日本のワイン

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日本のワイン(にっぽんのワイン)では、日本で生産されるワインについて述べる。

概要[編集]

日本産ワインはヨーロッパ産ワインに比べて含有する有機酸塩が少ないと言われてきた。これは日本のワインが主に原料とした甲州種のぶどう由来の有機酸が欧州種と比較して少ないためと考えられる[1]。この特徴から欧州系のぶどうから醸造されたワインに比べて魚介類との相性がよいとされている。また、欧州系ぶどうのワインがいわゆるガーヴと呼ばれる地下式の保管庫による自然冷却的な温度が適度に飲みやすいのに対して、冷蔵庫で強めに冷やした状態が飲みやすいとされる。

別の研究では、ワインの適温は有機酸の種類と含有量、タンニン、炭酸ガスの量によって異なるとしている。[2]

一方で、欧州系のぶどうと比較して、甲州種からつくられたワインは凡庸で特徴がないと言われてきたが、近年、醸造技術の進歩とぶどうの収穫時期の適正化、産地ごとの特徴の把握などにより、国際的に評価されるワインが醸造されるようになってきている[3][4][5]

また、メルローやシャルドネなどの国際品種を中心に、ヨーロッパの国際コンクールで評価されるワインも長年作られてきた。 ただし、長い間、日本国内で「国産ワイン」として売り出すための基準は、酒税法の他には業界の自主基準しかない状態だった。このため、輸入されたブドウや濃縮果汁を使用したものを使用して日本国内で醸造されたワインも国産ワインに含まれるようになっていた。2015年10月30日、国税庁は、日本国内で生産されたぶどうのみを使って、日本国内で製造された果実酒だけを「日本ワイン」とする表示告示を策定した。これは3年の周知期間を経て2018年に施行される予定である[6]

国税庁の平成26年度(2014年度)の調査では、平成25年のワインの製成数量は95098キロリットルであり、前年と比較して7.7%増加した。このうち、大手5社(サッポロワイン、サントネージュワイン、サントリーワインインターナショナル、マンズワイン、メルシャンと資本関係のある販売会社:アサヒビール、サッポロビール)のシェアは78.7%だった。 日本生産ワインの原料は78.4%が輸入原料(果汁、ワイン)、23.6%が国産原料で、うちわけは22.3%が国産の生ぶどう、1.3%がその他となっている。 販売総量の構成は、11.8%が国産ぶどうを全量使った日本ワイン、88.2%が日本ワイン以外の輸入原料を使用した国産ワインだった。 輸入原料の使用割合は大手5社では、95.9%の輸入原料を使用しているが、製成数量が年間500キロリットル~5000キロリットルの中堅企業でも30.8%の輸入原料を使用している。一方、年間500キロリットル以下の小規模なワイナリーでは5%以下とほぼ全量国産ぶどうを使用していた。 国産のぶどうの種類別の使用量で一番多いのは甲州で、次にマスカットベリーA、ナイアガラ、デラウェア、コンコード、キャンベル、メルロー、シャルドネの順になっている。 ワイン原料のぶどうの産地別の生産量では山梨県(7356t)、長野県(3495t)、北海道(3305t)、山形県(2307t)の順になっており、この4道県で全体の81.5%を生産している。生産された生ぶどうは北海道、長野県では89%、山梨県でも86%が同じ道県内で加工されているのに対して、山形県では61%しか県内で加工されておらず、残りの4割のぶどうは他地域に出荷されていた。 [7]

国税庁の平成26年度の都道府県別の酒税課税統計では、ワインの生製量は多い順に、神奈川県(40790キロリットル)、山梨県(21067キロリットル)、栃木県(15246キロリットル)、岡山県(9950キロリットル)、大阪府(4681キロリットル)、長野県(4210キロリットル)、北海道(3430キロリットル)の順になっており、上位の府県にはそれぞれ大手のワイン工場が立地している。[8]


歴史[編集]

先史〜中世[編集]

日本列島では、縄文時代中期には酒造具である可能性が考えられている有孔鍔付土器が存在する。有孔鍔付土器は酒造具であるとする説と打楽器であるとする説があり決着をみていないが、ブドウ果汁を発酵させた飲料(液果酒)がつくられ飲用に供されていたとも言われる[9]

後法興院記』によると、1483年(文明15年)に、関白近衛家の人がワインを飲んだという記述があり、おそらくこれが最古の記録である。貝原益軒も『大和本草』の中で、ワインを外国からの輸入酒として記載している。その一方で日本で「葡萄酒」を作ったという文献もみられるが、この葡萄酒はワインの事ではなく、ブドウの果実を焼酎に漬込んだり、あるいはブドウ果汁を日本酒などとブレンドした、果実酒リキュールの類のものであった。

近代[編集]

赤玉スイートワイン1922年(大正11年)発表のポスター

日本で本格的にワイン生産が行われるようになったのは、文明開化を受けて洋風文化を積極的に摂取するようになった明治時代以降である。

中部地方の内陸に位置する山梨県(旧甲斐国)では江戸時代後期において勝沼村(甲州市勝沼町)の一部の地域において、商品作物としての甲州葡萄の栽培が行われていた。明治初年には山梨県令・藤村紫朗の主導した殖産興業政策によって葡萄酒の醸造が試みられるが、これに先行して甲府在住の山田宥教詫間憲久、二人の共同出資によってワインの醸造を行ったのが、近代的なワイン醸造における元祖とされている[10]

その後、ぶどう農家が集中していた勝沼村で1877年(明治10年)年に「大日本山梨葡萄酒会社」が設立されるが、初期の会社にはしっかりとしたワイン醸造のための基礎がなく、当時最先端の醸造技術を習得するために同村出身の高野正誠土屋助次郎(龍憲)とをフランスに派遣、帰朝ののち醸造量を150石として、海外製品より安かったことも歓迎されその全てを売りつくした[10](後年、高野と土屋はその功績を称えられ2人の洋服姿の写真を図案化したマークが勝沼の街のシンボルとして各所に使われている)。

また、日本のワイン史の黎明期において、新潟県の川上善兵衛や愛知県出身の神谷伝兵衛らの醸造家の努力や業績については特筆されるものがある(当該項目参照)。

当初はアメリカ系のブドウ種(主にデラウェアアディロンダック)の栽培が中心であったが、その後国策によって味わいにおいてより優れたフランス系の品種に変更された。しかし、欧州系の樹種に寄生したフィロキセラ(Phylloxera:ブドウネアブラムシ・ブドウの項参照)による荒廃により壊滅を余儀なくされ(1885年(明治18年))、日本でのワイン醸造の歴史は一旦は頓挫する。(当時、唯一アメリカ種に拠っていた山梨ではこの禍から逃れることができ、今日の隆盛の礎となったとされる)

昭和以前には、免許、税法などの整備はなく、ぶどうが穫れるところでは各家で各々のやり方で醸造されており、その過程で黒ぶどうで作られたものは「赤酒」などと俗称されていた。1939年(昭和14年)3月に物品税が、1940年(昭和15年)3月29日に酒税法(果実酒に関する施行規則)が公布されるにつれ、届出・認可のない自家醸造は「闇酒(密造酒)」とされ廃れていった[10]

以降、国産ワインの需要も少なく各地で細々とつくられているだけであったが、第二次世界大戦中にワイン製造の際の副次品である酒石酸から生成されるロッシェル塩結晶が兵器(音波探知)の部品になるとして、国内でぶどう酒醸造が奨励され、大増産された経緯もある。ところがこれはあくまでも軍事兵站上の需要であり、飲用を主目的としたものではなかった。のち戦後の農業革新の過程で、戦前〜戦時の遺産(畑地や醸造技術など)を生かして、生産に適した地域ではある程度の規模をもったワイン醸造が民生用として再開された。しかし国内で生産されるワインには輸入果汁やバルクワインの混入も多く、まだまだ発展途上といわれ評価は低かった。

いっぽう日本人の嗜好としては、当初はワインの酸味や渋味が全く受け入れられず、長らく蜂蜜など糖分を加えてこれらを緩和させた甘口ワインが主流であった。当時の消費者が「ワイン」として認識していたものは、甘味が付加されたサントリーの「赤玉ポートワイン」や「ハチブドー酒(下記:薬品としての「ブドウ酒」参照)」のような種類のもの(甘味果実酒)である。この傾向は1970年代頃まで続き、本来のワインはむしろ「葡萄酒」と呼ばれ、趣味性も高く、一部の愛好家の嗜好においてはヨーロッパからの輸入ワインに頼っていた。

現代[編集]

マスカット・ベーリーA種のワイン

その後、東京オリンピック1964年(昭和39年))や大阪万博1970年(昭和45年))などの国際交流や大手メーカーのPRを通じて、本格的なワインに対する一般の認知度も高まり、ブドウを果物として生食することとは別に、飲用として摂取することも広まってきた。これを受けてワイナリーと称する専業生産者も本腰をいれるようになり、欧州本場に倣った垣根式の栽培法を取り入れ、害虫に強いヨーロッパ系新種のワイン用に特化したブドウ栽培を展開し始めた。いくつかのワイナリーからは純国内栽培による優秀なワインも生産されて、海外の品評会での受賞も見るようになり、国際的に評価されるようにもなってきた。また、日本独特の消費者感覚から無添加・無農薬ワインも生産されるようにもなった。

洋酒に関する輸入関税の緩和や、日本の食文化の多様化、ポリフェノール効果によるブームなども手伝って、近年ようやく本格的なワインが理解されるようになり、国内での品質の高いワイン生産を促進させる下地となった。2002年からは、山梨県が主導して「国産のぶどうを100パーセント使用して造った日本産ワイン」を対象とする国産ワインコンクール(2015年からは日本ワインコンクールと改称)が行われるようになり、ヴィニョロン(Vigneron)と呼ばれる個人醸造家による出品から大手メーカーの力作まで、純国産ワインの品質向上を競うようになっている。

また近年では栽培技術の面で、例えばイスラム地方での禁酒習慣によるブドウ原種(マスカット・オブ・アレキサンドリア)の衰退に着目し、その保持育成に傾注するなど、国際的な協力にも積極的に参加している[要出典]

主な生産地[編集]

日本における主な生産地としては北海道や山梨県、長野県、山形県があげられる。


北海道では、池田町において破綻状態の町の財政状況から回復すべく、町おこしとしてブドウ生産とワイン醸造が行われ、1960年代から20年の歳月をかけてこれに成功。その後、全国の「一村一品運動」などに影響を与え、各地での生産を育む要因となっている。一方で十勝ワインの主力であるトカップワインが原料に輸入ワインを使用して国産ワインを名乗っていたこともあり2000年代から苦戦している。[11]池田町を含む十勝地方は冬季は雪が少ない上に気温が下がるので栽培できるぶどうがヤマブドウやセイベルの耐寒性品種に限られている。このため、日本ワインの原産地厳密化表示義務の適用により十勝ワインを名乗れなくなるワインもあり、対応を迫られている。
おたるワインを生産する北海道ワイン(株)は、現在醸造専用の国産ブドウの使用量で全国1位を誇る。また、空知地区は前述の北海道ワインの自社農園があり、これまでも北海道産ワインを影で支えてきたが、2000年代から南部の岩見沢市三笠市・旧栗沢町などで新規参入が相次ぎ、表舞台へと姿を現すようになった。新規参入したワイナリー・ヴィンヤードはどれも小規模だが軒数では北海道内の約3割を占めており、自治体や酒造メーカー主導の大規模生産を行う池田・富良野・小樽とは対照的な産地といえる。北海道は本州の産地(メルロー、シャルドネなどフランス系品種や在来の甲州が主)と比較して、気温が低い北海道ではケルナーなどのドイツ、オーストリア系のワイン用ぶどうの栽培が多い特徴がある。ただし、最近では南部の余市地方を中心にシャルドネの栽培が増えてきている。
サンマモルワイナリーは自社畑11ヘクタール。第四紀洪積世に形成された高位段丘(標高60m)に位置し、恐山火山噴出物の軽石流で覆われ、赤色土化した粘土壌土で形成されている。減農薬に努めている。[12]
秋田県ではプラムやぶどう等の県内栽培の果実原料を用いてワインが作られている(十和田ワインと大森ワインは葡萄で、天鷺ワインはプラム)。十和田ワインと天鷺ワインは県内に醸造所をもち、大森ワインはメルシャンに委託して製造、販売している。近年、鹿角市に新設された「このはなワイナリー」では、県内の山ぶどう系品種を原料にワインを製造、販売している。
ぶどうの栽培、ワインの醸造ともに始まったのは早く、江戸時代には甲州ぶどうの栽培が始まっており、1870年代には初代県令により奨励され、1892年には赤湯に東北地方初のワイナリーができた。一時は多くのワイナリーができ、ワインの一大産地であったがその目的は酒石酸の生産だったため飲用のワインとしては品質が悪かった。このため、終戦後はワイナリーの廃業も続き、数軒まで減ったが現在は地域振興策もあり、また、特区の設置などで盛り返しつつある。現在もぶどうの栽培の産地であり、生食用デラウェアを中心に首都圏に出荷されている。醸造用ぶどうの生産も多いが県内に利用するワイナリーが少ないため、4割程度が県外に出荷されている。県内最大になる高畠ワイナリーは、本坊酒造山梨マルスワイナリーを経営する本坊グループが山梨県外に新産地を求めて開設した醸造所である。なお、本坊グループはその後、熊本に熊本ワイナリーを開設している。[13]上山市で登録したワイン特区は酒造免許に必要な年間の最低醸造量を規定の6キロリットルから2キロリットルに引き下げるもので、小規模なワイナリーの参入をしやすくすることを目的にして、長野県東御市などでも導入している。[14]
上越地域におけるワイン醸造は「日本のワイン葡萄の父」とも称せられる川上善兵衛の偉業を引き継ぐ明治以来の国産ワインの伝統を誇るが、地域として盛んだったというよりも善兵衛の存在のみが大きかった。このため、個々のワイナリーが孤立して存在する状況になっている。[15]善兵衛が設立した岩の原ワイナリーはその後経営難となり、現在はサントリー傘下になっている。しかし、カーブドッチの近所には、カーブドッチのワイナリー経営塾の受講生が立ち上げたワイナリーが5軒集まっている。
ワインの生産量としては栃木市にあるサントリー梓の森工場が断トツで大きいが輸入果汁や輸入ワインを原料とした国産ワインを生産している。ココ・ファーム・ワイナリーは100%日本のブドウから日本ワインを生産している。ココ・ファームは知的障害者施設が母体になった珍しい形態のワイナリーで米国から招いた醸造コンサルタントのブルース・ガットラブが取締役を務め、適地適品種のユニークなブドウ品種と野生酵母を中心としたワイン造りに特徴がある。
神谷伝兵衛が開墾したワイン発祥の地として知られるが、現在はブドウの生産を行っておらず、オエノングループの合同酒精の事業所として、輸入濃縮果汁、輸入ワイン、国内産ブドウを使用した国産ワインを製造している。近年、自社ブドウ畑を作る動きが伝えられている。[16]
太平洋戦争中、山梨県が酒石酸の集積地になった経緯もあり、甲府盆地内の果実栽培に適した土壌を受けて、現在では日本有数の生産地のひとつである。国産ワインのほぼ1/4を出荷する。→甲州 (葡萄)参照
甲府盆地東部の勝沼を中心に県内各地にワインの醸造所が存在する。しかも、シャトーメルシャンやサントリーの登美の丘ワイナリー、マンズワイン勝沼ワイナリーのような大規模なものから中小規模なワイナリーまで様々な規模のものがあり、非常にバリエーションに富んでいる。東部の勝沼地域、西部の北杜市穂坂地域、北部の牧丘地域などの地域により個性の異なる葡萄が生産されており、また、隣接する長野県産のぶどうも使用して醸造されている。栽培品種は固有種の甲州が特に多く、赤用の品種ではマスカットベリーAの生産が多い。しかし、甲州に偏った栽培は問題も多いが古くからの栽培農家が容易に品種を変えようとしなかった。現在では山梨県内では新興地域である韮崎市や北杜市などで、メルロー、シャルドネなどの欧州品種も栽培されており、近年は伝統的な棚づくりの他に、垣根作りによる栽培も行われている。甲府市にある山梨大学には、国立として唯一のワイン醸造のコースがある。
主に他産地のぶどうを使用して都内で醸造のみを行っている。ただし、東京都内でも、大泉清瀬練馬国立などで、大規模ではないがぶどうの栽培を行われている。東京ワイナリーではこうした都内産のぶどうの高尾ナイアガラヤマブドウといった品種を使って醸造も行っている[17]。清澄白河フジマル醸造所は大阪の島之内フジマル醸造所を展開するパピーユの経営する食堂店舗を併設する形態の小規模醸造所である。
かつては生食用のぶどうが上田、松本、塩尻で作られていた。特に塩尻市の桔梗が原一帯は醸造用ぶどうの生産が盛んで多くのワイン醸造所があった。これには原料ぶどうを求めていたサントリー、メルシャンの2社を桔梗が原に誘致したことが大きかったと言われている。このため、甘味果実酒の原料となったぶどう品種であるナイアガラ、コンコードといった品種の生産が多い。国税庁に登録された醸造所の数は山梨県についで多く、現在は長野県が主導して、長野ワインバレー構想として、千曲川ワインバレー(小諸市、上田市、長野市など)、日本アルプスワインバレー(安曇野市、松本市)、桔梗が原ワインバレー(塩尻市)、天竜川ワインバレー(伊那市など)の4地域で地場産業として育成しようとしている。特に桔梗が原は国内におけるメルローの特産地として知られているが、これは黎明期に現地で五一ワイン(林農園)がメルローなどを試験的に栽培しており、その栽培ノウハウをメルシャンにも伝えたことが大きかった。このため、メルシャンの桔梗が原メルローが国際コンクールで金賞を受賞した際には塩尻のワイナリー関係者がともに喜んだと伝えられている。また、小諸市に実験農場とワイナリーを構えたマンズワインはワイン用ぶどうの栽培ノウハウの研究を行っている。現在、マンズワインの小諸ワイナリーはポラリスシリーズといった同社のトップブランドの生産拠点になっている。長野県の醸造用ぶどうの栽培にはシャトーメルシャンやマンズワインなどの大手ワイナリーが自社ノウハウを広く公開普及させたことが急速な品質向上に寄与したとされる。また、かつては農地法により企業の農地経営が制限されていたがその改正により、シャトーメルシャンの椀子(まりこ)ヴィンヤードのような大規模な自社管理農園による高品質のぶどう栽培が行われるようになった。長野県内の大手の自社管理農場としては、マンズワインが小諸や東御市に、サッポロワインが安曇野の池田町にそれぞれ持っており、また、メルシャンは2016年に塩尻市片丘に新しく自社管理農場を開設することを発表した。長野県外の醸造所へ高品質の醸造用ぶどうを出荷していることも特徴であり、大手醸造所の自社管理農園や契約農家も多い。農林水産省の2015年発表の2013年の甲州種を除く醸造用ぶどうの生産量は北海道を抜いて全国1位になっている。降水量が少なく排水性の良い傾斜地での栽培が行われる長野県ではメルローやシャルドネなどの欧州種の適地とされる。特に塩尻市桔梗が原のメルローが有名である。また、高山村と千曲川対岸の須坂市では異なる標高と土地で個性のことなるシャルドネの生産を行っており、これを畝ごとに分けて醸造したシャトーメルシャンの北信シャルドネシリーズは国内外のコンクールで高く評価されている。また、長野固有のぶどう品種としては、かつては庭先に細々と残っていた善光寺葡萄(竜眼)をマンズワインが発掘し、現在では多くのワイナリーで長野県特産としてワインに醸造している。
ワイン特区として、東御市周辺、高山村、塩尻市が登録されており、ワイン製造免許の年間製造量の最低量が低さげられて新規参入しやすくなっており、東御市周辺では現実的に新規参入ワイナリーが増えている。
かつて、大阪府はぶどう、ワインの主産地であった。ぶどうの栽培の歴史は長く明治初期にはすでにぶどう栽培が始まっている。現在も温室栽培のデラウェア栽培では関西地方はもちろん関東地方まで出荷されている。ワインの生産も盛んだったが多くは大阪に工場のあった壽屋(現在のサントリー)の甘味果実酒向けの原料ワインとしてだった。その後、甘味果実酒の人気の低下に伴い製造量も減り、現在は河内地方に4軒残っている。また、近年、2ワイナリーが加わって6軒になっている。そのうちで大きいのはカタシモワイナリーで、チョーヤはワインよりも梅酒の製造元として知られている。なお、国税庁の出荷統計の大阪府の量のほとんどはこうしたワイナリーではなく、サントリー大阪工場の量産果実酒の製造量である。島之内フジマル醸造所は消費者に近づいた醸造所をポリシーに食堂を併設した都市部の店舗内でワインの醸造を行っている。当初は購入したぶどうで醸造を行っていたが後継者難や耕作放棄されたぶどう畑を引き継ぐ形で大阪府内に自社管理農園を増やしている。東日本のぶどう産地のぶどうを使った同様の店舗として、東京に清澄白河フジマル醸造所をオープンさせている。
兵庫県では、神戸市が率先し、都市部での農業生産と観光事業をからませて独自のワイナリーを立ち上げ、市のブランド品としての商品開発をおこなっている。
生食用のマスカット・オブ・アレクサンドリアの産地であり、県内産のぶどうを使ってワイン作りが行われている。現在、岡山県のワイン生産量の統計のほとんどは県内にあるサッポロビール系列のサッポロワインのワイン工場での生産であり、低価格隊のワインを生産する主力工場として国産ワインの生産を行っている。
熊本ワイナリーは、山梨でマルスワイナリー、山形で高畠ワイナリーを経営する鹿児島の本坊酒造系列の3番目のワイナリー。平成11年に開設された。

主な「ワイナリーを持つ大企業」[編集]

近年の酒造メーカの総合酒造メーカ化の流れにより大手ビールメーカや洋酒メーカがワイン醸造も合併や事業買収で傘下に収めている。こうした結果、メルシャンキリンビール)(キリンビールがメルシャンを合併)、登美の丘ワイナリー(サントリー)、グランポワール(サッポロビール)、サントネージュ(アサヒビール)(協和発酵キリンから事業譲渡)といった大手酒造メーカーやマルスワイナリー(本坊酒造)やシャルマンワイナリー(江井ヶ嶋酒造)のような中堅や中小の酒造メーカが自社で国内でワイン醸造を行なうようになっている。また、マンズワイン(キッコーマン)のような醸造メーカーが醸造技術を活かしてワイン醸造を行っているケースもある。

国税庁の平成26年度の酒税統計資料では、アンケートに回答のあった176社のうち、年間生産5000キロリットル以上の企業が5社、500キロリットル以上、5000キロリットル未満の企業が11社、100キロリットル以上、500キロリットル未満の企業が24社、100キロリットル未満の企業が134社となっている。少数の大手、中堅企業と大多数の小規模ワイナリーという構図になっている。[18]

生食用のぶどう農家が安価な醸造用ぶどうの生産に乗り気でなかったこと。農地法の規制があって、醸造メーカが直接自社農場を持ちにくかったこと。1970年代の自由化の流れもあり安価な輸入果汁や輸入ワインの入手ができたこと。これらの要因があり大手のワイナリーに限らず中小のワイナリーも含めて、輸入濃縮ぶどう果汁や輸入バルクワインを使用した安価なワインを国内製造(国産)ワインと称して製造してきた。その一方で、自社農園や契約農家が生産した国内産ぶどうを使用して自社ワイナリーで生産した日本ワインの生産、販売やより高品質なワインの研究も行っている。 特に大企業は輸入果汁などから作る大量生産ワインと高度のぶどう栽培から行われる本格的なワイン製造の二面戦略をとっている。 こうした大企業は技術の囲い込みなどを行わなかったため、現在の日本ワインの知名度や品質の向上には、こうしたワイナリーの研究開発や地道な農家育成、自社ノウハウの公開と指導といった活動が大きく寄与している。

近年、特に、大手メーカーとは別に、比較的中規模から、家族経営のもの、日本国内には数多くのワイン醸造業者があり、それぞれがそれぞれの経営・生産方針に則り、小規模ながらも多くの銘柄を産出している。それぞれが各々の得意をもって、自ら柱となり道となり、日本のワイン業界を盛り立てているのである。

尚、国税庁の統計上は原料が国産であるかないかに関わらず日本国内で醸造したワインは「国産」として統計されるため、メーカーが濃縮ぶどう果汁を輸入して日本国内で工場生産したワインも「国内産」の生産量に計上されている(下記「原産地表示」の項参照)。国内のワイン生産の構造上、こうした大手の廉価ワインの生産量が圧倒的に多いことから、統計上は大手メーカの大量生産工場が存在する府県がワイン生産量の上位になり、平成22年度の統計では「日本でのワイン生産量が最も多い県」は神奈川県となる[19]。これは藤沢市にメルシャンの工場があることによる[20]

原産地表示[編集]

世界のワイン生産国は品質維持や表示基準等を定めたワイン法を有するが、長年にわたって甘味果実酒がワインとして流通しており、その後の輸入自由化で輸入果汁や輸入ワインを原料にしてきた日本においては全国的に一律の法制度は整っておらず、酒税法上は原料産地や葡萄品種に関係なく国内で醸造を行う事で「日本産」を表示することが可能となっている。

日本で生産されているワインのうち約80%は海外から輸入した濃縮ぶどう果汁を日本国内の工場で加工して「国産ワイン」とのラベルで出荷されている(国税庁「果実酒製造業の概況」(平成24年度))。[21] 日本のメーカーが発売する低価格帯ワインの多くは輸入した濃縮果汁を日本で醸造したものである(ものによってはそれにバルク輸入した輸入ワインが混ぜられる事もある)。スーパーやコンビニで販売されている「国産ワイン」のほとんどはこのような工業的製造によるワインであるが、国際的には生ぶどうを原料とする醸造酒だけがワインとされており、日本で販売されているこのような「国産ワイン」はワインとして認められていない[22]

このように、ワインについての統一的な法整備がないため国際的にはワイン後進国として見なされており、酒税法の中で上述のような工業的製造が認められているため、輸入果汁の加工品にすぎない「日本産ワイン」が国内市場で広く流通している[23]。一方で、従来、ぶどうの生産地でもワイン製造は出荷できない生食用ぶどうの処分方法という位置付けが長く、良質なぶどうを使用したワイン製造に結びついてこなかった。[24]このため、消費者の間では国産ワインについて、「安かろう悪かろう」というイメージが根強く、日本のワイン産業の成長を長年阻害していたと言える。

日本のワイン産業の発展、ぶどう農業の活性化、税収の増加などの観点から、日本でのワイン法制定は緊急な課題である。2010年代に入り、日本で栽培されたぶどう100%をつかったワインを「日本ワイン」と表示する流れも広まっている。2014年春、自民党主体で「ワイン法制に関する勉強会」が発足。国内法の制定に向けた準備を始めた[25]。これに引き続き、酒税法の改定等により、政府による原産地表示にかかる法的ルール整備がされた[26]。2018年から施行される日本ワインの呼称厳密化のルールでは、日本産のぶどうを100%使用したワインのみが「日本ワイン」の名称を使用でき、原産地域の表示を行う場合にはその地域のぶどうを85%以上使用することが必要になる。 すでに一部自治体で独自の原産地呼称管理制度が始まっており、長野県長野県原産地呼称管理制度や、山梨県甲州市ワイン原産地認証条例などがある[27]

原産地呼称制度として、フランスではアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(AOC 原産地統制呼称)、アメリカ合衆国ではアメリカ葡萄栽培地域American Viticultural Areas 略称A.V.A.)が法制度として定められている。

こうした動きは醸造用のぶどうの生産地域では、ぶどう生産からワイン製造までの過程を、生産地の環境と共に楽しむワインツーリズムの広がりなどが期待できるため、地域振興策として注目されている。[28]その反面、これまでぶどう産地としてワインを地場産業にしていた北海道や関西などの地域の自治体やワイナリーでは、他産地のぶどうや輸入果汁、ワインを使用してきたために一部銘柄のワインに地名を冠して売れなくなるため戸惑いの声が上がっている。また、施行までに生ぶどうの生産を多くしようと苗木の駆け込み需要が発生しており、各地の苗木業者で苗木不足が発生する事態になっている。[29][30]

薬品としての「ブドウ酒」[編集]

日本薬局方に「ブドウ酒」がアルコール系滋養強壮剤として収載されている。食欲増進などにリモナーデ剤としてそのまま(赤酒リモナーデ)、もしくは他剤と配合して飲み易くする為、高血圧などの食事療法にも用いられている。薬用として使用されるようになったのは、明治時代に流行した腸チフス、赤痢、コレラなどの病後の滋養強壮にと使用されたの始まりと見られている。[10]

かつてはシャトーカミヤ、のちに合同酒精(現・オエノンホールディングス)が「局方ハチブドウ酒」として製造していたものの、薬価改定等の理由によって1982年(昭和57年)に製造中止となり長らく空白状態が続いていた。しかし、現在では製薬会社2社が製造販売している。愛知県の中北薬品によって1992年(平成4年)に同社津島工場において生産が再開され、現在では「くすりのぶどう酒医薬品名「日本薬局方ブドウ酒」)」として薬局薬店を通して一般にも購入する事ができる。ただし、一般のワイン同様、未成年の飲用は控えるべきであり、飲用後の車両運転なども禁じられている。東京都司生堂製薬もブドウ酒を製造しているが、こちらは詳細は不明である。

脚注・参考[編集]

  1. ^ 島津善美、上原三喜夫、渡辺正澄、「高級ワインの有機酸組成と有機酸成分間の相関関係」日本釀造協會雜誌 Vol.77 (1982) No.9 P.628-633, doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.77.628
  2. ^ 渡辺正澄、藤原正雄 (1988). “ワインの酸と料理”. 日本醸造協会誌 (Brewing Society of Japan) 83 (3). doi:10.6013/jbrewsocjapan1988.83.171. NAID 130004305060. 
  3. ^ 仲田道弘 (2012-10). “甲州ワインの欧州戦略”. 自治体国際化フォーラム (自治体国際化協会) 276: 32-35. http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_276/11_economy.pdf. 
  4. ^ 齋藤浩. “山梨に於ける甲州ワインの変遷”. 関東農政局. 2016年10月10日閲覧。公開講座「『日本ワイン』を学ぶ」~日本にワインの「風土」は根付いたのか?~における発表資料)
  5. ^ “日本産ワイン人気の高まりで動きだした 固有ブドウ「甲州」プロジェクト”. WANDS (ウォンズパブリシングリミテッド) (93). (2005-03). http://www.wine.or.jp/wands/2005/3/jwine.html. 
  6. ^ “「日本ワイン」3年後に施行 国税庁、表示ルール策定”. 日本経済新聞. (2015年10月30日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29HA1_Z21C15A0CR8000/ 2016年2月11日閲覧。 
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関連項目[編集]

外部リンク[編集]