近鉄5800系電車

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近鉄5800系電車
今里付近走行中の5800系
今里付近走行中の5800系
編成 4両・6両編成(ただし4両編成は名古屋線所属車のみ)
起動加速度 奈良線所属車:3.0km/h/s
大阪・名古屋線所属車:2.6 km/h/s
営業最高速度 奈良線所属車:105km/h
大阪・名古屋線所属車:110 km/h
設計最高速度 120 km/h
減速度 4.0 km/h/s(常用最大)
4.5 km/h/s(非常)
全長 20,720 mm
全幅 2,800 mm
全高 4,150 mm
車体高 4,032 mm
軌間 1,435 mm
電気方式 直流1500V
モーター出力 165kW
主電動機 三菱製MB-5035B
歯車比 5.73
制御装置 GTO-VVVFインバータ制御
型式:三菱製MAP-174-15VD27
駆動装置 WNドライブ
台車 KD-306
ブレーキ方式 電磁直通ブレーキ
(回生・保安ブレーキ付)
保安装置 近鉄型ATS、阪神型ATS(奈良線所属車両のみ)、列選装置列車無線装置
製造メーカー 近畿車輛
備考
Wikipedia laurier W.png
第38回(1998年
ローレル賞受賞車両

カテゴリ / テンプレート

近鉄5800系電車(きんてつ5800けいでんしゃ)は、1997年8月に登場した、近畿日本鉄道急行形車両の一系列。 愛称L/Cカー

目次

[編集] 概要

1620系等の他通勤車両と同一のアルミ標準軌共通車体を持っているが、混雑時は窓に平行して座席が並ぶロングシートに、閑散時は回転式クロスシートに変更される「デュアルシート」を配置している。側扉間には3脚ずつの「デュアルシート」を設け、運転台の総括制御スイッチにてロング/クロスシートの切り替えを行う。またクロス状態では足踏みペダルにてシートを180度回転し、座席を向かい合わせにしたり、進行方向やその逆方向に向かせることも可能である。また、LCの字間に転換をイメージしたグラフィックロゴを製作し、カラーシールを先頭車運転席後部戸袋部(奈良線所属車は撤去)と「デュアルシート」を配置した2連窓下部に、エッチング板を先頭車運転台窓下部に取り付けている。

5800系以後に登場した形式はすべて、デザインが全く異なり、IGBT素子VVVFインバーター制御となったシリーズ21に移行した。このため、1981年1400系8810系に始まり、20年近く使われ続けた近鉄一般車の基本デザイン3200系5200系を除く)は、本形式が最後である。また、1984年1420系に始まり、10数年に渡って使われ続けたGTO素子VVVFインバーター制御も、本形式が最後となった。車体仕様を「シリーズ21」に変更した5820系が後継系列である。

[編集] 登場までの経緯

大阪線名古屋線では長距離輸送のため、積極的にクロスシート車が運転されてきた。2600系・2610系・2680系では対面式固定クロスシートを導入したが、シートピッチが狭いという理由で旅客から敬遠されるようになってきたため、2610系・2680系は車体更新にあわせてロングシート化を行ってきた。

1988年に登場した5200系も3扉転換クロスシート車であり、2600系列に比べると居住性は向上したが、3扉車のためラッシュ時の運転には適さないものであった。このためだけではないが、近鉄と近畿車輛は大量輸送と長距離着座輸送を1つの車両で実現できるように、ロングシートとクロスシートに自由に変更できるデュアルシート車の開発を進めてきた。1996年に2610系・2621FをL/Cカーの試作車として改造し、同年2月から大阪線で、翌3月から名古屋線で運転した。輸送品質の向上が利用客から好評を博したため、さらに増備するべくL/Cカーの新造が行われた。それが当系列である。

大阪線、名古屋線のみならず、西日本旅客鉄道(JR西日本)関西本線大和路線)で運転されている大和路快速との対抗上、従来ロングシート車のみ投入してきた奈良線にも投入されている。

[編集] 編成

 
← 阪神三宮・大阪難波・京都
近鉄奈良・天理・橿原神宮前 →
西大寺検車区
所属車
Mc
モ5800形
T
サ5700形
M
モ5600形
T
サ5500形
M
モ5400形
Tc
ク5300形
 
← 大阪上本町・近鉄名古屋・京都(貸切)
宇治山田・鳥羽 →
高安検車区
所属車
Tc
ク5300形
M
モ5400形
T
サ5500形
M
モ5600形
T
サ5710形
Mc
モ5800形
 
← 近鉄名古屋・大阪上本町
宇治山田・鳥羽 →
富吉検車区
所属車
Tc
ク5300形
M
モ5600形
T
サ5710形
Mc
モ5800形
 
  • 大阪・名古屋線用編成のサ5700形に相当する付随車は1998年製造の5812Fに組み込まれたサ5712以降、長距離運用を考慮してトイレ[1]が設けられ、形式も奈良線用とは区分してサ5710形とされた。
  • そのため、これに先行して落成した大阪線用5811Fに組み込まれていたサ5700形サ5711にはトイレがなかったが、奈良・京都線用5803Fの製造時に本来のサ5700形ではなくトイレ付きのサ5710形をサ5711(新)として組み込んだ状態で落成し、旧サ5711をサ5703に改番の上で、これら2編成間で車両交換を実施した。これにより、新造から間もない車両の改造を行わずに線区ごとの編成仕様を統一している。
  • 大阪線では2009年夏に頻発した放火事件における車内の防犯対策から名張駅・青山町駅以西の準急や普通の運用時にトイレは使用出来ない[2]が、快速急行や区間快速、急行の運用に入る際は使用可能である。

[編集] 配置と運用線区

[編集] 奈良・京都線用

奈良線用5803F

奈良・京都線用として、西大寺検車区に6両編成5本(5801F - 5805F)が配置されている。電算記号は、Dual Seat(デュアルシート)の頭文字Dと、6両編成車を意味するHを用いてDHとなっている。

5820系と共通運用で、京都線・橿原線・天理線では全列車がロングシートで運用される(大阪難波駅 - 天理駅間の天理臨を除く)。特急利用誘導の意味合いが強いことが影響してのものであるが、それでも京都線・橿原線系統での運用があるのは、基本的に京都線・橿原線・天理線も含めた運用をしているからである。しかしながら、阪神との相互直通運転開始後は、相直改造が行われた編成は優先的にその運用に使われるため、京都線系統の運用は激減した。車両運用でも相互直通開始後は、5820系のみならず9820系1026系1027F - 1029Fといった相互直通対応の6両固定編成車と共通で運用されるようになった。

また、阪神電気鉄道の阪神なんば線・本線で快速急行として運用される場合は、奈良線内においては終日ロングシートで運用される予定であったが、実際は阪神線内もクロスシートで運用していることがあり(土休日、平日昼間)、混雑具合により近鉄側の判断に委ねられている。なお、尼崎駅や三宮駅での折り返しの際は、座席の自動転換が行われていないことが多く、クロスシートによる奈良方面行きの電車の座席は、進行方向と反対方向を向いている場合がある。

[編集] 大阪線用

大阪線用5813F

高安検車区に大阪線用として6両編成2本(5811F・5813F)が配置されている。電算記号は、Dual Seat(デュアルシート)の頭文字Dと、6両編成車を意味するFを用いてDFとなっている。

後述の名古屋線所属編成と同様に、大阪上本町駅 - 青山町駅宇治山田駅五十鈴川駅間の快速急行・急行を中心に運用されるが、こちらは5820系と共通運用であり、問合いで大阪上本町駅 - 高安駅河内国分駅榛原駅名張駅間の準急普通に使用されることもある。ラッシュ時は2410系1430系1620系などを増結した8・10両編成で運用されることもある。通常は大阪線・山田線での限定運用であるが、ダイヤ乱れの場合には名古屋線に入線することがある。

貸切団体旅行のピーク時には5200系や5820系同様に団体貸切列車等に使用される場合もあり、その際は京都線や奈良線などの通常運用されない線区にも入線する事がある。また、定期検査時の運用離脱による本系列の定期運用には2610系および1400系1407Fが本系列の代走を務める。

[編集] 名古屋線用

名古屋線用5812F

富吉検車区に名古屋線用として4両編成1本(5812F)を配置している。電算記号は、Dual Seat(デュアルシート)の頭文字Dと、4両編成車を意味するGを用いてDGとなっている。

近鉄名古屋駅 - 伊勢中川駅松阪駅宇治山田駅鳥羽駅間の急行と近鉄名古屋駅 - 富吉駅間の準急を中心に、2610系・2800系改造のL/Cカー、4連ロングシート車両の2800系2817F、1200系1211F・1212Fと共通運用で、1810系1230系9000系1201系1430系2410系(大阪線関連の運用のみ)のどれか2両編成車を1編成増結した6両編成で運用されている。間合いで早朝、夜間の大阪線快速急行[3]の運用もある。また、朝の近鉄四日市駅 - 近鉄名古屋駅間の準急(休日上り1本のみ)と、宇治山田白塚行き普通、大阪線名張発近鉄名古屋行き急行[4]にも運用される。ピーク時には5200系同様に団体貸切列車等に使用される場合もあり、その際は志摩線などの通常運用されない線区にも入線する事がある。

なお、2000年代後半は阪神電気鉄道との相互直通に備えて奈良・京都線系統へ優先的に新製車両を投入させたことなどから、名古屋線系統の通勤車両は1998年(平成10年)に5812Fが投入されて以降は新製車両の直接投入は行われておらず、経年車両の置き換えは9000系や1233系など他線区からの転属車両で賄われている。

[編集] 車内

デュアルシートを配置した扉間は2人掛け3列のクロスシート、あるいは6人掛けロングシートとなる。車端部は4人掛け固定ロングシートとしているが、例外としてトイレの向かい側は、着席者の視線がトイレ入り口に向くのを防ぐため、2人掛け2列のクロスシートとしている[5]

デュアルシートは、ロングシートとクロスシートの自動変換可能な電動転換機構を脚台に装備。電動転換機構は、シートを通路側にスライドさせる機能と、180度回転させる機能を併せ持っている。ロング時はシートは固定され、クロス時は足下の足踏みペダルで手動で180度回転可能としているが、このスライド機構は近鉄12000系で初採用された、現在の近鉄特急車標準の偏心式回転リクライニングシートと同様の構造である。シートのモケットは横柄のラベンダーブルーを採用し、形状はクロス時を基本としている。背もたれを曲面形状の頭部まである高いものとし、さらにその上にヘッドレストを取り付けている。肘掛けはアルミ製のものを採用している。寸法は、全高1120mm、全幅960mm(1人当たりの占有幅480mm)で、クロス時のシートピッチは975mmと特急車並としている。

固定ロングシート部の1人当たりの占有幅は490mmとデュアルシート部よりもややゆったりしており、ヘッドレストがあり、モケットの色をデュアルシートに合わせている。なお、固定ロングシート部は肘掛けはついていない。明るいグレーを基調とした化粧板と床敷物を採用し、シートの色に合わせることにより、落ち着いた雰囲気を醸し出している。床敷物は耐摩耗性の向上したものを採用し、省メンテナンス化を図り、出入口付近はノンスリップ加工を採用している。側扉の横には幅610mmの仕切を設けており、立ち客用の握り棒と背もたれ用のクッションを備えている。つり手は、五角形のものに変更している。高さはロング時を基準にして設置しているが、扉間は通常の高さのものとやや高いものの2種類が交互に並べている。カーテンはフリーストップタイプを採用し、上げ下ろし時にヘッドレストが邪魔にならないようにしている。

トイレは大阪・名古屋線用のみ設置されており、トイレ前の一区画はクロスシートとなっているが、車端部の座席はクロス状態で固定されて乗降扉側の座席のみ転換でき、この区画の座席はロングシートに変換できない。

なお、デュアルシートには、かつて国鉄クハ79形で同種のアイデアに基づくロング/クロスシート可変機構を試作搭載して実験した、という前史が存在する。こちらは機構的な洗練度が低く、また当時の輸送事情では導入が困難であったために実用化は見送られたが、4扉通勤車でラッシュ時の収容力確保と閑散時および長距離客の快適性の両立を図るこの構想は、実は国鉄で発案されたものであった。

[編集] 車体・走行機器・性能等

車体・走行機器などは三菱電機製のGTO素子によるVVVFインバータ制御装置搭載で、主電動機はMB-5035Bを装備するなど大阪線所属の1620系と同一の構造、部品を使用している。但し妻面の窓は縮小し、編成先頭以外の貫通扉の窓は拡大された。よって先代系列といえる5200系は普通鋼製だったが、本系列はアルミ車体を採用している。

車両性能面では5211系や1620系、1026系と同様で、起動加速度は2.6km/h/s (阪神相直対応車は3.0km/h/s) 、運用上の最高速度は奈良線・京都線で105km/h、大阪線・名古屋線で110km/h。大阪線新青山トンネル内22.8‰上り勾配においても均衡速度105km/h以上の登坂性能が確保され、33‰上り勾配区間において架線電圧10%減・定員乗車条件でも均衡速度96km/hを確保している。

台車は1620系や5211系と同様の近畿車輛KD-306型で、電動車はKD-306、付属車はKD-306A、制御車はKD-306Dを装備する。基礎ブレーキ装置は車輪の踏面を片方の制輪子で押し当てる片押し式で、Tc・T車はディスクブレーキ (当初から1軸1ディスク) を併設する。1436系や1254系で搭載された滑走検知装置は搭載されていない。

M車に主制御器・集電装置[6]を、T車に東芝製補助電源装置・電動空気圧縮機を搭載。また、頻繁に増解結が行われるため、その作業を簡素化するために自動連結解放装置を搭載している。他系列との併結の必要から、ブレーキ装置は従来と同様の抑速ブレーキ回生ブレーキ併用電磁直通ブレーキ(HSC-R)が採用されている。

さらにモ5400形とサ5500形には車庫の検査ピットが4両編成対応であったことから編成を4両と2両に分割する必要があり、簡易運転台を設けてある。この際のブレーキ指令が電気指令となるためHSC-Rに読み替えるブレーキ読替装置を床下に設置した。なお奈良線用編成については、検査ピットの6両編成対応化工事の完成で車庫内での編成分割が不要となったため、5803F以降は簡易運転台を設置せず準備工事のみに留められている。

[編集] 改造

5820系投入後、奈良線所属の5801F - 5805F、大阪線所属の5813Fは設備を合わせるべくバリアフリー化工事を行い、車内案内表示器を出入り口上部に設置し、1998年の製造当初から装備する5804F・5805F・5813F以外は連結側に転落防止幌を取り付けている。

急勾配区間や悪天候時の空転発生を考慮し、5804F・5805F・5811F - 5813Fにはアルミナ噴射装置の取り付けが行われている。

2007年から2008年にかけて奈良線所属の車両の5編成は阪神電鉄乗り入れ対応の改造を行った。改造内容は運転室に阪神用ATSと列車種別選定装置(東芝製で、東芝の旧ロゴである傘マークが付いている)の取り付けなど阪神線での走行に必要な機器や行き先表示幕の取り付けと起動加速度の引き上げ、連結器は他のシリーズ21と同じ電気連結器が2段になったタイプになっているため、排障器の形状が変更されている。また運行標識灯の下に連結部注意喚起装置が取り付けられている。乗り入れ対応編成は蝶々に類似したマークを前面運転台下窓と側面乗務員室扉横に貼り付けられている。この際に、行先表示幕が従来の「難波」「西大寺」表示から、「大阪難波」「大和西大寺」表示に交換された。

また、2008年から2010年にかけて5801F - 5805F・5811Fが新型ATS(ATS-SP)車上装置・デッドマン装置設置工事を受けている。

5801F - 5803Fは車体再塗装の際に車体側面に貼られていたL/Cマークが全て撤去されている。

[編集] アートライナー・ラッピング列車

アートライナー (5801F)
※現在は通常塗装に戻っている


[編集] 脚注

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  1. ^ 5200系と同じく和式であるが、処理方式は真空式に変更している。
  2. ^ 以前から、大阪上本町駅 - 高安駅河内国分駅で折り返す準急や普通列車では乗客の少ない列車によるトイレでの喫煙やいたずら等の防止から、本系列や5820系、5200系等クロスシート車両はトイレ使用不可の処置がとられていた。
  3. ^ 五十鈴川駅19:30発大阪上本町行き快速急行と、その折り返しである大阪上本町駅22:05発青山町行き区間快速。
  4. ^ 前日夜の快速急行で大阪線に入った編成を名張発の急行にそのまま運用する。
  5. ^ 乗降扉側の座席は転換式、連結側の座席は固定式(転換不可)となっている。
  6. ^ モ5400形のみ2基搭載で、モ5600形とモ5800形は奈良線車両は奈良寄りに、大阪線・名古屋線車両は 大阪・名古屋寄りに1基ずつ搭載し、モ5600形とモ5800形の間に母線引き通しがされているが、それぞれもう1基ずつ増設可能としている。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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