近鉄5800系電車

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近鉄5800系電車
今里付近走行中の5800系
基本情報
製造所 近畿車輛
主要諸元
編成 4両・6両編成(4両編成は名古屋線所属車のみ[1]
軌間 1,435[1]
電気方式 直流1500V
最高運転速度 大阪・名古屋線:110 km/h
奈良・京都線:105 km/h
阪神線:106
設計最高速度 120
起動加速度 通常:2.6 km/h/s
高加速:3.0 km/h/s
従来車との併結時:2.5
減速度(常用) 4.0
減速度(非常) 4.5
全長 20,720[1]
全幅 2,800[1]
全高 4,150[1]
車体高 4,025[1]
車体 アルミニウム合金[1]
台車 Mc車・M車:KD-306[1]
Tc車・T車:KD-306A[1]
主電動機 三菱製MB-5035B
主電動機出力 165kW[1]
駆動方式 WNドライブ[1]
歯車比 5.73
編成出力 4両編成:1320kW
6両編成:1980kW
制御装置 GTO-VVVFインバータ制御
型式:三菱製MAP-174-15VD27
制動装置 電磁直通ブレーキ
(回生・保安ブレーキ付)[1]
保安装置 近鉄型ATS、阪神型ATS(奈良線所属車両のみ)、列選装置列車無線装置
備考 電算記号:DH(奈良・京都線)
DF(大阪線)
DG(名古屋線)
第38回(1998年
ローレル賞受賞車両

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[2]
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近鉄5800系電車(きんてつ5800けいでんしゃ)は、1997年8月に登場した[1]近畿日本鉄道電車通勤用の一般車両)。愛称はL/Cカー[1]

登場までの経緯

大阪線名古屋線では長距離輸送のため、積極的にクロスシート車が運転されてきた[1]2600系・2680系・2610系では通勤型と同様の片側4扉でありながら対面式固定クロスシートを導入したが、シートピッチが狭いという理由で旅客から敬遠されるようになってきたため[3]、2680系・2610系は車体更新の際に順次ロングシート化を行ってきた。

1988年に登場した5200系も3扉転換クロスシート車であり、2600系列に比べると居住性は向上したが、3扉車のためラッシュ時の運転には適さないものであった[1][3]。このためだけではないが、近鉄と近畿車輛は大量輸送と長距離着座輸送を1つの車両で実現できるように、ロングシートとクロスシートに自由に変更できるデュアルシート車の開発を進めてきた[1][3]1996年1月に2610系・2621FをL/Cカーの試作車として改造し[2][3]、同年2月から大阪線で、翌3月から名古屋線で運転した。輸送品質の向上が利用客から好評を博した[3]ため、さらに増備すべくL/Cカーの新造が行われた。それが当系列であり[1][2][3]、混雑時は窓に平行して座席が並ぶロングシートに、閑散時は回転式クロスシートに変更される「デュアルシート」を配置している[1]

大阪線、名古屋線のみならず、西日本旅客鉄道(JR西日本)関西本線大和路線)で運転されている大和路快速との対抗上、従来ロングシート車のみ投入してきた奈良線にも投入されている[1]1998年まで46両が製造され、奈良線系統には8000系初期車の代替を兼ねて6両編成5本30両が投入されたが、大阪線と名古屋線にはクロスシート車両の2600系や5200系が在籍していたことや、旧形式の代替は1620系や5200系で行われていたこと、そして車体更新が進められていた2610系および2800系の一部をL/Cカーに改造した4両編成が6本 (試作車の2621Fを含む) 投入されたため、本系列の新造は6両編成2本と4両編成1本の16両に留まった。

5800系以後に登場した形式はすべて、デザインが全く異なり、IGBT素子VVVFインバーター制御となったシリーズ21に移行した。このため、1981年1400系8810系に始まり、20年近く使われ続けた近鉄一般車の基本デザイン(3200系・5200系を除く)は、本形式が最後である[2]。また、1984年1420系に始まり、10数年に渡って使われ続けたGTO素子VVVFインバーター制御も、本形式が最後となった[2]。車体仕様を「シリーズ21」に変更した5820系が後継系列である。

編成

 
← 神戸三宮・大阪難波・京都
近鉄奈良・天理・橿原神宮前 →
西大寺検車区
所属車
Mc
モ5800形
T
サ5700形
M
モ5600形
T
サ5500形
M
モ5400形
Tc
ク5300形
 
← 大阪上本町・近鉄名古屋・京都(貸切)
宇治山田・鳥羽 →
高安検車区
所属車
Tc
ク5300形
M
モ5400形
T
サ5500形
M
モ5600形
T
サ5710形
Mc
モ5800形
 
← 近鉄名古屋・大阪上本町
宇治山田・鳥羽 →
富吉検車区
所属車
Tc
ク5300形
M
モ5600形
T
サ5710形
Mc
モ5800形
 
  • 大阪・名古屋線用編成のサ5700形に相当する付随車は1998年製造の5812Fに組み込まれたサ5712以降、長距離運用を考慮してトイレ[* 1]が設けられ[2]、形式も奈良線用とは区分してサ5710形とされた[1]
    • そのため、これに先行して落成した大阪線用5811Fに組み込まれていたサ5700形サ5711にはトイレが省略されていたが、奈良・京都線用5803Fの製造時に本来のサ5700形ではなくトイレ付きのサ5710形をサ5711(新)として組み込んだ状態で落成し、旧サ5711をサ5703に改番の上で、これら2編成間で車両交換を実施した。これにより、新造から間もない車両の改造を行わずに線区ごとの編成仕様を統一している。
  • 大阪線では2009年夏に頻発した放火事件における車内の防犯対策から青山町駅以西の準急や普通の運用時にトイレを鎖錠している[* 2]が、急行運用に入る際は使用可能である。

配置と運用線区

奈良・京都線用

奈良線用5803F

2015年4月現在、奈良・京都線用として、西大寺検車区に6両編成5本(5801F - 5805F)が配置されている[4]。電算記号は、Dual Seat(デュアルシート)のDと、6両編成車を意味するHを用いてDHとなっている。

5820系および9820系1026系1026F - 1029Fと共通運用で、奈良線および阪神線直通列車を中心に運用されている。基本的には京都線・橿原線・天理線も含めた一体的な広域運用をしているため京都線系統での運用もあるが、阪神との相互直通運転開始後は、相直改造編成は優先的に奈良線や阪神線直通運用へ使われるため、京都線系統の運用は激減した。併結車両も相直改造編成の1253系1271F - 1277Fか9020系にほぼ限定されており、検査代走もこれら3編成連結の6両編成で代走を行う。

また、阪神電気鉄道の阪神なんば線・本線で快速急行として運用される場合は、奈良線内においては終日ロングシート状態にて運用予定であったが、実際は阪神線内もクロスシート状態の場合があり(土休日、平日昼間)、混雑具合により近鉄側の判断に委ねられている。京都線・橿原線・天理線では全列車がロングシートで運用される(大阪難波駅 - 天理駅間の天理臨を除く)。

なお、阪神本線神戸三宮駅 - 尼崎駅間は山陽電気鉄道との相互直通運転区間にもなっているため、他の阪神相直対応の車両と同様、同区間では山陽電気鉄道の車両(5000系5030系)と並ぶ光景も見られる。

2013年11月2日には、五位堂検修車庫高安検修センターで「きんてつ鉄道まつり2013」の開催に伴い、5802Fがモト78形+モト77形の中間に挟まれる形で併結した8両編成[* 3]で団体臨時列車「マンモス号」に充当され、それぞれの会場最寄り駅である五位堂駅 - 高安駅間で4往復運転された[5]

大阪線用

大阪線用5813F

2015年4月現在、高安検車区に大阪線用として6両編成2本(5811F・5813F)が配置されている[4]。電算記号は、Dual Seat(デュアルシート)のDと、6両編成車を意味するFを用いてDFとなっている。

5820系との共通運用とされ、大阪線では運転距離を問わず主に6両編成以上で運転される急行系の運用に就くが、それ以外の当系列は名張駅以西の準急・普通の間合い運用や団体用の予備車として名張車庫や高安車庫などで待機していることが多い。ラッシュ時は1430系・1620系などを増結した8・10両編成で運用されることもある。通常は大阪線大阪上本町駅 - 鳥羽線五十鈴川駅間での限定運用であるが、混乱時には鳥羽線鳥羽駅および名古屋線に入線することがある。

貸切団体旅行のピーク時には5200系や5820系同様に団体貸切列車等に使用される場合もあり、その際は京都線や橿原線などの通常運用されない線区にも入線することがある。ただし、ドアカット機能が装備されていないために全駅のプラットホーム有効長が6両編成未満となっている路線に入線することは不可能である。また、運転台の仕様や編成の向き、起動加速度の設定が異なる関係上、奈良線所属車との総括制御運転が出来ないため、難波線への入線も不可能である。検査代走は2610系(ロングシート車)および2800系2817F、1400系1407Fが行う。

名古屋線用

名古屋線用5812F

2015年4月現在、富吉検車区に名古屋線用として4両編成1本(5812F)を配置している[4]。電算記号は、Dual Seat(デュアルシート)のDと、4両編成車を意味するGを用いてDGとなっている。

近鉄名古屋駅 - 松阪駅・五十鈴川駅・鳥羽駅間の急行を中心に、2610系・2800系改造L/Cカーや1200系1211F・1212Fと共通運用で、1201系9000系1230系などの2両編成車と併結した6両編成で運用されている。間合いで近鉄名古屋駅 - 富吉駅間の準急、朝の宇治山田駅始発白塚行き普通、夜間と翌朝の1往復のみ大阪線急行でも運用されている。ピーク時には5200系同様に団体貸切列車等に使用される場合もあり、その際は志摩線などの通常運用されない線区にも入線することがある。検査代走は大阪線所属車同様に2610系などのロングシート車が行う。

なお、2000年代後半は阪神電気鉄道との相互直通に備えて奈良・京都線系統へ優先的に新製車両を投入させたことなどから、名古屋線系統の通勤車両は1998年(平成10年)に5812Fが投入されて以降は新製車両の直接投入は行われておらず、経年車両の置き換えは2800系や9000系、1233系など他線区からの転入車両で賄われている。

車内インテリア

デュアルシートを配置した扉間は2人掛け3列のクロスシート、あるいは6人掛けロングシートとなる[1][2]。車端部は4人掛け固定ロングシート[1]としているが、例外としてトイレの向かい側は、着席者の視線がトイレ入り口に向くのを防ぐため、2人掛け2列のクロスシートとしている[* 4]

デュアルシートは、ロングシートとクロスシートの自動変換可能な電動転換機構を脚台に装備[1][2]。電動転換機構は、シートを通路側にスライドさせる機能と、180度回転させる機能をあわせ持っている[1][2]。座席の切り替えは運転台の総括制御スイッチにてロング/クロスシートの切り替えを行う[1][2]。ロング時はシートは固定され、クロス時は足下の足踏みペダルで手動で180度回転可能としているが[1][2]、このスライド機構は18400系で初採用された、現在の近鉄特急車標準の偏心式回転リクライニングシートと同様の構造である。

クロス状態では足踏みペダルにてシートを180度回転し[1][2]、座席を向かい合わせにしたり、進行方向やその逆方向に向かせることも可能である[1][2]。足踏みペダルの仕様は製造時期によって差があり、初期車の足踏みペダルは小型であったが、増備車の5803F・5812F以降は大型のペダルに変更された。シートのモケットは横柄のラベンダーブルーを採用し[1]、形状はクロス時を基本としている[1]。背もたれを曲面形状の頭部まである高いものとし、さらにその上にヘッドレストを取り付けている[1][2]。肘掛けはアルミ製のものを採用している。寸法は、全高1120mm、全幅960mm(1人当たりの占有幅480mm)で[1]、クロス時のシートピッチは975mmと特急車並みとしている[1]

固定ロングシート部の1人当たりの占有幅は490mmとデュアルシート部よりもややゆったりしており、ヘッドレストがあり、モケットの色をデュアルシートに合わせている[1]。なお、固定ロングシート部は肘掛けはついていない。明るいグレーを基調とした化粧板と床敷物を採用し[1]、シートの色に合わせることにより、落ち着いた雰囲気を醸し出している。床敷物は耐摩耗性の向上したものを採用し、省メンテナンス化を図り、出入口付近はノンスリップ加工を採用している。側扉の横には幅610mmの仕切を設けており、立ち客用の握り棒と背もたれ用のクッションを備えている[1]。つり手は、五角形のものに変更している[1]。高さはロング時を基準にして設置しているが、扉間は通常の高さのものとやや高いものの2種類が交互に並べている。カーテンはフリーストップタイプを採用し、上げ下ろし時にヘッドレストが邪魔にならないようにしている。

トイレは大阪・名古屋線用のみ設置されており[1][2]、トイレ前の一区画はクロスシートとなっているが、車端部の座席はクロス状態で固定されて乗降扉側の座席のみ転換でき、この区画の座席はロングシートに変換できない。

なお、デュアルシートには、かつて日本国有鉄道(国鉄)がクハ79形で同種のアイデアに基づくロング/クロスシート可変機構を試作搭載して実験した、という前史が存在する。こちらは機構的な洗練度が低く、また当時の輸送事情では導入が困難であったために実用化は見送られたが、4扉通勤車でラッシュ時の収容力確保と閑散時および長距離客の快適性の両立を図るこの構想は、実は国鉄で発案されたものであった。

車体

車体材質は先代系列といえる5200系では普通鋼製だったが、本系列は1620系1641Fや1026系1029Fがベースになっていることから、両系列と同一のアルミ車体を採用している[1][2][3]。ただし妻面の窓は縮小し、編成先頭以外の貫通扉の窓は拡大された[1]。連結部の通路板は従来の2枚板式から3枚板式に変更され、Tc車正面部の通路板は大型化された[1]。1998年度に増備された5804F・5805F・5813Fでは製造時から乗降扉上部に雨樋を取り付け、連結部に転落防止幌が設置されている。

また、L/Cの字間に転換をイメージしたグラフィックロゴを製作し、カラーシールを先頭車運転席後部戸袋部[1][* 5]と「デュアルシート」を配置した2連窓下部に[1][3]、エッチング板を先頭車運転台窓下部に取り付けている[1][3]

走行機器・性能

走行機器は概ね大阪線所属の1620系、名古屋線所属の5211系と同一の構造、部品を使用した三菱電機製のGTO素子による1C4M制御のVVVFインバータ制御装置搭載で[1][3]、VVVFインバータ装置のゲート制御部が従来の16ビットから32ビット化され、加速時から低速域の磁励音が名古屋線5211系や1620系までの車両よりも若干静かになっている。主電動機は三菱電機製MB-5035B(出力165kW)を装備し、歯車比は5.73である。

台車は1620系や5211系、1026系と同様の近畿車輛KD-306型で[1]、電動車はKD-306、付属車はKD-306A、制御車はKD-306Dを装備する。基礎ブレーキ装置は片押し式踏面ブレーキで、Tc・T車はディスクブレーキ (当初から1軸1ディスク) を併設する。1436系や1254系で搭載された滑走検知装置は搭載されていない。車輪径は動輪・付属輪共に860mm[1]、ホイールベース間隔は2,200mmである[1]

M車に主制御器・集電装置[* 6][6]、T車に東芝製補助電源装置・電動空気圧縮機を搭載[6]。また、増解結作業を簡素化するための自動連結解放装置を搭載し、他系列との併結を考慮してブレーキ装置は従来と同様の抑速ブレーキ回生ブレーキ併用電磁直通ブレーキ(HSC-R)が採用されている[1]。SIV (静止形インバータ) は東芝製INV094と三菱電機製NC-FATが混在しており、CPもHS-10とC-1000LAが混在している[6]

さらにモ5400形とサ5500形には車庫の検査ピットが4両編成対応であったことから編成を4両と2両に分割するための簡易運転台と前照灯を設けてある。この際のブレーキ指令が電気指令となるためHSC-Rに読み替えるブレーキ読替装置を床下に設置した。なお奈良線用編成については、検査ピットの6両編成対応化工事の完成で車庫内での編成分割が不要となったため、5803F以降は簡易運転台を設置せず準備工事のみに留められている。両端先頭車の運転台は5200系や1620系などの在来車と同一仕様である[1]が、本系列以降に登場したシリーズ21車両では横軸ハンドルの運転台に移行したため、1972年から続いた近鉄標準型の運転台を搭載する最後の車両形式になった。

車両性能面では5211系や1620系、1026系と同様で[1]起動加速度は2.6km/h/s(高加速モード設定時は3.0km/h/s)、運用上の最高速度は奈良線・京都線で105km/h、大阪線・名古屋線で110km/h。大阪線新青山トンネル内22.8‰上り勾配においても均衡速度104km/h以上の登坂性能が確保され、33‰上り勾配区間において架線電圧10%減・定員乗車条件でも均衡速度96km/hを確保している。

改造

バリアフリー化改造

2002年から2014年にかけて全編成にバリアフリー化工事を行い[7]、ク5300形・ク5310に連結部注意喚起装置の取り付け、ドアチャイムと車内案内表示器を乗降口上部に設置し、5801F - 5803F・5811F・5812Fは連結側に転落防止幌を取り付けている[2]。2014年までバリアフリー改造を施工されていなかった5811F[7][8]や5812F[7]の転落防止幌は本形式製造時および2005年までのバリアフリー改造で設置されたスクリーンタイプとは異なり、抵抗制御車や5200系などに設置された段違いタイプの防止幌となっている[8]

阪神線直通対応改造

2007年から2008年にかけて奈良線所属の5編成は阪神電気鉄道乗り入れ対応の改造を行った[2]。改造内容は運転室に阪神用ATSと列車種別選定装置(東芝製で、東芝の旧ロゴである傘マークが付いている)、救援用のブレーキ読み替え装置など阪神線での走行に必要な機器や行先表示幕の交換を施工し、前述のブレーキ読み替え装置の搭載に伴い連結器は他のシリーズ21と同じ2段式電気連結器に交換されたため、排障器の形状が変更されている[2]。また運行標識灯の下に連結部注意喚起装置が取り付けられている[2]。乗り入れ対応編成は蝶々に類似したマークを前面運転台下窓と側面乗務員室扉横に貼り付けられている[2]。この際に、行先表示幕が従来の「難波」「西大寺」表示から、「大阪難波」「大和西大寺」表示に交換された。2014年3月に阪神線に駅ナンバリングが導入されたため、それに伴う車内案内表示器の表示にも対応している。起動加速度が3.0km/h/sとなっている阪神9000系同1000系に走行特性を合わせる必要が生じたため、高加速スイッチを「入」に設定した上で営業運転に就いている。

内装更新

2014年には奈良線所属の5802Fを皮切りに、全編成に対して老朽化したヘッドレストの新品取り替えを行うとともに、座席モケットも5820系5200系更新車と同一デザインのモケットに交換されている。一部編成はロールカーテンがシリーズ21と同一品に交換された。座席の背面形状と転換装置、足踏みペダルは従来のままで存置されている。

その他

2008年から2013年にかけて全編成が新型ATS(ATS-SP)車上装置・デッドマン装置設置工事、2010年以降は5801F - 5805F・5811F・5813F[8]の車体側面L/Cマーク撤去[* 7]がそれぞれ行われている。また、急勾配区間や悪天候時の空転発生を考慮し、5804F・5805F・5811F - 5813Fにはアルミナ噴射装置の取り付けが行われている。

アートライナー

アートライナー (5801F)
※現在は通常塗装に戻っている
デボ1形復刻電車
  • 5801F:ドラえもん(運行終了)→帝塚山大学(2004年 - 2010年5月運行終了)[9]
  • 5802F:トヨタ自動車ポルテ」(運行終了)→シミズメガネ(運行終了)→ デボ1形復刻塗装(2014年4月29日運行開始 - )[10]
    • 各種撮影会にも起用されており、2014年11月15日には5200系5205F「近鉄エリアキャンペーン記念列車」と並んだラインナップ撮影会が青山町車庫で行われた関係で本系列の5802Fが大阪線を走行している[11]
  • 5804F:田辺製薬(現在の田辺三菱製薬)「アスパラドリンク」(運行終了)→ 「solaha」(2014年4月 - 2015年3月運行終了)
  • 5811F:「第27回全国都市緑化ならフェアPR列車」(2010年9月 - 2010年11月16日)[12]
  • 5812F:「首都機能移転PR列車」[* 8]2001年9月 - 2003年8月)
  • 5813F:上本町YUFURA(2010年4月 - 2014年5月)

脚注

注釈

  1. ^ 5200系と同様に和式であるが、処理方式は真空式に変更している。
  2. ^ 以前から、大阪上本町駅 - 高安駅・河内国分駅で折り返す準急や普通列車では乗客の少ない列車によるトイレでの喫煙やいたずら等の防止から、本系列や5820系、5200系等クロスシート車両はトイレ使用不可の処置がとられていた。
  3. ^ 五位堂方からモト78 + ク5302 + モ5402 + サ5502 + モ5602 + サ5702 + モ5802 + モト77で編成が組まれた
  4. ^ 乗降扉側の座席は転換式、連結側の座席は固定式(転換不可)となっている。
  5. ^ 奈良線所属車は後述する阪神直通運転対応工事に伴い、それを示す蝶々をモチーフにしたステッカーが先頭車前面と運転席後部戸袋部(従来のシールは貼り替えられている)に貼り付けられた。
  6. ^ モ5400形のみ2基搭載で、モ5600形とモ5800形はサ5700・5710形寄りに1基ずつ搭載し、モ5600形とモ5800形の間に母線引き通しがされているが、それぞれもう1基ずつ増設可能としている。
  7. ^ ただし、この期間に検査出場した一部の編成は塗装費用の軽減策から、車体の再塗装を省略したものも存在した。
  8. ^ 一部鉄道ファンからは「鳳凰」と呼ばれた。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.2 - p.11・p.126(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4586509058
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 『近畿日本鉄道完全データ』 p.53 (発行 メディアックス 2012年) ISBN 9784862013934
  3. ^ a b c d e f g h i j 近畿日本鉄道のひみつ p.128・p.129(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0
  4. ^ a b c 鉄道ファン』2015年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2015 車両配置表」
  5. ^ 近鉄で団体臨時列車「マンモス号」運転 交友社鉄道ファン』railf.jp 2013年11月3日
  6. ^ a b c 日本の私鉄「近畿日本鉄道」p104 - p106(著者・編者 広岡友紀、出版・発行 毎日新聞社 2012年) ISBN 978-4-620-32003-8
  7. ^ a b c 鉄道ファン』2015年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2015 車両データバンク」
  8. ^ a b c 【近鉄】5800系DF11編成 試運転 (RMニュース) 鉄道ホビダス―実物から鉄道模型まで日本最大級の鉄道専門サイト by ネコ・パブリッシング 2013年3月12日
  9. ^ 【近鉄】“帝塚山大学号”大阪線で試運転 (RMニュース)  ネコ・パブリッシング 2009年12月16日
  10. ^ [1] 近鉄奈良線開業100周年記念イベントツアー [2]
  11. ^ 『近鉄エリア記念車両・ヒストリートレイン ラインナップ撮影会』開催 鉄道ニュース|2014年11月16日掲載|鉄道ファン・railf.jp
  12. ^ 【近鉄】花と緑の祭典「第27回全国都市緑化ならフェア」ラッピング車 (RMニュース)  ネコ・パブリッシング 2010年9月1日

参考文献

  • カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.2 - p.11・p.126(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4586509058
  • 日本の私鉄「近畿日本鉄道」p.104 - p.106(著者・編者 広岡友紀、出版・発行 毎日新聞社 2012年) ISBN 978-4-620-32003-8
  • 『近畿日本鉄道完全データ』 p.53(発行 メディアックス 2012年) ISBN 9784862013934
  • 近畿日本鉄道のひみつ p.128・p.129(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0

関連項目

他社における同種の車両

外部リンク