成にも用いられる[11]

出典[編集]

  1. ^ 田村哲樹 「熟議民主主義とは何か」2009年11月10日
  2. ^ What is deliberative democracy? February 15, 2012 by elainesantos
  3. ^ a b c d e 野宮 大志郎 熟議民主主義と社会運動: 政治のコンテキストで考える 学術の動向Vol. 20 (2015) No. 3 p. 3_80-3_84
  4. ^ Democracy (Stanford Encyclopedia of Philosophy) First published Thu Jul 27, 2006
  5. ^ 細井優子 リベラル・デモクラシーの危機 埼玉大学社会調査研究センター『政策と調査』第4号(2013年3月発行)
  6. ^ a b Amy Gutmann & Dennis Thompson, "What Deliberative Democracy Means"Why Deliberative Democracy? Amy Gutmann & Dennis Thompson (2004) ISBN 9780691120195
  7. ^ a b c d 憲法調査会事務局 藥師寺 聖一 諮問的国民投票制度と民主政 2006年
  8. ^ a b c 泰松 範行 Deliberative Democracyにおける先端技術の役割 : 討論に今求められているのは何か 東洋女子短期大学紀要 38, 179-189, 2006-03-15
  9. ^ 瀧章次 「緑」の民主主義の可能性 城西国際大学紀要 19(7), 1-14, 2011-03
  10. ^ 藤井 美文 なぜ熟議(討議)民主主義なのか : 総括と展望(特集1 討議民主主義と公共圏の復興) 湘南フォーラム:文教大学湘南総合研究所紀要 14, 5-15, 2010-03
  11. ^ a b c 田村 哲樹 熟議民主主義研究の現在とミニ・パブリックス 地域社会研究 (26), 3-9, 2016-03

関連項目[編集]