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(せい)とは、東アジア漢字文化圏で用いられる血縁集団の名称。その範囲は地域時代によって変動し、名字といった他の血縁集団名と様々な階層関係にあった。近代以降、ヨーロッパなどの他の文化圏の血縁集団名、家系名の訳語としても用いられている。

姓と名の順序[編集]

姓-名の順[編集]

日本人漢字かなを用いて姓名を名乗るときは、姓-名の順で表記する。

日本以外にも中国韓国・朝鮮ベトナムといった東アジアや、ヨーロッパでもハンガリー、また西アフリカの一部の地域、インド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州テルグ人などでは同様に姓-名の順で表記する。

名-姓の順[編集]

ヨーロッパからインドテルグ人を除く)にかけては名-姓(インドでは家族名:インド人の名前参照)の順である。英語圏スペイン語圏フランス語圏ドイツ語圏イタリア語圏などの人名がこれに該当する。

ただし英語圏などでも、役所に提出する書類等は戸籍整理や、試験答案などでは便宜上、姓-名の順で氏名を書くことがある。例えば田中太郎(名字:田中、名前:太郎)を姓-名の順に書く場合、"Tanaka, Taro"のように,名字と名前の間にコンマ(,)を入れて書く。この際、姓であることを強調するため、"TANAKA, Taro"のように、姓を大文字で表すこともある。また学問においては、英語での論文引用文献リストにおいては、著者名は姓-名の順で書かれたり、さらに名は省略されることも多い。

イタリアロシアなどは、学校教育軍隊等の場において姓-名と逆転させて、姓を先に名乗るよう指導される場合が多い(イタリアに関しては、パンツェッタ・ジローラモの発言[要出典]に基づく)。ロシアから届く郵便物は差出人の姓を先に書いてある場合が多い。

1974年のフランス映画 Lacomb Lucien(邦題『ルシアンの青春フランス語版英語版』)のタイトルは主人公の姓名からとられているが、これは姓ー名の順になっている。作品中で二箇所主人公が自分の名前を名乗るところがあるが、どちらも姓ー名の順で名乗っている。

日本の相撲界において、東欧出身の力士の本名の表記は本来の名-姓ではなく、姓-名の順で表記することが多くなっている。

ローマ字表記における順序の問題[編集]

ローマ字(ならびにその他のアルファベット)で日本人の姓名を表記するときは、名-姓と逆に表記するケースが多い。これには学校教育と明治以来の慣習の影響が大きく、英語圏をはじめとする西洋式の表記に倣ったためである。

中国や朝鮮の人名においては、本来の中国語朝鮮語の発音及び慣習に従った表記で姓-名の順で表記するのが一般的であるが、近年では陳露をローマ字でLu Chenと表記するように、名-姓と逆転させて表記する例も多くなってきている。

欧米圏では、日本人自身が欧米人に対して名-姓の順序で自分の名を名乗る事が多いため、欧米人が日本人の名を挙げる場合や表記する場合は、名-姓と逆にする事が多いが(例:菅直人Naoto Kan, 中田英寿Hidetoshi Nakataと表記される事例等)、歴史上の人物の場合は姓-名と本来の順序で表記する事が多い(例:源頼朝Minamoto no Yoritomo,織田信長Oda Nobunaga,徳川家康Tokugawa Ieyasuと表記される事例等)。

2000年文部省(当時)の国語審議会が出した答申「国際社会に対応する日本語の在り方」では、

日本人の姓名については、ローマ字表記においても「姓―名」の順(例えばYamada Haruo)とすることが望ましい。なお、従来の慣習に基づく誤解を防ぐために、姓をすべて大文字とする(YAMADA Haruo)、姓と名の間にコンマを打つ(Yamada,Haruo)などの方法で、「姓―名」の構造を示すことも考えられる。[1]

としている。この答申に従った表記も増えており、例えば日本サッカー協会ではこの答申に従って2012年4月から選手名を姓-名とし、姓を大文字にして表記している[2]

なお、桑田佳祐宇多田ヒカルのように双方の表記が混在している事例もある(両者とも90年代後半から2000年代初頭になって主に日本国内向けの商品やCMではKuwata Keisuke、Utada Hikaruと表記を改めたが、海外向けのページや他のアーティストとのコラボレーション作品等では現在でもKeisuke KuwataHikaru Utadaと表記されている)。

姓の数、由来[編集]

国別の姓の数[編集]

  • 米国 - 150万種
  • イタリア - 35万種[3]
  • 日本 - 30万種
    • 姓氏研究家の丹羽基二による。漢字の字体の違いや読みの違いを考慮してカウントした場合。[4] 同じく研究家の森岡浩は十数万種としている。
  • フィンランド - 約6万種
    • 人口500万人に対して姓が6万種なので、人口比ではかなり種類が多いことになる。
  • 中国 - 23813種
  • 韓国 - 250種

※推定。資料によって値が大きく異なる事もある。

国別の姓名の由来[編集]

  • 日本
    • 地名(80~90%、推定)
    • 職業
    • 屋号
    • 特別型(姓から派生した氏)

日本は、他のアジア圏に比べて突出して姓が多い。これは、姓の由来が他のアジア諸国と異なることによる(「名字」の記事などを参照)。しかし、中には幽霊名字と言われる「実在しない姓」がまことしやかに語られている場合があり、正確な数は特定できていない。これまで、保険会社や個人の研究家が何点かランキングなどの資料を制作している。また外国人が日本に帰化した際に、新しい姓が作られることもある(三都主智有弦念など)。

一方、中国や韓国は先祖の家系を重んじ姓をかたくなに受け継ぐので、その数は増えにくい。

アメリカは、移民国家であり、姓が長い西洋人から姓が極端に短い東洋人など様々存在するので「世界一姓の種類が多い国」となっており、他国に比べ姓の種類が断トツ多い。アメリカは英語圏でありながら非英語圏の姓が多いのが特徴で、英語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語の姓が多くみられる。

世界一多い姓は、(中国、朝鮮半島、台湾、ベトナム。中国・北朝鮮・台湾・ベトナムでは“リ”、韓国では“イ”)である。この姓は中国の人口の7.9%(2002年)を占めており、1億人以上いるといわれている。英語圏の名字の最多のものであるSmith(スミス、英・米等、約300万人)と比べても明らかに多い。

モンゴルには、姓が存在しない。現在でも、横綱白鵬の本名がムンフバト・ダヴァジャルガルで彼の父の名がジグジドゥ・ムンフバトであるように、父親の名が姓の代わりを果たしている(父称)。アイスランドも姓が存在せず、父称を姓のように使用している。

日本における姓[編集]

姓は、名字・苗字(みょうじ)や(うじ)とも言い(姓と氏・名字という語は本来の別々の意味を有するが、現在ではほぼ同一の言葉として使われている)、明治時代以降は、「氏」として戸籍に記載されて管理されている。

1875年(明治8年)2月13日太政官布告で「氏」の使用が義務化され、1876年(明治9年)年3月17日に太政官指令で「夫婦別氏制」が出される。その後1898年(明治31年)旧民法で「夫婦同氏」が制定された[5]

以来、現代まで日本の制度ではすべての日本国民が姓を有する、先祖から受け継がれてきた家庭の名称や夫婦を中心にした家族の名称を指す。家庭内や同姓がいるときは、のみが個人を表す名称だが、家庭以外では、姓と名を合わせたフルネームで表記することで個人を特定する名称となる。

日本人の姓は、基本的に漢字である。ただし「一ノ瀬」などのように一部に片仮名が含まれているもの、「反り目」のように平仮名が含まれているものもある[6]。また漢字文化圏以外から日本に移り住み、国籍を取得した者の中には、姓を片仮名表記で戸籍に登録している例(ハーフナー・マイク等)もある。

日本の主な名字[編集]

以下は、2010年現在日本国内に多い名字(上位30)である[7]

日本国内に多い名字(上位30位、2010年現在)
順位 名字(読み) 備考
1 佐藤サトウ、サドウ) 北海道東北地方をはじめとする東日本(特に秋田県)や東九州に多い名字で、関西圏では大阪府兵庫県を除きそれほど多くはない。沖縄県ではむしろ珍しい名字。
2 鈴木スズキ、ススキ、ススギ) 愛知県(特に三河)・静岡県及び南関東東北地方に多い。南関東のランキングでは1位。発祥地は和歌山県海南市だが、西日本(特に九州・沖縄地方)にはさほど多くはない。
3 高橋タカハシ、タカバシ) この名字も東北地方をはじめ東日本(とくに岩手県北上市周辺)や中四国地方に多い傾向がある。
4 渡辺ワタナベ、ワタベ) 発祥地は大阪市中央区で、沖縄県を除く全国に満遍なく分布するが、密度は山梨県静岡県など東日本南部または中京地方九州(特に大分県)に多い。
5 田中タナカ、ダナカ、デンチュウ) 全国満遍なく分布し、大半の都道府県で上位にランクされるが、密度では西日本沖縄県を除く)の方が多い。大阪府山陰地方福岡県のランキングでは1位であり、西日本全体でも1位を誇る。東日本でも関東地方(特に埼玉県入間比企地域)・甲信越地方(特に長野県)・北海道では密度が高い。
6 伊藤イトウ 中京地方及び東北地方関東地方近畿地方山陰地方に多い。件数は愛知県が最も多いが、密度では三重県の方が多い。愛知県名古屋市では市町村としては最も件数が多い。
7 山本ヤマモト どちらかといえば西日本に多いが、東北地方は多くない。北陸地方山陽地方では1位、近畿地方山陰地方では2位。東日本でも埼玉県静岡県では上位にランクされる。
8 中村ナカムラ 全国に分布するどちらかといえば西日本に多い。特に近畿九州地方に多い。
9 小林コバヤシ、オバヤシ) 関東信越近畿中国地方に多い。
10 斎藤サイトウ
11 加藤カトウ 発祥地は加賀国(現在の石川県)だが、北陸地方ではそれほど多くない。中京地方には多く分布する。
12 吉田ヨシダ、キチダ、ヨシタ) 発祥は京都市左京区沖縄県を除く全国に分布するが、北陸近畿四国地方で密度が高い。
13 山田ヤマダ 特定の地方に多いというわけではなく、日本のどの地方においても平均的に件数が存在する。
14 佐々木ササキ 発祥地は滋賀県米原市だが、北海道東北地方福井県中国地方に多い。
15 山口ヤマグチ 全国万遍なく分布するが、西日本(特に西九州)で割合が高い。日本の都道府県名のうち、日本人の姓としては最も多い。
16 松本マツモト 西日本北関東に多く分布する。
17 井上イノウエ、イカミ) 西日本に多く分布する。
18 木村キムラ 沖縄県を除く全国に分布する。
19 ハヤシ 北陸近畿地方山口県に多くに分布する。
20 清水シミズ、キヨミズ、ショウズ)
21 山崎ヤマザキ、ヤマサキ) 西日本では「ヤマサキ」が多い。
22 池田イケダ、イケタ)
23 阿部アベ 東北地方に多く分布する。
24 モリ 西日本に多く分布する。
25 橋本ハシモト
26 山下ヤマシタ、ヤマモト) 西日本に多く分布する。
27 石川イシカワ、イシガワ)
28 中島ナカジマ、ナカシマ) 中国地方九州地方などでは「ナカシマ」が多い。
29 前田マエダ、マエタ) 西日本に多く分布する。
30 藤田フジタ


このほか、対馬における「阿比留」のように、「一部の地域では多数派」という姓もある。なお、日本では結婚した際に夫婦同姓とすることが多く、養子縁組をする際には養子が養親の姓に改めることになるが、日本国外の人が日本に帰化したときなど、名字の種類が増えることもあるため、消滅する名字の数と新たに誕生する名字の数を比較すると、名字の数は全体的に見ると増加傾向にあるといわれる。

日本以外の国の姓[編集]

スペイン人の姓[編集]

スペイン人の姓は、第一姓と第二姓によって構成される。第一姓は父親の第一姓、第二姓は母親の第一姓によって構成される。また、第一姓と第二姓が同じこともしばしばある(父親の第一姓と母親の第一姓が同じ場合)。また、結婚によって、姓が変わることはない。したがって、夫婦は別姓であり、また、子供も親と同じ姓ではない(親から引き継いだ部分は当然同じ)。また、兄弟間でも、異なることもある(親が再婚した場合など)。現在は母親から引き継いだ姓を第一姓にすることができるようになった。簡略形として、一方の姓だけを使う場合は、第一姓(多くの場合父親から引き継いだ姓)を使うことが多いが、画家のパブロ・ピカソや前首相のホセ・ルイス・サパテーロ首相は、母方の姓を使用している。

脚注[編集]

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  1. ^ 国際社会に対応する日本語の在り方(答申)(抄)](文部科学省公式サイト)
  2. ^ 日本人名のローマ字表記について(日本サッカー協会公式サイト 2012年4月1日)
  3. ^ L'Italia è il regno dei cognomi”. 2008年9月3日閲覧。
  4. ^ 日本苗字大辞典、芳文館、1996, 7月発行
  5. ^ 法務省 我が国における氏の制度の変遷
  6. ^ 津南新聞「今週のねっとわーく」2005年10月
  7. ^ 日本の姓の全国順位データベース”. 静岡大学 人文学部 言語文化学科 比較言語文化コース 言語学分野 城岡研究室. 2008年9月3日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]